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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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415:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:18:44 ID:fCGs63cw0
26.はみ出し者共の老いらく



生臭い。魚類臭さじゃなく獣肉の臭さ。
流石にこんな悪臭の中で眠れはしない。

眠れる奴は鼻が麻痺してる奴か、鼻が無い奴だ。
悪臭の中で眠る趣味のない俺は、目を開ける。


( ´_ゝ`) パチッ


(^ω^ )「ぐーてんたーく」


 (  ´_ゝ) (ω^  )


目覚めた瞬間、男友達の顔面どアップがあった場合、
脊髄反射で殴り飛ばしても許されると俺は思うんだ。

416:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:20:23 ID:fCGs63cw0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

417:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:21:10 ID:fCGs63cw0
ベッドから起き上がらずに、周囲を見渡す。
下に落ちてたゴミは、素直に下の布団で腐っていた。


( ´_ゝ`)「それで、何しに来たんだって?」

('A`;)「ここの病院、ゲーム機の持ち込み禁止って聞いたからさ。
    代わりって言っちゃなんだけど、TRPGで遊ぼうと思って」

鞄からずるっと分厚い本を取り出す鬱田。鞄が目に見えてへこむ。

寄りによって、初心者にパラノイア原本とクトゥルフのルルブである。
厚い本と活字に拒否反応がある底辺の眉間に、無言で皺が寄った。

こいつに布教なんてできるわけがないのに、何考えてんだ?

 _, 、_
(´<_` )「これなんなん?」

('A`)「ルールブック」

(´<_`; )「どんなゲームだよ……」

( ^ω^)「斜め読みっつーか流し読みでいいお」

つっても読む訳がない。どうする気なんだ。

418:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:21:57 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「説明してる間、寝てていい?」

('A`)「出来れば兄者にはずっと起きててほしいかな。
    あと、このセッションは録音するつもりなんだ」

( ´_ゝ`)「えっマジ?」

('A`)「うんマジ。俺らならともかく弟者……君、みたいな人って、
    どんなプレイすんのかなって興味湧いて、今後の研究の
    参考資料になればいいと思ってボイレコ用意してきた」

( ´_ゝ`)「こいつでなくても、その辺にいるじゃん」

('A`;)「変に絡まれて金取られたら怖い」

( ´_ゝ`)「それもそうか」

道端にうんこ座りしてる奴らにこんな事を話しかけても、
一笑に伏されてカツアゲに持ち込まれて終わりだろうな。
攻撃できない状態にあるこの獣は、いい研究対象になる。


(´<_` )「参加料貰えるの?」

( ^ω^)「やらねーお」

('A`)「クリアした時用にお菓子は持ってきたけど……」

419:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:22:39 ID:fCGs63cw0
(´<_` )「えーマンドクセ、何かの勉強でもないのに、
      こんな分厚い本とか絶対読む気しねー」

('A`)「あ、読まなくていいよ。概要だけ説明する」

( ^ω^)「電気使わないロープレだと思えばいいお」

(´<_` )「わからん」

('A`)「はいキャラシ」

(´<_` )「なんコレ」

('A`)「はい」

( ´_ゝ`)「ほーい」

先にダイスとシートだけ受け取って、自分のキャラを作成する。
どうせ後から面倒になった奴に絡まれて、時間が押すだろうしな。

大体の説明は、二人に任せてしまおう。
覚える気のない奴に、物を教えるのは酷く疲れる。
ちまちまと横から口を挟みながらダイスを振った。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

420:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:23:31 ID:fCGs63cw0
(´<_` )「ダイスで全部決めるってのだけは分かった」

( ^ω^)「今までの僕の説明は全部どこに消えたんだお」

(´<_` )「この紙にダイス振って出た数字書けばいいんだよな?」

( ^ω^)「それ以外に、何か覚えてないかお?
      特にダイスの出目に関する事で、何か」

( ´_ゝ`)「ゴネ得」

(´<_` )「出目が悪けりゃゴネれば得する」

( ^ω^)「させねぇ、お前ら二人はアグレッシブに殺しに行くお」

(´<_` )「ひでぇ」

( ´_ゝ`)「殺意高めで来るの?」

( ^ω^)「邪神ぶつけてやんお」

(´<_` )「えー倒せねーじゃん」

421:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:24:55 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「あれ、内藤がKP?」

(´<_` )「きーぱー? ゴールキーパー?」

( ^ω^)「本当に話聞いてないおね……TRPGの進行役の事を、
      KP(キーパー)って言うんだお。こんなの相手に毒男が
      強めに出れるわけないし、僕がKP肩代わりしてやるお」

(´<_` )「お前を倒せばいいのか」

( ^ω^)「聞けお」

( ´_ゝ`)「あ、実際そんなに間違ってなくね?」
  _, 、_
( ^ω^)「お?」

( ´_ゝ`)「倒せない敵っつか、強敵が出た時とかは、
      KPにリアル言いくるめとかする訳だしさ」

( ^ω^)「確かに間違ってないお」

( ´_ゝ`)「敵NPCに攻撃宣言するよりKPに精神攻撃したほうが早いし」

( ^ω^)「訂正を要求するお」

(´<_` )「内藤にダイレクトアタックすればいい訳か」

( ^ω^)「やめろ」

422:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:26:16 ID:fCGs63cw0
(´<_` )「結局どうすりゃいいんだよ」

( ´_ゝ`)「だからさー『目の前に鍵の掛かったドアがあります。
      それを開けますか、開けませんか?』っつーのを、
      繰り返して話を進めていくのがこのゲームだっての」

(´<_` )「ドア破るって選択肢は?」

( ´_ゝ`)「できるよ、攻撃技能の何かでダイス降れば」

(´<_` )「へー出来るのか」

( ^ω^)「怪しいと思うNPCをいきなり蹴っ飛ばす事も可能だお。
      味方だった場合はそれ相応のペナルティが来るけどお」

(´<_` )「フォールアウトみたいなモンか」

( ^ω^)「お、言われてみれば」

(´<_` )「スカイリムみたいに結婚も可能?」

( ^ω^)「ホラー物で恋愛フラグは死亡フラグに変わるから、
      その辺はあまり乱立させないで行こうと思ってるお」

( ´_ゝ`)「別によくね? そのフラグをNPCに擦り付ければいいじゃん」

( ^ω^)「清々しい程のクズプレイだお」

423:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:27:45 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「クズくないとこの先生きのこれる気がしない」

( ^ω^)「悪人は制裁するお」

(´<_` )「じゃあヒーローやってみっか」

( ^ω^)「僕は良い人が理不尽に死ぬホラーが好きだお」

(´<_`; )「どっちにしろぶっ殺されんじゃん」

( ´_ゝ`)「なら中堅で、凡人?」

( ^ω^)「一般人はモブとして巻き込み滅殺」

('A`;)「要は殺したいのね」

( ^ω^)「途中でキャラクターシートを一枚も消費しないクトゥルーは、
      ホラーじゃねぇと僕は思ってるお。人死にが起きてこそだお」

( ´_ゝ`)「わあ」

(´<_` )「つか内藤が進行するなら俺ら勝てないし」

424:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:28:50 ID:fCGs63cw0
( ^ω^)「その辺は安心するお。ファンブルしない限り、
      積極的にダメージロールはしない方向で行くお」

( ´_ゝ`)「ああ、ファンブルやったら死を覚悟しろって事か」

(´<_` )「ファンブルって何」

( ´_ゝ`)「……俺に聞いてんの?」

(´<_` )「他に誰がいるんだよ」

( ´_ゝ`)「致命的失敗」

(´<_`# )「はあ!?」

('A`;)「お、弟者君、ファンブルは致命的失敗であってるよ」

(´<_` )「あ、そうなのか」

( ´_ゝ`)「……」

425:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:30:15 ID:fCGs63cw0
( ^ω^)「弟者が話を殆ど聞いてない事が判った今は、
      さっさとこのダイス振ってキャラ作るがいいお。
      このままだと日が暮れても終わりそうにないお」

(´<_` )「わー紙見てもわかんねー」

( ^ω^)「もう出た数を順に書いてけお」

(´<_` )「なんだこのCONとかAPPとかPOWって」

( ^ω^)「振り出しよりも前に戻っただと……」

(´<_` )「STRとかINTはなんとなく力と知識ってわかるけど、
      他んトコ全然わかんね。おい日本語で書いてくれ」

( ´_ゝ`)「また俺?」

(´<_` )「他に誰がやるんだよ」

( ´_ゝ`)「別に……いいけどさ」

紙とペンを受け取って、略称英語の横に訳を書いて行く。

少し高校の頃を思い出した。
向かい合わせに座らされて強制的に勉強させられてる時、
よくしつこく鬱陶しく腹立たしく問題の答えを聞かれたっけ。

426:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:32:36 ID:fCGs63cw0
最初はあいつの益になる事なんてしてやるものかと無視したが、
対面の方で全力で笑わせようとしてきやがって、ウザかったから、
俺が相手のノートやプリントの隅に答えを書いたんだった。

まあ、高校以外では対面の席にすら着かせなかったからな。


( ´_ゝ`)「ほらよ」

(´<_` )「サンキュ」

(^ω^ )「……」

(;´_ゝ`)「んだよ、顔近ぇぞ」

(^ω^ )「や、僕はてっきり、その紙で鼻先をシュッとか、
      そのペンを手にぶっ刺すのかと思ってたから」

('A`;)「発想が怖い」

(´<_` )「兄者だったら鼻先で済まさねーよ。
      ガチで眼球狙って来るぞ、マジで」

( ´_ゝ`)「お前らそんなに実現されたいか」

427:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:34:10 ID:fCGs63cw0
( ^ω^)「ぶっちゃけ、素直に書くとは思ってなかったお」

(´<_` )「ああ俺も」

( ^ω^)「紙が破かれるとか考えないのかお」

(´<_` )「拒否ると思ってた」

( ^ω^)「拒絶のされ方を考えろお」

(´<_` )「なんでそんなこと考えなくちゃいけないんだよ」


('A`)「兄者、この状況に何か一言」

( ´_ゝ`)「んー?」

('A`)「あの二人、その内ぶつかりそうだから」

( ´_ゝ`)「そうなん? じゃあ」

428:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:37:21 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「えぇと、俺としては、今すぐ答えを教えてやったのは、
      小さい頃からの俺の陰湿な企みの積み重ねだよ。
      自分では何一つ考えず、すぐ問題の解答を人に求め、
      面倒な事や嫌な仕事を対人関係に諍いが起きないように
      上手く人に押し付ける事すら覚えず、要領も頭も悪く、
      お先真っ暗な駄目人間街道を突っ走る下半身直結野郎。
      そんなクズになってくれて本当にありがたいよ。弟者」

(゚<_゚  )

(^ω^ )

('A`;)「えっ?」

( ´_ゝ`)「へ?」

(´<_`; )「マジかよ、あの時から妙に優しいと思ったら、
      そんなこと企んでやがったのか……」

(^ω^ )「兄者マックロクロスケだお~」

('A`;)「そういう言葉は望んでなかった……」

( ´_ゝ`)「あっれぇ?」

俺としては口から滑り出た出任せもいいとこだったんだけど、
この状況だと真実になるのか。面白いから訂正はしないが。

429:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:38:45 ID:fCGs63cw0
その後、なんだかんだでキャラ作成終了。
初心者がいるので、今回は取得技能に制限なし。
俺はチビのムキムキで教養のないイケメンになった。

ダイスの女神様によって出た特徴的な数値を抜粋すると、
高いのはSTR(筋力) 17、CON(タフさ) 15、APP(魅力) 17、
低いのがSIZ(体格) 7、EDU(教養) 9、となってしまった。

これはどう見ても戦闘、肉壁要員だな。
ゴミを庇うのは有り得ないから、鬱田しか守らないが。


('A`)「うん、まあ、その」

( ^ω^)「冗談はここまでにして、始めるかお」

( ´_ゝ`)「やっとか」

( ^ω^)「誰の所為だと……あ、兄者の所為ではないおね」

(´<_` )「俺だな」

( ^ω^)「どうせ無駄だから反省は求めないお」

('A`)「誘ったのこっちだしね」

( ^ω^)「もうやりながら覚えて行けばいいお」

430:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:39:55 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「んじゃ、そろそろ録音スタート?」

('A`)「もうしてる」

(;´_ゝ`)「マジで」

( ^ω^)「ああ、僕が殴られて後ろに吹っ飛んだついでに、
      機械にぶつかって衝撃で録音スイッチが入ったお」

(;´_ゝ`)「マジか」


('A`)「シナリオは?」

( ^ω^)「適当に、『悪霊の家』と『もっと食べたい』を合わせるお」

(´<_` )「どういうのだそれ」

( ^ω^)「初めての奴には説明しようがないお」

('A`)「スプラッタホラーな感じだよ」

(´<_` )「クトルーって全部ホラーじゃねーの」

(;'A`)「うーんと……」

( ^ω^)「説明しようがないってばお」

431:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:42:38 ID:fCGs63cw0
( ^ω^)「僕らが来てから、無駄に一時間も過ごしたお!
      もうこうなったら話の展開も急ピッチで行くお!」

( ´_ゝ`)「俺らがついて行ける程度にね」

( ^ω^)「まずは作成した探索者の自己紹介、どうぞだお!」

(´<_` )「誰から?」

( ´_ゝ`)「なら時計回りで俺から」

( ^ω^)「カモンベイベ」

( ´_ゝ`)「チビで脳筋のイケメン。成人。職業はヤの人。
      性格とかロールプレイ面倒だから俺と同じで。
      特技は登攀、組み付き、武道の立ち技系」

('A`)「そういう言い方をするなら、俺は頭デッかちで、
    ガリガリでヒョロくて精神薄弱でブサメンの

( ^ω^)「自虐はそこまでにするお」

('A`)「お前のその言葉、俺に対する慰めでもなんでもなくて、
    純粋に心にダイレクトアタックかましてくれたんですが」

( ^ω^)「おっと、すまんお。続けて続けて」

面白半分で鬱田のダメージロールを1D100で振ったら、
9回くらい連続でショック死できる数字が出た。
これは流石に可哀想だからやめておこう。

432:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:44:24 ID:fCGs63cw0
('A`)「えー……ブサメンです。成人。職業は医者。
    特技は精神分析、応急手当、説得、パンチ」

( ´_ゝ`)「ステータス的に見てヒーラーなのはわかるよ。
      ただ、説得中に拳が一緒に出る未来が見える」

(´<_` )「せっとくかっこぶつり……兄者がよくやってるな」

( ´_ゝ`)「やってやろうか?」

(´<_` )「今はやめろ」

('A`)「ロールプレイは今回やらない方向で行くよ」

( ^ω^)「キャラ付け考えるのって面倒だものね」

( ´_ゝ`)「変に愛着湧かせると、死ねなくなるしな」

( ^ω^)「死ぬの前提で進めるなお」

( ´_ゝ`)「いやいやいや、前にすげぇ面倒な奴がいたじゃん。
      死にたくなくてKPに高圧的になるどころか号泣した奴」

( ^ω^)「ああ、そういや大学でそんな事もあったおね……
      あれはファンブル連発し過ぎてどうしようもなかったお」

433:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:45:30 ID:fCGs63cw0
(´<_` )「全然話についてけねーんだけど」

( ^ω^)「おっと、ごめんお」

(´<_` )「そういやお前ら大学ってどうなったん?」

( ´_ゝ`)「震災来てから休学してたのに糞親父が浮気しやがって、
      離婚や家督相続でゴタゴタしてる間に金の払いが遅れて、
      いつの間にか大学中退してたぜ。本当やってらんねぇ」

( ^ω^)「両親死んだから辞めざるをえなくなったお」

('A`)「俺は休学してから転校……って脱線してる」

( ^ω^)「積もる話は後にして、弟者さっさとどうぞだお」

(´<_` )「うーい、俺は身長が高いガリのイケメンだな。
      大人でアルバイター。お先真っ暗で笑えるーぅ。
      んでもって特技は蹴りと、忍び歩きと……」

( ^ω^)「どうしたお」

(´<_` )「漢字が読めねえ」

( ^ω^)「オイ」

434:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:47:32 ID:fCGs63cw0
(´<_` )「これ何て読むんだ?」

( ´_ゝ`)「何でわざわざ向かいの俺に聞くんだテメェ。
      隣に座ってる鬱田か内藤にでも聞けや」

(´<_` )「うるっせ教えろ」

( ´_ゝ`)δ「跳躍、やーいバーカ」

(´<_` )「それってどういう意味だ」

( ゚A゚)

( ;^ω^) oh...

( ´_ゝ`)δ「俺のハンドサイン? 漢字の意味?」

(´<_` )「そんな指どうでもいい。漢字」

( ´_ゝ`)「お前、分からないのにその技能取ったのか」

(´<_` )「なんか強そうじゃん?」

435:名も無きAAのようです:2013/02/21(木) 20:48:21 ID:fCGs63cw0
( ´_ゝ`)「跳躍ってただのジャンプだぞ」

(´<_` )「えーマジ? 飛ぶだけ?」

( ´_ゝ`)「飛ぶだけ。電気式のゲームじゃねえんだし、
      使おうと思えば好きな所で好きに使えるだろ。
      お前のその頭じゃあ、色々と無理そうだけどな」

(´<_` )「言ってろ」

( ^ω^)「ここだと思った時に跳躍使うって宣言すればいいお」

(´<_` )「だったら跳躍でジャンプしてから蹴りで兄者にライダーキック」

( ^ω^)「いくらなんでも無茶振りし過ぎるのはシカトするお」

(´<_` )「どケチ」


('A`;)「兄者は心配にならないの?」

( ´_ゝ`)「何が」

('A`;)「弟の学力」

( ´_ゝ`)「んなモン、数学の”素数”を”素敵”と読み間違えて、
      前衛的な解答提出してからとっくに見切ってるわ」

445:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:06:41 ID:/T9zBJ7c0
( ;^ω^)「IQの問題は置いといて、シナリオ始めるお」

('A`)「導入はどんな感じ?」

( ^ω^)「やる気のない初心者もいるから、サクッと行くお。
      だからアレンジも大分多くなると先に言っとくお」

(´<_` )「なんか食いたい」

( ^ω^)「始めようとした途端これかお……」

(´<_` )「お見舞いの食い物ぐらい出せコラ」

(;'A`)「じゃあ、クリアした時用の賞品を半分」

ごそごそと鞄を漁って、ラグ○オのロゴがついた箱を取り出す。
へこんでるように見えたのに、どうなってるんだ鬱田の鞄。


(´<_` )「ケーキか」

( ´_ゝ`)「こっちを賞品用に残しといたほうがよくね?」

('A`)「早めに食べないと悪くなるから……」

最初にクリアした時用っつってたのに。まあいいか。

446:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:08:22 ID:/T9zBJ7c0
( ^ω^)「ちゃんと人数分あるお~」

('A`)「好きなの持ってって」

( ^ω^)「調度いいから、導入もおやつ時からにするお」

( ´_ゝ`)「お、いいんじゃない?」

( ^ω^)「えーと、じゃあお」

 【場所は八甲○山の麓にある、寂れた廃屋。
  3人はその近くで三時のおやつを楽しんでいた】

( ^ω^)「で、どうだお?」

( ´_ゝ`)「突っ込み待ちが露骨過ぎるぜ」

('A`)「八○田山雪中行軍でも挑発しに行ってんのか」

(´<_` )「あそこ昼でも見えるって噂あったからスゲー期待して、
      兄者引っ張って行ったのに、観光客しかいなかったぜ」

( ´_ゝ`)「そうだなあ。軍人のコスプレしてる人が普通に写真撮ってたり、
      夏の終わりって季節もあって、山自体は全然怖くなかったな」

(´<_` )「ちげーよそれモノホンじゃねーか俺見てねーよ教えろボケ」

447:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:09:31 ID:/T9zBJ7c0
( ´_ゝ`)「あんなハッキリした幽霊いるかボケ。
      幽霊なら幽霊らしく、素直に霞んでろ」

( ^ω^)「おい脱線した話進めんなお」

( ´_ゝ`)「あ、すまん」

( ^ω^)「では再開」

('A`;)「いやおかしくない? ブーンの話も」

( ^ω^)「どの辺が?」

('A`)「全体的に」

( ^ω^)「アバウトだお」

('A`)「まず人間関係から、次に場所、時間、ケーキ」

( ^ω^)「テンプレだと学生時代からの知り合いだけど、
      それじゃ普通過ぎてつまらんし、どうすっかお」

('A`;)「王道と言う名のテンプレにしとけばいいのに」

448:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:10:23 ID:/T9zBJ7c0
(´<_` )「医者とヤクザとアルバイトの関係か……分かった。
      俺がなんかでヘマやったから山に連れてかれて、
      これから埋められるんだな、医者は実は闇医者と」

( ´_ゝ`)「へー……」

( ^ω^)「中々いいおね。ケーキは最期の晩餐だお。
      食べ終わったら、早速埋めるとするかお」

(´<_` )「やめろ」

( ^ω^)「窒息のダメージロール振れお」

(´<_` )「やめろって」

( ^ω^)「冗談だお」

(´<_`; )「なら俺にダイス渡すなよ」

('A`;)「……」

( ^ω^)「他にないならこのまま進めるお、いいかお?」

449:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:11:32 ID:/T9zBJ7c0
( ´_ゝ`)ノ「ハイハイ俺も考えたぞ! 廃屋で過去に自殺した女がいて、
       その女に喧嘩売る為に3人でこんな場所でケーキ食ってる。
       動機はブチ切れた幽霊が出て来て心霊写真を撮れないか。
       アルバイターは借金してて圧迫から逃れる為、酒に逃げた。
       結果としてアル中になってしまい、彼は病院に通う事になる。
       それを担当する主治医の医者、鬱田。借金取りのヤクザ、俺。
       意気投合してしまったのは、居酒屋でたまたま3人が出会い、
       それぞれの愚痴や不満をダベってる内にいつの間にか悪友化。
       全ての原因は酒。酒に始まり酒に終わる。どうよ俺の話!」
 _, 、_
(´<_` )「はぁあ?」

('A`;)「そっちのほうがどうかと」

( ^ω^)「採用」

(゚<_゚; )「「マジで!?」」(゚A゚;) ( ´_ゝ`)「マジで?」

( ^ω^)「弟者のより、兄者のほうが協力体制を敷きやすいお」

('A`)「そういう理由か、成程」

(´<_` )「えー、いいだろヤクザが脅して従わせるとかで」

( ^ω^)「ンな事にしたら兄者が本気で殺しに来るから、
      クトゥルフじゃなくてパラノイアになっちまうお」

450:名も無きAAのようです:2013/02/24(日) 20:12:50 ID:/T9zBJ7c0
( ´_ゝ`)「大丈夫、殺しはしない」

('A`)「おお」

( ^ω^)「あら意外」

( ´_ゝ`)「肉壁は多いほうがいいもんね」

('A`)「おお……」

( ^ω^)「通常運行だったお」

(´<_` )「こいつがこうじゃなかったら、何か企んでる時か、
      何かが原因で人格ぶっ壊れてる時だけだっつの」

( ^ω^)「それもそれでどうかと思うお」

('A` )「人格崩壊しないと優しくならないのか」

( ´_ゝ`)「なんだその視線」

('A`;)「いや別に」

( #^ω^)「あーもう、進まないから兄者の設定で強引に進めるお」


→後編

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391:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:38:17 ID:/Sp4eqjE0
25.波動ベクトルが行き着く場末感って



最近の、怒涛の見舞い(?)ラッシュも控えめになった。

糞関係の男友達が何故か一人も来ないところを見て、
林檎を剥きつつ一人含み笑いをするのも飽きて来た。

鬱田はこっちから連絡するのもアレなので、
相手からのメール待ち、出方待ちとしている。

しかしあれだ。笑いを堪えているせいで、
林檎が上手く剥けない。ナイフが滑る。


(´<_`# )「お前、それで笑い堪えてるつもりじゃねーよな」

(;*´_ゝ`)「えっふぇ? 何が」

392:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:40:27 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「さっきまで体丸めて腹抱えて床転げ回って、
      死に損ないの虫みてーに痙攣しててさあ」

( ´_ゝ`)「俺そんなに笑ったっけ」

(´<_`; )「笑ったっつの、いきなり何の脈絡もなく」

( ´_ゝ`)「覚えてねえ」

(´<_` )「さっきからそのふじ全然むけてねーだろが、
      なんなの? まだ皮だらけなんですけど?
      仮性包茎ってか真性包茎のレベルだぞ」

( ´_ゝ`)「まずはテメーのを輪切りにすっぞコラ。
      このナイフ慣れないから滑るんだよ」

(´<_` )「林檎むいてくれるってとこまではスゲー……こう、
      感動してたのに、散々じゃねーか、どうしてくれんだ」

( ´_ゝ`)「何がだよ」

(´<_` )「俺のお前への期待だよ」

( ´_ゝ`)「ウジにでも喰わせとけ」

393:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:41:11 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`# )「もういいわ、俺がやる」

( ´_ゝ`)「へいよ」

剥きかけの林檎にナイフをドズッと刺して、クソに手渡す。

顔を見ると、口元が引き攣っていた。
どうせなら手にぶっ刺しときゃよかったな。


(´<_` )「あ……なんか俺、さっきまで麻痺してたわ。
      なんで兄者に普通にナイフ持たせてたんだろ」

( ´_ゝ`)「喧嘩してねえから油断してたんじゃね?」

(´<_` )「それもあるけどそれだけじゃねーよ、まあいいや」

無言で林檎を剥き始めるのを見て、林檎に何か注射しとくべきか、
ナイフの刃の部分に何か塗りつけておくべきだったかと思案する。

クソッタレな何もかもをさっさと終わらせたいんだったら、
林檎を剥くより相手の皮膚でも削いだほうがいいのは判る。

つーか、さっきまでよくある介護風景の真似をしようとしてたんだよね。
病人のいるベッド脇で、林檎を剥いたり、林檎を擂ったりするアレ。

394:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:41:54 ID:/Sp4eqjE0
弟を甲斐甲斐しく世話する心優しい兄を演出しようと、
近くの無人店から一袋4個100円の林檎まで買って、
家からこいつのナイフまで持って来て用意したのにさ。


(´<_`; )「な、なんだよ。そんなに見んじゃねーよ」

( ´_ゝ`)「……いや」

なんで病人が自分で林檎剥いてんだろ。

あのナイフの柄は木製なんだから、どうせなら、
彫刻刀でウンコとでも彫ってやればよかったな。


(´<_` )「なんでずっと手元見てんだよ」

( ´_ゝ`)「いや」

なんだろう。何となく渡しちまった。早計だった。
手元が空いてしまったので携帯を取り出すが、
特にこれといってやる事もやりたい事もない。


(´<_` )「そんな見られるとやりにくいんですけど」

( ´_ゝ`)「いや」

395:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:43:43 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「俺の話聞いてる?」

( ´_ゝ`)「右から左」

(´<_`# )「お前の耳から豆腐が出るのか」

( ´_ゝ`)「はあ?」

(´<_` )「なんだっけ、バカ豆腐とか言う諺……」

( ´_ゝ`)「馬耳東風」

(´<_` )「ばじとうふう?」

( ´_ゝ`)「馬、耳、東、風、な」

(´<_` )「…………」

( ´,_ゝ`) プッ




゙(´<_` ) ショリショリ

( ´_ゝ`)゙ ピッピッ

396:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:45:12 ID:/Sp4eqjE0
5分後。

林檎を丸々一個剥き終えて、そのまま齧り付く猿。
丸かじりするなら、皮を剥いた意味ないんじゃないの。


(´<_` )「あーなんか虚しくなってきた」

( ´_ゝ`)「足吊ってる器具の位置、高くするの手伝おうか?
      そのままだと、ちょっと首には届かないだろ?」

(´<_` )「迷わずぶっ殺そうとすんな」

( ´_ゝ`)「虚しいんだろ? 生きる意味を見出せないんだろ?
      主に俺の精神の為に早く死ねよクソボケカスが」

(´<_` )「なんでここまで罵倒されなきゃいけねーんだよ」

( ´_ゝ`)「テメーの日頃の行いだクズ」

(´<_` )「最近はずっとベッドの上だっつの」

( ´_ゝ`)「ずっとベッドの上にいても俺から変わらず
      こんな扱いを受け続けるってどんな気分?」

(´<_` )「怪我が治ったら倍返し」

( ´_ゝ`)「やっぱ殺してやる」

397:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:45:59 ID:/Sp4eqjE0
ここは個室、手負いの相手に逃げ場はない。
まだ車椅子移動の上に、出入り口は俺の背後だ。
ぶん殴ってやろうと拳を振り上げて立ち上がる、が。


(´<_`; )「なんだよ、やんのか? やんのか?」

( ´_ゝ`)「あー……」

ここで殴ったら、優しい兄(藁)も糞もカスもなくなるな。
いやでも、なんか偉い人が叱る事も優しさだっつってた。
一発だ。一発だけなら許される。一発だけなら誤射になる。


(´<_`; )「俺は怪我人だぞ! 手加減はしろよ!」

手加減は無理だ。どうやったって全力になる。


(#´_ゝ`)「ふぎぎぎ」

(´<_` )「握った拳の隙間から血が見えるんですけど……」

殴りたい気持ちを、拳を握り締めて押さえ込む。
切ってない爪が手の平に刺さったが、これくらい。

398:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:47:05 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`; )「病院でわざわざ怪我してんじゃねーよ!
      もうナースコール押すからな! いいな!」

( ´_ゝ`)「押すんじゃねーよ」

取りあえず、怒りの原因を視界からシャットアウト。

さっきまで目に映っていた景色を頭の中に転写して、
ベッドの上にいた奴を頭の中で落ち着くまで殴り続ける。


(´<_`; )「なんで構えたまま静止してるの?
      力溜めてんの? 怖いんですけど」

( # _ゝ)「あ゙ぁ?」

ヾ(´<_`; )「その手、下ろして。ゆっくり座って、そうそう」

目を瞑ったまま椅子の上で姿勢を正す。

出入口、椅子、ベッド、窓と一直線に並んでいるので、
椅子に座ってると太陽の光がマトモに目に入った。

あー冬の昼の日射しは眩しいな。瞼の上からでもガンガン来る。
これで空気が暖かけりゃ昼寝に最高なんだけどなー。

399:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:48:20 ID:/Sp4eqjE0
そうだ。寝よう。
ベッドなら目の前にあるじゃないか。

布団はベッド下にあるから日に当たる事はないが、
ベッドの上ならさっきからカンカン照りになっている。

昨日、電話で長岡の風俗体験レポートを深夜に3時間報告され、
あんまり睡眠を取れていない。夢も夢精できない悪淫夢を見た。


( ´_ゝ`)「ちょっと端に寄れお前」

(´<_` )「はい?」

すっとぼけている内にナイフを取り上げ、遠くに置く。
天井から吊り下げている邪魔な足を場外に落とす。


(´<_`; )「うお何すんだ!」

靴を脱いでベッドに上がる。布団を奪う。枕も奪う。


(´<_`; )「おま!?」

( ´_ゝ`)「どけ早く」

400:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:49:06 ID:/Sp4eqjE0
同じ場所で寝るくらいなら、今はもう大丈夫だ。多分。

初めての泊まりの日、ギプスで固めた足をガン見しながら、
「こいつは怪我人こいつは怪我人こいつは怪我人こいつは」
と口の中で数百回唱えて強く自己暗示をかけたからな。

途中で、こいつの女友達()らしき奴も見舞いに来たが、
息を飲んだような悲鳴をあげてすぐに逃げ帰って行った。
キチ行為は意外といい修羅場回避手段かもしれない。
お陰でベッド下から針を突き刺そうなんて衝動も我慢できた。

ふとした拍子、無意識の隙間に拳が出ることも少なくなった。
渡そうとした見舞い品を、顔面に投げつける事もなくなった。
あいつの好きな本を目の前で真っ二つにする事もなくなった。

「おかわり」と弟から手渡された椀に飯をよそおうとして、
ナシュラルに足元のゴミ箱に白米をシュートしてしまい、
意味もわからずおかしくなって狂ったように笑っていたら、
いつの間にか精神科の診察室に体が搬送された事も、
あれ以降は、一応、ない。

うん、あれは酷かったな。拘束されるなんて初めての経験。
ベッドにベルトでギッチギチに縛り付けられるなんて経験。

抜く時の想像で空想の女相手にやることは多いが、
まさか現実で自分自身がされる立場になるとは。

思考脱線。

401:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:50:01 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`; )「何する気だ! 何かするのか!?」

( ´_ゝ`)「寝る」

(´<_` )「へ」

( ´_ゝ`)「眠る」

(´<_` )「は?」

( ´_ゝ`)「おやすみ」

ガラス越しとはいえ、冬の刺すような日射しはきつい。
なので、布団を頭まで被って団子虫状態になる。

光は軽減されていい感じだ。
尚、カーテン引けよとの突っ込みは受け付けない。

生ゴミのほうを向けば顔に日が当たることはないが、
そんなのは例え死んでも狂ってもごめん被る。

402:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:52:00 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「何してんの兄者」

( ´_ゝ`)「寝るんだよ」

血で汚れないように、タオルで手を縛る。
最後に、枕に乗せる頭の位置を微調整。
なんか抱くものが欲しいけどここは我慢。

よし、寝よう。


(´<_`; )「やっべぇ、ギプス重っ」

(´<_`; )「ちょ、兄者、ちょっと手ぇ貸し」

(´<_`; )「おち、落ちる、落ち、るっ!」


ドサゴゴッ


背後で、ギプスの重さに耐え切れず何かが落ちる音がした。
ベッド下には布団もあるから、そっちで寝るのも大丈夫だろ。

403:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:52:57 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`# )「そこで寝ていいから手ぇ貸せこのアホウ」
     。
(  _ゝ)゚「下の布団で寝ろよ……」

(´<_`# )「俺のベッドだぞ」
     。
(  _ゝ)゚「病院のだよ……」

(´<_` )「検温の時どーすんだ」
     。
(  _ゝ)゚「今日はもう来ない……」

(´<_` )「マジか。あ、でも午後に毒男が来るってよ」
     。
( ; _ゝ)「……マジ?」

(´<_` )「マジ」

うーんメンドクセェ。
つか、なんで来るんだ。
知らんかった。

404:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:53:39 ID:/Sp4eqjE0
ま、さしたる問題はないな。
ここで寝てりゃ適度に何か勘違いしてくれるかもしれん。

その時、今ベッド下の男として都市伝説化してる奴が、
自力でベッドに戻ってようが戻れていまいが関係ない。

前者なら仲良くなったとアピール出来るかもしれないし、
後者なら今まで通りの仲違いだと思うかもしれない。

寝てても、内藤が付属品で来れば、勝手に起こすだろうしな。


(´<_` )「寝るのか?」

(  _ゝ)「ねる」

日射しで温まった布団がイイ感じだ。

こいつさえ俺の現実からいなくなれば、
この温もりを心から享受できるのになあ。

405:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:54:27 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「はー今年のクリスマスは病院か……」

(  _ゝ)「ざまあ」

(´<_` )「もう俺の女寝取んなよ」

(  _ゝ)「するかボケ」




25.糸冬


拍手

371:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:34:28 ID:yxrgcnaE0
24.恥ずかしいから一緒に風俗行こうぜっ

  _
( ゚∀゚)「な?」

( ´_ゝ`)「は?」
  _
( ゚∀゚)「やっぱ無理?」

(;´_ゝ`)「え、は? いやいやいや」

唐突過ぎて理解が追い付かない。
いや、理解はできるけど頭と口が追い付かない。

見舞いに来たとほざきながら、何でこんな話をしてんだ。
いや、病人にこんな話をしないだけマシなのか?


( ´_ゝ`)「何? つまりどういう事?」
  _
( ゚∀゚)「だからさー……」

372:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:35:15 ID:yxrgcnaE0  _
( ゚∀゚)「風俗に一人で行くのって恥ずかしいじゃん?」

( ´_ゝ`)「はず……恥ずかしいモンだったっけ? 風俗って。
      むしろ友人に見られないよう一人で行くモンじゃね?」
  _
( ゚∀゚)「だからさ、誰か一緒に行ってくれる奴を探してんだよ」

( ´_ゝ`)「俺の話を聞け」
  _
( ゚∀゚)「兄者一緒に行かねぇ?」

( ´_ゝ`)「行かねぇ」
  _
( ゚∀゚)「なんだよもー付き合い悪ぃなー」

( ´_ゝ`)「長岡、お前そんな感じで何人くらい誘った?」
  _
( ゚∀゚)「お前で6人目かな」

( ´_ゝ`)「そこまでの人数に誘いかけといて、全員に断ら
  _
( ゚∀゚)「そうだ! 兄者! お前に童貞の友達いねえ?」

(;´_ゝ`)「話聞けよーもー」

373:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:36:54 ID:yxrgcnaE0
('A`)「おーい兄者、バスまだだから中で待ったら」
  _
( ゚∀゚)

( ´_ゝ`)

('A`;)「ど、う……だ……?」

( ´_ゝ`)「おお鬱田」
  _
( ゚∀゚)「童貞そうな顔だな、誰だ?」

( ´_ゝ`)「初対面でやめろ。鬱田、友人」
  _
( ゚∀゚)「ほほう」

('A`;)「ど、どうも。鬱田 毒男です。よろしく……」
  _
( ゚∀゚)「俺、ジョルジュ 長岡。よろしくな」

( ´_ゝ`)「見舞いに来たって嘘もここまで来ると清々しいな」
  _
( ゚∀゚)「ん?」

( ´_ゝ`)「何でも」

375:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:39:47 ID:yxrgcnaE0  _
( ゚∀゚)「早速だけどさ、童貞捨てに行かね?」

(゚A゚;)「はい?!」

( ´_ゝ`)「おいおい説明しろよ長岡、いきなり過ぎて
      わからなくて目ぇ見開いちまってんじゃん」
  _
( ゚∀゚)「っとさ、俺風俗一緒に行く奴探してんだよね。
     お前一緒に行かね?兄者に断られてさあ」

('A`)「え?」

( ´_ゝ`)「そりゃ断るわ」
  _
( ゚∀゚)「一緒に行こうぜ! 童貞っぽそうだし、
     初セックル記念に俺が奢ってやるよ!」

( ´_ゝ`)「その言い方やめろっての」

376:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:41:29 ID:yxrgcnaE0
('A`)「なんで童貞って見抜かれてんの?」

( ´_ゝ`)「お前の顔立ちで……」


('A`)

(;´_ゝ`)「うわすまん! ほら服装がこじゃれてなくて」


('A`)

(;´_ゝ`)「いやごめん! 鬱田の雰囲気って童貞っぽ」


('A`)

(;´_ゝ`)「これも違う! 未経験っぽい第一印象……」


('A`)

( ;゚_ゝ゚)「うわ駄目だコレ! フォローしようとすればするほど、
      逆にドツボにハマって行く! どうすりゃいいんだ!」

377:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:43:22 ID:yxrgcnaE0
('A`)「兄者のお陰でそろそろ悟りの境地へ行けそうだわ」
  _
( ゚∀゚)「兄者もう喋らなけりゃいいんじゃね?」

( ´_ゝ`)「そうだな」

('A`)「俺の心はもう存分に傷ついた」
  _
( ゚∀゚)「よし、行こうぜ毒男」

('A`)「えっ」
  _
( ゚∀゚)「安心しな、損はさせねぇ」

('A`)「俺が行くのは確定なんですかジョルジュさん」
  _
( ゚∀゚)「当たり前だろ」

('A`)「えっ」

378:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:44:41 ID:yxrgcnaE0
( ´_ゝ`)「鬱田は初めてなんだからお前が先導しろよ。
      こうイリーガルな感じの店に連れてってやれ」
  _
( ゚∀゚)「おうともよ」

('A`)「え? ちょっと、待って」
  _
( ゚∀゚)「さあ初体験だ!」

('A`;)「ちょっ! まっ! 兄者!」

( ´_ゝ`)ノシ
  _
( ゚∀゚)「さっき喋らなけりゃいいっつったからな。
     代わりに手ぇ振って激励してやれよ」

( ´_ゝ`)ノシ

('A`#)「兄者ぁああああああぁぁぁぁ.......」

ダダこねる糞餓鬼を連れてくような光景だ。
実際の立場は性格からして逆だろうに、体格って不憫だな。

379:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:45:37 ID:yxrgcnaE0
( ´_ゝ`)「鬱田……スケープゴートありがとう」

街中へ消えて行く鬱田に敬礼をする。

取りあえず、終わったら店での感想を聞こう。

喜んでいたらそのまま流す。
怒っていたら昼飯でも奢ろう。

うん、そうしとこう。




24.糸冬


拍手

357: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/12(火) 09:17:56 ID:yxrgcnaE0
23.今更裸のビッチが迫って来られてもな


なんてふざけた事を抜かす車椅子のカタワもどきを、
マリアナ海溝に突き落としたい。18Gにしてやりたい。
海の底で深海魚の餌にでもなれば世界の為になる。

車椅子を自分で動かさずに俺に任せている所為で、
会話の際の身振り手振りがデカすぎてうぜえ。
成人してるんだから診察くらい一人で行けよ。


(´<_` )「ティーンの頃なら俺も脱いだかもしれないけど、
      今はさー、無理だわー、ないわー、色々とさー」

( ´_ゝ`)「あの蝿共の修羅場から助けてもらった第一声が、
      それってふざけてんの? もっかい戻されたいの?」

(´<_`; )「サンキュー毒男」

(;'A`)「あ、うん」

358:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:18:41 ID:yxrgcnaE0
(´<_` )「兄者にはあの穴やるよ」

( ´_ゝ`)「白神○地に帰せ」

(´<_` )「何を世界遺産に押し込めようとしてんだ。
      そこはせめて性病検査の産婦人科だろ」

( ´_ゝ`)「自覚ある分タチ悪いわ」

(´<_` )「無自覚ポジのほうが厄介じゃね?」

( ´_ゝ`)「それゲイ用語」

(´<_` )「え」

('A`;)「性病なの?」

(´<_` )「今はなんもねーよ、多分」

('A`)「多分なんだ……」

359:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:19:29 ID:yxrgcnaE0
( ´_ゝ`)「メジャーなところは大体制覇したんじゃない?」

('A`)「兄者は?」

( ´_ゝ`)「やってねーよバカが死にてーのか、車椅子パス」

('A`;)「ご、ごめん。あ、意外と重い」

(´<_` )「今度ドキンちゃんから貰ってきたら移してやるよ」

( ´_ゝ`)「その汚ぇ便器諸共沈めてやろうか」

(´<_` )「俺だけ痒いとか不公平じゃね?」

( ´_ゝ`)「インキンが全身に回ってのた打ち回れ」

(´<_` )「それ痒過ぎて寝れなかったぐらいヤバいやつだぜ?
      全身まで回ったら痒みで発狂して軽く死ねるわ」

( ´_ゝ`)「だから死ねっつってんだよ言わせんな恥ずかしい」

(´<_`# )「全力でお前を道連れにしてやっから」

360:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:20:35 ID:yxrgcnaE0
(;'A`)「性病って、EDになるのもあるから危ないんじゃ」

(´<_` )「どうせ年食ったら自然と勃たなくなるんだし、
      年食ったら女も寄りつかなくなるしさーあ?
      若い内にヤっとくべきだと思うんだよねー」

( ´_ゝ`)「お前のような考えの奴のチンコもいだら、
      世の中の性犯罪は大方無くなりそうだな」

(´<_`# )「テメーのも、もいだろか? あぁ?」

( ´_ゝ`)「問題ねーよ、今んとこする必要なくなってるしぃ」

('A`)「え、え?」

(´<_` )「……それ男としてどうなん?」

( ´_ゝ`)「金と時間と思考の節約」

(´<_` )「理解できねえ」

( ´_ゝ`)「俺も、初めて性病に罹ったからって、笑いながら
      ブツブツだらけになったチンコわざわざ見せに来る
      露出狂の脳ミソは理解できねえわ。腐り落ちろ」

361:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:21:36 ID:yxrgcnaE0
(´<_` )「なんか怪我とかスゲーのやると見せたくなんじゃん」

( ´_ゝ`)「じゃあ今度カンジダやったら抜き身で歩け。
      そのまま道路に出て通報されて塀ん中行け」

(´<_` )「股間の刀見せたら捕まるに決まってんだろ。
      つか知らねー奴に怪我見せても面白くないだろ」

( ´_ゝ`)「じゃあ鬱田か内藤にでも晒しとけ」

('A`;)「へ!?」

(´<_` )「内藤ってあいつか……やだよ。すぐ写メる」

( ´_ゝ`)「なら母さんにでも見せとけ」

(´<_` )「ンな事したらブッ殺されるに決まってるだろ」

(#´_ゝ`)「俺だってブッ殺したかったわ! なんで俺に見せた!」

(´<_` )「あー……近くにいたから?」

(#´_ゝ`)「はぁ?」

(´<_` )「あと移そうと思って」

( ´_ゝ`)「寝てる隙に、尿道にウィダーinゼリー注ぎ込んでやっから」

362:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:22:18 ID:yxrgcnaE0
(´<_` )「なんか性病やるとバラまきたくなるんだよな」

( ´_ゝ`)「頭に梅毒回って死ね」

(´<_` )「HIVバラまいてる奴と同じ気持ちなだけだっつの、
      『この苦しみを見知らぬ他人にも分け与えたい』
      っていうどうしようもない心理なんだよ、分かる?」

( ´_ゝ`)「理解できるから言ってるんだよ。
      その性病抱えてさっさとおっ死ね」

(´<_` )「性病やったチンコで銭湯行くとスゲー楽しいのに」

( ´_ゝ`)「新手のバイオテロじゃねぇか」

(´<_` )「俺が入った後の風呂にお前が入るんなら、
      今度から銭湯とかではテロらねーよ?」

( ´_ゝ`)「今、階段あったよな。突き落としてやろうか?」

(´<_` )「マジキチ、目の焦点が合ってねーぞ」

( ´_ゝ`)「それは本来の『マジでキチガイ染みてるからやめろ』
      って意味で捉えなくてもいいのかな?」

(´<_` )「略されて意味無くしたほうだよ」

363:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:24:02 ID:yxrgcnaE0
(;'A`)「もうちょっと仲良く……」

( ´_ゝ`)「無理」

(´<_` )「仲いいじゃん」

(#´_ゝ`)「は?」

('A`)「即答って…………」

( ´_ゝ`)「あー鬱田、こういう時の言葉に使うオブラート、
      わからないから直に言わせてもらうけどさ」

('A`;)「な、何?」

( ´_ゝ`)「居心地悪いなら帰っていいぜ、
      鬱田もそっちのほうがいいだろ?」

('A`)「え、い、いや」

(´<_` )「バッカだなー兄者、そんな言い方じゃ帰れねーだろ」

( ´_ゝ`)「お前の発言も後押ししてんじゃねーかアホか」

364:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:25:13 ID:yxrgcnaE0
('A`)「うん、もう俺の事は全自動車椅子押し機だと思っていいよ」

(´<_` )「やったな兄者」

( ´_ゝ`)「腹立ったら階段のほうに落としていいよ」

('A`;)「しないよ!」

(´<_` )「ぶちギレた兄者なら障害物が人でも容赦ねーぞ。
      お前ごと落とされる覚悟していたほういいぜ」

( ´_ゝ`)「容赦あるよ」

(´<_` )「女の腹蹴っ飛ばした奴の台詞かそれ?」

( ´_ゝ`)「テメーこそ処理機が妊娠したっつった時に、
      容赦なく腹に拳めり込ませてただろクズが」

(´<_` )「あーあれもう無意識に手が出たんだよ」

('A`)「これがDQNの会話……」

365:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:25:57 ID:yxrgcnaE0
(;´_ゝ`)「おい勘違いだ。刃物持った奴が走って迫って来たらさ、
      そのまま黙って刺されたくないだろ、反撃するだろ?」

('A`)「あ、そういう状況ね」

(´<_` )「俺のほうだって結局腹にガキいなかったし、
      元の家の金目当ての詐欺だったからセーフ」

( ´_ゝ`)「危機感持った詐欺師がお前から逃げてっただけだろ」

(´<_` )「金取れねーと思ったから引いてっただけじゃねーの?」

( ´_ゝ`)「……大正とか江戸時代なら余裕で勘当モンだぜお前」

(´<_` )「自分のキチっぷり自覚しててそれ言ってんの?
      お前こそ座敷牢とか倉に押し込められるレベルだろが」

( ´_ゝ`)「正直お前の顔さえ見なくていいなら押入れの中でもいい」

(´<_` )「だったら毎日見に行ってやんよ」

( ´_ゝ`)「島流しにされろ」

(´<_` )「泳いで戻って来る」

366:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:27:48 ID:yxrgcnaE0
( ´_ゝ`)「北に行け」

(´<_` )「バイク乗って帰って来るわ」

( ´_ゝ`)「下痢便音撒き散らしながらとか公害だ死ね」

(´<_`# )「今ので世界中のライダー全員敵に回したぞ!
      つーかお前もバイセコ乗ってんじゃねーか!」

( ´_ゝ`)「糞が乗ってるのなんてバイクと呼べねーよ。
      せめて下痢便音発生装置で充分だろ?
      走る便器なんて面白い視覚テロないしな」

(´<_` )「俺に対する悪口の発想、もう少し抑えらんない?」

( ´_ゝ`)「は? 無理」

(´<_` )「寝てる間にギプスのほうで踏み潰してやろうか」

('A`;)「診察室着いたよ」

( ´_ゝ`)「おーいつの間に」

367:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:29:05 ID:yxrgcnaE0
(´<_` )「じゃー逝って来るよニーサン」

( ´_ゝ`)「医療ミスで死ね。お前の嫌いなマスゴミは任せろ。
      大丈夫だ、世間からはきちんと隠蔽してやるから」

(´<_` )「ダイニングメッセージでお前の名前を血文字で遺す」

('A`)「ダイニング?」

( ´_ゝ`)「ダイイングだよバーカ」

(´<_` )「死んだら毎日枕元で俺の誕生日囁いてやるよ」

自分でもなんでかわからんが、頭の奥にカチンときた。
ただ目の前の憎い奴が負傷していると言う事実が、
少しだけいつも感じる怒りを軽減してくれる。

368:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:30:17 ID:yxrgcnaE0
(#´_ゝ`)「……」

(´<_` )「兄者?」

軽減するだけであって、消えるわけじゃない。


(#´_ゝ`)「俺の誕生日じゃねーか、意味わかんねーよ。
      死ね、そのまま死ね、死んで病院を徘徊しろ」

(´<_`; )「イッテ! いってぇ! 蹴るな!」

(゚A゚;)「車椅子壊れる! 車いしゅこわれりゅって!」

( ´_ゝ`)「ふへっ」

(´<_`; )「おま、ギプスじゃねーほう重点的に蹴りやがって」

('A`;)「噛んだ……」

369:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:31:44 ID:yxrgcnaE0
(´<_` )「今度その辺のビッチが孕んだって言って来たら」

( ´_ゝ`)「お祝いにこんにゃくゼリー送りつけてやんよ」

(´<_` )「続き聞けカス、産ませて兄者に全部擦り付けてやる」

( ´_ゝ`)「ンな事してみろ。そんなクッセェ中古は山にでも捨てて、
      ガキは赤ちゃんポストにダンクシュート決めてやるよ」

(´<_`* )「クズ過ぎる! エキサイティン!」

('A`)「バトルドーム……」

( ´_ゝ`)「なんでテンション上がってんの?」

|゚ノ ^∀^)「はーい診察室に入りますよー」

(´<_` )「はーい」

( ´_ゝ`)「え? さっきのは何だったの?」

('A`;)「さ、さあ……」

370:名も無きAAのようです:2013/02/12(火) 09:32:25 ID:yxrgcnaE0
( ´_ゝ`)「……」

('A`)「……」

( ´_ゝ`)「……ああ、毒男。悪い事したな。
      その辺の飯屋で昼飯奢ってやるよ」

('A`)「誠意が感じられない」

( ´_ゝ`)「具体的に何がどう悪いのか全然判らん上に、
      あーいう時のフォローの仕方分からんからな」

('A`)「フォローに関しては俺もわからん、ココスで」

( ´_ゝ`)「はいよ」




23.糸冬

拍手

323: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:48:57 ID:8zvTfRZs0
22.そして二人だけに


茶柱が沈んだような病院の閑散とした休憩所で、
見慣れた後ろ姿を見つけたので声をかける。


( ´_ゝ`)「鬱田、またここに来たのか」

('A`;)「その言葉そのまま返すっての、お前こそ」

( ´_ゝ`)「あいつ苦手なんだろ? よく来たなって意味」

('A`)「自分の発言が全部ブーメランになってる事に気付け」

( ´_ゝ`)「あー……」

('A`)「やっぱ弟が心配なのか?」

( ´_ゝ`)「へ?」

('A`)「俺はカーチャンに頼まれて病院に来てるけど、
    兄者は自主的に来てるように見えるし……」

324: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:49:40 ID:8zvTfRZs0
さて、どう答えよう。YESかNOか。
嘘でも心配してるだなんてまだ吐きたくない。鳥肌が立つ。

しかし鬱田よ、俺があいつをぶち殺せる寸前まで行った騒動に、
何回か強制的に参加させられたってのに、この言い草。

やっぱ鬱田の中では、家族ってのが何を置いても優先される者なのか。
例え、性犯罪を犯して相手の人生をぶち壊しても家族は守るべきものだと、
相手を非難しても守るものと、そんな感じで思っていたりするんだろうか?

それとも、やっぱり兄弟がいないから、父がいないから、
法的にはともかく直接血の繋がった家族がいないから、
双子である俺に何らかの幻想を抱いたりしてるんだろうか?


('A`)「兄者?」

( ´_ゝ`)「あ、すまん。考えてた」

('A`;)「即答できないか」

( ´_ゝ`)「そうだな、無理だ。っつーかな」

('A`)「ん?」

325: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:50:33 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「お前が俺の立場だったら、あいつ許せるの?」

('A`;)「許せねえだろうけどさあ……」

( ´_ゝ`)「内藤は金玉捻り潰すっつってたぞ」

('A`;)「怖いこと言うなよ」

(;´_ゝ`)「内藤が言ったんだってば」

('A`)「ああ、うん、まあ、言うだろうな」

( ´_ゝ`)「もしお前があいつから俺のような事受けたら、
      その時どうする? 出来るだけ具体的に」

('A`)「お前みたいな事って?」

( ´_ゝ`)「うーんとな、それじゃあ」

実際にあった出来事でも話すか。

結構長くなりそうだったので、その辺の席に座らせた。

326: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:51:14 ID:8zvTfRZs0


高校三年、新設校だからピンキリ揃いの生徒に先生。
そこでのバイトは、親と教師の両方から許可が降りなきゃ駄目だった。

流石に、教師へのバイト許可を取る説明で『家の家計が苦しくて』、
なんてバッレバレな嘘は言えず、素直に小遣いが欲しくてと言った。
受験も近いし、今の状態の成績を維持する事を条件に、許可は降りた。
糞親父へは、自分で稼いだ金が欲しくて、と説明し軽く『おk』が出た。

ただ、働く場所は選ばせてもらえず、遠い親戚の造園所を手伝う事に。
コンビニなんかの接客業は自信がなかったから、そこでいいと決めた。


造園所で虫に刺されたり、虫を捕まえたり、虫をいじめたりしつつ、
ジャージで土と汗まみれになって仕事する。やりがいはあった。
動物アレルギーは酷いが、生き物は好きだったしな。鼬も狸もいた。

そこにいた雇い主のじいさんも懐が広いと言うか、良い人だった。
俺がうっかり逃げる鼠に気を取られて、追っかけまわしてスッ転んで、
鼠に遊ばれていた時も笑って見ていた。思い切り仕事中だったのにな。

枝切り鋏で腕を切った時も、病院まで連れてってくれた。
もしかしたら家からの圧力があったのかもしれないけど、
俺はその行いを優しいと思ったよ。面倒だったろうに。

327: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:54:54 ID:8zvTfRZs0
で、給料日。

その日は休日で、バイトもなくて、受け取りに行くだけの予定だった。

それで、軽く受け取りに来たといったら、驚いた顔されたよ。
それから眉間に皺を寄せて、『もう給料は渡した』なんてな。

訳がわからなくて説明を求めたら、向こうも様子がおかしい。

俺が来る前日に、何故か俺(?)が珍しく制服でここに来た事、
話がおかしかった事、じいさんを雇い主だとわからなかった事。

そんなに様子がおかしいなら金なんか渡すなよ、と、
目の前のじいさんに今更怒っても仕方ない。

犯人はもうわかっていたので、『弟が迷惑をかけました』
と頭を下げて、じいさんへの評価も下げて、そこを後にした。

328: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:55:36 ID:8zvTfRZs0
家に帰って、いたいけな老人を騙した詐欺師から
金を取り返そうとしたら、もう既に使ったとの事。


( ´_ゝ`)「で、鬱田はどうする?」

('A`;)「えぇえ~……」

( ´_ゝ`)「俺は真正面から喧嘩売ったよ」

('A`)「俺なら……諦めるかな……」

( ´_ゝ`)「マジ?」

('A`)「弟者に勝てそうにない」

( ´_ゝ`)「自分と同じ体格の奴なら?」

('A`)「カーチャンに言いつけて二人で抑え込む」

(;´_ゝ`)「そう来るか」

それはちょっと予想外だ。
可能性としてはあったけど。

329: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:56:30 ID:8zvTfRZs0
('A`)「お前は、その後どうしたんだ?」

( ´_ゝ`)「喧嘩が見つかって糞親父にボコられたよ」

('A`;)「容赦ねーな」

( ´_ゝ`)「なんで昔はあんなの尊敬してたのか謎」

('A`)「金は返ってきたのか?」

( ´_ゝ`)「どう言やいいんだろうなー、そこんとこ」

('A`)「?」

( ´_ゝ`)「えっとな」

330: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:57:30 ID:8zvTfRZs0
返って来たには来たが、俺の金じゃあない。
しかも、渡された状況が状況だ。


暴れて手がつけられないからって、縄でぐるぐる巻きにされ、
身動きとれない状態のまま秋の土倉で一晩放置された。
向こうはすぐ拳を収めたからと、普通に家の中。納得いかねえ。

飯抜きは割とあったので耐えれたが、水抜きは辛い。
身動きはとれないから、服に排泄物垂れ流しだしな。

それで精神的にも肉体的にも疲弊した状態で、朝になった。

父が扉を開き、やっと解放してくれるのかと思いきや、
ポケットに手を突っ込み、目の前に札束を投げられた。

『給料はないが、倍の小遣いやるからこれで我慢しろ』、と。

331: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:58:12 ID:8zvTfRZs0
商才はあるけど、クズだって言われてる親父の本性が判った。

俺の頭がおかしいのは遺伝の可能性もあるって聞いたけど、
多分、いや確実に糞親父からの遺伝子だぜ、これマジで。
人の気持ちを考えられないって部分、絶対そうだって。

嘘でもいいから、『取り返した』っつってほしかったよ。

”自分の力で稼いだ初めての給料”が欲しいんであって、
あんな剥き出しの札束が欲しいわけじゃあなかったんだよ。

しかも、あの泥棒は俺が代わりにボコったから許せと。
許せるワケねーよ。自分の手でぶちのめしたいんだよ。
自分の肌で相手の体温を感じる距離で殴り抜きたいんだよ。

結局、その日はまだ俺が暴れる気があるからって、
札束を目の前に置かれたまま丸一日放置されたな。

飯は、あの泥棒が笑いながら窓から投げ込んだ。
地面は土だから普通に汚れるし、椀はひっくり返るし、
食わせる気なんかゼロだよ。普通に嫌がらせだろうな。

殺意だって湧くさ。むしろ殺意以外の何を抱けと。
悔しくて悔しくて、何かが臨界点突破して涙が出たよ。

高校生の時に泣いたのは、あの一回きりだった。

332: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:59:00 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「こんな感じですな」

('A`;)「壮絶だなあ」

( ´_ゝ`)「そうか?」

('A`)「その代わりの小遣いって、いくらだったんだ?」

( ´_ゝ`)「40万くらいだったかなー」

゙(゚A゚ )

( ´_ゝ`)「あんな金、貯めとくのも取られるのも嫌だったから、
      休みの日使ってバイクの免許取りに全部使ったよ」

('A`;)「あ、そ、そう」

( ´_ゝ`)「うん」

('A`)「……」

( ´_ゝ`)「……」

沈黙。喋って喉も渇いたし、鬱田にジュースでも奢るべきか。

333: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:59:42 ID:8zvTfRZs0
('A`)「そういやさ」

( ´_ゝ`)「何?」

('A`)「キレるかもしんないけど、いい?」

( ´_ゝ`)「最近、割と沸点高くなったぜ」

('A`)「チラッと聞いたんだけどさ、お前ら、高校の時は、
    なんか、それなりに、仲良くて、共闘してたって」

( ´_ゝ`)「………………………………ああ」

('A`;)「間が長ぇ」

( ´_ゝ`)「いやあ、うん。さっき話した事が起きるまでは、それなりに」

('A`)「それなりか」

( ´_ゝ`)「嫌がらせっつーか、喧嘩はしなかったから、多分だけども、
      仲は良かったぜ。ただ一緒にいただけ、とも言えるけどな」

('A`)「うーん」

334: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:00:42 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「一緒にいじめっこボコしたのは共闘に入るかもしんねーけど」

('A`)「いじめっこ?」

( ´_ゝ`)「なんか双子ってだけで因縁つけてくる奴らがいたんだよなー」

('A`)「嘘吐け、お前ら逆にいじめる側だろ」

( ´_ゝ`)「鬱田、俺はお前にジュースを奢ろうと思って”いた”んだ」

('A`)「人生色々あるよね!」

(;´_ゝ`)「素直だな。嘘吐きよりはいいが」

('A`)「いちごオレキボンヌ」

( ´_ゝ`)「はいはい死語死語」

('A`)「まだ一部の板で生きてる」

335: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:01:42 ID:8zvTfRZs0
鬱田の所望したいちごオレと、俺が飲む用に適当な水を買う。

紙パックのいちごオレって、匂い嗅いだだけで吐気がするくらい甘いよな。
飲むと昇ってきた臭いで鼻が痒くなるし、とても飲めたモンじゃない。
甘いモノ平気な奴って、舌とか鼻とかどうなってんだろ。


( ´_ゝ`)「はーい、いちごオレ」

('A`)「兄者は水かよ、どうせなら味ついてるの買えよ」

( ´_ゝ`)「いいじゃねーか俺の金なんだし」

('A`)「なんだったっけ、その自販機使った心理テストみたいなの、
    どっかであったなあ……なんとか診断て言うの。なんだっけ」

( ´_ゝ`)「いや知らねぇよ」

紙パックにストローを差し、一息でズゴォと飲み干す鬱田。
ダイ○ンもびくっりの吸引力だ。内藤には負けるが。

336: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:02:28 ID:8zvTfRZs0
('A`)「でも、お前らがいじめられっこって考えらんね、特に弟者」

( ´_ゝ`)「まあ、正面からいじめっこが喧嘩売ってきたら買ってたから、
      殴り合いで一方的にやられっぱなしってのはなかったな」

('A`)「それただの不良の喧嘩の間違いじゃ」

( ´_ゝ`)「下駄箱に犬の糞、ロッカーに悪戯、サドル盗難。
      あと主に男子が聞こえるか聞こえないかのヒソヒソ。
      そういう手が届かんとこはどうにもならなかった」

('A`)「ああ、いじめだわ、つーか男子からなのな」

( ´_ゝ`)「そう、だから主に殴り合いが多かった」

('A`)「殴り合いとか俺には無理だわ」

( ´_ゝ`)「んー、お前の病気って特殊なんだろ?」

('A`)「特殊……あんまり見ない病気ではあるな」

( ´_ゝ`)「敗血症、だったっけ」

337: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:03:49 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「説明すれば、学校とかPTAとか教育委員会が、
      全力でいじめから庇ってくれそうな案件だけど」

('A`)「その診断降りたの、高校になってから」

( ´_ゝ`)「小中は?」

('A`)「体育教師にヒョロガリチビだからっていじめられた。
    皆の前で、一人で体育館一周とか、グラウンド一周とか」

( ´_ゝ`)「うっわぁ」

('A`)「俺の体、運動したって逆に症状悪化するだけだってのに、
    ヒョロガリなのは運動しないからだって言われたぜ」

( ´_ゝ`)「その時に敗血症って判ってれば訴えれたのにな」

('A`)「もう遅ーよ」

( ´_ゝ`)「そいつが死んだ時に御祝儀くれてやろうぜ」

('A`;)「やり過ぎじゃね?」

( ´_ゝ`)「俺からしてみれば鬱田が何もしなさ過ぎ」

('A`)「そ、か…………」

338: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:05:36 ID:8zvTfRZs0
ん? 今の空気は沈んでるんだろうか。
この状況。明るくすべきか。

いやでも、たまには暗い部分吐き出さないとな、ストレスになる。
鬱田の口が真一文字になってるから、こっちから話題振るか。


( ´_ゝ`)「そーいや、鬱田はこれ知ってる?
      内藤も実はいじめられっこだったんだぜ」

(゚A゚;)「マジで!?」

おっと、予想外の食い付きようだ。

339: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:06:36 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「マジマジ、中学生の時は本当のデブだったから、
      主に体の事バカにされていじめられてたよ」

('A`)「小学生は?」

( ´_ゝ`)「ずっと全部同じ学校だったけど、実は小学生の時は
      一言も会話したことなかったから、そこんとこわからん」

('A`)「そうか……うん、小中高といじめられてるのは俺だけか」

( ´_ゝ`)「全員にいじめられ経験があるんだから気にすんなよ」

('A`;)「いじめられ経験ってなあ」

340: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:07:18 ID:8zvTfRZs0
('A`)「にしても、兄者はどんな事されたんだよ」

( ´_ゝ`)「さっきのと、カツアゲ、未遂と、リンチ、未遂、パシリ未遂。
      あと万引きの濡れ衣未遂と、黒板消し背中に当てられたり」

('A`)「ほぼ未遂ばっかじゃねーか」

( ´_ゝ`)「よく俺らに懲りもせず突っかかってきたいじめっこがさ、
      体がデカいだけの頭足りないバカだったんだよねー」

('A`)「体デカい時点で俺は無理」

( ´_ゝ`)「しかもそいつ、廊下や教室でトイレブラシ振り回すんだぜ。
      ブラシの水滴がそこかしこに飛び散って、汚ぇわ汚ぇわ。
      休憩所の机は全部ひっくり返すし、全員に嫌われてたよ」

('A`)「うわぁ、先生はそれ見て何も言わねーの?」

( ´_ゝ`)「怖い先生の前では、何もやらなかったな」

('A`)「クズい」

341: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:08:02 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「周りにいた取り巻きも、そいつがいない時は、
      『あいつマジきたねー』って言って笑ってたし」

('A`)「どっちにしろ近寄りたくねえ」

( ´_ゝ`)「俺だってそうだったよ。女子って不潔な奴を嫌がるから、
      女子グループの陰口はあいつの独占市場状態だったな」

('A`)「独壇場」

( ´_ゝ`)「そうとも言う」

('A`)「つーか男子も嫌だろ」

( ´_ゝ`)「だろうな。取り巻きは、あいつの奇行見たくて、
      近くで見える場所にいただけかもしれんね」

('A`)「そいつの鈍さがスゲー」

( ´_ゝ`)「自分を中心に世界が動いてると思ってる時は、
      周りが自分をどう見てるかなんて気にしないさ」

('A`)「……経験者は語る?」

(  ´_ゝ)「気付いた瞬間、夢から覚めたような気分だったなあ」

342: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:09:06 ID:8zvTfRZs0
('A`;)「こうして話してると、お前も全然そうとはわからんぜ。
    ネットでよく言われてるようには見えないから大丈夫」

( ´_ゝ`)「……ん?」

('A`)「ど、どうした?」

( ´_ゝ`)「俺、今、慰められてるの?」

('A`)「わからんのか……」

(;´_ゝ`)「すまん、前後が読めないとどうにも」

('A`;)「いや、気にせんでくれ、そうか、こういうのか」

( ´_ゝ`)ノ「冗談は一応理解できるよ! 自分視点で少しだけな!
      似てる冗談を言われた経験がなかったり、知らなかったり、
      脈絡なく言われると全く理解できずに正面からツッコムけど!」

('A`;)「あんまり病院で声をあげるなよ! 視線が集まるだろ!」

(  ´_ゝ)「誰もいないよ?」

343: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:10:01 ID:8zvTfRZs0
('A` )彡

ミ( 'A`)

('A`)「本当に誰もいねえ……」

( ´_ゝ`)「鬱田の声がぼそぼそして聞き取りにくかったのって、
      周りに人がいると思って意識的に抑えてたからか?」

('A`)「そういう訳でもないけど、それでいいや。
    さっき兄者が話してたやつの続きしようぜ」

( ´_ゝ`)「いじめの話ね」

('A`;)「やめろよ! 俺達がいじめてたみたいにも聞こえるだろ!」

( ´_ゝ`)「何をどうしたって鬱田はいじめられっこにしか見えないから、
      そこんとこは安心しとけよ。胸を張っていいんだぜ」

('A`)「え? 俺フォローされてるの?」

( ´_ゝ`)「うん」

('A`)「無自覚の悪意が辛い」

(;´_ゝ`)「貶してるつもりはないんだけど……いいや」

344: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:11:19 ID:8zvTfRZs0
気を取り直して、話を再開。


( ´_ゝ`)「さっきの話、体がデカいだけのバカって奴。
      そいつだけ卒業までしぶとく突っかかってきてたよ。
      もういじめの対象変わってたのに、飽きずにずっと」

('A`)「弟者にも、か?」

( ´_ゝ`)「だな。便器の水かけられたっつって、すげえキレてた時あった」

('A`)「その時はどうしたんだ?」

( ´_ゝ`)「帰りに二人でボコった」

('A`)「詳細を」

( ´_ゝ`)「そいつの帰り道に草藪があったから、そこに二人で隠れた。
      んで、自転車で通りかかったから弟が自転車の前に出て、
      相手が減速した隙に俺が蹴り倒した。あとはフルボッコ」

('A`)「わあ……」

345: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:12:10 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「それから自転車パクって、二人乗りでゲーセンある街まで行って、
      ゲーセンの前に鍵かけないで乗り捨ててきた。帰りはタクシー」

('A`)「どっちがいじめっこだよ」

( ´_ゝ`)「先に因縁つけて、言い返したら殴りかかってきたのは向こうだ。
      やり返して何が悪い。反撃を予想しないアホが悪いんだよ」

('A`)「反撃ねえ、俺も筋肉あればなあ」

( ´_ゝ`)「言うだけ言ってみるのもアリだよ」

('A`;)「勇気が」

( ´_ゝ`)「よく、抵抗したら更にいじめが激しくなるとか聞くが、
      無抵抗なら無抵抗で、『こいつなら何してもいい』
      って思うからな。やっても変わらんかもしれんけど」

('A`)「なんかさあ、そういう時だけいいよなあ。双子。
    二人でいじめっこに立ち向かったんだろ?」

(;´_ゝ`)「そんな綺麗な言葉では収まらねえなあ。
      二人の時点で2対1の物量作戦できるから」

('A`)「え?」

346: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:12:52 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「登校初日で因縁つけてきた奴らにさー」

('A`)「初日からいじめとかやってられない高校だな」

( ´_ゝ`)「一週間くらいはいじめのターゲット探しみたいなモンなのにな」

('A`)「それはそれで嫌だ」

( ´_ゝ`)「救いは無ぇよ? そいつら次の日から一人ずつ呼び出して、
      教師の目の届かないとこで二人でボッコボコにした。
      呼び出しに応じない奴は帰り道で待ち伏せした」

('A`)「不良じゃねーか」

( ´_ゝ`)「ちゃんと最初は話し合いしましたよ? やめろって」

('A`;)「うん、まあ、いじめって言葉では治まらないよね……」

( ´_ゝ`)「教師に言い付けても体罰禁止の時代に
      入っちゃってたから無意味だったなー」

('A`)「その時代で、何もしてないのに教師にぶっ飛ばされた」

( ´_ゝ`)「そこは復讐できるんだとポジティブに考えようぜ。
      あいつの車のバンパー壊す理由ができた、とか」

('A`;)「俺そんな不良思考じゃないから!」

347: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:14:03 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「不良じゃねーよ俺は成績優良児だよ」

('A`;)「俺だって成績はなんとか上位キープしてたよ! つか、
    そういう意味じゃなくて、すぐに暴力に走るっていうその考えが

( ´_ゝ`)「聞きたくなーい」

('A`)「ちょっと聞けって」

( ´_ゝ`)「何もしなくても殴られた家庭で、どう暴力を覚えるなと」

('A`;)「うーん……それは難しいな」


ピーンポーンパーンポーン


( ´_ゝ`)「「!!」」('A` )


業務連絡、業務連絡、コード・ホワイト、3階ナースステーション

348: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:15:44 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「……」

('A`)「3階、叔父さんいる階じゃないな」

( ´_ゝ`)「よかったね」

('A`)「でも弟者いなかったっけ?」

( ´_ゝ`)「……いたっけ?」

('A`)「いたよね」

( ´_ゝ`)「気の所為じゃないかなあ」

('A`)「間違いないよね」

( ´_ゝ`)「鬱田の記憶違いだったりして」

( 'A`)ロ「カーチャンのメモにちゃんと3階ってあるな」

(;´_ゝ`)「お前のカーチャンがミスったんじゃね?」

('A`)「いや、前はこれ見てちゃんと辿り着いたから」

349: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:16:53 ID:8zvTfRZs0
('A`)「ちょっと行こうぜ」

( ´_ゝ`)「やだ」

('A`)「なんで」

( ´_ゝ`)「面倒」

('A`)「おい」

( ´_ゝ`)「むしろ何故行かなければならないのか知りたい」

('A`)「心配じゃないのか?」

( ´_ゝ`)「死んでほし……」


Σ(;´_ゝ`) ハッ


いやいやいや、待て待て俺。

脊髄反射会話が長引いたから、すっかり考えなくなってた。
ここで肯定してどうすんだ。いやでも否定するのもアレだし。

350: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:17:56 ID:8zvTfRZs0
(;´_ゝ`)「くっ、……あるない?」

('A`)「迷いはわかった」

(;´_ゝ`)「ぐ」

('A`)「迷ってるくらいなら行こうぜ」

( ´_ゝ`)「やだよ」

('A`)「弟者が死んでるかもしれんよ?」

( ´_ゝ`)「死んでる感覚がしない」

('A`)「生死の境を彷徨ってるかもしれないぜ」

(*´_ゝ`)「あっ! それもそうか!」

もし死にかけていたら、蹴りでもお見舞いしてやろう!
諸々の責任は死にかけるまで追い詰めた奴にやればいい。

まあ、生死の境にいる感じも受けないんだがね。一応ね。

351: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:20:16 ID:8zvTfRZs0
('A`;)「えー、そこでそんな喜色満面で立ち上がんの?」

( ´_ゝ`)「何か?」

('A`)「俺としては『死んでるかもしれないよ、心配じゃないの?』
    って言うニュアンスを込めたつもりだったんだけどさあ」

( ´_ゝ`)「基本的に言葉通りに受け止めるよ」

('A`)「そうだった……」

( ´_ゝ`)「行こうぜ」

('A`)「結果オーライだけど腑に落ちねえ」

352: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:21:16 ID:8zvTfRZs0
そして行った先では、二人の見舞い客らしい女のキャットファイト。
しかし、髪の毛振り乱して、般若のような形相で叫ぶ様子は、
可愛らしい猫に例えれたモンじゃない。良くて妖怪の山姥だ。


( ´_ゝ`)「おい鬱田、帰ろうぜ」

('A`;)「いやいや、こんな事になっちゃってるなら、
    やっぱ弟者の無事を確認したほうが……」

( ´_ゝ`)「無理、俺は逃げる。人違いで刺されるのは嫌だ」

('A`)「おいおい」

( ´_ゝ`)「じゃな」

('A`;)「俺も置いてくなよ!」

鬱田の足音の後ろに、車輪が回る音がするのは気のせいだ。
うん、気のせいに決まってる。悪夢の幻聴か何かだな。




22.糸冬


拍手

308:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:23:44 ID:o0svLa/s0
21.不健全な精神に健康なだけの体


ζ(゚Д゚;ζ

(゚<_゚; )

( ;゚_ゝ゚)

病室のドアを開けたら、雪に反射した白い光を浴びて、
真昼間から交尾をしている毛皮のない動物がいた。

具体的には、腐ったバナナを露出している半裸の男と、
鼻が痛くなるぐらいの香水を振り撒いている全裸の女。

いきなり過ぎて思考が追い付かない。眼を逸らせない。

長岡からクソへと渡すように言われた見舞いの漫画が、
ソ○ル○ーターが両手からドサドサと床に落ちる。

310:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:25:10 ID:o0svLa/s0
咄嗟の行動って制御できないよね。
気付いたら口が勝手に動いていた。


(´<_`; )「ちょっ、兄者ドア閉めれ!」

ζ(゚Д゚;ζ「ぁゎゎゎ」

( ;゚_ゝ゚)「ちっ……」




( ;゚_ゝ゚)「  __|__
        |ノ┬ _  _/__       -┼-   |^7
       冫| -十-| |   /  ノ     十 ,-┼/-、 |/
       ノ ノ ヽ|__|   >く だぁあ (ル') ヽ_レ ノ ○ 」




(´<_`; )「ちょっ!?」

ζ(;Д;ilζ「ぁゎゎゎ」

311:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:26:54 ID:o0svLa/s0
ソドム在住のアダムとイヴに背を向けて、病室を飛び出す。


(;´_ゝ`)「看護師さん! 看護婦さん! ナースさん!
      病室に! この部屋に裸の女が!!」

|゚ノ;^∀^)「え? えぇっ!?」

(;´_ゝ`)「マッパの甘クッサい女が部屋にいたんです!
      なんか足折ってる弟も下脱いでたんです!」

|゚ノ;^∀^)「お、落ち着いて、落ち着いてね?」

(;´_ゝ`)「どうしましょうこういうハレンチな時もコードホワイトですか!?
      それとも表に出てないだけでコードピンクがあるんですか!?」

|゚ノ;^∀^)「コードピンク?!」

( ;_ゝ;)「汚れたシーツの洗濯代ってこっち持ちなんでしょうか!?
      あの女の裸うっかり見た自分は訴えられるんでしょうか?」

|゚ノ ^∀^)「部屋を確認させてね」

(;´_ゝ`)「はい」

312:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:27:51 ID:o0svLa/s0

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※コードホワイト

病院内で主に暴力が振われた時に使われる放送

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

313:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:29:09 ID:o0svLa/s0
あの看護師さんが突入後、猿の断末魔が聞こえたかと思いきや、
全裸の女が服を抱えて部屋を飛び出し、そのままトイレに駆け込んだ。

どうやら鍵をかけて閉じこもったらしいが、その後から人が来るわ来るわ。
もうトイレから出られないんじゃないの? ってくらいに人が集まる。
流石に、病人の野次馬は看護師さん達により蹴散らされたが。


(´<_`; )「外、どうなってる?」

( ´_ゝ`)「糞野郎とクソビッチの化学反応で面倒な事になってんぜ」

(´<_`; )「うわあ……どうしよう……終わった……」

( ´_ゝ`)「お前、多分男性ホルモン強過ぎるから性欲旺盛なんだよ。
      病院にいるんだし、いっそここで女性ホルモン打って貰えや」

(´<_`; )「嫌に決まってるだろ! オカマになったらどうすんだ!」

( ´_ゝ`)「一部のジェンダーが突撃してきそうな発言だな」

(´<_` )「はぁーあ、兄者は若いのにマジ枯れてっからなー。
      その年で女の裸見ても無反応って、EDなんじゃねーの?」

( ´_ゝ`)「ああ、そういや震災起きてから一回も勃起してねーな」

314:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:30:14 ID:o0svLa/s0
(゚<_゚  )

(;´_ゝ`)「なんだその顔」

(゚<_゚; )「大問題じゃねーか! お前何やってんだよ!
      さっさとひつにょうきか行って来いよ!」

( ´_ゝ`)「は? ひつにょうきか?」

(゚<_゚ # )「ちんこ見てもらうとこだよ!」

( ´_ゝ`)「ああ……泌尿器科?」

(゚<_゚  )「へ?」

( ´_ゝ`)「泌尿器科な」

(´<_` )「マジ?」

( ´_ゝ`)9m「ふっへ、ばーかwwwww死ねカスwwwwwww」

(´<_` )「もう隣のクリニックの精神科行けや」

315:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:31:14 ID:o0svLa/s0
そして母親のカウンセリングついでに、俺も精神科の診察を受けた。

震災直後から一回も勃起してない事を簡潔に伝えると、
先生から心因性の勃起不全との診断を受ける。

いつもの安定剤に加えて、何やらビンビンになりそうな薬を数種。
診察受ける前に、その辺の薬局で精力剤を買うべきだったな。


弟はその間、病院からの呼び出しを受けた我が母のヒスを
まともに喰らってた。主に股間と耳のピアスに。ざまあねぇな。




21.糸冬

317:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:32:18 ID:o0svLa/s0時系列 過去→現在
11.1.8.9.2.3.10.4.5.6.7.12.13.14.15.16.17.18.19.20

次からは交互しない

今回の投下はここまで


拍手

275:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:49:08 ID:bu18uDfE0
20.将来設計の最期は安楽死


何故か糞野郎の見舞いに鬱田が立候補した。
やめといたほうが、とメールする前に、病院の廊下でバッタリ出会った。

底辺DQNとの初対面でメンチきられてカツアゲされそうだったってのに、
意識改革でもされたのか、内藤が企画した罰ゲームなのか。


( ´_ゝ`)「本当に大丈夫か? 無理しなくていいんだぞ?」

('A`;)「カーチャンに行けって言われたんだよ。この菓子持たされて。
    俺の叔父さんも入院してるからさ。友達のとこにも顔出せって」

( ´_ゝ`)「ああ、ついでか、成程」

('A`)「そりゃ……面と向かって言うのもアレだけど、会いたくはないわ」

( ´_ゝ`)「だろうなあ」

精子スプリンクラーと鬱田は、色々な物事の対極に立っている。
簡単に言ってしまえばヲタクとDQNだな。

276:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:49:52 ID:bu18uDfE0
( ´_ゝ`)「鬱田の母親は、あいつの性格とか知らねーの?」

('A`)「知らないよ。俺の友人の双子の弟としか知らない」

( ´_ゝ`)「口で言うと他人じゃねーか」

('A`)「ですよねー」

( ´_ゝ`)「なんで菓子まで持たせたし」

('A`)「俺に聞かないでくれよ」

( ´_ゝ`)「今メールで伝えたら? あいつの所業とか」

('A`)「してもいいんだけど、多分、お前にまで飛び火しそう」

( ´_ゝ`)「へ? なんで?」

('A`;)「言いにくいけど、双子ってだけで……やっぱ、さあ」

まだ見ぬ鬱田の母にイラッとしたが、そこは抑える。

会う前の段取りとして、鬱田の母に手紙でも送ってやろうか。
同じ家庭で育った双子よりも、別々の家庭に引き取られて育った双子のほうが、
より似通った性質や一致する特徴を持つという事例を5万字くらいに書き連ねて。

277:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:50:47 ID:bu18uDfE0
('A`)「今、眉間にすごい皺を寄せた後に、すごいゲス顔になったぞ。
    何企んでやがる。こっちを巻き込むなよ? カーチャン巻き込むなよ?」

( ´_ゝ`)「ゲス顔言うなや。仲良くしようぜ~」

('A`;)「俺、取りあえず叔父さんの見舞い行ってくる!」

( ´_ゝ`)「待て待て。その菓子、代わりに渡しといてやるよ」

('A`;)「ありがとう」

菓子を渡すと、すぐに走り去って行く鬱田。

病院の廊下は走るなよ、危ねーな。
ああ、曲がり角でナースとぶつかるとかどんだけだよ。
お前がいつも呟いてる理想のシチュエーションじゃねえか。


('A`;)「わーすみません! ごめんなさい! 今拾います!」

うん、でも現実での反応なんてそんなモンだよね。

ここで救助に行ったら、逆に鬱田に恥の上塗りをする事になるのかどうか。
ちょっと判断がつかなかったので去る。俺なら手助けされても困るからね。

人の嫌がる事はすんなってばっちゃが言ってた。

278:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:51:42 ID:bu18uDfE0
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして俺は、また迷子になっていた。


|゚ノ ^∀^)「ここですよー」

(; _ゝ )「なんかもう……毎度毎度、すみません」

|゚ノ ^∀^)「いえいえ、ここって広いから迷う方は多いんですよ」

(;´_ゝ`)「はい、ありがとうございました」

|゚ノ ^∀^)「それではー」

そして俺は、また一歩自分が嫌いになった。

方向音痴ってどうやったら直るんだろう。
空間把握能力ってどうやったら身に着くんだ。


(;´_ゝ`)「はーぁあ、菓子の空箱だけ置いて帰るか」

ゲームのマップじゃ迷わないのになー。
なんて考えつつ、ドアを開ける。

279:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:52:47 ID:bu18uDfE0


280:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:53:28 ID:bu18uDfE0
( ´_ゝ`)「んー疲れてんのかな」

堂々と居座ってペットボトルのお茶を飲み干すどころか、
図々しくも菓子と果物まで要求するぬらりひょんがいた。


ガラッ


( ^ω^)「閉めんなお、このクソと二人きりにさせる気かお」

( ´_ゝ`)「お前マジでなんでいんの」

( ^ω^)「暇だからだお」

( ´_ゝ`)「なんでここが分かった?」

( ^ω^)「兄者のお母さんに聞いたらすぐ教えてくれたお」

ガッデム。シット。ジーザスクライシス。
内藤と弟が喧嘩した事あるのは知ってるだろうに、何故教えたし。

281:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:55:08 ID:bu18uDfE0
( ^ω^)「まさか僕もすんなり教えてくれるとは思わなかったお」

( ´_ゝ`)「俺が一番そう思ってたよ」

( ^ω^)「あれじゃないかお。河原での殴り合い後の、
      友情効果でも信じてるとかじゃないかお?」

( ´_ゝ`)「少年漫画かよ」

( ^ω^)「信じてるタイプかもしれないお」

自分の母を思い浮かべるが、そんな考えまでは分からない。
少なくとも、少女漫画雑誌LA○Aの読者としてそれは有り得るのか?


( ´_ゝ`)「わかんねぇ」

( ^ω^)「細けぇこたぁいいんだよ! その菓子くれお」

( ´_ゝ`)「これ鬱田の母が弟者に、ってやった菓子だから」

( ^ω^)「ならそれ弟者に食わせちまうのかお?」

( ´_ゝ`)「やるわけねーだろ」

(´<_`; )「オイ!」

砕けた涅槃のポーズをしていた奴が、ようやく動き出した。

282:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:56:06 ID:bu18uDfE0
( ^ω^)「じゃあ僕にくれお」

( ´_ゝ`)「あーうん、お前とそいつで分けて食えよ、ほれ」

(´<_`; )「うわ、投げんな!」

空中でキリ揉み三回転を決めた後、手があるゴミ箱の中に収まる。
そして内藤が開けた箱の中身は、何とケーキだった。
俺が与えた回転の力で、ケーキはギリギリ原形といったところ。

砂糖漬けにされた脳筋と精子脳の瞳がこちらを捉える。


( ^ω^)「おい兄者」

(´<_` )「よし行けブーン」

( ^ω^)+「任せられたお!」

(;´_ゝ`)「え? あっ、ちょま!」

病院だと言うのに、手加減なしのドラゴンスリーパーを決められる。
コードホワイトで警備員を呼ぼうにもナースコールまで届かない。

なんだお前ら、いつの間にそんなに仲良くなってんだ。
それとも食べ物が人と人を繋ぐ絆は何よりも強固だって事か。

283:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:57:07 ID:bu18uDfE0
(´<_` )「このケーキうめー」

( ;^ω^)「あっ! 兄者! 早くギブアップするお! 食われる!」

(;´_ゝ`)「勝手に外せよ、理不尽な……」

ギブアップの意を示して、内藤から解放された頃、
ドアをノックする音が病室に響く。なんか新鮮だ。

そういや俺、ここの部屋にノックしてから入った事ねーな。


( ^ω^)「検温かお? 飯かお?」

(´<_` )「どっちもやったぞデブ」

( ^ω^)「殴られてーのかボケ」

( ´_ゝ`)「どうぞー」


ガラガラガラ.....


('A`;)「し、失礼します……」

( ^ω^)「うお、毒男とは予想外」

284:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:58:08 ID:bu18uDfE0
('A`;)「お邪魔しまーす……」

( ´_ゝ`)「そんな職員室入る時みたいに畏まらなくても」

(´<_` )「職員室ってふいんき(ry じゃねーし、ここ」

( ^ω^)「僕、一応教員免許は持ってるお」

(´<_` )「マジかよ似合わねーな、体育教師か?」

( ´_ゝ`)「筋肉でゴリ押しする先生とか嫌だわ」

( ^ω^)「免許持ってるだけで、別に教師なんかにならねーお」

(´<_` )「なんかイラッときた」

( *^ω^)「免許見たいかお? ふっふ~ん、見 た い か お?」

(´<_` )「すげえイラッとする」




('A`)「入っていいんだよね?」

( ´_ゝ`)「どうぞ」

285:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:59:02 ID:bu18uDfE0
しかしここで問題が発生する。
人数分の座る椅子がないのだ。


(´<_` )「問題じゃねーだろ、誰かベッドに座ればいいだけじゃん」


( ^ω^)「じゃあ弟者の兄弟である兄者さんがベッドに」

( ´_ゝ`)「いやいやここは過去の因縁を片付ける為に鬱田だろ」

( ^ω^)「過去の因縁って言うなら兄者と毒男のほうが先だお」

('A`;)「え、嫌だよ。割と仲良さそうな内藤が座ればいいだろ」

( ^ω^)「僕は割と仲がいいんだから、関係改善の為に僕以外が」

( ´_ゝ`)「病院で喧嘩したらどうすんだ、やっぱ内藤だろ」

('A`)「ああ、でも一応家族なんだし兄者でいいんじゃない?」


(´<_` )「投げやりに言うなや」

286:名も無きAAのようです:2013/02/05(火) 23:59:46 ID:bu18uDfE0
( ´_ゝ`)「はあ、仕方ない俺が」


( ^ω^)「なら僕が」


('A`)「あ、じゃあ俺も」

鬱田の言葉を聞いた瞬間、内藤が反対側で俺と同じ動きをした。
ベッドの脇に立ち、漫画でよくある執事のように先を促す動きを。


( ´_ゝ`)っ「「どうぞどうぞ」」c(^ω^ )

裏切られた鬱田は、口でガーンと効果音を言いつつ一歩下がる。


('A`;)「は、嵌められた…! あのお決まりの流れじゃないのかよ!」

( ^ω^)「ほら座れお、さっさとこの薄汚いシーツに尻を乗せるお」

( ´_ゝ`)「相手は手負いのチンカスだから心配すんな」

(´<_` )「俺が退院したら覚えてろクズ共」

287:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:00:44 ID:o0svLa/s0
( ´_ゝ`)「病院に参るんじゃなく、病院から参られるのって何て言う?」

( ^ω^)「逆参りとかでいいんじゃないかお」

(´<_` )「焼却炉にでも消えてくれ」

その後、ぐっだぐだの下らないやり取りを数回。
結局顔合わせは済んだと言うことで退室となった。

内藤は鬱田の見舞いのケーキを食い、茶を飲んで終わった。
何も見舞いは持参して来なかったらしい。マジでなんなんだ。

鬱田は結局、弟者とは直接一言も話さないまま退室。
これは仕方ない。部屋に来ただけで及第点をあげていい。


尿瓶に突っ込んだ花束は、まだバレていないようだ。

あいつが自主的に花の水を替えようなんて思うわけがないし、
となると第一発見者は看護師か見舞い客のどちらか、か。

俺の後ろの二人には、その悪戯がバレても問題あるまい。
内藤なんかは、更なる悪戯の提案をしてきそうなくらいだ。
鬱田は、やんわり止めつつも最終的にノってきそうだな。

288:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:01:49 ID:o0svLa/s0
('A`)「外やっぱ寒……バスはまだか」

( ^ω^)「筋肉か脂肪つけろお」

( ´_ゝ`)「無理なの知ってて言うのか。内藤、分けてやれよ」

( ^ω^)「だが断る」

('A`)「バス来るまでお前らのトレーニングの仕方でも聞かせてくれ」

( ^ω^)「うむ、僕は酒呑んでから筋トレしてるお」

( ´_ゝ`)「へー」

('A`)「なんで?」

( ^ω^)「お酒飲むと、少しリミッターが外れて力が出るんだお。
      だから僕は筋トレする前に酒呑むお、ちょっとだけ」

('A`;)「酒の成分て筋肉分解するから、筋トレによくないって前に見たぞ」

( ´_ゝ`)「人それぞれだろ、筋トレ前に酒って奴は割と見るぜ。
      内藤見ろよ。腹筋とかサイコロステーキじゃねえか」

('A`)「一回パンチした事あるけど、まるでゴムタイヤだわ」

( ^ω^)「もっと褒めろお、筋肉的弱者共め」

289:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:03:04 ID:o0svLa/s0
('A`)「兄者は?」

( ^ω^)「シカトかお」

( ´_ゝ`)「ゲームとかパソコンの読み込みが長い時に、
      腕立てとか、スクワットとかだな。あと腹筋」

('A`)「……そんだけ?」

( ´_ゝ`)「内藤にみたいに筋トレが趣味じゃねーしな」

('A`)「それでその体だってのかよチックショウ」

( ´_ゝ`)「毎月必ずやってる全力の喧嘩も筋トレに入るかな?」

( ^ω^)「筋トレじゃねーお、それ実戦だお」

('A`;)「そっか、筋トレ以外にそれやってるからか……」

( ´_ゝ`)「ほぼ不本意だけどな」

( ^ω^)「僕も全力で殴れる動くサンドバックが欲しいお~」

('A`)「そこの電柱は?」

( ^ω^)「なめてんのか。流石に拳が砕けるお」

290:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:03:45 ID:o0svLa/s0
一際強い風が吹き、足元の雪が舞い上がる。


('A`il)「寒! さむ! サム!」

( ´_ゝ`)「連呼すんな余計寒いだろ」

( ^ω^)「軟弱、軟弱ぅ!」

('A`)「足ガックガクだぞ内藤」

( ^ω^)「股引くらい履いて来ればよかったお」

( ´_ゝ`)「そもそも短パンの時点でおかしい」

( ^ω^)「見栄はらなきゃよかったお」

('A`)「張れねーよ、誰に張るんだ」

( ^ω^)「僕を目撃してしまったお前ら以外の誰か」

( ´_ゝ`)「頭おかしい奴と思われるか、『流石はデブ』
      としか思われないだろ、どう見てもさあ」

292:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:04:38 ID:o0svLa/s0
( ^ω^)「はぁ~あ二人の反応も冷たいお~
      チンだけじゃなく心もキュッとなるお」

( ´_ゝ`)「いきなりシモに転がるなよ」

('A`)「その短パン、ジャージだろ? そりゃ縮まるわ」

( ^ω^)「チンサム~チンサム~ぅ…………はっ」

( ´_ゝ`)「どうした夏野郎」

( ^ω^)「頭の中でペ○スち○こチ○コ連呼してたら、
      小学生の時に作った替え歌思い出したお」

微妙に韻を踏んでいた内藤の言葉は、洒落なのかどうなのか。
突っ込んでいいものか、何一つわからなかったので放置する。


('A`)「何の歌?」

( ^ω^)「小学生がひり出す下らねえエロネタだらけの歌だお。
      歌ったら先生に殴られた上に廊下に出されたくらいだお」

( ´_ゝ`)「あ~アレか」

( ^ω^)「アレだお、懐いお~」

293:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:05:43 ID:o0svLa/s0
('A`)「下らないって前置きあってもンな事されると気になるわ」

( ´_ゝ`)「ガッカリするかもよ?」

( ^ω^)「確実に呆れるお」

('A`;)「早く歌えよ」

( ^ω^)「うむ、では」


( -ω-)=3 ウォッホン


( ^ω^)「……」

( ´_ゝ`)「……」

('A`)「……」


( ^ω^)「では」

( ´_ゝ`)「はよ」

( ^ω^)「うむ」

294:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:06:24 ID:o0svLa/s0












( ^ω^)「ちん○ま○こどっこさ~♪ う○こさ♪

      うん○どっこさ~♪ しり○なさ♪

      し~りあ○どっこ


('A`)「もういい」

( ^ω^)「歌いきってないお」

('A`)「いやもういいよ」

(;´_ゝ`)「そだな」

295:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:07:18 ID:o0svLa/s0
大きくなってから改めて聞くと、酷い歌だ。いや、歌と言っていいのか?
これを広義の歌に含めてしまったら、それは酷い侮辱じゃなかろうか。

当時の自分はよくこれで呑気に笑っていられたもんだ。
と言うか、歌詞の意味もわからず、周りが笑うから笑っていただけか。

ん? 待てよ。
まだ保健体育を習わない年齢の児童に卑猥な単語を聞かせるのは、
六法全書にきちんと法律違反であるとあったように記憶している。
あの場合、逮捕されるのは内藤なのか? 親なのか? わからん。

取りあえず、あんな酷いものでバカ笑いできるのは、
テンションが高い時か、酒が入ってる時だけだ。

つまるところ、今の状態はサイレントである。
風の音と救急車の音だけが周囲を支配する。


( ^ω^)「…………」

( ´_ゝ`)「…………」

('A`)「…………」

( ^ω^)「すまんお」

('A`;)「もういいってば」

296:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:08:22 ID:o0svLa/s0
溜め息を吐いて、鬱田が別の話を切り出す。
寒い日にシモい話したって、逆に下半身意識するだけだもんな。


('A`)「内藤って、土産も持たずに何しに来たんだ?」

( ^ω^)「遊びに」

('A`;)「マジで?」

( ´_ゝ`)「それ以外の何だと思ったんだよ」

('A`)「なんかこう、ツンデレ的なアレかと思って……」
  _, 、_
( ^ω^)「は?」

('A`;)「いや! 要は! 『アンタなんか心配してないんだからねっ!』
    って言いつつ結局病院に来るあたり、それなのかと……」
  _, 、_
( ´_ゝ`)「は?」

いやそれ、萌え系の創作物の中だけだろう。そんなの。
現実にツンデレなんていたら、ただの鬱陶しい女だ。
ヤンデレも、現実ではただの自己中メンヘラ女に成り下がる。

フィクションだから、自分の好きなように解釈できるだけで。

298:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:09:50 ID:o0svLa/s0
( ^ω^)「ンなふざけたコト言った覚えはないお」

('A`;)「ニュアンスだよ」

( ^ω^)「どんだけ曲がった表現だお」

( ´_ゝ`)「本人のアレ並に」

('A`)「やめろ、右曲がりなの気にしてんだから」

鬱田のちんこの曲がり方なんて、今初めて知った。
内藤がいぇーいとダブルピースしつつ、さっきの歌の続きを歌う。
それを無視して、鬱田が言葉を吐く。


('A`)「本当に心配してないのか?」

( ^ω^)「うんこ……え?」

('A`)「一応……」

鬱田の視線が、一瞬チラッとこちらに流れた。
なんだ。何のサインだ。わからんぞ。


('A`)「兄者の兄弟だし」

299:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:10:44 ID:o0svLa/s0
( ^ω^)「えっ? 僕が? 友人の弟という他人を? あのクズを?」

('A`;)「クズて」

( ^ω^)「クズじゃんお」

( ´_ゝ`)「生きる価値のない糞袋と呼んでも俺は許すよ?」

(;'A`)「いやいやいや!」



( ^ω^)


( ^ω^)「う」


( ^ω^)「ふふふっふ、うふ」



( ^ω^)「ふ」

300:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:11:25 ID:o0svLa/s0
('A`;)「ブーン?」

( ´_ゝ`)「あー」





( ^ω^)




:( ^ω^): プルプル



      ノ
( ^ω^)_ - スゥウウウウウウウ
      ヽ



(。 )ω^) プクッ

充分に溜めが入る。
鬱田は呆然としているが、俺の準備は万端だ。

301:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:13:11 ID:o0svLa/s0
 ノつ__とヽ
/( ´_ゝ`)|

(;'A`)「兄者、なんで耳塞いで……」


        人从人从人从人从人从人从人从人从人从人
(σ^ω^)σ「―――っぷぎゃっはぁああああ!!!11
        ンなワケねぇーお!!アリエネぇえええ!!」
        WYWYWYWYWYWYWYWYWYWYWYW


(゚A゚;)「!?」

膝を少し折り曲げ、顔の横で両人差し指をこちらに向ける内藤。
よくわからないが、行動にも溜めが入ったせいでやたらウザったい。

耳塞いでなきゃ、確実に頭の中で反響する声だな。
鬱田なんかは完全に硬直している。


( ^ω^)「エフッ、えふっ。あースッキリした」

( ´_ゝ`)「やるならやるって言え」

( ^ω^)「叫びたい気分だったんだおー」

('A`)「……ハッ」

302:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:14:42 ID:o0svLa/s0
割と早い復活を果たした鬱田は、軽く苛立った俺と同じように、
内藤の膝裏に蹴りを入れている。しかしこうかはないようだ・・・

威力が足りないので膝カックンさせれない。
内藤相手なら全力で良いんだぞ鬱田。


('A`#)「いきなり! 叫ぶな! 病院前で!」

( ^ω^)「あぁん怒るポイントそこぉ?」

( ´_ゝ`)「いきなりハイパーボイスくらった事には怒らんのね」

はあ、なんというか。不真面目と生真面目と言うか。
たまにこの二人がつるんでる事が不思議に思えてくるな。


( ´_ゝ`)「まあ、今は冬だからある程度の騒音は雪が吸収してるだろ」

('A`)「そういう問題じゃないから」

え? じゃあどういう問題なんだ。

303:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:15:55 ID:o0svLa/s0
( ^ω^)「毒男の蹴りには気合いが足りぬお……。
      兄者、彼の者に手本を見せてやれい」

( ´_ゝ`)ゞ「ラジャー」

('A`)「は? どゆこt



ヒュゴッ


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


そして俺は内藤の左足に前方から全力の蹴りを入れ、
そのまま二人でユーターンし病院のお世話となった。

脛を抑えて悶絶する俺らに危機感を感じた鬱田が、
わざわざ看護師を呼んでくれたのだ。実にありがたい。

304:名も無きAAのようです:2013/02/06(水) 00:17:00 ID:o0svLa/s0
( ^ω^)「あーあ、無駄に金とられたお~」

( ´_ゝ`)「レントゲンまで撮られるとは思ってなかったわ」

('A`)「アホだろお前ら」

( ^ω^)「うん」

( ´_ゝ`)「知らなかったの?」

俺に向かって手本を見せいと発言した時、
内藤はバス停の標識を指差してたらしい。

そんなん見てなかったよ内藤さん。
つーかそんなモン指差すなや内藤さん。

脛はまだ痛い。こりゃ痣になるな。




20.糸冬


拍手

233:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:24:14 ID:.hG7gVG20
19.手こずるのは自分自身の理性と衝動



ヽ( *´_ゝ`)ノ「わっほーい」

嫌いな奴が事故で入院した。当分は車椅子らしい。
手術は無事に終わってしまったが、これは絶好のチャンス。


よく犯罪モノで、

”心配して見舞いに行くフリをして、周囲の同情と感心を集め、
 対象を殺害した時に犯人として自分が浮かばないようにする”

というのがある。


その前提を犯さずにさっさと階段からゴートゥヘルさせては、
真っ先に自分が疑われてしまう。それは非常によくない。

幸いにも、弟の入院期間はかなり長い。
確か、大腿骨となんとか骨とかんとか骨の複雑骨折。

あんまり聞かない骨の名前だったから全然覚えてねーや。

ちなみに俺は、弟が車からのダメージを軽減するクッション役を果たし、
手の擦り傷と打ち身だけで済んだ。多分これで今年の運を使いきったな。

234:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:25:03 ID:.hG7gVG20
奴は今のところ車椅子なので、こっちが断然有利だ。
だが、衝動のままボコボコにしてはこっちが不利だ。

俺とあいつの中の悪さ、喧嘩っ早さは周知の事実なので、
いきなり俺があいつに優しくなったら周囲は不審がるだけだろう。

長い期間で、段々と態度を軟化させていくのが重要だ。
車椅子から松葉杖に移るまでは待っていたほうがいい。
それには、俺があいつへの攻撃欲求を抑える必要がある。


( ´_ゝ`)「取りあえず、初めての見舞いだし簡単に済ませとくか」

見舞いの定番と言えば、花、お菓子、果物、退屈しない為の本。

お菓子と果物は駄目だ。あいつは甘味が好きだからな。
ワンホールケーキを1人で平らげるとか、絶対に舌がおかしい。
甘味じゃないとすれば、苦味。辛味。旨味。塩味も微妙だ。


( ´_ゝ`)「あいつの腹に収まるものに金使いたくないし、
      食べ物はなしにすっか。鮭とばもやめとこっと」

ここはやはり、嫌らがせで花と本にでもしてやろう。

235:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:25:45 ID:.hG7gVG20
本は、弟が読まないような小説でいいか。
俺が既に読んでしまっていて、汚されても破かれてもいい本。

うん、筒井○○にしよう。
この作者の本は何をどうされても本の味になりそうな気がする。

あとは母に言われたものを鞄に詰めよう。
止まる日もあるようだから、俺の分の着替えも詰め込んで。


( ´_ゝ`)「よし」

旅行鞄をパンパンに膨らましている中身は、

・十○茶を十数本    ・俺厳選の小説

・全員の着替え三日分 ・携帯の充電器

・母厳選のクロスワードパズル懸賞雑誌

こんなモノだ。割と懸賞雑誌がかさばっている。母よ。

濡れ衣を着せる為にエロ本でも紛れこましてやろうと思ったが、
現在足が不自由な弟の手前、すぐにバレそうなのでやめた。

236:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:27:20 ID:.hG7gVG20
( ´_ゝ`)「あとは花か」

花は、不吉な花言葉のやつでも持ってってやろうか。

いやしかし、あいつに花言葉なんて分かるのか?
遠回しな嫌がらせなんて、伝わらねば意味がない。

そもそも、この辺に俺が求める花言葉を持った花が生えてるのか。


(;´_ゝ`)「つか、今、冬か……」

それ以前に季節の問題がある。身近に植物なんてない。
今の季節で元気なものなんて、庭に生えてる針葉樹くらいだ。

仕方ない。花屋で普通に花束でも買ってこう。
花屋なんて一人で入った事ないけど。

デパートまで行くのは面倒だし、市中にある花屋でいいか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

237:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:28:44 ID:.hG7gVG20
( ><)「いらっしゃいませなんです!」

( ´_ゝ`)「へっ?」

個人経営っぽい店から予想外の店員が出て来た。
身長が俺の半分もない。声が幼い。言葉使いが少し変。
デパートの中にあるテナントを素直に選んでおくべきだったか。


(;´_ゝ`)「こ、こんにちはー」

( ><)「こんにちは!」

なんだろう。これでも一応成人している大人なのか。
それとも、この店の子がお手伝い感覚でやっているのか。

うん、触れないようにするべきだな。触らぬ神に祟りなし。


( ><)「どんな花をお求めなんですか?」

( ´_ゝ`)「えーと、身内が怪我して入院しているので、
      お見舞い用の花束をお願いできますか?」

( ><)「花束ですね、お見舞い用はこっちなんです!」

238:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:29:51 ID:.hG7gVG20
案内された場所には、バケツに入った花束が3束。
それぞれに、500円、600円、800円と値札が付けられている。


( ><)「これなんです!」

( ´_ゝ`)「うーん」

流石に子供の小遣いで買える値段は、ケチだと言われそうだ。
千円台に届くのがないのは何故だろう。みんな買ってんのか。
冬だからスリップ事故や玉突き事故でも多発してんのか。


( ><)「お求めに応じて、今から手作りもできますよ!」

( ´_ゝ`)「え? そうなんですか?」

( ><)「はい!」

( ´_ゝ`)「それって、いくらかかるんでしょうか?」

( ><)「そちらが掲示した値段に合わせて作るんです!」

( ´_ゝ`)「へええ」

239:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:30:53 ID:.hG7gVG20
いいかもしれない。それにしよう。しかし、いくら払うべきか。
かつての糞親父の退院祝いには、デカい籠から溢れる花が届いた。

滅茶苦茶に盛ったようにしか見えなかったが、それで万単位だと言う。
お見舞いとは言え、ぶっ殺したい奴へ送る花に万単位もかけたくない。


( ><)「どうされますか?」

よし、万の半額にしとこう。
財布から五千円札を取り出し、店員に渡す。


( ´_ゝ`)「これに合わせてお願いします」

( ><)「えっ?」

( ´_ゝ`)「えっ?」

なんだその疑問符。これじゃ足りないのか。
そこのバケツに三桁の花束があるだろうに。
やっぱオーダーメイドだと桁が違うのか、迂闊だった。

240:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:32:08 ID:.hG7gVG20
( ;><)「ちょ、ちょっと待って下さいなんです!」

( ´_ゝ`)「えっ」

五千円札を返される。店員は店の奥に走って行った。
なんだろう。何か別の問題があるのか。

そういや、さっきの店員は札を凝視していたような気がする。
まさかこの札が偽札だったとか言うオチなのか。やべえ。

光に透かそうとしてる間に、店員が駆け戻って来る。


( ><)「お待たせしましたんです!」

(;´_ゝ`)「えっ? あっ、えっ、その」

( <●><●>)「お待たせして申し訳ありません」

( ´_ゝ`)「あ、いえ」

なんかやたらデカいのが来た。背じゃなく目が。
目は苦手だ、眼は。あまり直視しないようにする。

241:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:33:26 ID:.hG7gVG20
( <●><●>)「どれくらいの大きさの花束をお求めですか?」

( ´_ゝ`)「そうですね、これくらいでしょうか」

コンビニにあるゴミ箱サイズのデカい花束なんて求めてない。
せめて花の部分で人の顔が隠れるサイズの花束だな。
そんで、片手で抱えれるくらいの大きさがいい。


( <●><●>)「その大きさなら、2500円で大丈夫ですよ」

( ´_ゝ`)「そうなんですか?」

相場なんてわからない。高いの? 安いの?
使う花によって金額が変動したりしないんだろうか。

まあ、半額が更に半額になったと思えばお買い得か。


( ´_ゝ`)「では、それでお願いします」

( <●><●>)「ワカッテマ……わかりました。少々お待ち下さい」

242:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:34:21 ID:.hG7gVG20
店員が揃って奥に消えて行く。レジはそのままだ。


( ´_ゝ`)「……」

実に不用心だが、まあ、田舎ですし。
窃盗とか、んな事する輩は、ほぼいませんし。
いたら村八分の上に、農業で鍛えた老人達にフルボッコされます。

むしろ、少し隙を見せただけですぐに何かを掠め取ろうとする、
世紀末都会人の恐ろしさよ。……全員がそうとは言わないが。


( ´_ゝ`)「都会こえー」

意味のない独り言を呟きつつ、店内を見て回る。

243:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:35:21 ID:.hG7gVG20
( ´_ゝ`)「ん」

鉢植えのアジサイを見た辺りで、ふと思い出す。

見舞いの時には、必ず切り花にしなくてはいけないという話。
根っこが付いた花は”寝付く”と捉えられて、縁起が悪いとか。


( ´_ゝ`)「これも一緒に買うべきか……」

しかし、店員に見舞い用の花を、と言ってしまった手前がある。
仮に購入したとしても、バスとタクシー経由で行く病院だ。


( ´_ゝ`)「うーむ」

結論としては、『買って持っていくのが面倒くせえ』。
この嫌がらせの案は、今のところ保留で。


( <●><●>)「お待たせしました、如何でしょうか?」

( ´_ゝ`)「おお」

予想していたより大きい。これはいい。重要なのは大きさだ。
センスがないので綺麗かどうかはわからない、大きさが大事だ。

244:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:37:09 ID:.hG7gVG20
金を払い、そのまま持って行こうとしたところを呼び止められる。
外は雪なので、花弁が散らないようにと薄い袋をかけてくれた。
持ち手の部分は、手が濡れないようにと厚い紙で包む。

気がまわる花屋だ。
いや、この花屋ではこの対応は一般常識なのか?


( <●><●>)「ありがとうございました」

( ><)「あじがとうございましだんです!」

噛んだ上に、お辞儀の勢いが良過ぎて帽子が下に落ちる。
目のデカい店員さんは、それを拾って払ってから元に戻した。


( ´_ゝ`)「ありがとう」

軽く手を振って終わる。

あの二人は果たして親子なのか、バイトと店長なのか。
考えても仕方がない上に無益なので、頭からほっぽり出す。

245:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:37:50 ID:.hG7gVG20
しばらく歩いて、そして気付く。


(;´_ゝ`)「こんなデカい花束持ってバス乗ったら、
      人の邪魔にしかならねーじゃねーか」

田舎のバスとは言え、冬、市街行き、昼と重なれば、
バスを使おうと乗る老人達がそれなりに多くなる。

こんなモン持って乗ったら、立ってたとしても邪魔になるし、
最悪フレンドリーなおばちゃんに話しかけられるだろう。

そんな面倒はごめん被りたい。


ピッピッピ プル ガチャ


『もしもし、○○タクシーですが…』

( ´_ゝ`)「すみません、花屋の○○○までタクシーを…」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

246:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:39:11 ID:.hG7gVG20
(;´_ゝ`)「ふう」

色々あったが、病院に着いた。

まさか渋い顔をしてるタクシー運転手のおっちゃんが、
そこらのおばちゃん並にフレンドリーだとは思わなかった。
名は体を表すと言うが、どうせならちゃんと内面にも頼む。


( ´_ゝ`)「名前と顔だけしか合ってねーよ。渋沢って、さ」

……何事にも、予想外というのはある。

バスの運転手に、車内放送でフレンドリーに話しかけられた事もあったのだ。
タクシーの運転手がそうだと想定していなかったのは、俺の落ち度だな。

とにかく、弟の病室にさっさと入って花束を投げつけよう。
さっきから花束が人の視線を集めて辛い。デカすぎたか。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

247:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:40:06 ID:.hG7gVG20
|゚ノ ^∀^)「弟さんの病室はこちらですよー」

(;´_ゝ`)「すみません、迷ってしまって……」

|゚ノ ^∀^)「いえいえー」

うっかり迷って、結核患者の隔離病棟に行きそうになってた俺。
病室の番号も階も知ってたはずなのに、どうもこういうのは駄目だ。
地図の東西南北はわかるけど、自分がどっちを向いてるかはわからない。

苛立ちも込めて、扉を勢いよく開けて目的の人物に花束を投擲。


(´<_`; )「おわっぷ! 何これ! トリカブト!?」

( ´_ゝ`)「花屋で買った普通の花束だよ」

手術後に初めて会った弟は、左足が宙吊りになっていた。
あの器具ってなんか面白そうだよな。なんか遊びたい。

248:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:41:39 ID:.hG7gVG20
(´<_` )「母さんもわかってねーなーマジで。
      花なんかで暇が潰せるかっての」

( ´_ゝ`)「それ俺から、母さんは懸賞の雑誌」

(´<_` )「は?」

何はともあれ、水に挿さねば。
備え付けの花瓶に入っていた造花を抜く。


( ´_ゝ`)「……ちっさ」

抜いたはいいが、花瓶が小さ過ぎて花束が入りそうにない。
折角、金まで払って束にしてもらったんだ。
花束をバラしてしまうのは避けたい。

249:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:42:37 ID:.hG7gVG20
(´<_` ;)「え? 何? なんで花束? 兄者が? 俺に?
      実は俺だけ医者から知らされてないだけで、
      この足に治せねえ後遺症でも残ったとかなの?」

( ´_ゝ`)「は?」

(´<_`; )「え?」

よくわからないが、テンパり始めた奴を置いて鞄の整理。

俺が持って来た小説と、母親の雑誌を備え付けの本棚に並べる。
お茶もまとめて備え付けの冷蔵庫に入れる。入らない分は窓際へ。
それぞれの着替えを取り出して、ベッド下の収納スペースに。

これで、もう鞄は空だ。


(´<_`; )「おーいちょっと聞いてる? 何の意味の花束なの?」

( ´_ゝ`)「うっせぇな」

250:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:43:38 ID:.hG7gVG20
バスが来るまで暇なので、ベッド下に潜り込んで床に転がった。
保護者や家族の泊まりOKの病院なので、持ってきた布団もある。
母親が初日に持ち込んだ荷物で、最早押入れのようだ。


(´<_`; )「なんでベッド下に入るんだよ」

弟は足を吊られて身動きが取れないので、ここまで来ない。
電灯の光が届かない事を除けば、割といい位置だ。


(´<_`; )「おいこら何してる!」

( ´_ゝ`)「物色」

おっ、尿瓶発見。
汚ぇな。
使用済みか?


(´<_`; )「おーい、下から出て来てくんない? 姿見えないと、
      何されてっかわかんねーから不気味なんだけど」

どうせならこいつに花束ぶち込んでやるか。

251:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:44:58 ID:.hG7gVG20
ついでだから水に林檎ジュースでも混ぜて、
尿に似た色をつけてもいいかもしれない。

そっちのほうが誤解を招いて、見つかった時が楽しそうだ。

確か今日は吉日か。よし。
思い立ったら行動あるのみ。


(´<_` )「あっ、やっと出て来た……ってオイ、どこ行く」

( ´_ゝ`)「自動販売機」

(´<_` )「あーじゃー俺の分も買ってきてーコーヒー」

無視して部屋を出る。

コーヒー以外だったら、買って目の前で飲み干してやったけどな。
あんな苦い泥水飲む奴の気が知れねーわ。舌おかしいんじゃない。

喫茶店での取引とか商談でコーヒー出されてるのよく見るけど、
飲むと息が臭くなるし……本当コーヒーの存在意義ってわからん。

日本人なら茶でも出しとけ。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

252:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:46:34 ID:.hG7gVG20
ガラッ ピシャ


(´<_` )「おー買ってきて……ないよな。当たり前か……」

なんだか勝手に落胆しているのを置いといて、ベッド下へ。


(´<_`; )「おい何やってんだ。顔くらい見せろ」

買ってきた林檎ジュースの紙パックと、水のペットボトルを開ける。
それを、大体半々の用量で尿瓶に注ぐ。色は注ぎ足しで調節。

いつの間にか床に落ちていた花束さんをベッド下に連れ込み、
その体を包むラップを剥ぎ取って、尿瓶にギチギチ押し込む。


(´<_` )「何ガサガサやってんの……不安なんだけど」

( ´_ゝ`)「なんでもねーよ。花を枯れないようにしてただけだ」

ベッドサイドや窓際に置くと入れ物が一発でバレてしまうので、
通行の邪魔にならない位置に、弟の死角になる場所に置く。

253:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:47:39 ID:.hG7gVG20
(´<_` )「そ、そうだったん? ありがとう」

( ´_ゝ`)「死ねカス」

(´<_` )「なんでだよ」

なんだかんだしてる間にバスの時間だ。
ここは市街なので、家の近くにあるバス停よりバスが来る。

家の近くのバス停?
一日で10本来るか来ないかだよ。


( ´_ゝ`)「じゃーな、 往 生 しろよ」

(´<_` )「ハッキリ言いやがって、せめて少しくらいは
      空耳で養生と聞こえそうなくらいに言えカス」

空になった鞄を背負って、病室を出る。

254:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:49:49 ID:.hG7gVG20
( ´_ゝ`)「あー、あいつに携帯渡すの忘れたなあ……まいっか」

車に轢かれた時に、弟の携帯はお陀仏していた。
中のデータだけは無事だったらしく、移し替えが済んだのが昨日。

あいつの交友関係と母は、人種が違い過ぎて繋がってないはずなのに、
何故かこの携帯には女達からの見舞いに行く的なメールがガンガン来る。
あいつ、女性関係は落ち着いてたと思ったら、表面だけだったのな。

入院の情報はどっから漏れてんだ。恐ろしいな女性の情報網。


つーか、この複数のメールを読む限り、

『心配だから○○日にお見舞いに行ってもいい?』

と伺うものじゃなくて、

『心配だから○○日にお見舞いに行くね!^^v』

っていうのが大半なんだよな。

相手の都合を考えてないアホな女共ばっかりだねえ。
返信のない状態で押し掛けるバカ女は、一体何人いるのか。
全く、今から修羅場が楽しみ過ぎて笑えてくるぜ。

255:名も無きAAのようです:2013/01/28(月) 23:51:06 ID:.hG7gVG20
懸念はあれだな。

事故でまた情緒不安定になりつつある我が母が、
女共の修羅場に入ってしまった時どんな反応をするか。


まだ糞親父への殺意と同情と憎悪と憐憫で揺れ動いてる時期だ。
バカ女と我が母がエンカウントした時には血の雨が降るな。

しばらくは、母と一緒の見舞いを避けたほうがいいか。


( ´_ゝ`)「はあーあ、修羅場るついでに誰かあいつを
      ぶっ刺して殺してくんねーかなー……」




19.糸冬


拍手

195:名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:59:14 ID:zQ/5PdyA0
18.得たものは宇宙人との交信方法


色々あったが、三日もすれば表層意識には大体昇って来なくなる。
イエス鳥頭。忘れっぽいのも前向きに、ポジティブに考えるぜ!
本当に嫌な記憶なら、フラッシュバック予備軍になるしな。

今日は平日なので我が母は仕事。俺はもう仕事を納めたので休み。
弟は母親が勘定したバイトに受かったかどうかの確認で家にいない。


ゴガガガガガガ


( ´_ゝ`)「ふんふっふ~ん」

俺は休日返上で絶賛雪掻き中。手押し除雪機の力は偉大だ。

たまに砂利を巻き込んだ散岩攻撃が出るのは仕方ないとしても、
雪掻きスコップやママさんダンプを使うよりは効率が良い。

前の家も今の家も、田舎なので庭だけは無駄にある。範囲が広い。
人力でちまちまやっていては、日が暮れても終わらない。
自力で金をはたいて買った除雪機は、久々のいい買い物だ。

196:名も無きAAのようです:2013/01/23(水) 23:59:58 ID:zQ/5PdyA0
ただまあ、ずっと雪を飛ばしているだけだと耳が暇だ。
漫画や小説を読んだりしているわけじゃないから、頭が暇だ。

今日の夕食どころか明日の食事まで決まっているから食は考えようがない。
弟に対しては、もう部屋にトラップを仕込み済みなのでやる事がない。
……先週色々とあったから、それ関連の思考は今は控えているのもある。


( ´_ゝ`)「うーん、しかし耳が暇だ。音が欲しい。音楽が欲しい」

耳から入って来る音は、除雪機のエンジン音が9割を占める。

単調な騒音じゃなく曲が欲しいな。
流行りの歌でもいい。
自分の独り言だけだとつまらん。
それさえもエンジンに掻き消される。

たまに竹竿屋や廃品回収のスピーカーが聞こえるが、そういうのはいらない。
糞業者はNGです。あいつら毟っても毟っても生えてくる毒草みたいだよな。
一体何人が騙されたんだろ。最近、祖母も金を騙し取られてたし。

197:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:00:38 ID:cXBc1ujc0
話が逸れた。耳が淋しいんだった。


( ´_ゝ`)「いくつかDLしてもらってたな」

携帯を取り出しサウンドフォルダを開く。内藤が悪意の下に違法DLしてくれたものだ。
選曲が闇しか見えてこない。たまにある恋愛ソングは嫌がらせの一種だろう。
モー○、大○愛、A○B○8。AK○48って、結局似た名前の銃と同じ意味なんだろうか。


( ´_ゝ`)「あ、そういや途中で一時停止した曲があるんだっけ」

音楽や動画を再生中に停止すると、電源が切れない限り、
ずっとその停止した状態を維持し続ける我が愛しの携帯君。
破壊したり水没したり、代替わりが激しいので一般的な機能なのかわからない。

買った次の日に、弟のセフレ()に逆パカされちゃった携帯もいるしな。
腹が立ったからそいつと弟の携帯を川に投げ込んでやったがあの時は…

おっといかんいかん。さっきからどうもズレる。

198:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:01:20 ID:cXBc1ujc0
充電口のところにイヤホン接続端子を挿して、それからイヤホンをぶっ挿す。
ウォークマンもiPodも持ってない自分は、未だに携帯とイヤホンを使っている。

いやだって、音楽聞く為だけにそれ専用の機械買う必要とかなくない?
携帯で代用出来るんならそれでいいと思うが、それは少数派なのか。


( ´_ゝ`)「ま、いいや」

途中で一時停止されていたものを、初めから再生。
小説や漫画はともかく、映像や音楽を途中から聞くのはなんか嫌だ。


( ´_ゝ`)「ふんふっふ~ん」

地吹雪の舞う庭。誰もいないし鼻歌じゃなく直接歌うか。

そう言えば、こっちには地吹雪体験とかあるらしいな。結構賑わってるとか。
わざわざ南のほうから北まで来て、そんなモン体験するとか、アホかと。
もうね、凍って凍れて死ねと笑顔で言いたくなるよ。俺と住む場所交換しろ。

199:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:02:02 ID:cXBc1ujc0
マイナス方向に思考が逸れる。早く歌を聞かなければ。

ピッ  ズンドド ドドンドン ~♪


『月がかけていくヘンテコな、よーる』

『ゴムの木のカゲで、目を光らせーて』

『ノドをふくらませて』

『甘いものを食べている』

( ´_ゝ`)「……甘いものを食べていーる」

『私の大切なカメラ今夜』

『君の夢に、誘ってーよ』

『病院の屋根のー上から出発するんだ~ね』

『月面にテーブルを出して』

『楽しい夜の食事』

『ケモノのようなステキな君の食欲』

『夢から帰れーなくなってーも、知らないよ』

200:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:03:02 ID:cXBc1ujc0
相変わらず、意識して聞いても分からない歌詞だ。
決まった意味なんてない個人的解釈を勧めてる歌かもしれない。

俺としては頭のおかしい人の歌と単純に考えている。
それ以外に何かあるなら、どうぞどっかの議論スレへ。
俺は後半のリズムが好きなので、前半は聞き流す。


『星と星のスキマの暗闇へと』 ~♪

『手を伸ばしているんだーね』

『消えてしまうつもりなんだね』

『消えてしまうその行く先でそっと、歳をとっていくんだね』


『月がかけていくヘンテコな、よーる』
( ´_ゝ`)「…………………、よーる」

『ゴムの木のカゲで、目を光らせて』
( ´_ゝ`)「………で、目を光らせて」

『ノドをふくらませて』
( ´_ゝ`)「らませて」

201:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:03:51 ID:cXBc1ujc0
『甘いものを喰べている』 ~♪    ズドドドd>


( ´_ゝ`)「甘いものを喰べていーる」『私の大切なカメラあぁあぁー』

( ´_ゝ`)「土星にビールを冷やしておいて火星で肉をゆでてー」

( ´_ゝ`)ノ「この夜が死ぬ前にゼラチンのデザート」


(*´_ゝ`)ノシ「ねー見て☆※△がやーぶけちゃったよはははーはははぁ」


( ´_ゝ`)「私の大切なカメラ、どこへ、行ってしまったの?」


( ´_ゝ`)シ「おー願いだよ帰ってきてー」『あっ、帰ってきた』


ヽ(*´_ゝ`)「ああずみのーよたのせゆくぜるぶにひ!」


ヾ(*´_ゝ`)「んぜんざぷらずめみゅんげばーときそ!」


(*´_ゝ`)ノ「いぞんげやーいんぎょ!」

202:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:04:33 ID:cXBc1ujc0
~♪           ゴガガガガガg>



203:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:05:21 ID:cXBc1ujc0
(´<_`; )「く、狂った?」

(  ´_ゝ)「ねーよ」

ぐぬぬ、接近に気付かなかったとは。不覚。

服装からしてバイト帰りか。灰色のスーツはいいとして、
その下のシャツがピンクなのは目を瞑ってやるべきか。

そして、行く時よりもアクセサリーが増えてるのは何事だ。
昼食とタクシー代として持たせてやったのにこの糞野郎が。

つーか、あれ? 手元に除雪機がない。どこいった。


(´<_` )σ「除雪機だったら、さっきから向こん杉とば削ってんぜ」

( ´_ゝ`)「わいは」

いつの間にか、除雪音が破砕音に変わっている。
音源は、太い杉の木に熱いベーゼをかます除雪機君。
どう見ても幹を抉っています本当にありがとうございました。


<(;´_ゝ`)>「やってまった……!」

一応、我が母の味方とは言え父方の親戚から借りた家だ。
これは不味い。除雪機まで走って急いでエンジンを切る。

204:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:06:32 ID:cXBc1ujc0
除雪機をどかして傷を確認すると、それほど抉れてはいない。
表皮が剥げたくらいだ。人の怪我に例えるならば、酷い擦り傷。

人。ヒトか。

除雪機が道路までアウェイして、人体をもみじおろしにしたり、
ストロベリージャムやトマトジュースを撒き散らさなかっただけいいか。
毎年とは言わないが、2年に一度くらいは誰かがゴリッと喰われてるからな。


(´<_` ) ))「何しちゅーんずマジで」

(  ´_ゝ)「雪とば掻いでだら……」


( ´_ゝ`)          (´<_` )


(#´_ゝ`)「訛んな!」

(´<_` )「今更ー、気にすんなよ地元で」

そういう問題じゃない。除雪機さんこいつ喰って下さい。

205:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:07:13 ID:cXBc1ujc0
(#´_ゝ`)「俺がたげ、どんだ……どれだけ頑張っててぎん……
      面倒な方言とば……方言を……しかへで……」

(´<_` )「あーうんうん」

(;´_ゝ`)「人に、人に……教えて……ふとず……じゃなくて」

゙(´<_` ) ピッピッ(携帯操作音)

(; _ゝ )「同じ、言葉と……を、は、なせるように、なった、と」

(´<_` )「あーうん頑張った頑張った、撫でなでしてやろうか?」

(# _ゝ )「」

腹立つが、おろし立てのスーツを破くわけにはいかない。


( ´_ゝ`)「そったらだものいらねーはんでけぇろ」

(´<_` )「訛り直す諦めが早いな……宇宙人と交信した影響か?」

( ´_ゝ`)「は?」

ρ(´<_`; )「なんだよこのミステリーサークル」

( ´_ゝ`)「へ?」

206:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:08:47 ID:cXBc1ujc0
幾何学模様とも言い張れない、複雑な軌跡が庭一面に広がる。
今日は星辰が揃うので向こうと交信を試みました、という言い訳が通じそうだ。
怪しい宗教に属するようなヤバい人限定でしか効かないが。


(;´_ゝ`)「わお」

(´<_` )「何してこうなったんだよ、俺の面接失敗でも祈ってたのか?」

( ´_ゝ`)「んな事したら家に金が入らなくなるだろーが。
      ただ単に歌聞いてたらテンション上がっただけだよ」

(´<_` )「そうだったのか……面白そうだから録画しときたかったな」

( ´_ゝ`)「さしねえ死ね」

(´<_` )「代わりに俺の動画取らせてやるよ、ネットに晒すのはなしな」

(#´_ゝ`)「だったらいらねっつの!」

最近、こいつの女性関係も一時的とは言え落ち着いてきたので、
我が母からの通達もあり、殴る蹴る夜襲をかける等の暴力は控えていた。

207:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 00:10:13 ID:cXBc1ujc0
悪い行いをやめたからといって、迷惑を被った方はすぐには納得できない。
いじめと同じだ。やめたからと言って、そいつにすぐ好感情を抱くわけない。

つまるところ、こいつが友好的(?)な態度を見せても殴り飛ばしたいのだ。
友好的と言うより、前よりも絡んでくるようになっただけだが。


(´<_` )「なんだよもー」

( ´_ゝ`)「こっちの台詞だよ」

例えば、貯金箱や財布の中の有り金どころか通帳さえパクった相手が、
「俺達ゼロからやり直そうぜ!」と言いながら借金をチャラにしようとしてくる。

その相手は殺したい程に憎い奴だ。
他の人はそれでも許せるだろうか。

歯磨き粉や歯ブラシのCMのように、笑顔で白い歯をキラめかせて、
爽やかにサムズアップしても許せるか? 俺なら顔面を殴りに行く。

友人、内藤もこんな弟がいたら金玉を捻り潰すと言っていた。
あの行いを許せる奴がいたら、そいつは聖人か白痴なんだろう。

211:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 01:57:40 ID:cXBc1ujc0
(´<_`* )「そうだ! 給料前借りで貰ったんだぜ!」

( ´_ゝ`)「それ、お前が逃げたらきつい仕置きでもする時の
      理由にする為に渡したとかじゃねーの?」

(´<_` )「なんでもいいや、飯奢るぜ」

( ´_ゝ`)「明日は雪の重みで家が潰れそうだな」

(´<_` )「俺のバイト先の近くにある作業小屋も潰れてて、
      仕事に行ってもしばらくは片付けが仕事だってさ」

( ´_ゝ`)「力仕事か」

バイト先はじーさんばーさんばかりだし、力仕事なら女性もいないだろう。
こいつの下半身に直結している脳みそが暴走する危険も低い。

212:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 01:58:20 ID:cXBc1ujc0
(´<_` )「ガ○トに行こうぜ」

( ´_ゝ`)「そんなシャツ着てる奴と一緒に外出したくないわ」

(´<_` )「どこがおかしいってんだよ」

( ´_ゝ`)σ「せめてそのピンクのシャツ脱げや」

(´<_` )「ピンク? ……白だと思ってた」

( ´_ゝ`)「は?」

(´<_` )「まーいーや、着替えたら出掛けるんだよな」

( ´_ゝ`)「いやどっちにしろ行かねーよ、雪掻き終わってねーし」

(´<_` )「後にすりゃいいだろ」

( ´_ゝ`)「後からなら手伝ってくれんの?」

(´<_` )「いいや?」

( ´_ゝ`)「凍え死ね」

213:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 01:59:17 ID:cXBc1ujc0
(´<_` )「いいじゃねーか、タダ飯なんだから釣られても」

( ´_ゝ`)「お前に渡した昼食代とタクシー代は俺の金なんスけど?」

(´<_`* )「あ、そーだ! セカ○ドスト○ートで結構イケてんの見つけたから、
      こんなん買ってみたんだけど! 兄者にもやるよ!」

じゃらっとネックレスやらピアスやらアンクレットetc.を取り出す愚弟。
氷点下の気温と同調して、俺のテンションも下がって行く。


( ´_ゝ`)「……それ誰の金だ」

(´<_` )「お前の、だからお前の分も買ったしこれで

除雪機君を弟の方へ向けて、エンジンをかける。
いつまでも品名呼びだと味気ないから名前をつけよう。みち子。


(´<_`; )「っちょ!?」

( ´_ゝ`)「お前さー足なんかあるから、下半身あるから余計な事すんだよ。
      いっそ無くして障害年金貰えるようになったほうがいいだろ」

(´<_`; )「金は欲しいけど車椅子にはなりたくねーよ!」

215:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:03:55 ID:cXBc1ujc0
弟のほうへ突進しようとするが、律儀に足元の雪を除雪するみち子。
杉の木の周りはハムスターの墓もあるし、後回しにしてたからな。


仕方がないので持ち上げて振り回そうとするが、回転刃が爪先を削る。
靴下がギザギザの部分に引っ掛かって、そのまま巻き取られた。


(;´_ゝ`)「あっぶねぇ死ぬ!」

(´<_` )「見てて面白いけどもうやめろよ」

仕方がないので、みち子のエンジンを切って両手で持ち上げる。
その体勢で、弟に向かってオーバースロー。肩がイカれそう。
当たらなくても、着地点は雪が深いのでみち子は大丈夫だ。


(゚<_゚ ; )「あっぶねぇ死ぬ!」

( ´_ゝ`)「避け方面白かったけど避けるなよ」

216:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:09:23 ID:cXBc1ujc0
腰まである雪に、ズブズブと自重で沈むみち子。
それを尻目にキレる弟。掘り出すのが苦労しそうだ。


(´<_`# )「ふざけんな死ね! 俺の良心を踏み躙りやがって!」

もうスーツの事などお互いの頭の中にはない。


( ´_ゝ`)「悪意でなかったとしても、厚かましさしか感じねーよ」

喧嘩の構えを取ろうと踏ん張ったら、左足が滑った。
具体的にはみち子に靴下をむしゃられた方の足が。


(;´_ゝ゚)「うぇっ!?」

(´<_` )「よっしゃ!」

片膝をついた体勢で碌な抵抗ができるはずもなく、
突進を受け止めて積もった雪の上に押し倒される。

押し返そうにも柔らかい雪のせいで体が沈む。これはやばい。

217:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:15:46 ID:cXBc1ujc0
(´<_`; )「うわ俺まで沈む! この辺ヤバ!」

(#´_ゝ`)「ならどけカス!」

(´<_` )「誰がどくかよ。やる気なくすまで抑え込んでやる」


いやいやいや窒息する。
その前に凍れる。
凍傷になる。

マウントされたせいで上半身は腹筋で起こせないくらい沈んだ。
両足は踏ん張ろうにも雪に沈むだけだ。殴ろうにも腕を抑えられている。
せめて顔がもうちょっと近けりゃ顎に頭突きかましてやるのに。


(# _ゝ )「ふんぐぐぐぐぐ……」

(´<_`# )「こっの馬鹿力が……」

力任せにしても状況は変わらない。全体重をかけて押さえ込んで来る。
重力が味方してる分、どうやったって相手が有利だ。

220:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:25:20 ID:cXBc1ujc0
腕に力を入れつつ考える。
周りの雪のお陰で思考はそこまで暴走してない。


雪に沈んでるとはいえ、ここまで体が沈むくらいの雪だ。
今日振り立てのものだから、そこまで固くはない。
雪の中でもそれなりに動かせるんじゃないか?

体力が切れる前に実行あるのみ。

弟と対抗する為に腕に込めてる力の向きを、地面へ変える。


(´<_`; )「うぉっとお!?」

(#´_ゝ`)「っしゃ!」

腕は簡単に雪の中に沈んだ。
抑えつけられている腕の力が緩む。

221:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:32:51 ID:cXBc1ujc0
その隙に両腕を上に引き抜く。
わかりやすく言うとバンザイの体勢。


(´<_`; )「げ」

(#´_ゝ`)「死ね」

バランスを崩して前に倒れる弟の頭を両手で抱え込み、全力で頭突く。
重力と俺が両手で引き寄せる力も加算されているのでかなりの威力だ。

下手にパンチするよりも頭突きのほうがダメージが大きい。
なんてったって固いからな。自爆する可能性も低くはないが。

悶絶する弟を横に蹴り飛ばして、雪藪から脱出する。
背中側から大分、雪が服の中に入った。寒い。冷たい。

222:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:40:42 ID:cXBc1ujc0
( <_ #;)「くっそ……この石頭」

( ´_ゝ`)「うっせぇ」

流石に喧嘩慣れしてるだけあって立ち上がるのが早い。

そのまま固い雪の上で互いに滑りつつ殴り合った。
傍から見れば、気温も相俟ってただの寒いコントだろう。

マウントを取り合い、尖ったつららで切り合い、氷玉を投げ合い、
アホみたいに殴り合って二人で門先まで転がっていったところ。


ブォォォオン.......バキュボキョ ズザザザザ


(゚<_゚ ; )「ふぎょお!」

(;´_ゝ`)「いだだだだ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「きゃあああああちょっとアンタ達!」

帰宅した我が母のマイカーに轢かれた。

223:名も無きAAのようです:2013/01/24(木) 02:43:29 ID:cXBc1ujc0
その後、人生で初めて救急車を呼んだ。
痛みに悶える弟と錯乱する母が使い物にならなかったのだ。

……あんな場所で喧嘩していた俺達が全面的に悪いのは判る。
車に乗ってると死角になるのは、全快した後に教えてもらった。


入院後の話は、また次回。




18.糸冬


拍手

170: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:27:14 ID:zQ/5PdyA0

17.しょうがないめんどくさいころそうそうしよう


唐突に映像がフラッシュバックする時がある。
それの大体がトラウマで、経験で、教訓だ。

義務教育時代の俺には、まだ物心がなかった。学習と発達障害らしい。
始めてきちんと他人を”自分以外の思考する人間”だと認識したのは高校から。
それまでは、多分動くマネキンだとか喋る人形としか認識してなかった。

だから、小さい頃は気に入らない事、「弟に似てる」と何回もしつこく言われれば、
相手が老人や女の子だろうが全力で殴りにかかっていた。なんて野獣だ。滅されろ。


(。><)「わーん! あにじゃくんがなぐったー!」

(# _ゝ )「うっさい! おまえがわるいんだ!」

人の沸点なんてわからないんだ、相手がやめろと言ってる内にやめるべきなんだ。
自分が悪い事をしての説教ならまだ判る。間違いを正す為にしつこく言うのだ。

171: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:28:03 ID:zQ/5PdyA0
俺の気に入らない事は、誰もが悪意なんてなく最初は軽く口にする。

それは理解できる。



俺がやめろと言っても、二回目は笑いながら、もしくは同じ顔で繰り返す。

まだ我慢できる。



三回目、俺が怒鳴って、大半はやっと止める。

それでも笑いながらしつこく繰り返す輩には、何かが耐えられなかった。

172: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:28:44 ID:zQ/5PdyA0
他にも、人の一般常識ではやらない事をやらかしてしまった記憶。
周りが一歩引いて行く記憶。全員が俺に視線を向ける記憶がある。

それをやらない事は常識で、周りはそれが恥ずかしいものだとわかっていた。
だから誰も俺に言葉で教えてくれる人はいなかったし、俺も何がおかしいのかわからなく、
それとは違う別のもので怒ってしまったのだろうと思い、何も疑問には思わなかった。
共感能力0の俺は、自己中なんてものを通り越した存在になっていたのだ。

ただ、当時の俺の攻撃性は全て弟に突っ走り、弟も真正面から殴ってきていたので、
他人との接触でそれが目立つことがあまりなかった。ある意味よかったのである。


人とズレていると自分で自分を実感したのは、高校を卒業してから。

少しずつ常識を覚えていって、小さい頃の記憶に魘される夜があったりもした。
ただ、そのトラウマのお陰で色々なものにセーブをかけられるようになったのである。

173: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:29:35 ID:zQ/5PdyA0
それ以外のトラウマは、主に糞馬鹿野郎の女性関係に巻き込まれた事だ。

知らない女に刃物を向けられたり、
知らない男から殺害予告メールが届いたり。

知らない女からクリティカルな金的貰ったり、
知らない男が彼女を返せと泣きついたり。

知らない女が俺の部屋に不法侵入してたり、
知らない男に人違いで喧嘩売られたり。

知らない女たちに部屋から出た瞬間十数人で囲まれ集団で糾弾されたりした。


女性関係のトラウマは全てが弟関連だ。
お陰様で、結婚願望や幸せな家庭なんて夢は無くなった。
ずっと独り身でいい。自分の遺伝子を継ぐゴミなんていらない。

更にここで親父の浮気なんてものもあり、その覚悟は加速した。

ついでに親父の浮気相手はバツサンだった。
バツサンの中身は、小学生、中学生、大学生の男共。
おいおいクズの遺伝子溢れ返り過ぎだろ。
そりゃ弟や俺みたいなカスしか生まれねえよ。

174: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:30:24 ID:zQ/5PdyA0
何でも、頭の中のものを吐き出す日記を書けばいいと。
嫌な記憶や嫌な出来事、妄想、自分の沸点が判明した状況、
そんなものをまとめてぶちまける場所を作ればいいと言ってくれた。

その人はm○x○に日記を書いていると言う。
早速招待してもらう。垢乞食卒業。
もうVIPで捨てアド晒して招待を希う日々は終わりを告げた。
彼女に感謝。話を戻す。

参考として日記を読んでみたが、沸騰した怒りが伝わって来る内容だった。
このまま試しに何か書いてみてと言われたが、m○○iには母が登録している。
流石にそんな地雷原に踏みこんでいく程あたまがよわい子じゃない。


そこで俺は医者に持って行けるように、紙媒体で日記を書く事にした。

一度うっかりTRPG仲間に見られた時は、「SAN値がガリガリ削られた」
「フォールアウトのガイガーカウンターの幻聴がした」「この日記くれマジで」
なんてありがた過ぎるお言葉を頂いた名状しがたい日記である。

無くなったら色々と困るのだ。それはもう色々と困るのだ。

最近は一般には理解しにくい、弟以外の自分の沸点などを書き出しているので、
どんな状況で自分はそれを回避すべきか、流すべきか医者が教えてくれている。
以前はただの愚痴吐き出し日記だったが、今はただのそれではなくなっているのだ。

175: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:31:07 ID:zQ/5PdyA0
最近はその日記に吐き出して落ち着いているが、無くなったらもう、
どうなってしまうかわからない。どうにもならないかもしれない。
意外と普通に代えのノートを購入して元に戻るかもしれない。

   ね ん が ん の に っ き      を手に入れる為に、
 こ ろ し て で も う ば い と る !  選択肢をするかもしれない。










( ´_ゝ`)「だからいい加減それをこっちに返してくれ、そしたら何もしないぜ。
      俺はもう怒る気力とかないから、渡してくれたらそのまま不貞寝する」

(;<_; )「信じられるか! だったら手に持ったそのバールをなんとかしろよ!
      そんなモン持って追い駆け回しやがって! いい加減に諦めろよ!
      エクスカリバールなんて突っ込みできる余裕なんてねーよ! アホか!
      お前が攻撃してきたら俺はこの日記とやらを盾にするぞ! 破れるぞ!
      この日記なんか書きやがったお前のせいで今日は悪夢確定だわ!」

( ´_ゝ`)「なんだ……お前が説明を強要するから話してやったのに。
      久々に長々と話を聞いてくれたと思ったら全然じゃないか」

176: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:32:00 ID:zQ/5PdyA0
なんと言うか、数年ぶりにこいつの涙を見た気がする。
まさか下半身もやらかしてしまったのかと凝視するが、こう暗くては判らない。


( ´_ゝ`)「マジ泣きすんなよ、引くわー」

臭いを嗅いでみるが、アンモニア臭はしない。埃の臭いだけだ。けむい。


(;<_; )「おっ、おま゙っ、お前の゙にっぎのせいだよ!」

( ´_ゝ`)「面倒くさいわーもういいわ、泣き止んだら会話しろよ、聞き取り辛い」

弟の攻撃に備えてバールを構えていたので、肩が重くなってきた。
逆手に持ってトントンと肩を叩く。鉄製だからか、硬過ぎて痛い。

向こうが丸腰、こっちは武器あり、しかも誰も来ない屋根裏。
用意されたかのような絶好のチャンスだが、肝心の俺に殺る気がない。
まあ泣いてるのを見ると、糞ざまあwwwと暗い愉悦は少し浮かぶ。

少なくとも、弟を目の前にしてつらつらと下らない思考を並べられるだけ、
今の自分の精神は安定している。やっぱり日記のお陰か、取り返さねば。

177: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:32:59 ID:zQ/5PdyA0
( ´_ゝ`)「泣き止んだ? 鼻啜った? 涙拭いた? ションベン漏らすなよ?
      ゆっくり深呼吸したら、お前の持ってるその日記を俺に投げ渡せ」

( つ_>;)「できるかボケ! したら殴りかかって来るつもりだろ!
      せめてお前もそのバールを手放せ! 安心できねーよ!」

( ´_ゝ`)「うーん、じゃあ俺もこのバール投げるから、お前もその日記投げろよ」

(´<_`; )ミ「ホントだな? 嘘じゃないよな? いっせーの、せ! で行くぞ」

( ´_ゝ`)「ああうん投げる投げる。じゃあ、いっせーのー……


 ピタッ


”いや、待てよ。このバールは弟に向かって投げつけてもいいんじゃないか。
むしろチャンスなのでは。”そんな考えが頭に浮かんで体の動きが止まる。

相手の動きも止まる。お互いの手には日記とバールが握られたままだ。
薬を服用しても、攻撃的な思考の流れだけはせき止められないな。

178: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:33:41 ID:zQ/5PdyA0
(´<_`; )「今、何考えた? 俺を攻撃しようとしなかったか?」

( ´_ゝ`)「ほう、よくわかったな。少し邪念が流れたんだ、気にすんな」

(´<_`; )「正直だな! 気にするわ!」

( ´_ゝ`)「特に嘘を吐くような場面でもないだろ」

いや、それにしても、何か体がダルい。これは薬のせいだろうか。
そろそろ決着をつけないとこのまま寝る可能性がある。早くせねば。


( ´_ゝ`)「なあ、このバールさ。お前じゃなくどっか別の方向に投げるから。
      お前は俺に向かってその日記を投げてくれよ。優しく。」

(´<_`; )「やっぱり俺に向かって投げるつもりだったのか……まあいいよ」

交渉成立。しかしまた邪念が入る。

”このバールを後ろに投げて、日記を手に入れてからバールのところにダッシュすりゃよくね?
そうすりゃ俺が先にバールを手にしてフルボッコに出来て圧勝じゃね? マジ俺頭良くね?”

オイオイ、いい加減にしろ俺の脳みそ。どんだけ攻撃的なんだ。マジで。
薬のお陰で俺の一部冷静な思考が邪念を諌める。なんだか分裂した気分だ。

179: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:34:45 ID:zQ/5PdyA0
(´<_`; )「おい,なんでまた止まってるんだ。投げるぞ? いいんだよな?」

( ´_ゝ`)「あー……うんとさ、このバール投げる方向指定してくれ。
      指差した方向に向かって投げるから、どこでもいい」

(´<_`; )δ「なら、そっち」

(  ´_ゝ)「了解」

そして、日記は俺の方へ、バールは屋根裏の暗闇の中に消えていった。
ついでに、右の袖に入れていたブツも飛んで行く。やべえ忘れてた。
ハッピーエンド。めでたしめでたし? んなワケない。後で回収しよう。


( ´_ゝ`)「これ返してもらいたいだけだったのに、あんなガチ逃げしなくてもいいだろ。
      従姉妹の下着盗んだ下着泥棒を思い出すくらいの逃げっぷりだったわ」

(´<_`; )「あんな日記を読んでる途中、音もなく背後に仁王立ちってさあ!
      しかも真顔で追っかけて来て危機感ちょ~煽りやがって!
      屋根裏に逃げ込んで閉じこもって撒くまで待とうとか思ってたら、
      バールでこじ開けて登ってきやがったんだぞ! どうビビるなと!」

( ´_ゝ`)「おお……そうして聞いてみるとまるでホラーの主人公だな」

(´<_`# )「他人事だと思って!」

( ´_ゝ`)「他人事じゃん、それに俺、逃げられると追いたくなるし」

180: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:35:28 ID:zQ/5PdyA0
もし屋根裏が密閉空間だったら、登るところの真下でずっと待っていた。
そんな事を伝えると一歩後ずさる。登る手間と交渉の面倒臭さを説く。

そのついでに、逃げられると追いたくなる心理も説く。


(´<_` )「獣かテメェは、理解できねえ」

( ´_ゝ`)「期待してない」

ページをパラパラと捲って欠けがないか確認する。あまり内容は見ないように。
主に錯乱時に書いてるから、そりゃあもう色々と酷い。読んだら怒りのスイッチが入る。
今はこれをうっかり読んでも、不貞寝で怒りを抑えられるくらいには成長した。


(´<_` )「それにしてもヒデーなこの日記。主に俺の扱いが」

( ´_ゝ`)「お前が主に喧嘩を売ってくるからな」

弟のついでに、周囲の人間も一緒に綴っている。
笑われた日の復讐の仕方とか、殺害計画とか殺した後の事後処理とか、
事後処理がバレた場合の俺の人間関係と世間体の変化のシミュレートとか。

それらをこの日記に吐き出しているお陰で、実行に移した事はない。

181: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:36:17 ID:zQ/5PdyA0
(´<_` )「つーか兄者、俺の事が好きなのか? 嫌いなのか?」

( ´_ゝ`)「は? 嫌いだよ」

硬直なんて間を置かず、考えるより先に口が答えを出した。
答えを発してから質問を頭の中で考えたが、やっぱり意味はわからない。
そんな答えがわかりきった質問をしてきた、弟の意図も。


( ´_ゝ`)「なんでそんな頓珍漢なことをほざく」

(´<_`; )「ほざくとか言うなや。てか、それに書いてあんじゃん。ちょっと貸せよ」

日記をぶん取る糞野郎。スイッチが入りかけたが、気合で抑える。
後でお前のお気に入りの靴にハムスターの糞を詰めてやる。


(´<_` )「ほらここだよ」
  _, 、_
( ´_ゝ`)「あぁん?」

182: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:38:19 ID:zQ/5PdyA0
指された箇所には、『ドキドキする』と書いてある。文の前後を繋げると、
『完全にスイッチが入った状態で弟者が目の前にいるとドキドキする、動悸が酷くなる』と。

勘違いされそうな文章、なのか? 確かにこれだけだと勘違いされそうではあるが、
その後には弟への恨み辛み殺害方法、そして自分に本気の恋愛対象が現れた場合の、
”速やかな排除の仕方”が綴られている。特に勘違いされそうな内容ではない。

( ´_ゝ`)「どこだよ」

(´<_`; )「いやそこであってるよ、今読んでるとこ」

( ´_ゝ`)「わかんねーよ」

(´<_`# )「あーもーだったら声に出して読んでみろよ!」

( ´_ゝ`)「『殺す殺す殺す殺す肘膝砕いて畜生のようにして

(´<_` )「悪かった、そっちじゃない」

( ´_ゝ`)「お前がおかしいと思う箇所をお前が教えろ、俺が書いたもんだ。
      自分では気付けない。指摘されない限り、俺は分からないから教えろ」

(´<_` )「真面目くさんなよ、まあ、ここだよ、ここ」

183: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:39:59 ID:zQ/5PdyA0
(´<_` )「あまり深くは突っ込まないけど、ここにさあ、マジで好きな奴ができた時の
      殺し方が載ってあんじゃん? なんでそんな事するのかマジ意味不明だけど」

( ´_ゝ`)「そりゃあ恋愛対象が邪魔だからだ。俺の人生には必要ない。いらない。
      そこまでして欲しくて狂えるものなら、そうなる前に自分で壊す。排除する。
      不確定なものを欲しがって、愛なんてものを返してもらってほしくて、
      それに思考を割いて、そいつに尽くして人生棒に振るなんて無駄過ぎる。
      まあ発狂時に書いたものだからな。もし現れた場合。恋愛なんて知らんし」

知人にストーカーになって逮捕された奴がいるしな。ザ・反面教師。
ああまで女を追い求めるようになるくらいなら、いないほうがマシだ。
止めようと諌める周囲もその中心も、第三者から見たら滑稽でしかない。

それに、恋愛で人生終了とか笑い話にしかならない。
今の世界でロミオなんか演じたら、ストーカー法かセクハラで捕まる。


(´<_` )「クソ饒舌だな」

( ´_ゝ`)「へえ、お前そんな言葉知ってたんだ」

(´<_`# )「皮肉じゃないところが更に腹立つ」

┐( ´_ゝ`)┌「あっそう」

(´<_`; )「もー」

184: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:41:34 ID:zQ/5PdyA0
(´<_` )「つーかそうじゃなくってな」

( ´_ゝ`)「なんだよ」

(´<_` )「この……俺の殺し方と、好きな奴の殺し方さあ、同じじゃん」

( ´_ゝ`)「ん?」

自分で読み返してみると、確かに同じ殺し方だった。
教室で、椅子で殴り殺す。シンプル。しんぷるいずべすと。
これは同じような状況での想定だったからこうなっただけだ。そのまま伝える。


(´<_` )「同じような状況でのソーテー……」

( ´_ゝ`)「ソテーじゃないぞ、ようはシミュレートとか将来設計だ」

(´<_` )「お前はどんな世紀末を生きる予定だよ」
     。
( ´_ゝ`)「北斗とか? スタルカーでもいいな、あ?」

185: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:42:24 ID:zQ/5PdyA0
薬が回ってきたのか、ふわふわする。少しずつ視界が狭くなる。
何が笑いの沸点に触れたのかわからないが、少し自分でおかしくなって笑う。

そろそろ寝たほうがいいかもしれない。睡魔が来る。抗えない奴が。
日記を取り戻す前に、錯乱状態になるまいと薬を飲んだのが仇になったか。

      。
( ´_ゝ`)゚「話はそれだけか? 俺は暗いしもう寝る」

(´<_`; )「寝んな! もう暗いがまだ5時だぞ!」

雪国の冬は日が短い。ついでに屋根裏なので寒い。やはり寝たい。
少しずつ後ろに、出口に下がって行く。開けっ放しだから落ちれば終わりだ。
下は押入れだから、布団がある。このままでもてきとうに寝れる。


( ´_ゝ`)「もう終わったんだろ? 寝るわ」

(´<_`; )「だからまだだっての!」

186: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:44:00 ID:zQ/5PdyA0     。
( ´_ゝ`)゚「へ? 他に何かあるのかよ。なら下で話せばいいじゃん」

(´<_` )「ここがいいんだよ」

( ´_ゝ`)「なんで」

肩を押されて強制的に目を合わせられた。
この糞野郎。人の嫌な事ばかりしやがって。

俺は人と目を合わすのが嫌いだ。
人の目が嫌いだ。
鏡に映った自分の目も嫌いだ。

長い時間は直視できない。
理由は眼球が気持ち悪いからだ。
白目も黒目もまとめてキモイ。
動物のは大丈夫なんだけどな。

小学生の頃に見たホラー漫画のせいだと、適当にあたりをつけている。

187: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:44:44 ID:zQ/5PdyA0
( ´_ゞ)「…………」

ここで逸らしたら野生動物よろしく負けなのか、いや負けでいい。眠い。
睡魔が強敵過ぎる。こんなところで寝たら凍死してしまう。俯いて目を擦る。


(´<_` )「俺さ、女癖悪いし盗癖あるし手癖悪いし金に汚いし」
     。
( ´_ゞ)゚「んな事知ってる、さっさと死ね……」

マジで眠い。肩に乗ってる手を振り払うが、今度は腕を掴まれる。


(´<_` )「独り立ちしてもあんたに金は集るし、割と迷惑かけるの好きだし。
      俺は死ぬまで一生アンタに色々な迷惑かけ続けると思うわ」

( ´_ゝ`)「マジかよ本当に死んでくれ」

スイッチが入りかかって一時的に目が覚める。睡魔め。
今度は日記に絶縁する妄想を書こう。実行用の日記に。

188: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:46:27 ID:zQ/5PdyA0
(´<_` )「俺が勝手に死んだら兄者はどうすんの?」

( ´_ゝ`)「葬式は金がかかるからしない」

(´<_`; )「式は必ずだぞ」
     。
( ´_ゝ`)゚「役所に全部任せる。一文たりとも払わない。そして人生を謳歌する」

常日頃から思っている事だ。自分の手を下すのが一番だが、
知らない場所で勝手にのたれ死んでくれても構わない。

お前が死体になったら歓迎するよ。盛大にな。

(´<_` )「フーン。そうか、俺は兄者が死んだら俺も死ぬわ」
     。
(  ゙_ゞ)゚「はぁ?」

189: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:47:22 ID:zQ/5PdyA0
もう開けない目が、更に上から塞がれた。感触からして衣服。
しかも両腕でがっちりホールドの上に両足を踏まれた。億倍にして返す。
実行用に書く。絶対に書く。靴の内側に隙間なく画鋲を仕込んでやる。
新しいアクセなんてぶっ壊してやる。何がクロ○ハーツだ。氏ねじゃなく死ね。

そんな思いとは裏腹に、薬で力は入らない。


(´<_` )「どうせ俺の将来なんて知れてるしぃ、女前にすると止まらんし。
      あのさあ、嫌がらせはもうちょっと軽くするからさ、前みたいに

( ; _ゝ )

自分自身の心配しかできないクズな思考回路が警報を鳴らす。
もう駄目だ。凍死してもいい。それ以上は聞きたくない。

俺は睡魔と薬の効果を脳内で悪魔合体させて、ワンランク上の何かを作り出した。
後は自分の意識を頭の奥に押しやって、何かに落とさせて終了。

体が気絶しても、暴走してこいつに殴りかかっていっても知ったことか。

190: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:48:42 ID:zQ/5PdyA0
こいつが何を考えてるかなんて俺はわからんし、
こいつも俺が何を思ってるかなんて知らんだろう。

当たり前だ。ここは漫画でも小説でも映画でもないんだ。
テレパシストでもないし、人の頭の中なんて分かるワケない。
そういうのは創作でしかできない。フィクションの世界だ。

俺が解るのは、こいつは女を前にすると、
下半身でしか動けないと言う事実のみだ。


(´<_` )「あれ? おい兄者、聞いてる?」

人に気を使うのなんて面倒くさい。
人の顔色を窺うのも面倒くさい。

こいつは今こう思っているだろうから、こうしたほうがいいだろう、とか。
察しなければ、空気を読まなければ、雰囲気を感じなければ、とか。
言葉の裏を深読みして解くのだって、遊びでしかできやしない。

思いも考えも、言葉や行動に移さなきゃ相手に伝わらないのに。
態度や視線で察しろとばかりで、誰も直接教えてくれない。

191: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:49:38 ID:zQ/5PdyA0
実の母が目の前で泥酔して、失禁脱糞してる時だって心配すらできなかった。
誰も世話する人がいなかったから自分が全部処理したが、心は凪いでいた。
多分、糞親父が母に向かって暴言を吐いてたのが自分の客観性を押したんだろう。
   「
津波が来た時だって、友人の心配一つせず弟の死を望んでいた。
周りに転がる有象無象の死体なんてそれこそどうでもよかったし、
色々と優しくしてくれたバイク屋のおっさんが死んでも哀しくなかった。

下宿先の大家、近所の婆さん、よく会うバスの運転手、パチンカスの知り合い。
ブランド欲しさに風俗で稼ぐ女友達。口下手だけど料理を教えてくれた先輩。
誰が死んでも悲しくないけど、涙だけは長年の訓練で無理矢理ひねり出せる。

クズの自覚はあるし、碌でなしの証拠もある、救えない奴なのは判ってる。
実行していないだけで、精神判断だけでいけば弟を上回るクズなのも知ってる。


ポジティブに考えれば、他人の心配ができないってのは、
それだけ自分の心につける傷が少なくなるって事だ。
俺の思考回路は、俺の精神に対して優しくできている。

自分の日常生活に関係のない支障のない奴の死をヒーヒー哀しんだり、
好いていると思ってた奴が実は自分の事を嫌っていたと知って食欲無くしたり、
友人の母親の首吊り死体を見てその場で吐きまくったりしないでいい。
                                」
それで薄情だ、冷血だ、鬼だ、人でなしだ、畜生だと言われてもいい。
鈍くていい。無くていい。そういう余計なモノはいらない。

192: ◆T/D40qQ./Q:2013/01/23(水) 23:52:32 ID:zQ/5PdyA0
酷い日々を過ごしてきたから、そういうのが麻痺してるんだと言った人もいた。

じゃあ麻痺が直ったら、その後に俺はどうなるんだよ。
色々な記憶から良心の呵責が始まって、罪の意識に苛まれて、
それから弟に生まれてきてごめんなさいと自殺でもするんか?

いっそ安い不幸自慢大会でも開いたらいいのかねえ。




意識を無くす最後の足掻きなのか、脳みそは暴走しまくった。






17.糸冬


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