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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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323: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:48:57 ID:8zvTfRZs0
22.そして二人だけに


茶柱が沈んだような病院の閑散とした休憩所で、
見慣れた後ろ姿を見つけたので声をかける。


( ´_ゝ`)「鬱田、またここに来たのか」

('A`;)「その言葉そのまま返すっての、お前こそ」

( ´_ゝ`)「あいつ苦手なんだろ? よく来たなって意味」

('A`)「自分の発言が全部ブーメランになってる事に気付け」

( ´_ゝ`)「あー……」

('A`)「やっぱ弟が心配なのか?」

( ´_ゝ`)「へ?」

('A`)「俺はカーチャンに頼まれて病院に来てるけど、
    兄者は自主的に来てるように見えるし……」

324: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:49:40 ID:8zvTfRZs0
さて、どう答えよう。YESかNOか。
嘘でも心配してるだなんてまだ吐きたくない。鳥肌が立つ。

しかし鬱田よ、俺があいつをぶち殺せる寸前まで行った騒動に、
何回か強制的に参加させられたってのに、この言い草。

やっぱ鬱田の中では、家族ってのが何を置いても優先される者なのか。
例え、性犯罪を犯して相手の人生をぶち壊しても家族は守るべきものだと、
相手を非難しても守るものと、そんな感じで思っていたりするんだろうか?

それとも、やっぱり兄弟がいないから、父がいないから、
法的にはともかく直接血の繋がった家族がいないから、
双子である俺に何らかの幻想を抱いたりしてるんだろうか?


('A`)「兄者?」

( ´_ゝ`)「あ、すまん。考えてた」

('A`;)「即答できないか」

( ´_ゝ`)「そうだな、無理だ。っつーかな」

('A`)「ん?」

325: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:50:33 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「お前が俺の立場だったら、あいつ許せるの?」

('A`;)「許せねえだろうけどさあ……」

( ´_ゝ`)「内藤は金玉捻り潰すっつってたぞ」

('A`;)「怖いこと言うなよ」

(;´_ゝ`)「内藤が言ったんだってば」

('A`)「ああ、うん、まあ、言うだろうな」

( ´_ゝ`)「もしお前があいつから俺のような事受けたら、
      その時どうする? 出来るだけ具体的に」

('A`)「お前みたいな事って?」

( ´_ゝ`)「うーんとな、それじゃあ」

実際にあった出来事でも話すか。

結構長くなりそうだったので、その辺の席に座らせた。

326: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:51:14 ID:8zvTfRZs0


高校三年、新設校だからピンキリ揃いの生徒に先生。
そこでのバイトは、親と教師の両方から許可が降りなきゃ駄目だった。

流石に、教師へのバイト許可を取る説明で『家の家計が苦しくて』、
なんてバッレバレな嘘は言えず、素直に小遣いが欲しくてと言った。
受験も近いし、今の状態の成績を維持する事を条件に、許可は降りた。
糞親父へは、自分で稼いだ金が欲しくて、と説明し軽く『おk』が出た。

ただ、働く場所は選ばせてもらえず、遠い親戚の造園所を手伝う事に。
コンビニなんかの接客業は自信がなかったから、そこでいいと決めた。


造園所で虫に刺されたり、虫を捕まえたり、虫をいじめたりしつつ、
ジャージで土と汗まみれになって仕事する。やりがいはあった。
動物アレルギーは酷いが、生き物は好きだったしな。鼬も狸もいた。

そこにいた雇い主のじいさんも懐が広いと言うか、良い人だった。
俺がうっかり逃げる鼠に気を取られて、追っかけまわしてスッ転んで、
鼠に遊ばれていた時も笑って見ていた。思い切り仕事中だったのにな。

枝切り鋏で腕を切った時も、病院まで連れてってくれた。
もしかしたら家からの圧力があったのかもしれないけど、
俺はその行いを優しいと思ったよ。面倒だったろうに。

327: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:54:54 ID:8zvTfRZs0
で、給料日。

その日は休日で、バイトもなくて、受け取りに行くだけの予定だった。

それで、軽く受け取りに来たといったら、驚いた顔されたよ。
それから眉間に皺を寄せて、『もう給料は渡した』なんてな。

訳がわからなくて説明を求めたら、向こうも様子がおかしい。

俺が来る前日に、何故か俺(?)が珍しく制服でここに来た事、
話がおかしかった事、じいさんを雇い主だとわからなかった事。

そんなに様子がおかしいなら金なんか渡すなよ、と、
目の前のじいさんに今更怒っても仕方ない。

犯人はもうわかっていたので、『弟が迷惑をかけました』
と頭を下げて、じいさんへの評価も下げて、そこを後にした。

328: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:55:36 ID:8zvTfRZs0
家に帰って、いたいけな老人を騙した詐欺師から
金を取り返そうとしたら、もう既に使ったとの事。


( ´_ゝ`)「で、鬱田はどうする?」

('A`;)「えぇえ~……」

( ´_ゝ`)「俺は真正面から喧嘩売ったよ」

('A`)「俺なら……諦めるかな……」

( ´_ゝ`)「マジ?」

('A`)「弟者に勝てそうにない」

( ´_ゝ`)「自分と同じ体格の奴なら?」

('A`)「カーチャンに言いつけて二人で抑え込む」

(;´_ゝ`)「そう来るか」

それはちょっと予想外だ。
可能性としてはあったけど。

329: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:56:30 ID:8zvTfRZs0
('A`)「お前は、その後どうしたんだ?」

( ´_ゝ`)「喧嘩が見つかって糞親父にボコられたよ」

('A`;)「容赦ねーな」

( ´_ゝ`)「なんで昔はあんなの尊敬してたのか謎」

('A`)「金は返ってきたのか?」

( ´_ゝ`)「どう言やいいんだろうなー、そこんとこ」

('A`)「?」

( ´_ゝ`)「えっとな」

330: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:57:30 ID:8zvTfRZs0
返って来たには来たが、俺の金じゃあない。
しかも、渡された状況が状況だ。


暴れて手がつけられないからって、縄でぐるぐる巻きにされ、
身動きとれない状態のまま秋の土倉で一晩放置された。
向こうはすぐ拳を収めたからと、普通に家の中。納得いかねえ。

飯抜きは割とあったので耐えれたが、水抜きは辛い。
身動きはとれないから、服に排泄物垂れ流しだしな。

それで精神的にも肉体的にも疲弊した状態で、朝になった。

父が扉を開き、やっと解放してくれるのかと思いきや、
ポケットに手を突っ込み、目の前に札束を投げられた。

『給料はないが、倍の小遣いやるからこれで我慢しろ』、と。

331: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:58:12 ID:8zvTfRZs0
商才はあるけど、クズだって言われてる親父の本性が判った。

俺の頭がおかしいのは遺伝の可能性もあるって聞いたけど、
多分、いや確実に糞親父からの遺伝子だぜ、これマジで。
人の気持ちを考えられないって部分、絶対そうだって。

嘘でもいいから、『取り返した』っつってほしかったよ。

”自分の力で稼いだ初めての給料”が欲しいんであって、
あんな剥き出しの札束が欲しいわけじゃあなかったんだよ。

しかも、あの泥棒は俺が代わりにボコったから許せと。
許せるワケねーよ。自分の手でぶちのめしたいんだよ。
自分の肌で相手の体温を感じる距離で殴り抜きたいんだよ。

結局、その日はまだ俺が暴れる気があるからって、
札束を目の前に置かれたまま丸一日放置されたな。

飯は、あの泥棒が笑いながら窓から投げ込んだ。
地面は土だから普通に汚れるし、椀はひっくり返るし、
食わせる気なんかゼロだよ。普通に嫌がらせだろうな。

殺意だって湧くさ。むしろ殺意以外の何を抱けと。
悔しくて悔しくて、何かが臨界点突破して涙が出たよ。

高校生の時に泣いたのは、あの一回きりだった。

332: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:59:00 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「こんな感じですな」

('A`;)「壮絶だなあ」

( ´_ゝ`)「そうか?」

('A`)「その代わりの小遣いって、いくらだったんだ?」

( ´_ゝ`)「40万くらいだったかなー」

゙(゚A゚ )

( ´_ゝ`)「あんな金、貯めとくのも取られるのも嫌だったから、
      休みの日使ってバイクの免許取りに全部使ったよ」

('A`;)「あ、そ、そう」

( ´_ゝ`)「うん」

('A`)「……」

( ´_ゝ`)「……」

沈黙。喋って喉も渇いたし、鬱田にジュースでも奢るべきか。

333: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 01:59:42 ID:8zvTfRZs0
('A`)「そういやさ」

( ´_ゝ`)「何?」

('A`)「キレるかもしんないけど、いい?」

( ´_ゝ`)「最近、割と沸点高くなったぜ」

('A`)「チラッと聞いたんだけどさ、お前ら、高校の時は、
    なんか、それなりに、仲良くて、共闘してたって」

( ´_ゝ`)「………………………………ああ」

('A`;)「間が長ぇ」

( ´_ゝ`)「いやあ、うん。さっき話した事が起きるまでは、それなりに」

('A`)「それなりか」

( ´_ゝ`)「嫌がらせっつーか、喧嘩はしなかったから、多分だけども、
      仲は良かったぜ。ただ一緒にいただけ、とも言えるけどな」

('A`)「うーん」

334: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:00:42 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「一緒にいじめっこボコしたのは共闘に入るかもしんねーけど」

('A`)「いじめっこ?」

( ´_ゝ`)「なんか双子ってだけで因縁つけてくる奴らがいたんだよなー」

('A`)「嘘吐け、お前ら逆にいじめる側だろ」

( ´_ゝ`)「鬱田、俺はお前にジュースを奢ろうと思って”いた”んだ」

('A`)「人生色々あるよね!」

(;´_ゝ`)「素直だな。嘘吐きよりはいいが」

('A`)「いちごオレキボンヌ」

( ´_ゝ`)「はいはい死語死語」

('A`)「まだ一部の板で生きてる」

335: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:01:42 ID:8zvTfRZs0
鬱田の所望したいちごオレと、俺が飲む用に適当な水を買う。

紙パックのいちごオレって、匂い嗅いだだけで吐気がするくらい甘いよな。
飲むと昇ってきた臭いで鼻が痒くなるし、とても飲めたモンじゃない。
甘いモノ平気な奴って、舌とか鼻とかどうなってんだろ。


( ´_ゝ`)「はーい、いちごオレ」

('A`)「兄者は水かよ、どうせなら味ついてるの買えよ」

( ´_ゝ`)「いいじゃねーか俺の金なんだし」

('A`)「なんだったっけ、その自販機使った心理テストみたいなの、
    どっかであったなあ……なんとか診断て言うの。なんだっけ」

( ´_ゝ`)「いや知らねぇよ」

紙パックにストローを差し、一息でズゴォと飲み干す鬱田。
ダイ○ンもびくっりの吸引力だ。内藤には負けるが。

336: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:02:28 ID:8zvTfRZs0
('A`)「でも、お前らがいじめられっこって考えらんね、特に弟者」

( ´_ゝ`)「まあ、正面からいじめっこが喧嘩売ってきたら買ってたから、
      殴り合いで一方的にやられっぱなしってのはなかったな」

('A`)「それただの不良の喧嘩の間違いじゃ」

( ´_ゝ`)「下駄箱に犬の糞、ロッカーに悪戯、サドル盗難。
      あと主に男子が聞こえるか聞こえないかのヒソヒソ。
      そういう手が届かんとこはどうにもならなかった」

('A`)「ああ、いじめだわ、つーか男子からなのな」

( ´_ゝ`)「そう、だから主に殴り合いが多かった」

('A`)「殴り合いとか俺には無理だわ」

( ´_ゝ`)「んー、お前の病気って特殊なんだろ?」

('A`)「特殊……あんまり見ない病気ではあるな」

( ´_ゝ`)「敗血症、だったっけ」

337: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:03:49 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「説明すれば、学校とかPTAとか教育委員会が、
      全力でいじめから庇ってくれそうな案件だけど」

('A`)「その診断降りたの、高校になってから」

( ´_ゝ`)「小中は?」

('A`)「体育教師にヒョロガリチビだからっていじめられた。
    皆の前で、一人で体育館一周とか、グラウンド一周とか」

( ´_ゝ`)「うっわぁ」

('A`)「俺の体、運動したって逆に症状悪化するだけだってのに、
    ヒョロガリなのは運動しないからだって言われたぜ」

( ´_ゝ`)「その時に敗血症って判ってれば訴えれたのにな」

('A`)「もう遅ーよ」

( ´_ゝ`)「そいつが死んだ時に御祝儀くれてやろうぜ」

('A`;)「やり過ぎじゃね?」

( ´_ゝ`)「俺からしてみれば鬱田が何もしなさ過ぎ」

('A`)「そ、か…………」

338: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:05:36 ID:8zvTfRZs0
ん? 今の空気は沈んでるんだろうか。
この状況。明るくすべきか。

いやでも、たまには暗い部分吐き出さないとな、ストレスになる。
鬱田の口が真一文字になってるから、こっちから話題振るか。


( ´_ゝ`)「そーいや、鬱田はこれ知ってる?
      内藤も実はいじめられっこだったんだぜ」

(゚A゚;)「マジで!?」

おっと、予想外の食い付きようだ。

339: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:06:36 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「マジマジ、中学生の時は本当のデブだったから、
      主に体の事バカにされていじめられてたよ」

('A`)「小学生は?」

( ´_ゝ`)「ずっと全部同じ学校だったけど、実は小学生の時は
      一言も会話したことなかったから、そこんとこわからん」

('A`)「そうか……うん、小中高といじめられてるのは俺だけか」

( ´_ゝ`)「全員にいじめられ経験があるんだから気にすんなよ」

('A`;)「いじめられ経験ってなあ」

340: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:07:18 ID:8zvTfRZs0
('A`)「にしても、兄者はどんな事されたんだよ」

( ´_ゝ`)「さっきのと、カツアゲ、未遂と、リンチ、未遂、パシリ未遂。
      あと万引きの濡れ衣未遂と、黒板消し背中に当てられたり」

('A`)「ほぼ未遂ばっかじゃねーか」

( ´_ゝ`)「よく俺らに懲りもせず突っかかってきたいじめっこがさ、
      体がデカいだけの頭足りないバカだったんだよねー」

('A`)「体デカい時点で俺は無理」

( ´_ゝ`)「しかもそいつ、廊下や教室でトイレブラシ振り回すんだぜ。
      ブラシの水滴がそこかしこに飛び散って、汚ぇわ汚ぇわ。
      休憩所の机は全部ひっくり返すし、全員に嫌われてたよ」

('A`)「うわぁ、先生はそれ見て何も言わねーの?」

( ´_ゝ`)「怖い先生の前では、何もやらなかったな」

('A`)「クズい」

341: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:08:02 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「周りにいた取り巻きも、そいつがいない時は、
      『あいつマジきたねー』って言って笑ってたし」

('A`)「どっちにしろ近寄りたくねえ」

( ´_ゝ`)「俺だってそうだったよ。女子って不潔な奴を嫌がるから、
      女子グループの陰口はあいつの独占市場状態だったな」

('A`)「独壇場」

( ´_ゝ`)「そうとも言う」

('A`)「つーか男子も嫌だろ」

( ´_ゝ`)「だろうな。取り巻きは、あいつの奇行見たくて、
      近くで見える場所にいただけかもしれんね」

('A`)「そいつの鈍さがスゲー」

( ´_ゝ`)「自分を中心に世界が動いてると思ってる時は、
      周りが自分をどう見てるかなんて気にしないさ」

('A`)「……経験者は語る?」

(  ´_ゝ)「気付いた瞬間、夢から覚めたような気分だったなあ」

342: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:09:06 ID:8zvTfRZs0
('A`;)「こうして話してると、お前も全然そうとはわからんぜ。
    ネットでよく言われてるようには見えないから大丈夫」

( ´_ゝ`)「……ん?」

('A`)「ど、どうした?」

( ´_ゝ`)「俺、今、慰められてるの?」

('A`)「わからんのか……」

(;´_ゝ`)「すまん、前後が読めないとどうにも」

('A`;)「いや、気にせんでくれ、そうか、こういうのか」

( ´_ゝ`)ノ「冗談は一応理解できるよ! 自分視点で少しだけな!
      似てる冗談を言われた経験がなかったり、知らなかったり、
      脈絡なく言われると全く理解できずに正面からツッコムけど!」

('A`;)「あんまり病院で声をあげるなよ! 視線が集まるだろ!」

(  ´_ゝ)「誰もいないよ?」

343: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:10:01 ID:8zvTfRZs0
('A` )彡

ミ( 'A`)

('A`)「本当に誰もいねえ……」

( ´_ゝ`)「鬱田の声がぼそぼそして聞き取りにくかったのって、
      周りに人がいると思って意識的に抑えてたからか?」

('A`)「そういう訳でもないけど、それでいいや。
    さっき兄者が話してたやつの続きしようぜ」

( ´_ゝ`)「いじめの話ね」

('A`;)「やめろよ! 俺達がいじめてたみたいにも聞こえるだろ!」

( ´_ゝ`)「何をどうしたって鬱田はいじめられっこにしか見えないから、
      そこんとこは安心しとけよ。胸を張っていいんだぜ」

('A`)「え? 俺フォローされてるの?」

( ´_ゝ`)「うん」

('A`)「無自覚の悪意が辛い」

(;´_ゝ`)「貶してるつもりはないんだけど……いいや」

344: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:11:19 ID:8zvTfRZs0
気を取り直して、話を再開。


( ´_ゝ`)「さっきの話、体がデカいだけのバカって奴。
      そいつだけ卒業までしぶとく突っかかってきてたよ。
      もういじめの対象変わってたのに、飽きずにずっと」

('A`)「弟者にも、か?」

( ´_ゝ`)「だな。便器の水かけられたっつって、すげえキレてた時あった」

('A`)「その時はどうしたんだ?」

( ´_ゝ`)「帰りに二人でボコった」

('A`)「詳細を」

( ´_ゝ`)「そいつの帰り道に草藪があったから、そこに二人で隠れた。
      んで、自転車で通りかかったから弟が自転車の前に出て、
      相手が減速した隙に俺が蹴り倒した。あとはフルボッコ」

('A`)「わあ……」

345: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:12:10 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「それから自転車パクって、二人乗りでゲーセンある街まで行って、
      ゲーセンの前に鍵かけないで乗り捨ててきた。帰りはタクシー」

('A`)「どっちがいじめっこだよ」

( ´_ゝ`)「先に因縁つけて、言い返したら殴りかかってきたのは向こうだ。
      やり返して何が悪い。反撃を予想しないアホが悪いんだよ」

('A`)「反撃ねえ、俺も筋肉あればなあ」

( ´_ゝ`)「言うだけ言ってみるのもアリだよ」

('A`;)「勇気が」

( ´_ゝ`)「よく、抵抗したら更にいじめが激しくなるとか聞くが、
      無抵抗なら無抵抗で、『こいつなら何してもいい』
      って思うからな。やっても変わらんかもしれんけど」

('A`)「なんかさあ、そういう時だけいいよなあ。双子。
    二人でいじめっこに立ち向かったんだろ?」

(;´_ゝ`)「そんな綺麗な言葉では収まらねえなあ。
      二人の時点で2対1の物量作戦できるから」

('A`)「え?」

346: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:12:52 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「登校初日で因縁つけてきた奴らにさー」

('A`)「初日からいじめとかやってられない高校だな」

( ´_ゝ`)「一週間くらいはいじめのターゲット探しみたいなモンなのにな」

('A`)「それはそれで嫌だ」

( ´_ゝ`)「救いは無ぇよ? そいつら次の日から一人ずつ呼び出して、
      教師の目の届かないとこで二人でボッコボコにした。
      呼び出しに応じない奴は帰り道で待ち伏せした」

('A`)「不良じゃねーか」

( ´_ゝ`)「ちゃんと最初は話し合いしましたよ? やめろって」

('A`;)「うん、まあ、いじめって言葉では治まらないよね……」

( ´_ゝ`)「教師に言い付けても体罰禁止の時代に
      入っちゃってたから無意味だったなー」

('A`)「その時代で、何もしてないのに教師にぶっ飛ばされた」

( ´_ゝ`)「そこは復讐できるんだとポジティブに考えようぜ。
      あいつの車のバンパー壊す理由ができた、とか」

('A`;)「俺そんな不良思考じゃないから!」

347: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:14:03 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「不良じゃねーよ俺は成績優良児だよ」

('A`;)「俺だって成績はなんとか上位キープしてたよ! つか、
    そういう意味じゃなくて、すぐに暴力に走るっていうその考えが

( ´_ゝ`)「聞きたくなーい」

('A`)「ちょっと聞けって」

( ´_ゝ`)「何もしなくても殴られた家庭で、どう暴力を覚えるなと」

('A`;)「うーん……それは難しいな」


ピーンポーンパーンポーン


( ´_ゝ`)「「!!」」('A` )


業務連絡、業務連絡、コード・ホワイト、3階ナースステーション

348: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:15:44 ID:8zvTfRZs0
( ´_ゝ`)「……」

('A`)「3階、叔父さんいる階じゃないな」

( ´_ゝ`)「よかったね」

('A`)「でも弟者いなかったっけ?」

( ´_ゝ`)「……いたっけ?」

('A`)「いたよね」

( ´_ゝ`)「気の所為じゃないかなあ」

('A`)「間違いないよね」

( ´_ゝ`)「鬱田の記憶違いだったりして」

( 'A`)ロ「カーチャンのメモにちゃんと3階ってあるな」

(;´_ゝ`)「お前のカーチャンがミスったんじゃね?」

('A`)「いや、前はこれ見てちゃんと辿り着いたから」

349: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:16:53 ID:8zvTfRZs0
('A`)「ちょっと行こうぜ」

( ´_ゝ`)「やだ」

('A`)「なんで」

( ´_ゝ`)「面倒」

('A`)「おい」

( ´_ゝ`)「むしろ何故行かなければならないのか知りたい」

('A`)「心配じゃないのか?」

( ´_ゝ`)「死んでほし……」


Σ(;´_ゝ`) ハッ


いやいやいや、待て待て俺。

脊髄反射会話が長引いたから、すっかり考えなくなってた。
ここで肯定してどうすんだ。いやでも否定するのもアレだし。

350: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:17:56 ID:8zvTfRZs0
(;´_ゝ`)「くっ、……あるない?」

('A`)「迷いはわかった」

(;´_ゝ`)「ぐ」

('A`)「迷ってるくらいなら行こうぜ」

( ´_ゝ`)「やだよ」

('A`)「弟者が死んでるかもしれんよ?」

( ´_ゝ`)「死んでる感覚がしない」

('A`)「生死の境を彷徨ってるかもしれないぜ」

(*´_ゝ`)「あっ! それもそうか!」

もし死にかけていたら、蹴りでもお見舞いしてやろう!
諸々の責任は死にかけるまで追い詰めた奴にやればいい。

まあ、生死の境にいる感じも受けないんだがね。一応ね。

351: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:20:16 ID:8zvTfRZs0
('A`;)「えー、そこでそんな喜色満面で立ち上がんの?」

( ´_ゝ`)「何か?」

('A`)「俺としては『死んでるかもしれないよ、心配じゃないの?』
    って言うニュアンスを込めたつもりだったんだけどさあ」

( ´_ゝ`)「基本的に言葉通りに受け止めるよ」

('A`)「そうだった……」

( ´_ゝ`)「行こうぜ」

('A`)「結果オーライだけど腑に落ちねえ」

352: ◆T/D40qQ./Q:2013/02/09(土) 02:21:16 ID:8zvTfRZs0
そして行った先では、二人の見舞い客らしい女のキャットファイト。
しかし、髪の毛振り乱して、般若のような形相で叫ぶ様子は、
可愛らしい猫に例えれたモンじゃない。良くて妖怪の山姥だ。


( ´_ゝ`)「おい鬱田、帰ろうぜ」

('A`;)「いやいや、こんな事になっちゃってるなら、
    やっぱ弟者の無事を確認したほうが……」

( ´_ゝ`)「無理、俺は逃げる。人違いで刺されるのは嫌だ」

('A`)「おいおい」

( ´_ゝ`)「じゃな」

('A`;)「俺も置いてくなよ!」

鬱田の足音の後ろに、車輪が回る音がするのは気のせいだ。
うん、気のせいに決まってる。悪夢の幻聴か何かだな。




22.糸冬


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