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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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391:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:38:17 ID:/Sp4eqjE0
25.波動ベクトルが行き着く場末感って



最近の、怒涛の見舞い(?)ラッシュも控えめになった。

糞関係の男友達が何故か一人も来ないところを見て、
林檎を剥きつつ一人含み笑いをするのも飽きて来た。

鬱田はこっちから連絡するのもアレなので、
相手からのメール待ち、出方待ちとしている。

しかしあれだ。笑いを堪えているせいで、
林檎が上手く剥けない。ナイフが滑る。


(´<_`# )「お前、それで笑い堪えてるつもりじゃねーよな」

(;*´_ゝ`)「えっふぇ? 何が」

392:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:40:27 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「さっきまで体丸めて腹抱えて床転げ回って、
      死に損ないの虫みてーに痙攣しててさあ」

( ´_ゝ`)「俺そんなに笑ったっけ」

(´<_`; )「笑ったっつの、いきなり何の脈絡もなく」

( ´_ゝ`)「覚えてねえ」

(´<_` )「さっきからそのふじ全然むけてねーだろが、
      なんなの? まだ皮だらけなんですけど?
      仮性包茎ってか真性包茎のレベルだぞ」

( ´_ゝ`)「まずはテメーのを輪切りにすっぞコラ。
      このナイフ慣れないから滑るんだよ」

(´<_` )「林檎むいてくれるってとこまではスゲー……こう、
      感動してたのに、散々じゃねーか、どうしてくれんだ」

( ´_ゝ`)「何がだよ」

(´<_` )「俺のお前への期待だよ」

( ´_ゝ`)「ウジにでも喰わせとけ」

393:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:41:11 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`# )「もういいわ、俺がやる」

( ´_ゝ`)「へいよ」

剥きかけの林檎にナイフをドズッと刺して、クソに手渡す。

顔を見ると、口元が引き攣っていた。
どうせなら手にぶっ刺しときゃよかったな。


(´<_` )「あ……なんか俺、さっきまで麻痺してたわ。
      なんで兄者に普通にナイフ持たせてたんだろ」

( ´_ゝ`)「喧嘩してねえから油断してたんじゃね?」

(´<_` )「それもあるけどそれだけじゃねーよ、まあいいや」

無言で林檎を剥き始めるのを見て、林檎に何か注射しとくべきか、
ナイフの刃の部分に何か塗りつけておくべきだったかと思案する。

クソッタレな何もかもをさっさと終わらせたいんだったら、
林檎を剥くより相手の皮膚でも削いだほうがいいのは判る。

つーか、さっきまでよくある介護風景の真似をしようとしてたんだよね。
病人のいるベッド脇で、林檎を剥いたり、林檎を擂ったりするアレ。

394:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:41:54 ID:/Sp4eqjE0
弟を甲斐甲斐しく世話する心優しい兄を演出しようと、
近くの無人店から一袋4個100円の林檎まで買って、
家からこいつのナイフまで持って来て用意したのにさ。


(´<_`; )「な、なんだよ。そんなに見んじゃねーよ」

( ´_ゝ`)「……いや」

なんで病人が自分で林檎剥いてんだろ。

あのナイフの柄は木製なんだから、どうせなら、
彫刻刀でウンコとでも彫ってやればよかったな。


(´<_` )「なんでずっと手元見てんだよ」

( ´_ゝ`)「いや」

なんだろう。何となく渡しちまった。早計だった。
手元が空いてしまったので携帯を取り出すが、
特にこれといってやる事もやりたい事もない。


(´<_` )「そんな見られるとやりにくいんですけど」

( ´_ゝ`)「いや」

395:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:43:43 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「俺の話聞いてる?」

( ´_ゝ`)「右から左」

(´<_`# )「お前の耳から豆腐が出るのか」

( ´_ゝ`)「はあ?」

(´<_` )「なんだっけ、バカ豆腐とか言う諺……」

( ´_ゝ`)「馬耳東風」

(´<_` )「ばじとうふう?」

( ´_ゝ`)「馬、耳、東、風、な」

(´<_` )「…………」

( ´,_ゝ`) プッ




゙(´<_` ) ショリショリ

( ´_ゝ`)゙ ピッピッ

396:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:45:12 ID:/Sp4eqjE0
5分後。

林檎を丸々一個剥き終えて、そのまま齧り付く猿。
丸かじりするなら、皮を剥いた意味ないんじゃないの。


(´<_` )「あーなんか虚しくなってきた」

( ´_ゝ`)「足吊ってる器具の位置、高くするの手伝おうか?
      そのままだと、ちょっと首には届かないだろ?」

(´<_` )「迷わずぶっ殺そうとすんな」

( ´_ゝ`)「虚しいんだろ? 生きる意味を見出せないんだろ?
      主に俺の精神の為に早く死ねよクソボケカスが」

(´<_` )「なんでここまで罵倒されなきゃいけねーんだよ」

( ´_ゝ`)「テメーの日頃の行いだクズ」

(´<_` )「最近はずっとベッドの上だっつの」

( ´_ゝ`)「ずっとベッドの上にいても俺から変わらず
      こんな扱いを受け続けるってどんな気分?」

(´<_` )「怪我が治ったら倍返し」

( ´_ゝ`)「やっぱ殺してやる」

397:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:45:59 ID:/Sp4eqjE0
ここは個室、手負いの相手に逃げ場はない。
まだ車椅子移動の上に、出入り口は俺の背後だ。
ぶん殴ってやろうと拳を振り上げて立ち上がる、が。


(´<_`; )「なんだよ、やんのか? やんのか?」

( ´_ゝ`)「あー……」

ここで殴ったら、優しい兄(藁)も糞もカスもなくなるな。
いやでも、なんか偉い人が叱る事も優しさだっつってた。
一発だ。一発だけなら許される。一発だけなら誤射になる。


(´<_`; )「俺は怪我人だぞ! 手加減はしろよ!」

手加減は無理だ。どうやったって全力になる。


(#´_ゝ`)「ふぎぎぎ」

(´<_` )「握った拳の隙間から血が見えるんですけど……」

殴りたい気持ちを、拳を握り締めて押さえ込む。
切ってない爪が手の平に刺さったが、これくらい。

398:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:47:05 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`; )「病院でわざわざ怪我してんじゃねーよ!
      もうナースコール押すからな! いいな!」

( ´_ゝ`)「押すんじゃねーよ」

取りあえず、怒りの原因を視界からシャットアウト。

さっきまで目に映っていた景色を頭の中に転写して、
ベッドの上にいた奴を頭の中で落ち着くまで殴り続ける。


(´<_`; )「なんで構えたまま静止してるの?
      力溜めてんの? 怖いんですけど」

( # _ゝ)「あ゙ぁ?」

ヾ(´<_`; )「その手、下ろして。ゆっくり座って、そうそう」

目を瞑ったまま椅子の上で姿勢を正す。

出入口、椅子、ベッド、窓と一直線に並んでいるので、
椅子に座ってると太陽の光がマトモに目に入った。

あー冬の昼の日射しは眩しいな。瞼の上からでもガンガン来る。
これで空気が暖かけりゃ昼寝に最高なんだけどなー。

399:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:48:20 ID:/Sp4eqjE0
そうだ。寝よう。
ベッドなら目の前にあるじゃないか。

布団はベッド下にあるから日に当たる事はないが、
ベッドの上ならさっきからカンカン照りになっている。

昨日、電話で長岡の風俗体験レポートを深夜に3時間報告され、
あんまり睡眠を取れていない。夢も夢精できない悪淫夢を見た。


( ´_ゝ`)「ちょっと端に寄れお前」

(´<_` )「はい?」

すっとぼけている内にナイフを取り上げ、遠くに置く。
天井から吊り下げている邪魔な足を場外に落とす。


(´<_`; )「うお何すんだ!」

靴を脱いでベッドに上がる。布団を奪う。枕も奪う。


(´<_`; )「おま!?」

( ´_ゝ`)「どけ早く」

400:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:49:06 ID:/Sp4eqjE0
同じ場所で寝るくらいなら、今はもう大丈夫だ。多分。

初めての泊まりの日、ギプスで固めた足をガン見しながら、
「こいつは怪我人こいつは怪我人こいつは怪我人こいつは」
と口の中で数百回唱えて強く自己暗示をかけたからな。

途中で、こいつの女友達()らしき奴も見舞いに来たが、
息を飲んだような悲鳴をあげてすぐに逃げ帰って行った。
キチ行為は意外といい修羅場回避手段かもしれない。
お陰でベッド下から針を突き刺そうなんて衝動も我慢できた。

ふとした拍子、無意識の隙間に拳が出ることも少なくなった。
渡そうとした見舞い品を、顔面に投げつける事もなくなった。
あいつの好きな本を目の前で真っ二つにする事もなくなった。

「おかわり」と弟から手渡された椀に飯をよそおうとして、
ナシュラルに足元のゴミ箱に白米をシュートしてしまい、
意味もわからずおかしくなって狂ったように笑っていたら、
いつの間にか精神科の診察室に体が搬送された事も、
あれ以降は、一応、ない。

うん、あれは酷かったな。拘束されるなんて初めての経験。
ベッドにベルトでギッチギチに縛り付けられるなんて経験。

抜く時の想像で空想の女相手にやることは多いが、
まさか現実で自分自身がされる立場になるとは。

思考脱線。

401:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:50:01 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`; )「何する気だ! 何かするのか!?」

( ´_ゝ`)「寝る」

(´<_` )「へ」

( ´_ゝ`)「眠る」

(´<_` )「は?」

( ´_ゝ`)「おやすみ」

ガラス越しとはいえ、冬の刺すような日射しはきつい。
なので、布団を頭まで被って団子虫状態になる。

光は軽減されていい感じだ。
尚、カーテン引けよとの突っ込みは受け付けない。

生ゴミのほうを向けば顔に日が当たることはないが、
そんなのは例え死んでも狂ってもごめん被る。

402:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:52:00 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「何してんの兄者」

( ´_ゝ`)「寝るんだよ」

血で汚れないように、タオルで手を縛る。
最後に、枕に乗せる頭の位置を微調整。
なんか抱くものが欲しいけどここは我慢。

よし、寝よう。


(´<_`; )「やっべぇ、ギプス重っ」

(´<_`; )「ちょ、兄者、ちょっと手ぇ貸し」

(´<_`; )「おち、落ちる、落ち、るっ!」


ドサゴゴッ


背後で、ギプスの重さに耐え切れず何かが落ちる音がした。
ベッド下には布団もあるから、そっちで寝るのも大丈夫だろ。

403:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:52:57 ID:/Sp4eqjE0
(´<_`# )「そこで寝ていいから手ぇ貸せこのアホウ」
     。
(  _ゝ)゚「下の布団で寝ろよ……」

(´<_`# )「俺のベッドだぞ」
     。
(  _ゝ)゚「病院のだよ……」

(´<_` )「検温の時どーすんだ」
     。
(  _ゝ)゚「今日はもう来ない……」

(´<_` )「マジか。あ、でも午後に毒男が来るってよ」
     。
( ; _ゝ)「……マジ?」

(´<_` )「マジ」

うーんメンドクセェ。
つか、なんで来るんだ。
知らんかった。

404:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:53:39 ID:/Sp4eqjE0
ま、さしたる問題はないな。
ここで寝てりゃ適度に何か勘違いしてくれるかもしれん。

その時、今ベッド下の男として都市伝説化してる奴が、
自力でベッドに戻ってようが戻れていまいが関係ない。

前者なら仲良くなったとアピール出来るかもしれないし、
後者なら今まで通りの仲違いだと思うかもしれない。

寝てても、内藤が付属品で来れば、勝手に起こすだろうしな。


(´<_` )「寝るのか?」

(  _ゝ)「ねる」

日射しで温まった布団がイイ感じだ。

こいつさえ俺の現実からいなくなれば、
この温もりを心から享受できるのになあ。

405:名も無きAAのようです:2013/02/16(土) 15:54:27 ID:/Sp4eqjE0
(´<_` )「はー今年のクリスマスは病院か……」

(  _ゝ)「ざまあ」

(´<_` )「もう俺の女寝取んなよ」

(  _ゝ)「するかボケ」




25.糸冬


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