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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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ブーン系空気作者のブログ
クトゥルフやムカデが出るので苦手な方はバック
基本的に自作の登場人物はAA体基準です

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追記に自作品格納

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458: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 00:04:25 ID:rixhaq6U0

リハビリ




駅裏の路地でホームレスが話している。
でかい台風が来るのが『ラッキー』だと。
震災時の配給目当てか? と思ったが、会話は予想より上を行った。

「ありったけの毛布と段ボール集めて空きビル籠るべ」

「んだんだ。台風さえ来ればメシ食いながら南さ行げる」

「ブルーシート用意したば。これとそれとば交換しでけ」

「それとばけ」

「ん」

「台風こぢまでちゃんと来てけねがなー」


クソ田舎のクソ方言のクソ訛りが酷い。総じてクソ。

459: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 00:17:59 ID:rixhaq6U0

東京弁に翻訳ついでに箇条書きにまとめて、ついでに足りない部分を細くすると、

・台風来てる間は空きビルに籠ろう
・寒いから毛布と段ボールを用意しよう
・水対策にブルーシートも用意した
・災害があったらメシも配ってくれるしラッキーだぜ
・それ食いながら、避難所にお邪魔しつつ南下しよう!
・なんせそろそろ冬が来るしな! 南に行かないと死ぬ!

と言う事だ。

最後のやり取りは何かの取引である。
「それとばけ」とは、「それ」という何かを差す言葉。
「とば」接続語。「け」寄越して下さい。に分類される。

津軽弁の「け」は厄介で、
それを「くれ」、これを「食え」、あっちに「行け」だの前後の文章で激しく意味が全く異なる。
日本語とは違う独自の言語として、継ぐ者のいない消滅危機言語に指定されても驚かない。

なんで本州と地続きなのに、これだけ言語の壁があるんだ?
ブルーフォレスト爆発しろ。台風で吹き飛んで千葉の隣辺りにワープしろ。

(´<_` )「はー……家無ぇ奴ら、ゴキブリ並の生命力だな」

そして俺は、何でコイツと出歩いてるんだろう。
今すぐ突発的で局地的な竜巻とか発生して、こいつだけ上空に巻き上げられてくんないかな。

460: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 00:30:46 ID:rixhaq6U0

( ´_ゝ`)「だからこのクッソ寒いド田舎でも生きていけるんだろ」

(´<_` )「納得した……そういや、今ので思い出したんだけどさ」

( ´_ゝ`)「何? 金貸してとかなら人目も憚らず殴るぞ

(´<_` )「違う違う。東京って、ホームレスが凍死したニュースが流れるんだぜ」

( ´_ゝ`)「へえ、すごいな」

東京ほど建物が集まってると、暖を取る場所も沢山あるから凍死体が出にくいのか。
やっぱ珍しいものってニュースになるんだな。
凍傷も凍死体もそこまで騒ぎ立てるものじゃないから分からん。

461: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 00:36:56 ID:rixhaq6U0

こっちだと、ホームレスは越冬に失敗するとよく凍って死んでるしな。
春に雪の下から死体が見つかる事もある。
それが認知症の徘徊老人かホームレスかは調べてみないとよく分からない。

ボケてんのに行動力あり過ぎて扱いに困ってる老人がいたら、北に引っ越してくればいいよ。
勝手にドア開けて出てくのを見送って、てきとーに警察に連絡して、探すフリしたら、
春にはその辺の雪の下から冷凍されて出てくる。
長々と治療費をかける情がないなら、さっくり葬式代だけ払ってお別れすんのオススメ。

(´<_` )「お前も、死体と間違われてブルーシートかけられてた事なかったっけ?」

( ´_ゝ`)「よくそんな昔の事を覚えてるな。あれは死体に間違われたんじゃなく、
      飛んできたブルーシートが調度良く俺のとこで引っかかっただけだろ」

(´<_` )「死体に間違われた方が面白いだろ」

( ´_ゝ`)「面白さ優先して現実を改変するな」

462: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 00:48:57 ID:rixhaq6U0

うーん。やっぱり違和感があると言うか、落ち着かない。
据わりが悪い。宙に浮く感じとはまた違う。
納得いかないと言えばいいか、すっきりしない、はっきりしない。

ここはもう本人に聞いてみるしかあるまい。

( ´_ゝ`)「お前さあ……よく俺と普通に話せるよな」

(´<_` )「あ、何? また何か兄者のキゲンに触っちゃいました? 短気が過ぎる~」

( ´_ゝ`)「うるせえ煽ってくんな。そうじゃなくて、俺お前に結構やべー事したなって自覚あるんだけど、
      よく普通に隣歩いて、こう……普通に、前みたいに話せるよな。俺なら警戒して無理だ」

(´<_` )「めっずらしい。兄者が誰かの視点に立って考えてる。今回の台風は直撃だな」

( ´_ゝ`)「真面目に返せよ。俺が真面目に言ってんだから」

(´<_` )「俺がこう言えばコイツはこう返してくれるだろうって言う、謎の自信なんなの?
      クソムカつくから俺に対して発揮されるその目線やめろや」

( ´_ゝ`)「うーん」

472: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 08:08:24 ID:rixhaq6U0

上手い伝え方がないか言葉を考えていると、先にクソが口を開いた。

(´<_` )「俺も普通にしてるワケじゃねーよ。お前と会うまですげー怖かったし」

( ´_ゝ`)「へえ」

(´<_` )「でもなー。何も考えてないような顔でボケっと公園の時計見上げてるお前見たらさ。
      ぐちゃぐちゃ考えてた自分が無茶苦茶バカらしくなって、いつもみたいに話しかけた」

( ´_ゝ`)「そっか」

(´<_` )「よくよく考えなくても、今まで腕とか脚とかボキボキ骨折してたしな。
      俺も兄者の手と鎖骨と肋骨ヤった事あるし、次は俺の首くらい取りに来るよな」

( ´_ゝ`)「死んでたかもしれないのに?」

(´<_` )「今生きてんだからいーじゃん。それに……」

( ´_ゝ`)「それに?」

463: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 01:02:55 ID:rixhaq6U0

(´<_` )「内藤、あいつがさ。一人で見舞いに来たんだけど」

( ´_ゝ`)「もう嫌な予感しかしない」

(´<_` )「俺を殺した場合、兄者がどんな罪に問われて、どんな人生を送るのか……
      『最悪』の末路の詳細を長々と語ってくれた。まあスッとするよな、そこで」

( ´_ゝ`)「あのゴミカス……」

きっと内藤の事だから、マスゴミや底辺雑誌の取材やパパラッチに追われる俺を、
面白おかしく生々しく感情を交えて饒舌に悲劇的に語りやがったんだろう。

あいつの事だから、弟者の些細な質問にも詳しく答えているに違いない。
知識を補足すれば、それだけ光景を綿密に想像できる。クソ野郎はさぞ満足した事だろう。
弟の入院生活の良い暇つぶしになってくれたようだ。今度会う時はくさやを土産にしてやる。

(´<_` )「今回の台風はきっと死者出るな」

( ´_ゝ`)「だろうな」

(´<_` )「珍しく兄者が俺の事を気にしてるし」

( ´_ゝ`)「気にしてる……って言い方は少し語弊があるな。心配はしてないぞ?
      単純に、よくあんな事されて隣歩けるなって。危機意識欠如した珍獣見てる気分」

(´<_` )「俺は珍獣か」

464: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 01:07:23 ID:rixhaq6U0

( ´_ゝ`)「ああスッキリした。さっきからモヤモヤしてたんだ。
      こいつナニ考えて俺の隣歩いてんだろって」

(´<_` )「俺も俺の首やっといて顔色一つ変えずに隣歩いてるコイツやべーなって考えてた」

( ´_ゝ`)「例えば俺が内藤の首をヤったら少しは気にするけど、お前だしな」

(´<_`; )「す、少しなんだ……」

あれ? また言葉を間違えたかもしれない。訂正するのも面倒だからしないが。

(´<_` )「そーいえば、また話変わるんだけどさ」

( ´_ゝ`)「今度は何だ」

(´<_` )「またんきとのケッコンどうすんの?」

( ´_ゝ`)「ああ、それな」

465: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 01:21:27 ID:rixhaq6U0

年を経る事で近付いた現実、それはまたんきとの結婚。

田舎だと、式を上げなければ結婚した事にはならない、みたいな空気があるので、
俺とまたんきは紙面上で結婚しているが、周囲の認識上では結婚していない。

正直、性欲は汚いものだと思っているので、またんきとあれこれするのは無理だ。
決してまたんきに魅力がないとは言わない。だがそれとは別問題で不可能だ。
大切と思った相手には性欲が向かない。湧かない。ヤけない。で大犯三箇条。

そもそもまたんきは『そういう相手』じゃない。
俺が性欲をぶつけるのは弟者にヤリ捨てられた女とかそういうの。


あと、またんきと結婚すると犯罪ができない。これが一番の問題である。
結婚した相手が犯罪者になれば、向こう側の家も大騒動だろう。

母さんが死んだら弟者に向ける殺意から手加減をなくそうと常日頃から考えていた。
年を取れば失うものはなくなると人は言う。祖父母も死に、親も死ねば、後はこの身一つ。
現に、年食ってからダンプカーで憎い人間の家に突っ込んだ爺さんがいる。行動力の見本だ。
つまり、俺達の喧嘩は年を経てからが本番だと思っていた。

またんきと結婚式を挙げると迷惑をかけてしまう相手ができてしまうので、弟者を殺せない。
という事を素直に弟者へ伝えてみた。

466: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 01:24:46 ID:rixhaq6U0

(´<_`; )「頼む! またんきと結婚式してくれ! 全力で応援するから!」

( ´_ゝ`)「現金な奴だなあ」

(´<_`# )「手前の命がかかってりゃ誰でもそうなるわ! クソ! クソ野郎! クソしか言えねえ!
      なんで俺の兄貴はこんなガチキチなんだ! 俺がヤリチンだからか!?
      ヤリチンとマジキチは吊り合わねーだろ! バランスを考えろ! 人生クソゲー!」

( ´_ゝ`)「今スッゲー下らない事を思いついたんだけど我慢できないから言うわ。
      俺がまたんきと結婚したら『またんきどいて! そいつ殺せない!』が現実になる」

(´<_`; )「予想の数憶倍くだらなくてビックリしてる……」

( ´_ゝ`)「落ち着いてくれて何よりだ」

台風が来てるからか、弟者のテンションの乱高下が激しい。
不謹慎だが、俺も災害があるとテンションがおかしくなるので少し分かる。

467: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 01:40:27 ID:rixhaq6U0

( ´_ゝ`)「結婚……結構かあ。結婚しない方が俺的にいいんだよなあ……」

(´<_` )「してくれ。俺の為に」

( ´_ゝ`)「お前の為と考えるだけで結婚する気がガンガン減るよね」

結婚式で思い出したが、そう言えばパートナーシップの話もあったな。
恋愛ではなく、税金の関係で良かったら俺とシップ組まないかという取引だ。
またんきと結婚しなかったら、が前提条件に入ってるので保留にしていた。

お互いの収入を見て、手帳の税金控除がどこまでかかるかと真剣に話し合いをしたからか、
相手は結構乗り気である。部屋まで用意してくれたようだが、先走りが過ぎる。アホかと。
俺の代わりを探そうにも、同じ等級の手帳持ちで扶養控除目的で籍入れだけ目当ての人間は、無理難題が過ぎる。

相談する相手もいないので胸の内に秘めてきたが、今日は暇だ。
都合の良い事に、横に話し相手もいる。

(´<_` )「え、何、そんなに睨み付けて」

( ´_ゝ`)「……」

今日のテンションの弟者にこの話をぶつけたら面白い反応を返してくれそうだ。

(´<_` )「お前……お前、知ってるぞ。こういう時は碌な話題が出てこない。
     またなんか悪企みでもしてんだろ……分かってんだからな…・・・・」

クソがそれなりに学習している。

468: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 02:00:11 ID:rixhaq6U0

( ´_ゝ`)「なあ、パートナーシップって言葉知ってるか?」

(´<_` )「何それ。ヨットの相乗り?」

( ´_ゝ`)「そう来るか。分からないなら調べてみろ。俺その予定があるんだよね」

弟者がスマホを取り出して、歩きスマホの構えになった。
注意はしない。どうせ人はいない。こんなクソ田舎だ。
歩いてるのは俺達だけで、立ってるのは電柱ぐらい。

(´<_` )「ん、んー……?」

( ´_ゝ`)「検索結果出たか?」

(´<_` )「難しい言葉で書かれてて分からない……が、これは……?」

熟読し始めたので放置。
弟者の目の前に電柱が迫ってきたが、面白いので指摘しない。


469: ◆T/D40qQ./Q :2019/10/19(土) 02:06:09 ID:rixhaq6U0

ガィン! ゴン!

( ´_ゝ`)「フッ」

案の定、正面から電柱にぶつかった。
倒れた拍子に道路の縁石に後頭部をぶつけるオマケつき。
しばらく腹を抱えて呵呵大笑していたが、弟者が起き上がってこないので死んだかと覗き込む。

( ´_ゝ`)「あ、生きてた」

( ゚<_゚  )「ぱぅあ……」

いや死んでるなコレは。

( ´_ゝ`)「大丈夫? 人の言葉話せる?」

(゚<_゚  )「カッ……コォオ………エンッ」

( ´_ゝ`)「駄目そうだな」

(゚<_゚  )「アイテダレ?」

仕方がないので、服の襟首を掴んで家まで引きずる。
十万円もしたというコートが家に着く頃にはどうなっているのか、見ものだな。




糸冬

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388: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 22:58:00 ID:g.hlV5qs0

40.                『サブタイトル末尾』



赤石との関係が大変拗れたが、それ以外は何事もなく日々が過ぎる。
そもそも、周囲が決して平凡や普通とは言えない人間ばかりだ。
この程度、とは決して言えないが、このくらいの拗れなら許容出来る。

最初から絡まって使えなかった釣り糸が更にグチャグチャ絡まったところで、
それをどうにかしようとは思わない。ゴミ箱への関心が高まるくらいか。

しかし、教材に載ってるような一般人には、何処に行ったら会えるのか。


母親に弟を刺した事が露見したが「いつかはやると思っていた」と、
まるでマスゴミ記者への取材テンプレのようなコメントを貰った。
追加で「今までやらなかったのが不思議なくらい」とのお言葉。

母さんがこういうって事は、ブレーキをかける必要なんてなかったのかな?
俺もだけど、確かに弟者は迷惑しか振り撒いてないからね。殺していいかな?


ξ゚⊿゚)ξ「何があろうと殺すのは駄目よ、殺したほうが面倒じゃない場合でもね」

( ´_ゝ`)「アッハイ」

殺すのは駄目だった。残念だ。本当に。

正直、流石 弟者が死んだショックで母さんが心を壊さないのであれば、
あいつを殺す手段なんて選ばないんだがなぁ。駄目なら仕方ない。

389: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:00:10 ID:g.hlV5qs0

聖なる夜の前日は我々の母の誕生日だ。
ケーキは買ってきたが、プレゼントは何にしようか。

……多分、我が母への一番へのプレゼントは、俺達の完全なる自立だ。

俺の攻撃性と異常なまでの殺意がなくなり、
弟者の窃盗症と異常なまでの性欲がなくなり、
大会社で働いて家計に負担をかけない事が唯一の……
                                       

それを夜通し考え続けていたら母への申し訳なさが富士山を超えて宇宙に届き
実現する事象への難しさと弟の更生と俺自身への自己評価が地獄堕ちした挙句
世界の端の暗き深淵へと到達し睡魔に襲われた俺は夢の階段を力無く降りた。
                              wwwヘ√レvv~─―────
つまり、ベッドで考えている内にいつの間にか寝た。
そして、無事に母の誕生日は過ぎ、クリスマスになる。


ξ゚⊿゚)ξ「いやー飲み会あって帰って来れなかったわ」

( ´_ゝ`)「飲み会あったなら連絡して……」

ξ゚⊿゚)ξ「したわよ。でもアンタの携帯繋がらなかったのよ」

( ´_ゝ`)「あっ」

ξ゚⊿゚)ξ「私お腹一杯だから、ケーキは弟者にでもやんなさい」

( ´_ゝ`)「まだ豚に食わせたほうがマシなんですけど」

390: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:02:01 ID:g.hlV5qs0

高いケーキを豚にやるのは流石にやめろ。
一生懸命作ったかもしれない職人さんも可哀想でしょ。

確かに、と俺は思った。母親の言葉は正論である。
豚は豚だが、弟者は一応人間だ。何しろ言葉を話す。

しかし、この高いケーキを弟者なんかにやらなくてはならないとは。
安いパイなら顔面シュート待ったなしだが、高いケーキは勿体ない。
けど、この高いケーキを弟者なんかに(ry

堂々巡りのまま、病院へ辿り着いた。


( ´_ゝ`)「そんな訳で、一応ケーキ持ってきたが、食わせたくない」

(´<_` )「どうしたいんだよクソビッチが」

( ´_ゝ`)「赤石と会った翌日だと、俺の呼称が毎回そうなるよな」

(´<_` )「やめて欲しいなら赤石と会うなよ」

( ´_ゝ`)「お前にビッチ呼ばわりされたところで、
      特にダメージもないからどうでもいい」

(´<_` #)「こっ……この……!」

391: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:04:03 ID:g.hlV5qs0

( *´_ゝ`)「そうだ!」

(´<_` )「あ?」

( ´_ゝ`)「いい嫌がらせ思いついたぜ」

(´<_` )「おい」

こいつの目の前でケーキ貪り食って、悔しがる顔を見てやろう。

そう意気込んでケーキの箱を開ければ、満面の生クリーム。
成程、クリスマスならではの雪景色を白いクリームで表現したんですね。
側面まで綺麗に塗りたくられちゃってもう、俺の食欲は激減です。

甘味はあんまり得意じゃないんです。
生クリームに関しては大嫌いなんすよ。
口に入れた瞬間、マーライオンするレベルで嫌いなんですよ。

フォークを何処に突き刺そうか迷って弟者を見れば、腹の立つ無表情だった。
心の底から心を読みたい。今だけでいいから。サトリになりたい。

漫画だったら、きっと勝手な主人公の推測が当たってる状況だ。

392: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:05:19 ID:g.hlV5qs0

どうせ食えないんだろうと思ってるのか。
そのケーキ寄越せよと思ってるのか。
奴め無駄な事をと思ってるのか。
意地汚い奴だと思ってるのか。

糞野郎限定のサトリになりたい。


(´<_` )「結局くれるのか」

(il´_ゝ`)「甘過ぎる臭いとかずっと嗅いでると、吐き気してくるんだよ」

(´<_` )「俺は甘いの好きだからいいけど」

( ´_ゝ`)「よくワンホールいけるよな……糖尿病になって死ね」

(´<_`; )「……まさかこのケーキに何か入ってるんじゃ」

( ´_ゝ`)「いや、それはただの高いケーキだ」

(´<_` ) ホッ

393: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:08:56 ID:g.hlV5qs0

( ´_ゝ`)「ちょっと待て、お前『糖尿病』って何なのか知ってるのか?」

(´<_` )「病気だろ? なんか体に毒が溜まるやつ」

( ´_ゝ`)「どうやってなる病気とか知ってるのか?」

(´<_` )「全然」

( ´_ゝ`)「どんな症状を起こすものかは分かる?」

(´<_` )「えーと……ションベンが甘くなるんだろ?
      実際、確かめた奴でもいんのかね」

( ´_ゝ`)「どんな漢字使ってるのか分かってる?」

(´<_` )「全く」

( ´_ゝ`)「何が原因かは」

(´<_` )「知るわけないだろ俺が」



この後、滅茶苦茶講義した。

394: ◆T/D40qQ./Q :2015/09/30(水) 23:10:17 ID:g.hlV5qs0


401: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 00:52:59 ID:zSljVb2M0

長い説明の末、一方的な嵐が吹き荒れた講義後。
何で俺はこんな事をしているんだと我に返った。


性病テロリストが糖尿病にかかって、色々な合併症を引き起こして、
失明して歩行困難になって苦しんで死ぬならそれでいいじゃないか。
それで俺が疑われるでもなし、裁かれるでもなし、いい事尽くめだ。

……教えたのは失敗だったかもしれないが、弟が恥晒すよりはいいか。
無知が母さんに露見したら、どうせ俺が教えろとか言われるんだろうし。
こいつがアホな言葉を発する度に、俺の知能まで低いと思われるし。

それを少しは回避出来たと思えば、まあ……。


(´<_` )「暴れてちょっとは落ち着いたか?」

( ´_ゝ`)「暴れてないだろ」

(´<_`; )「人に殴りかかっておいて『暴れてない』……?」

おっと、脊髄反射で否定してしまった。

402: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 00:54:56 ID:zSljVb2M0

(´<_` )「兄者は本当に、読めないっつか、何考えてっかわかんねっつか。
      良い教師やってるかと思ったら、何でもないとこで突然キレるよな。
      お前の沸点ってどこにあんの? 全然わかんねぇ。地雷どこだよ。
      兄貴が先生やってたらマジでモンペごと殴り殺しそうで頼もしいよ」

( ´_ゝ`)「心から殴りたいと思わせ、実行に移させるのは大体お前だけだよ」

(´<_` )「大体って言い方だと、俺以外にもいるようだな」

( ´_ゝ`)「俺の目の前で堂々と不倫を肯定する意見を述べる人間は、
      老若男女問わず泣くまで殴りたく……いや殺したくなる」

(´<_` )「糞親父とか?」

( ´_ゝ`)「そいつにだけは手が早いとか言われたくないね。
      本能を理性で抑えられないヒト以下の癖して」

(´<_` )「今はそっちに殺意が傾いてるのか、助かったぜ」

( ´_ゝ`)「そこで『助かった』とほざけるお前の思考回路を焼きたい」

403: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 00:56:57 ID:zSljVb2M0

そうして一息つき、クリスマスに一体何をやってるんだと呆れ、
母さんの誕生日をないがしろにした罪悪感に苛まれ、
八つ当たり気味にしたのが弟者への罵倒だった。

折角の聖夜にこんな病室で一人でとかマジプギャwwwとかしてた気がする。
やたらハイテンションになってしまったので、何を言ったかは詳しく覚えていない。

弟者の友人や、二股されているとは知らない彼女達に醜聞を広めようとして、
当時やっていたツイッタにうっかりアカウントを間違えて誤爆した事しか覚えてない。
本当はリアル関係の垢に落とそうとしたのに、思い切り趣味の垢にやってしまった。

奪い取って初めて使用したスマホだった事もあり、
操作の仕方がわからなく、写真も削除出来てない。

ギリギリ人が写ってないのが幸いか。
いやでも知人が見たらバレるわコレ。

もう、それなりに年数経過してるし大丈夫か?
内藤あたりに嗅ぎつけられていないことを願おう。

404: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 00:58:11 ID:zSljVb2M0

その後、パスワードも登録したメルアドも忘却の彼方へ去ってしまった。

あれが皆の記憶から同じように忘却の彼方へ旅立つのを願おう。
だから、お気に入り登録だのログ保存だの勘弁しろ下さい。

以来、そのSNSとは疎遠になってしまった。
けれど、いい頃合いだったのかもしれない。

俺とこいつの価値観は違う、あのままリアルの赤裸々暴露を続けていたら、
その内ヒートアップして、田舎者丸出し、顔モロ出しの写メを投稿しかねない。
何故かは知らないが、顔面に勝手な自信を持ってるナルシストの事だ、絶対にやる。

サングラスかけて、よくわからないポーズを取って、変に陰影をつけて、
キメ顔( )自撮り写メなんてものがネットに上がった日には、日には……


(´<_` )「どうした、顔青いぞ。兄者は元からだが」

(li´_ゝ`)「ああ……何でもない。お前のせいだよ」

(´<_` )「そうか」

弟者は俺の内心も知らずに、ケーキを貪っている。
いつもの事だ。

405: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 01:00:20 ID:zSljVb2M0

(´<_` )「ケーキ食い終わってから言うのも何だけど、
      俺じゃなく内藤にやるって手もあったよな」

( ´_ゝ`)「内藤は家族じゃない」

(´<_` )「へぇあ?」

( ´_ゝ`)「それは母さんに買ったケーキだから。家族宛のケーキ。
      今の家にいる人と動物は家族だが、内藤は家族じゃない」

(´<_` )「ああ、そういう……へえ、俺家族なんだ?」

( ´_ゝ`)「そうだな」

(´<_` )「人の範囲に入ってる?」

( ´_ゝ`)「人の範疇だよ」

406: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 01:01:39 ID:zSljVb2M0

(´<_` )「もし、俺が動物だったら優しくできたりする?」

( ´_ゝ`)「処分するのに躊躇がなくなる程度だ。法律の壁もない」

(´<_`; )「うわ人間で良かった……」

( ´_ゝ`)「お前もよくよく話が飛ぶよな」

(´<_` )「兄者は動物に優しいじゃん? ワンチャンあるかと」

( ´_ゝ`)「俺が実験動物技術者資格持ちだと忘れているようだな」

(´<_` )「そういやそうだった……自分のハムスターとか可愛がるわりに、
      訳分からん資格持ってるよなお前。しかもアレルギー持ちなのに」

( ´_ゝ`)「実験動物と愛玩動物は切り離して考えるぞ。
      ペットは自分のだが、実験動物は違うだろう。
      そもそも公私混同する奴は取れないぞこの資格」

407: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 01:03:24 ID:zSljVb2M0

( ´_ゝ`)「アレルギーについては実際に酷いから否定せんが」

(´<_` )「実行したから知ってる」

( ´_ゝ`)「そうだな。俺の食べ物に犬の毛を混入させたもんな、お前」

(´<_` )「あれ、実は窒息死狙いだったんだけどー、テレビは宛にならんわ。
      せめて呼吸困難になったらいいやって思ったのに、それもねーし。
      でも、喋らない兄者は新鮮だったから、それはそれでよかったよ。
      それ自体は良かったんだよ。口煩くねーし、静かだったから良かった。
      よかったが、喋れないからって肉体言語に訴え過ぎ。原始人かよ」

( ´_ゝ`)「だったら書いてる間にどっか行くなよ。
      わざわざホワイトボードまで買ったのに」
                                  
(´<_` )「何でわざわざ買いに行くんだよ。地面に書けよ」


408: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 01:07:25 ID:zSljVb2M0

(´<_` )「兄貴の出す拳は全部『良いパンチ』だからな」

( ´_ゝ`)「俺を殺す気で陥れた奴に手加減できるわけないだろ」

(´<_` )「しろよ。家じゃなくて病院の中だったろ」

( ´_ゝ`)「それがどうした」

(´<_` )「もう駄目だ。俺と兄者は永遠に分かり合えない」

( ´_ゝ`)「今更かよ」

(´<_` )「性癖からして兄者のは理解しがたいし」

( ´_ゝ`)「え?」

(´<_` )「世界十大危険性癖……」

( ´_ゝ`)「待て」

(´<_` )「人に欲情し切れないとか」

( ´_ゝ`)「どこで知った」

409: ◆T/D40qQ./Q :2015/11/29(日) 01:10:00 ID:zSljVb2M0

(´<_` )「本当はクソデカいヤスデ飼う為に、一人暮らししようとしてたとか」

( ´_ゝ`)「おい母さんには絶対言うな」

(´<_,` )「言わねーよ」

笑いながら言われても信じられない。どうしよう殺そうかな。


(´<_` )「心の声出てるぞ」

( ´_ゝ`)「つい」




40.糸冬

拍手

363: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:35:09 ID:MsfxELuk0
39.日常を生きる



寒さを凌ぐ為に、駄目元で赤石を訪ねる。

あらゆる意味で駄目な気しかしないが、アポなし来訪を許容し、
予約なしの宿泊を許可してくれる友人は内藤と赤石の二人しかいない。

そんな赤石邸の部屋の扉を開ける前に、宿の主人に出迎えられた。
声をかけてもいないし、ノックもしてない、事前に連絡もしていない。
なのに、扉の前に来た瞬間、向こうから歓待された。

監視カメラか盗聴器か。危機感を抱く。


(  ゚∀゚ )「よお兄者! なんだか久しぶりだな」

(;´_ゝ`)「そ、そうか? 一か月も経ってないぞ」

そう、これは偶然だ。偶然に決まっている。
ちょっとタイミングが、がっちりフィットしただけなんだ。
きっと、今からゴミでも出しに行くんだろう。もう昼だけど。

364: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:36:58 ID:MsfxELuk0
普通に部屋に入ろうとしていたのに、腕を引かれて部屋に連れ込まれそうになった。
入るつもりだった。入るつもりではあったけど、強制されると反射的に抵抗してしまう。

強引に体を捻じって腕を解く。ターンではない。
しかし、傍から見れば男同士の社交ダンスだ。


( ;゚∀゚ )「あ、あれ? 入らねえのか?」

( ´_ゝ`)「入る……つもりで……来たが……」

自分から進んで入るのと、強制連行収容はかなり違う。
あと掴まれた部分が地味に痛い。どんだけ力込めてんだよ。
薬のせいで筋肉のリミッターが解除されてるのか、無意識なのか。

どちらにしろ拒否一択だ。部屋に入る選択肢は消えた。


( ;゚∀゚ )「ここで話すのも何だから! 部屋で話したいだけなんだ!
       決して兄者を害しようとか! そんな! ないから! 絶対!」

( ´_ゝ`)「そこまで力強く否定するなら信じよう。部屋には入らないがな。
      寒くもないから、ここで話せよ。長話じゃないんだろ?」

頭を抱えながら、あーうー唸り始める赤石。
考え事をしているのか、薬が切れたのか、ゾンビ化し始めるのか。

365: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:37:56 ID:MsfxELuk0
(  ゚∀゚ )「その……前に俺がバカやったじゃん? 一週間付き合おうとか」

( ´_ゝ`)「おっ、もしかして症状が軽くなったのか? ようやく目が覚めたか?
      男に走ったとかいう話が田舎で飛び交えば村八分待ったなしだぞ。
      広がる前でよかったな。内藤には記録されてるが、俺なら忘れてやるぞ」

(  ゚∀゚ )「え?」

( ´_ゝ`)「え?」

( ;゚∀゚ )「……俺は、そっちの都合も考えずに『一週間付き合おう』って、
      勢いで言っちまったのを謝罪したかったんだ……です、けど。
      まだ諦めきれないし、母親のせいで女は信じれないんだよ」

( ;´_ゝ`)「ああ……そう……頼むから早く目を覚ましてくれよ。外聞的に考えて。
      俺はゲイじゃないし、バイセクシャルでもない。ただのリョナラーだ。
      それと一週間って、とっくの昔に過ぎ去ってるだろ。まさか延長か?」

(  ゚∀゚ )「そうじゃない。そうじゃなくて、『一週間』ってのを『七日間』にしたい」

赤石の話を要約すると「七回デートに付き合ってくれ」というものだった。
まだ正気に返ってはくれないらしい。どうやったら穏便に元の関係に戻れるんだ。

と言いますか、脱糞処理ってそんなに好感度上がるん?
普通は、人に脱糞したとこ見られたら、恥で死ねるんじゃないの?

何なの? 赤石はスカトロ趣味でもあんの? 馬鹿なの? 不潔なのは大嫌いなんですけど?
主治医の意見書にわざわざ”不潔への恐怖”って書かれるくらい汚いのはヤなんですけど?

攻略難易度が高い。赤石の親父さん、早く息子の狂行を止めてくれ。
それとも、全部知ってて放置してるのか。存在自体が不透明だ。

366: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:39:14 ID:MsfxELuk0
兎にも角にも、赤石のマンションから無事に逃げ切った。
効果はあるかわからないけど、神社仏閣に赤石が正気になるよう祈ろう。

それか、赤石の好意の対象が弟者に移るよう願うか。
もし実際にそうなったら、きっと俺だけが楽しい。

.
.
.

母親が胃潰瘍になりそうな妄想をしていたから罰が下ったのか、
赤石が後ろから着いて来てる事に気づけなかった。クソが。


( ;゚∀゚ )「なあ兄者この後ちょっと時間あるか!?
       時間あるなら折角だし俺とでっ、でででーt」

( il´_ゝ`)「頼むから、そこ普通に『遊びに行かないか』って誘えよ」

(  ゚∀゚ )「いいのか?」

( ´_ゝ`)「ちょっと待った。かなり考えさせろ」

( ;゚∀゚ )「お、おおう……」

367: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:40:03 ID:MsfxELuk0
デートだの逢引きだの、ふざけた言葉は全て無視。
言葉を変えるから駄目なんだ、普通に遊びに行くだけと考えればいい。

遊びに行くにしても、二人きりになる場所は避けよう。
決して醜聞を出してはならない。未来の俺と赤石と斎藤の為だ。
紙の上だけとは言え、俺と斎藤は一応夫婦だ。飛び火は防がねば。

赤石がやたらしたがっている恋人らしい行いも却下。
荷が重い。思いも重い。赤石のバックも重すぎる。ついでに俺も。

後はメリットか。


( ´_ゝ`)「今から赤石と『遊びに行く』のは、一回分と考えていいか?」

(  ゚∀゚ )「おおともよ!」

上々。もう今日は半日もない。
苦行が短い時間で済むなら何も言う事はない。


( ´_ゝ`)「流石に夜まで遊びに付き合えってのはないよな?
      母さんは仕事忙しいし、あのアホは入院してるから」

(  ゚∀゚ )「こっちも駄目元で言ったから気にすんな。無理はしなくていいぜ」

368: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:41:16 ID:MsfxELuk0
じゃあ早速! と手を握ってきたので振り解いた。
勢いをつけすぎて、一方通行の道路標識に手を強打する。

腐りかけだったのか、ゆっくりと車道に倒れていき、百合のように折れた。


( ´_ゝ`)「街中でそういう事はやめてくれないか」

( ;゚∀゚ )「やっぱ駄目か」

( ´_ゝ`)「俺が了承すると思ったのか」

(  ゚∀゚ )「人目が気になるのか?」

( ´_ゝ`)「そりゃな」

(  ゚∀゚ )「なら人目の少ないとこに行こうぜ!」

やっべ墓穴掘った。埋めねば。


( ;´_ゝ`)「そんなに手を繋ぎたいならせめて深夜にしてくれないか。
      暗けりゃ(多分)繋いでる手も(きっと)見えないだろうし」

( *゚∀゚ )「そうか!」

369: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:42:46 ID:MsfxELuk0
掘った墓穴に赤石を埋めればよかった。
人目のつかないところで、いっそ赤石を殺ればいいんだ。

そんな危険な考えが頭を掠める。いかんいかん。


( ´_ゝ`)「ところで遊びに行く宛はあるのか?」

(  ゚∀゚ )「無難に映画館デートを」

( ´_ゝ`)「デート言うな」

(  ゚∀゚ )「それと記念写真」

( ´_ゝ`)「黒歴史にしかならないぞ。良くて自分への戒めだ」

(  ゚∀゚ )「あと名前呼びに戻してほしい」

( ´_ゝ`)「はあ? 何言って……」

(  ゚∀゚ )「無自覚?」

370: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:44:09 ID:MsfxELuk0
( ´_ゝ`)「…………」

(  ゚∀゚ )「赤石って呼んでんぜ」
  _, 、_
( ´_ゝ`)「……いつから?」

(  ゚∀゚ )「わからねえが、兄者も俺を意識してるって事だよな!」

( ´_ゝ`)「うん、同性から『付き合おう』って言われて意識しない人間はいないから。
      考えない人間がいたら、そいつは勘違いしてるか、知恵遅れか、動物だ」

(  ゚∀゚ )「難しいことはいい! 気軽に名前呼びに戻していいんだぜ!」

( ´_ゝ`)「んー……ん、そうだな。気が治ったらな」

その後、見に行った映画は全く興味を惹かれなかったので、別の事を考えていた。

内藤、鬱田、斎藤。弟者の取り巻きも苗字で覚えている。
またんきは場所と状況により使い分けているから少し違うが、
俺は基本的に人の事を苗字で覚えて、呼んでいる。

むしろ何で今まで、赤石をアヒャと呼んでいたのか。

371: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:45:09 ID:MsfxELuk0
赤石の手が俺の手に伸びてきたので、思考中断。
横を見れば、赤石は映画を見続けている。

何をどう思っているかはよくわからない。
元々肌が赤い種族だから、怒りも照れもよくわからない。

まあ、会場の端っこの席だし。
俺達の後ろに人はいないし。
映画はクッソつまんねえし。

このまま寝よう。うん。おやすみ。



372: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:46:46 ID:MsfxELuk0.





(  ゚∀゚ )「映画面白かった?」

( ´_ゝ`)「途中から寝てた」

(  ゚∀゚ )「何しに映画館来たんだ」

( ´_ゝ`)「1500円払って寝に来た」

( ;゚∀゚ )「……もしかして怒ってる?」

( ´_ゝ`)「いいや」

( ;゚∀゚ )「すまん」

( ´_ゝ`)「何で謝るんだ」

( ;゚∀゚ )「いやあ、金払わせてつまらん映画見せちまって……」

( ´_ゝ`)「アヒャには怒ってないぞ。内藤達と来る時も、俺寝てるし」

373: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:48:13 ID:MsfxELuk0
(  ゚∀゚ )「本当に何しに来てんだよ」

( ´_ゝ`)「寒くてうるさい場所に寝に来てるんだよ」

それから上映してる映画を赤石の奢りで片っ端から見て行ったが、
殆ど内容は頭に入って来なかった。爆音の睡眠学習は無意味だったようだ。

最後のほうになると、赤石もいびきをかいて寝ていた。
映画を見ている客も、俺達とおっさん一人しかいない。
しかもそのおっさんは、映画を見ながらシコっていた。

どうせ金を払って寝るなら、ネカフェにでも行って寝た方がよかった。
おっさんは映画を見る金でソープに行けば良かったんだ。汚ぇモン見せやがって。


(  ゚∀゚ )「もう映画はやめよう」

( ´_ゝ`)「賛成、イカ臭い」

(  ゚∀゚ )「無駄に時間使っちまったし、さっさと記念写真を撮ろう!」

( ´_ゝ`)「これからゲーセン行く? 閉まってるんじゃないか?」

(  ゚∀゚ )「え?」

( ´_ゝ`)「へ?」

374: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:49:39 ID:MsfxELuk0
( ´_ゝ`)「記念写真ってプリクラじゃないのか?」

(  ゚∀゚ )「スマホで撮るだけだぜ。兄者って変なとこで女っぽいな」

( ´_ゝ`)「異論しかない」

(  ゚∀゚ )「普通の男は母親と一緒に入浴剤選ぶの手伝わねぇって!」

( ´_ゝ`)「風呂に色々入れるのが好きなだけだっつの。
      スマホでいいならもうここでさっさと撮ろうぜ」

(  ゚∀゚ )「景色いいとこで撮りたいんだよー」

( ´_ゝ`)「時間ないし眠いし歩くのダルいしもう無理。
      ここで撮らないなら次に回せばいいじゃん」

(  ゚∀゚ )「次は次でちゃんと撮るぞ。うん。まあ今はここでいいか」

( ´_ゝ`)「確認しておくけど、その写真をネットに流すのはやめろよ」

( ;゚∀゚ )「しないって!」

( ´_ゝ`)「フェイス本もツイッタもミクソも全部アウトだかんな」

(  ゚∀゚ )「しないしない。ネットに繋げてない俺のPCに保存するだけだ」

それはそれで不安しかない。

375: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:50:44 ID:MsfxELuk0
不安を置き去りに、赤石からポーズ指定が入る。近すぎない?
それから赤石がスマホをいじくって、タイマーシャッターでぱしゃり。


(  ゚∀゚ )「もっと笑顔で」

( ´_ゝ`)「精一杯の笑顔です、それ」

(  ゚∀゚ )「刑事ドラマに出てくるゲスい下っ端ヤクザの面だぞ、これ」

やけに具体的な罵倒を胸に、もう一度。


(  ゚∀゚ )「さっきよりはいいな」

( ´_ゝ`)「勘弁してくれ」

(  ゚∀゚ )「上手く取れたら兄者の携帯にも送るから」

( ´_ゝ`)「いらねえ。つか、俺の携帯壊れてるけど?」

( ;゚∀゚ )「はぁあ? マジか。どうりで全然繋がらないと……」

あ、でも弟者にこの写メ送るのはいいかも。
あいつ赤石のこと嫌ってるし、嫌がらせに調度いい。
そう思えば、笑顔も作れる気がしてきた。

376: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:51:46 ID:MsfxELuk0
( ´_ゝ`)「写メはさ、弟者の携帯に送ってくんね?」

(  ゚∀゚ )「分かった」

自分なりに、最高の笑顔でパシャっと。
赤石に見せてもらえば、中々の出来。

うん、この状況でこの笑顔は、良い感じに誤解してくれそうだ。
性欲に支配されてる脳味噌で、思いもよらない邪推をしてくれるだろう。


(  ゚∀゚ )「弟者のメルアドは?」

( ´_ゝ`)「今は確か、あー『兄者殺す』」

( ;゚∀゚ )「……は? えっと、もう一回頼む」

( ´_ゝ`)「アルファベットで『兄者殺す』ってそのまま打てよ」

(  ゚∀゚ )「これで本当に届くのか?」

( ´_ゝ`)「直行便だよ」

(  ゚∀゚ )「そういや兄者のメルアドは『弟者死ね』だったな」

377: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:52:49 ID:MsfxELuk0
メールを送ってしばらくして、赤石にはメボムが届けられた。
件名は空。本文には『赤石ぶっ殺す』と一言。

着信拒否をしても別のアドレスから来るので、
赤石はスマホをもう一台取り出した。


( ´_ゝ`)「何台持ってんの?」

(  ゚∀゚ )「父親との連絡用と、俺個人の仕事用とー。
      あとプライベート用に三台あるぜ!」

( ´_ゝ`)「持ちすぎ」

(  ゚∀゚ )「一台やろうか?」

( ´_ゝ`)「流石に受け取らない」

メボムの爆撃が続けられているスマホなら、尚更。

その後、ぶらぶらし過ぎて遅くなり、田舎へのバスがなくなったので、
久しぶりにネカフェにお泊りした。何故か赤石も一緒についてきた。

当たり前だが、部屋は別々に取った。

378: ◆T/D40qQ./Q:2015/08/10(月) 01:53:36 ID:MsfxELuk0
後日、俺はデートという概念の複雑さを知った。








39.糸冬

拍手

342: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:25:50 ID:ik6gQ.Sk0
38.暇を刺す



少し暗くなったからと言って、内藤が酒を出してきた。

しかし、外は真昼間だ。快晴だ。
太陽の光が雪に反射して、とても眩しい。
だから多分、俺たちの間に流れる空気がという意味だろう。


( ^ω^)「まあまあ飲むお」

( ´_ゝ`)「やだよ昼間っから」

( ^ω^)「そう言わず」

( ´_ゝ`)「ビールとか炭酸系は無理」

( ^ω^)「生意気な。何がお望みだお」

( ´_ゝ`)「ワインか果実系のリキュールがいい。
      あと、割る為の炭酸水とレモンと……」

( ^ω^)、「ペッ、アヒャに買ってもらえお」

(;´_ゝ`)「おい何で唾吐いた。ここお前の部屋だぞ」

( ^ω^)「やっばお、ついノリで」

343: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:27:02 ID:ik6gQ.Sk0
結局、内藤だけが酒をかっくらった頃、事件は起きた。

いきなり、彼女がいる御身分の癖に「何故自分はモテないのか」と言う内藤。
鬱田辺りが即座に敵に回る話題を振ってきた内藤は、確実に酔っていた。


( ^ω^)「僕って、体に関しては完璧だおね。見ろおこの筋肉」

( ´_ゝ`)「そうだな。ジャニ好きには毛嫌いされる体だな」

( ^ω^)「性格はどうにもならないとして、他に足りないものって何だろうお」

( ´_ゝ`)「自覚あったんだ。つーか、足し算だけじゃなく引き算で考えてみろよ」

(^ω^ )「引き算?」

( ´_ゝ`)「ようは『足りない物』を逆に作るんだよ。弱みを自分で作るって事。
      駄目駄目な奴に惹かれる女もいるんだって、母さんが言ってたぞ。
      そういう女は救えねぇとも言ってたべ。近づくな゙っても……」

って、やべえうっかり自然と訛りが出そうになった。
飲んでないのに、酒気の魔力は恐ろしい。

344: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:28:02 ID:ik6gQ.Sk0
( ^ω^)「弱味かお。あまりそういうのは好かないお。
      僕はいつでも誰かの強者でありたいお」

(;´_ゝ`)(良かった気づいてない)


( ^ω^)「足し算がいいお」

( ´_ゝ`)「じゃあ金持ちにでもなれよ」

( ^ω^)「それは無理だお。外見で何かないかお?」

( ´_ゝ`)「これ以上、お前の外見で足す所なんて、なぁ」

( ^ω^)「今度は足の筋肉でもつけよっかおっお」

( ´_ゝ`)「筋肉から離れろ筋肉バカ。そうだ、整形とかどうよ?」

( ^ω^)「嫌だお」

( ´_ゝ`)「何でよ」

( ^ω^)、「結構、僕の顔ってイケてると思うんだお。恰好良くはないけど、
       安心感を抱かせる顔立ちって言うのかお? 警戒されにくいんだお。
       この体の筋肉に見合う顔に整形するのは、僕も一回考えた事あるお。

345: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:28:51 ID:ik6gQ.Sk0
( ^ω^) でも、そうすると僕は世紀末世界でしか生きていけなくなっちゃうんだお。
      腹筋がバキバキなら顔もバキバキにしないと吊り合いは取れないからお。
      今の服装にバキみたいな顔をしてたら、いくら何でもアンバランス過ぎるお。
      けど、今の顔なら服を着ればタダのピザに見えるから、かなり重宝するんだお。
      となるとやっぱり僕はこの顔のままのほうが大分イケてるしぃ、実際今の彼女もそ
      ------------------------------ (ry ------------------------------


( ´_ゝ`)「………」


( ´_ゝ`)


( ´_ゝ`) zz...

(^ω^ )「おーい兄者? 聞いてるかお?」

(;´_ゝ`)「ウェ!? アッハイ、聞いてました。きっと」

予想外の長文が飛来して思考停止した挙句、睡魔が侵入しかけていた。

しかし、内藤って結構なナルシストだったんだな。
筋肉だけだと思っていたが、まさか自分の顔にそこまでの自信があったとは。
レコーダーで録音しとけばよかった。内藤に対する良い脅しの材料になったろうに。

346: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:29:40 ID:ik6gQ.Sk0
(^ω^ )「兄者は正直どう思うお?」

( ´_ゝ`)「え、何が?」

(^ω^ )「僕に足りないものだお」

( ´_ゝ`)「そうだなあ……」

俺としては、肉体は百点中千点満点だ。
筋肉ってのは憧れる。力はあって損はない。
それ以外での駄目な箇所となれば……


( ´_ゝ`)  (^ω^ )
  _, 、_
( ´_ゝ`)「んんん」


( ´_ゝ`)ノ (^ω^ )

( ´_ゝ`)ノ「顔を」

347: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:30:42 ID:ik6gQ.Sk0
近くにあった手拭いで、内藤の顔を巻く。



( *´_ゝ`)「うん! 覆面レスラーみたいで中々なんじゃないか?」

つ三三三)「殺す」

(;´_ゝ`)「やめろよ、語尾が外れてんぞ」

つ三ミヾω^ )「殺すお」

(;´_ゝ`)「落ち着け内藤。隠匿する事でプラスされるものもあるんだ。
      例えば、借金がある事を隠したり、若ハゲをカツラで誤魔化したり、
      わざとフードを深く被って目が軽く見えるか見えないかの位置にし」

(^ω^ )「ぶっ飛ばす」

348: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:32:09 ID:ik6gQ.Sk0





( ´_ゝ`)「ふぅ」

仕方がないので逃げて来た。

部屋を飛び出しても追って来る素振りを見せなかった事から、
きっと今の内藤の思考回路は野生動物のようになっているのだろう。

つまり、縄張りに踏み込まず、必要以上に刺激しなければ大丈夫。
肉食系原人から嘲笑系現代人に戻ってくれるまでは、離れるとしよう。

避難先は決まっていない。

病院は今は無理。家も無理。鬱田は論外。斎藤に迷惑はかけれない。
財布は忘れたから宿も無理。公園も冬は無理だ。凍死ワンチャンあるぜ。


( ´_ゝ`)「どうすべ」

349: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:33:27 ID:ik6gQ.Sk0
最終的な候補はある。あるにはあるが、今現在着拒している相手だからマズい。
それもこれも相手の所為だ。強いて言うなら病気が悪い。統合失調症が全ての原因だ。

病気が悪いと分かっていても、不快なものは不快だし、怖いものは怖い。
着拒したのは、ここ最近の発狂ぶりが凄まじかったからとしか言い様がない。

なんというか、ネット上にはまともなレスをしていた奴が段々狂っていく読み物や、
実際に統失を発症してしまい発狂していく日記やブログがあったりする。
それのリアルタイムメール版と言えば分かりやすいんだろうか。

携帯を一日放置したらメールが100通以上溜まっていて、メボムかと思ったら、
件名と本文が個別にちゃんと違う、たった一人から届いたメールとか、もうね。
それに内容が、内容がマジで、俺の声が頭からするとかどういう事だよ俺が聞きたい。



(;´_ゝ`)「……」

恐る恐るメールの拒否を解く。間をおかずに一件受信。怖い。
人間相手にここまで恐怖したのは初めてだ。お前が初めてだぞ赤石。
糞親父相手にだって、怒りを覚えても恐怖した事はなかった。
しかも、熊を相手にしたような命の危機とは違う、得体の知れない別の何かだ。

何なんだこれは。俺は何に怯えているんだ。この恐怖の原因は何々だ。
駄目だワケわかんない怖いメンヘラとかお花畑とか不思議ちゃんってレベルじゃない。

350: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:35:48 ID:ik6gQ.Sk0
ネットで統失に追っかけられて家族と家に粘着された体験談とか、
実際に統失に目をつけられた場合の実例が乗った本とか読み漁ったが、
正直これといった対処法がないというのもキツい。キツ過ぎる。
物理攻撃の効かない、殴れない幽霊の次くらいにキツい。


(;´_ゝ`)「だいじょうぶだよな……きっと。
      顔を合わせればなんとかなるはず」

なんとかなる。

なんとかならないと困る。

なんとかならなかった場合どうなるのか。

どうなるのか、想像できない。


ちょっとこの先が気になってきた。思えば未知の世界だ。
頭に響く俺の声が何を言っているのかも気になる。

いいや、襲い掛かってきたら殴ればいいだけだし、当たって砕けろ。
もし、いざとなったら部屋に火でも何でも着ければいい。

351: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:37:10 ID:ik6gQ.Sk0

念の為、家に帰って、機種変して使わなくなった携帯を取ってくる。
それを石畳に叩きつけて、踏みつけて壊す。


( ´_ゝ`)「よし」

いい感じに電源だけ入るようになった。画面は完全に壊れている。
もしメールの事について聞かれたら、適当にこれを出そう。

財布も無しに壊れた携帯持ってうろついてるとか変人以外の何物でもないから、
今日は家で留守にしてもらうけどな。今は俺の机の中に入れとこ。

そう思って引き出しを引いたら、過去に作った色々な『念の為』がゴロリした。


(;´_ゝ`)「わあ」

ここに壊れた携帯を入れたら、この場面をお題に物語が一つ書けそうだ。
何にも知らない一般人がうっかり見たら、息呑んで後退るんじゃないか。

352: ◆T/D40qQ./Q:2015/05/18(月) 23:38:54 ID:ik6gQ.Sk0
あっ、なんか弟が俺を気狂い扱いする一端を垣間見た気がする。




38.糸冬

拍手

310: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:12:10 ID:WvmyfKKI0
37.そんな優しさ、持ち合わせちゃいないが



内藤の家での一泊は、特に何もなかった。

家を追い出された元ニートのニュが不法侵入を試みたらしいが、
防犯設備に引っ掛かり、警察へ連行されていったくらいだ。

日常と化しているらしく、内藤の電話一本で終了。実に平和。
しかし、日常と化しているくらいなら相応の罪も溜まってるだろうに。


( ^ω^)「平和って何だったっけかお」

( ´_ゝ`)「何も起きない日常」

( ^ω^)「最初から日常が崩れている場合はどうなるんだお?」

( ´_ゝ`)「人生ハードモード続行」

( ^ω^)「親のセックスからリセットしてえ」

311: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:13:06 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「さっきの奴さ、何で逮捕されないの? 何回も来てんだろ?
      そろそろ不法侵入でぶち込めるんじゃねぇの?」

( ^ω^)「身内から前科者を出したくない奴らが逮捕の邪魔してるお」

( ´_ゝ`)「ああ、そういうのか」

( ^ω^)「しかも被害者が僕だからシカトされてるんだお」

( ´_ゝ`)「そういうのか……」

( ^ω^)「その分、迷惑料は受け取ってるんだおっお」

( ´_ゝ`)「なら問題ないな」

( ^ω^)「けど来る時間帯が深夜だから、我慢の限界も近いお。
      サイレン聞けば毎回大人しくなるけど、しつっこいんだお」

( ´_ゝ`)「まあまあ、サイレンぐらいでビビるなら問題ないだろ」

312: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:14:07 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「もう年だし家族もいねぇからって、失う物がないのを自覚して。
      トラックとか重機に乗って玉砕覚悟で家に突っ込んでくるような、
      おっそろしい爺ちゃん婆ちゃんよりかはやりやすいって」

( ^ω^)「何故ジジババがそのような行為に走るお」

( ´_ゝ`)「糞親父になんかされた……その復讐だろうよ」

( ^ω^)「あ、やっぱり何か悪いコトしてたのかお? 親父さん」

( ´_ゝ`)「確定はできないが、何人か殺ってる気がする。
      あと軽微な犯罪としては、相撲賭博は確定」

( ^ω^)「人を殺しそうな奴には見えるけどお、
      ギャンブルやるようには見えないお?」

( ´_ゝ`)「開催する側って事だよ。言わせんな危なっかしい」

( ^ω^)「ふむ、通報したお」

( ´_ゝ`)「今度会う時は地面の下か、またな内藤」

( ^ω^)「冗談だお。やめろ携帯を返せクズ」

313: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:14:53 ID:WvmyfKKI0



(;´_ゝ`)「ぶっ飛ばさなくたっていいじゃないか……」

( ^ω^)「割と本気で僕の携帯握りしめてたおね?
      でなきゃ画面にこんなヒビ入らないおね?」

( ´_ゝ`)「ああ無意識の内に」
  _, 、_
( ^ω^)「ったくお。そんなに捕まる事を怖がってる癖に、
      よく殺人計画なんて建てるおね。確実に逮捕されるお」

( ´_ゝ`)「殺す前に捕まっちゃうのが一番嫌なんだよ。
      全部終わった後にしくじって捕まるならまだしも」

( ^ω^)「……ふぅん?」

314: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:15:40 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「捕まらない方法は何か考えてるのかお?」

( ´_ゝ`)「当初の予定では、殺った後アメリカかメキシコか……
      そこらの日本人街にでも潜伏する予定だったんだがな」

( ^ω^)「ほほぉ、ほぉ」

( ´_ゝ`)「外国での居住地を探してるって事実だけ母さんにバレたらしくて、
      『地球の裏側に行ってもジャングルの奥に行っても見つけ出す』って」

( ^ω^)「ヤンデレ系かお」


( ´_ゝ`)「……両肩に食い込んだ爪の跡が残るぐらい鷲掴みにされて、
      目ぇ合わせながら言われた。流石にちょっと怖かった」

( ^ω^)「ヤンデレ系だったお」

( ´_ゝ`)「それ嫌な言葉だなあ。病み方にも色々な重さがあるだろうに、
      ヤンデレって一言に集約されると安っぽくなって嫌いだ」

( ^ω^)「いきなり話題を変えるなお。気になるところがあったとしても」

( ´_ゝ`)「すまん」

315: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:16:39 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「しかし、あれだおね。弟者の変な執着は母親譲りと見たお」

( ´_ゝ`)「何の執着?」

( ^ω^)「さあ、この世に安息の地はないんだお。病院行くお」

( ´_ゝ`)「何どれあいつの女に対する執着の事?」

( ^ω^)「そいつから直接聞くがいいお」

( ´_ゝ`)「警察っぽいのがいたら、俺は逃げるからな!」

( ^ω^)「はいはいお、ほらガラッガラのバス来たお」

貸し切りバスに乗り込んだ直後、弟者からメールが来た。

『件名:最近なんかあった?』
本文はなし。

316: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:17:50 ID:WvmyfKKI0
昨日、衝撃的だったものを敢えて、強いて上げるならば、
丑三つ時にフヒフヒ笑いながらキーボードを叩いてる筋肉達磨だ。

深夜に何やってんのかと覗いてみれば、なんと言うか……。

SNSやTwitterを日頃から巡回して、炎上させる火種を探している内藤は、
俺やアヒャとはまた違った、尖った方向に気が狂っていると確信した。


いつもノートに書いてるような日記形式の文体でメール返信。
しばらくして、弟者からの返答。

『件名:違う
 本文:そういうのじゃない』

どういうのだ。

つか内藤が無理に携帯の画面を覗き込んでくる所為で、
鼻息が首筋に当たって気持ち悪い。キモい。キショい。

317: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:27:23 ID:WvmyfKKI0
(^ω^; )「昨日の今日で、なに……ゆえ……そんな、
      日常みたいなやり取りが出来るんだお貴様ら……」

( ´_ゝ`)「口調がおかしいぞ内藤」

(^ω^ )「お前らがおかしいお」

( ´_ゝ`)「そうか? 俺の時も同じようなモンだったぞ。
      あいつが俺の足にボウガンぶっ放してくれた翌日も」

(^ω^ )「……今とは逆の立場で?」

( ´_ゝ`)「そう。今とは逆の立場で。一晩離れれば大体落ち着く」

(^ω^ )「おかしいお。悔しいビクンビクン殺してやるぅとかないのかお?」

( ´_ゝ`)「悔しいが、あの時は俺の油断が一番の原因だからなぁ。
      夜店での射的も下手糞だったから、どうせ当てられないだろうと、
      そう思って距離取ってたら……危うく頭に矢が刺さるとこだった」

ミ( ^ω^)「油断してたんだおね」

(#´_ゝ`)「あー、今考えれば、下手糞に見えるよう演技してただけなのかもしれないな。
      思えばあの年は近くでやる祭りには全部誘われて行ったし……くっそぉ。
      わざわざ金かけてまで演技するとかクソが。射的の代金払ったの俺だけど」

(;^ω^)「普段から相手を騙し合う兄弟関係とか怖いお……
      改めて、お前らの血族でなくて良かったと思うお」

318: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:29:28 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「でも、弟者の誘いに乗るんだおね。それも全部」

( ´_ゝ`)「その時の気分に寄る」

( ^ω^)「兄さん気分の時に乗るのかお?」

( ´_ゝ`)「一般的な感覚で、あいつを弟と認識した事はない。
      むしろ俺が弟と思ってるのはまたんきのほうだ」

( ^ω^)「それお前の嫁ェ」

( ´_ゝ`)「紙の上だけだ。性欲なんて抱いた事もない」

( ^ω^)「弟者も可哀想だおね」

( ´_ゝ`)「……本当に? そう思うか? あいつを?」

(;^ω^)「いきなりマジトーンになるのやめろお。
      お前も同情されるの真っ平の癖にお」

( ´_ゝ`)「む、なら説明しろ」

( ^ω^)「弟者のほうは、一応弟者なりに兄者の事を兄貴だと思ってるっぽいんだお」

319: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:30:38 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「だからー、片方がちゃんと兄弟だと思ってるのに、
      もう片方は兄弟だと思ってないとか可哀想だと思ったんだお」

( ´_ゝ`)「兄貴扱いって、何? 責任の押し付け所って意味?
      賠償請求先って意味? 代わりに女に刺されろって事?」

( ^ω^)「やっべこれ兄者の地雷だったお。ストップ」

( ´_ゝ`)「しない。いいかよく聞け俺は」

( ^ω^)「聞かないお。逆に兄者に質問するお。
      兄者は弟者の事を弟だと思った事はあるお?」

( ´_ゝ`)「一般的な兄弟認識じゃなく、俺なりの感覚でなら、まぁ……」

( ^ω^)「それ聞きたいお」

( ´_ゝ`)「露骨に話逸らそうとしやがって」

( ^ω^)「兄者がさっき言いかけた主張は聞き飽きたお。さあ言うお」

録音しようとする内藤から携帯を取り上げて、俺なりの”弟”について考えてみる。

320: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:31:48 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「俺の感覚での双子の弟……いや弟と言うよりは、
      俺の意思を離れた、制御できない劣化分身……?
      とにかくやっぱり殲滅すべき敵に変わりはないなぁ」

( ^ω^)「だからその認識はおかしいってばお。
      本当なら全国の双子を調べる必要があるお」

( ´_ゝ`)「理由は違えど、俺ら以外にも片割れ殺したがってる双子はいるさ。
      ただ表に出ないだけで、その辺にいるっての。知らないだけだ」

( ^ω^)「ソース寄越せお」

( ´_ゝ`)「お前も知ってる素直姉妹」

(;^ω^)「ウッソマジかお」

( ´_ゝ`)「本人に聞いて来い。そして女同士の陰惨とした殺し合いに巻き込まれろ」

( ^ω^)「お前らだけでお腹いっぱいだお」

うっぷっぷーなんて息を吐く内藤の腹を殴ってやりたい。
どうせ拳が跳ね返されるだけだろうが。

321: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:32:40 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「あと一つ、違う理由でもあいつを殺すしかないって思ってる」

( ^ω^)「兄として?」

( ´_ゝ`)「んんん」

どうだろう。ギリギリ一般人の範囲内じゃなかろうか。

よく父親がニートの息子を殺した事件が報道されたりするが、
多分、感覚としてはそのニートの息子の父親に近いだろう。


( ´_ゝ`)「俺なりに、自己中心的な理由じゃなく、あいつの為に、兄としてなら」

( ^ω^)「言ってみろお」

( ´_ゝ`)「あいつは、人より性欲が強くて、貞操観念のブレーキが効き辛いだろ?」

( ^ω^)「だおね」

( ´_ゝ`)「今は俺がいるから、俺に責任が分散されて来てるが……」

322: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:33:31 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「将来、俺がいなくなった時、それで苦労すると断定できる。
      こうなるだろうってあやふやなものじゃない。断定できる」

( ^ω^)「確定だおね」

( ´_ゝ`)「あいつは俺と違って無理矢理勉強机に座らせられる事もなかった。
      母さんは法律に強いし、人脈が広いから今はなんとかなってるが、
      あいつは六法全書なんて開いた事も手に取った事もない」

( ^ω^)「教育方針の格差が酷いお」

( ´_ゝ`)「今から勉強させようにも、あいつの頭に入る訳がない。
      障害者の認定は下ってないから役場で後見人もつけれない。
      借金なんかしたら、糞親父は簡単にあいつを切り捨てるだろう。
      もう既に半分勘当されたような状態だし、助けてはもらえまいよ」

( ^ω^)「うむ……」

( ´_ゝ`)「現在進行形で、女共に恨まれているんだ。
      色んなものから逃げ続ける生活になるだろう」

( ^ω^)「まあ……だおね」

( ´_ゝ`)「だから殺すしかないんだ」


( ^ω^)


( ^ω^)


( ^ω^)


(  ゚ω゚)「はい?」

323: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:34:47 ID:WvmyfKKI0
(  ゚ω゚)「今、僕、何か聞き逃したかお?」

( ´_ゝ`)「知らん。兎に角、あいつの将来は真っ暗闇だ。
      今が絶頂期で、後はもう落ちていくしかない」

(;^ω^)「そっ、そうだおね」

( ´_ゝ`)「それに、このまま野放しにしておけば、人様に多大な迷惑をかける。
      窃盗症も治らないし、下半身も緩い、サボリたがりで、欲望に弱い。
      フォローしてくれる人がいる今が一番なんだよ、こういう奴は」

( ^ω^)「……」

( ´_ゝ`)「かなり質の悪い、犯罪の片棒担ぐような友人達はいるらしいが、
      そんなのが将来助けになるとは思えない……むしろ足を引っ張る」

( ^ω^)「ふむ」

( ´_ゝ`)「だから、俺なりに、兄としてあいつの将来を考えて、
      これから起こる全部の責任を全て取るとしたら」

324: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:36:46 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「今の内に、殺してやるのが、一番なんだよ。……そうだろう?
      事件を起こしてしまう前に、いなくなったほうが名前も汚れない」

( ^ω^)「殺さないって選択肢は?」

( ´_ゝ`)「選択肢は……」

内藤の質問に、頭の中で、俺自身の本音がこだまする。

それに言い返せない兄としての、俺の情けなさよ。
嘘でも『ある』と言えない、みっともなさよ。


( ´_ゝ`)「……ふ、へっ」

自分自身に嗤われている気がした。





37.糸冬


拍手

264: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:37:18 ID:I1xTw.SI0

36.糞食う虫もすきずき


( ´_ゝ`)「酷い夢を見た気がする」

(´<_` )「俺、昨日メッチャ酷い夜過ごしたんですけど?
      お陰で俺もヒッドい悪夢見ちゃったんですけどお?」

( ´_ゝ`)「廃棄物が動いてる……まだ夢の中か……」

(´<_` )「俺の足が動いたら、その顔踏み抜いてやるよ」

昨日の夜、糞野郎に対する計画性の無い殺人衝動は出し切ったと思ったのに。
いざ目の前にしてみると「弱ってる今がチャンスだ」と後押しする感覚がウザい。

前みたいに、我を忘れて目の前が真っ暗になる憎悪よりは大分マシだが。

265: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:38:46 ID:I1xTw.SI0
(´<_` )「朝からガンつけんのやめてくんない?」

( ´_ゝ`)「なら消えろ」

(´<_` )「いやむり」

寝起きにこいつの顔が目の前に存在するのは辛い。

良い夢を見た後の余韻を台無しにしてくれるし、
悪い夢を見た後は不快感を増大させてくれる。

つまりどうあがいても腹立たしいんです。
本当にありがとうございました。


( ´_ゝ`)「ところで、部屋に誰も来てないのか?」

(´<_` )「来てねーよ」

( ´_ゝ`)「ふぅん? なんでだろうな」

266: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:41:52 ID:I1xTw.SI0
( ´_ゝ`)「本当に誰も来なかった?」

(´<_` )「来てねーよ。俺の傷の手当てもまだだよ」

べろりと捲った病衣の下には、血が止まった刺し傷。
致命傷一歩手前まで刺したつもりなのに、元気に見える。


( ´_ゝ`)「手当ていらなくね?」

(´<_` )「いる。バイ菌入るわ」

( ´_ゝ`)「お前自身がバイ菌だろ」

(´<_`# )「んだとテメ( ´_ゝ`)「はい黙れ、下顎砕くぞ」

うるさいので下顎を掴んで黙らせる。
肉体の修復力が異常な家系だからか、腹の傷はもう治りかけているようだ。
ここは元凶の遺伝子提供元を恨むべきか、有難く思うべきか。

267: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:48:52 ID:I1xTw.SI0
( ´_ゝ`)「成功したら警察が面倒いし、母さんも発狂するだろうし……どうすべ。
      でも、生かしておいたら確実に感染性の性病テロが発生するだろうし。
      お前の所為で泣く女も確実に増えるだろうし、俺に迷惑もかかるし。
      死なずに済んで良かったのかな……死んだほうが良かったかな」

喜べばいいのか、落ち込めばいいのか。

まだ複雑だ。
ごちゃまぜになった胸が気持ち悪い。

なんか、とても沢山叫びたい。
家でたまにシャウトしてる母親が羨ましい。

俺も叫びたい。
けど、大の男が手加減無しに吼えたら、猟銃担いだマタギが来そうで出来ない。

しかも、ここは病院だ。
叫び声にビックリした患者さんがショックで逝ってしまわれたら、目も当てられない。

葛藤が腕を伝って手に響く。力が入る。ミシミシ軋む音が聞こえる。
何かを潰す瞬間の、気持ち良い感触がする。手の中で物が変形する、


(  ゚_ゝ゚)「イッづぁ!」

268: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:50:29 ID:I1xTw.SI0
痛みを感じて、反射的に手を引く。
手首から出血がある。爪を立てられたようだ。


(´< `;il)「ふぇえ……あご砕けるかと思ったよぉ……」
  ~
( ´_ゝ`)「余裕だなクソ」

(´< `;il)「おく、奥歯が、すごいグラついてるんですけど?」
  ~
( ´_ゝ`)「俺じゃない」

(´<_`# )「お前しかいねーよ!」

( ´_ゝ`)「そうだな」

(´<_` )「……何? さっきからテンション安定してねーけど、何なの?」

( ´_ゝ`)「さあ?」

(´<_` )「考えがダダ漏れになったかと思えば、人やめてゴリラになるわ。
      ゴリラ化して暴れんのかと思ったら、脈絡もなく沈みやがって。
      寝て起きて、俺が元気にしてた事がそんなにショックだった?」

( ´_ゝ`)「いや」

確かに安定はしてない。
胸の中に嵐が吹き荒れ高波が荒ぶっているかと思えば、
いきなり波風一つない穏やかな真昼の海が広がったりする。

今は、ゴリラ扱いされても微塵も気にならない。

269: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:51:33 ID:I1xTw.SI0
それと、殺せなかったことをそこまで惜しんじゃいない。

最初から期待はしていなかった。死んでくれたらいいなあ、ぐらいだ。
失望はしてない。残念には思ってない。落ち込んでなんかないんだからね。
だって、死んだら死んだで周囲への対応が面倒だもの。


( ´_ゝ`)「ナースコール押せる? 出来ないなら俺が押そうか?」

(´<_`; )「えっと、何企んでます?」

( ´_ゝ`)「何も考えてないよ。脊髄反射トークだよ。逆に聞くけど、
      お前は常にあらゆる事象を考えながら喋ってるのか?」

(´<_`; )「命の危険を感じる時は、割と」

( ´_ゝ`)「そうか。俺は自分でもよくわからない」

(´<_`; )「微妙な優しさは何の伏線なんですか? 全然わかんないんです。
      ぶっちゃけ怖いんで何考えてるか喋ってくれると有難いです」

( ´_ゝ`)「いつもの弟者とはちょっと違うな」

(´<_` )「お前の様子がおかしいから、こっちもおかしくなってんだよ」

271: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:53:58 ID:I1xTw.SI0
( ´_ゝ`)「じゃあ、しゃがめば警戒解ける?」※

(´<_` )「ここはスカイリムじゃねーんだぞ。現実世界の病院だ。
      しゃがんだくらいで俺の目から逃げれるワケないだろ」

( ´_ゝ`)「現実と混同してないよ。スクワットしながらナイフで切り付ければ、
      敵に15倍ダメージ入るとか信じてないから。安心していいよ」

(´<_` )「スクワット戦法なんかされたら顔筋壊れるわ。
      喧嘩の時とか、殺し合いする時はすんなよ」

( ´_ゝ`)「しないよ、冗談だ」

(´<_` )「どの箇所が冗談なのか本気でわかんないんですけど」





※スカイリムで隠密プレイを極めると、敵前でスクワットしながらナイフ振るだけで倒せる。
  並み居る強敵もこれでほぼ楽勝。通称スクワット戦法。亜種にスクワット窃盗術がある。

272: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:55:10 ID:I1xTw.SI0
(´<_` )「これ以上、歯ぁ折ったりしない?」

( ´_ゝ`)「しないよ」

(´<_` )「人の皮被った糞ゴリラ兄貴の所為で、
      奥歯が今にも抜けそうなんだけど?」

( ´_ゝ`)「手術して生やせばいいよ」

(´<_` )「えっ、そんなのあるの?」

( ´_ゝ`)「あるけどお前は無理かな」

(´<_` )「どっちだよ」

( ´_ゝ`)「もう何もかもメンドいからググって」

(´<_` )「話を投げるにも程があるだろクソ兄貴。どうしたんだ。
      キチガイがふわっふわになってもおかしいだけだぜ」

今は大丈夫。俺は平静を保っている。
刺して、怪我して、血を流して、弱った弟者が目の前にいる。
その事実だけで安心出来る。とても心地好い気分だ。

この状態も、あと何分持つか解らないが。


( ´_ゝ`)「知ってる。後少ししたら多分戻るよ……」

(´<_` )「やっぱナシでお願いします。しばらくそのまんまで」

( ´_ゝ`)「俺に言わないで」

273: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:56:46 ID:I1xTw.SI0
(´<_` )「あ、つーかヤバイ。喋ってたら奥歯のグラつき酷くなった」

( ´_ゝ`)「抜ける?」

(´<_`; )「抜けそう」

( ´_ゝ`)「どうする?」

(´<_` )「こうなったら抜くしかないだろ……はあ」

( ´_ゝ`)「手伝おうか?」

(´<_` )「やめろ。お前が俺を不意打ちで殺す未来しか見えない」

( ´_ゝ`)「そうだな。俺もお前の体温を感じた瞬間に殺意を取り戻して、
      喉をフィストでファックしながら窒息死させるかもしれない」

(´<_`; )「その怖い発想はどこからくるの」

( ´_ゝ`)「遺伝子? もしくは長年の苦渋」

(´<_` )「退いても媚びても省みてもどうにもならなそうだな」

274: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:58:12 ID:I1xTw.SI0
(´<_` )「俺だけ歯抜けとか不公平だから、兄者も抜けよ」

( ´_ゝ`)「やだ」

(´<_`; )「や、やだって……やだじゃないだろそこは! 子供かよ!」

( ´_ゝ`)「精神年齢計ってみたら、揺れ幅がすごかったわ。
      永遠の中二14歳から、年老いて達観した60歳まで」

(´<_` )「嘘吐け、下限は5歳くらいだ」

( ´_ゝ`)「それはないだろ」

(´<_` )「あるぞ」

( ´_ゝ`)「あるのか……」

(´<_` )「つか、こんな話してる場合じゃねえ。俺の歯は」

( ´_ゝ`)「母さんに手術頼んでみたら?」

(´<_` )「いけると思う?」

( ´_ゝ`)「駄目だと思う」

275: ◆T/D40qQ./Q:2014/04/30(水) 23:59:41 ID:I1xTw.SI0
(´<_`; )「もーおーどうすんのぉおおお」

( ´_ゝ`)「どうせタコ部屋逝ったらぶん殴られついでに2、3本なくなるさ。
      抜け歯の先払いしたと思って、諦めればいいんじゃね?」

(´<_`; )「待って待って、俺がタコ部屋に逝くのは決定事項なの?」

( ´_ゝ`)「次に女連れ込んだらアウトって母さんに言われたろう。
      退院したら鈍った体にリハビリも兼ねてタコ部屋決定」

(´<_`; )「タコ部屋ってタコ殴りされる為の部屋じゃないよな?」

( ´_ゝ`)「お前のその発想を母さんに伝えといてやるよ。
      部屋に入ったらジョーク用意して待ってるかもね」

(´<_`;il)「うわ……自業自得過ぎて泣きそう」

( ´_ゝ`)「わあキモイ。写メっていい?」

(´<_` )「涙引っ込んだ」

( ´_ゝ`)「まだ撮ってないんすけど」

どうせなら血涙でも流させてやろうかとポケットから手を出して、踏み止まった。

自分でも神経おかしいんじゃないかとしか思えない攻撃的思考が復活。
どうやら、頭ふわふわぱっぱらぱータイムは終わりのようです。

しっかし、こうして自分を取り戻して振り返ってみると、本当に不思議だ。
医者からは遠回しに『脳波がちょっと異常』としか聞けていない。
俺の脳味噌の神経回路は、一体どういう繋がり方をしているんだろう。

276: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:02:45 ID:Lo7fc1bE0
(´<_` )「永久歯ってもう生えないんだっけ?」

( ´_ゝ`)「生えない」

(´<_` )「親父って生えてきてなかった?」

( ´_ゝ`)「生えて来たように見える事例は報告されてるけど。
      あの化け物なら本当に生やしてそうだな。自力で」

(´<_` )「俺も生えさせれないかな」

( ´_ゝ`)「自分の遺伝子を信じれば?」

俺らは、MPと書いてはマッスルポイントと読ませる化け物を親に持つ。
精神面を肥溜めに捨てて、物理だけに極振りしたようなこの家系。

生半可な傷では死なぬ。治らない傷も何故か治る。ソースは今までの人生。
二十数年続く人生の中、数々の殺し合いや闇討ちを経験してきたが、



277: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:03:32 ID:Lo7fc1bE0



家族全員、しぶとくのうのうと生きている。

死んだ父方の祖父も、火事じゃなかったら生きてた。
ただの家屋の崩落だったら、間違いなく生還してる。


化け物に関しては、生まれつき大事な首の骨が一つ足りないのに、元気に生きている。
普通なら生まれる途中で首を折って死んだりする筈だったのに、生きている。

特に運動しなくても常にムキムキだし、手足はまるで丸太のような太さだし、
どこを殴ってもゴムタイヤを殴った感触しかしないし、もうクリーチャーでいい。

最近、糞親父がミスタチオン関連筋肉肥大症、
もしくはそれに近い症状の可能性が浮上してきて、
人間ではない線が濃厚になってきた。
あれが実は神話生物と言われても驚かない。

それでもいずれは、殺すか、殺す一歩手前ぐらいには追い詰めたいけどな。

浮気や不貞は駄目とか弟者に説教しておきながら、
いざ自分がやったら開き直るゴミは死ぬべき。

278: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:05:24 ID:Lo7fc1bE0
あんな父親の背中しか見てないから、俺も弟者もこのザマだ。



( ´_ゝ`)「あれだ。ちょっと干からびて死んでみてくれ」

(´<_`; )「なんでだよ!」

ベッド上の起き上がり小法師と付き合ってる暇はない。
今の状況はとてもではないが落ち着けない。
頭を飛ばしてる場合なんかじゃなかった。

状況を確認する為に、荷物を回収して廊下に出る。

後ろから「看護婦呼んでー!」と鳴き声が聞こえる。
最近のサルは芸達者だ。人の声真似までするなんて。

279: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:07:23 ID:Lo7fc1bE0
( ´_ゝ`)「掃除されてんな」

昨日の痕跡があまり見当たらない。人も集まってない。
ドアについた傷はそのままだったが、ゴミは綺麗に片づけられている。

ここまで来たのに、何で部屋に入らなかったんだ?
昨日の録音を再生しながらメモしつつ、頭の中を整理する。


推測その1
 ・糞野郎のナースコールには気づいていない。
 ・近くの部屋からのコールを受けて、騒動跡のみ掃除されて終わった。

推測その2
 ・糞野郎のナースコールには気づいている。
 ・夜中の騒動についてのコールだと思っていた為、部屋には入ってきていない。

推測その3
 ・コールには気づいているが、それよりも重大な事件が発生したor
  めでたく迷惑患者リスト入りした為、今は後回しにされている。


羅列してみたが、2と3が苦しい。1だろうか。

280: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:09:06 ID:Lo7fc1bE0
( ´_ゝ`)「ううむ」

考えても仕方ない。情報を集めよう。

ナースステーションの近くの椅子に座って、聞き耳を立てる。
ここは早起きの爺ちゃん婆ちゃんの憩いの場でもあるからな。

老人を見ながら目と耳の癒しを確保。
優しそうな年配の方って安心するんだよ。
仲良さそうな老夫婦なら、もう最高だね。

縁側でお茶飲んでまったりする絵は日本のテンプレの一つだけど、
あれは描かれている人物が老人じゃないといまいち和み要素がない。
年老いた人が絵の中にいるからこそいいのだと俺は信じている。

自分でも分からないが、10年近く世話になってる担当医の説明曰く、
『老人に対して過剰な関心を抱く』のは俺のこだわりの一つらしい。

老人へ対する庇護欲や保護欲とでも言えばいいんだろうか。
俺は気にしていなかったが、周りには異常に見える程らしい。

”らしい”が多いのは、俺自身がまだ納得していないからだ。
老いてる者が気になるのは、人間として当たり前の心理じゃないのかね。
先が短い人達に、せめて良い最期だけはと思うのは当然じゃないのかね。

281: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:12:38 ID:Lo7fc1bE0
今から赤ん坊を量産したって高齢化社会は確定してしまっているんだし、
老人を追いやる先を作るんじゃなくて、社会に組み込む努力をしようぜ。

まず、田舎は高齢化してしまっているんだから、もっと老人を表に出そう。
店員だって、若い姉ちゃんよりも優しそうな婆ちゃんのほうがいいわ。
若けりゃいいってモンじゃねえ。土産屋以外にも老人店員を配置しよう。

こう、ちょっと悲壮な雰囲気が漂ってるお婆ちゃんが店員だったら、
財布の紐も心の涙腺も緩む。いらない物だって思わず買ってしまう。

地域活性化にはやはり老人達の協力が






( ´_ゝ`)「……今日は思考脱線するなぁ」

例外として、SIRENの屍人よろしく鎌振り上げて襲ってくる老人は撃退する。

282: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:13:38 ID:Lo7fc1bE0
取りあえず、技能聞き耳。判定成功。


ザワザワザワ


 『聞きました? 昨日、不審者が病院に入り込んだんですって』

 『やだ怖い。看護師さん達が忙しそうにしてるのはそのせい?』

 『そうみたい。しかも! その不審者に、乱暴された子がいたんですって。
  その子はここの精神科の患者で、警察も事情聴取に来てるみたいよ』

 『不審者は誰だったんですの? ここの患者ならちょっと怖いわね』

 『見舞客のフリして、昼間に正面から堂々と入ったんですって!
  夜になるまでこの病棟のどこかに隠れていたらしいわよ!』

 『あらあらまあまあ。怖いわあ』

 『それでその隠れてた場所は……』

283: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:14:26 ID:Lo7fc1bE0
( ´_ゝ`)「やだ怖い」

思ったより大事になっている。
これは逃げるが勝ちか、それとも留まったほうが怪しまれないか……。


( ´_ゝ`)「おっと」

色々考える前に、足は病院の裏口へ。
本能も理性も今は逃げろと言ってるし、逃げよう。

弟者には連絡しなくていいや。
母親にも今は連絡しない。

あのビッチとDV野郎のやらかした事件に全部隠れてしまえりゃいいんだが、
俺もしっかり刺してしまっているので、変に疑いをかけられる可能性がある。

弟者はもう言い逃れ出来ないぐらいに関与してしまっている。
腹の刺し傷含めて、想像を超える面倒が襲い掛かるに違いない。
逃げるには、糞親父の世話になるか我が母に庇ってもらうしかないだろう。

……昔から、あいつを殺そうとしたり、致命傷を与えた時によくあったけど。
なんでこうも、予想だにしない乱入者が計画を引っ掻き回してくれるんだろうか。

俺は何か悪いモノにでも憑かれてんの?
目的が絶対に達成できない呪いでもかけられてんの?

284: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:15:23 ID:Lo7fc1bE0
病院から出て正面玄関を見ると、報道関係車が救急車の邪魔になっていた。
阿呆だな。どうしようもない。マスゴミならもっと回りの事を考えろよ。無理か。

ちょっと観察していたい気もしたが、籠る場所を探そう。
容疑者として立候補してしまったら怖いもんね。


( ´_ゝ`)「どこさ逃げんべ」

隠れ家候補地としては、内藤と接待と赤石しかない。
他の奴らは素行が悪いので変な疑いがかかりそうだ。
上記3人も、素行が完全に白かと問われれば黒と答えるしかないが。

斎藤や号刀みたいな『いい子』の家にも行けないだろう。
まず親が不味い。いい子が育つ家だけあって、親が。


( ´_ゝ`)「どこさ逃げんべ……」

俺の親は、どこまでこれに介入しようとするんだろう。
それとも、あのビッチとDV男の両親がなんとかするだろうか。

285: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:16:26 ID:Lo7fc1bE0
なあんもわかんねえなあ。
なあんにもおきねえなあ。


( ´_ゝ`)「あー」

何もなさ過ぎて、明日には普段通りの日常が来そうだ。

病院が俺らを無視しているのか静観してるのか知らないが、
シカトぶっこいてくれるなら、藪に入らず素通りするのが正解だよな。

つーか、来るわコレ。
確実に。到来確定だわ。
何の変哲もない日常が俺を待ってるぜ。

あんなに心配してたさっきまでの自分が、心底馬鹿々しい。

どうせこっちから警察に出向いても、何もねぇわ。

286: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:18:16 ID:Lo7fc1bE0
俺が何かやっても、弟がなんかしても、糞鶏がやらかしても、
身内のアレ、家族のごたごただからと取り合ってくれなかった。

新聞を飾れる傷害事件を起こしても、殺人未遂にあっても、
未成年だから、痴情の縺れがどうたらで取り合ってくれなかった。

足にボーガン刺さった被害者が交番に駆け込んでも、取り合わない。
家に連絡一つ寄越してそれっきり。平然としてやがった。有り得ない。
家庭板のテンプレのような対応をしても駄目だった。駄目だった。


( ´_ゝ`)「うん、よし。普通に過ごそう」

そうと決まれば行動は早い。
ジャストタイミングでメールを寄越してきた内藤の家にでも遊びに行こう。
どうせ向こうもこっちの話を聞きたがってるだろうし、調度いいや。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

288: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:23:30 ID:Lo7fc1bE0
( ^ω^)「今までの話を統合した結果」

( ´_ゝ`)「はい」


( ^ω^)「気に入らない男を刺して」

( ^ω^)「キチガイに連れ去られる女を見捨てて」

( ^ω^)「健やかに寝たと」

( ´_ゝ`)「補足すべきところがあり過ぎてもういいや」


( ^ω^)「んで」

( ^ω^)「朝起きて『やべえ』と思ったけど」

( ^ω^)「なんやかんや考えたらそうでもない事に気付き」

( ^ω^)「僕んちに遊びに来たと言うんだおね?」

( ´_ゝ`)「そうだな」

289: ◆T/D40qQ./Q:2014/05/01(木) 00:25:42 ID:Lo7fc1bE0
( ^ω^)「このサイコクズちゃんめ」

( ´_ゝ`)「全てをその一言で済ますお前は流石だぜ」

( ^ω^)「今日は病院込みそうだから、明日行くお。
      兄者はここに泊まってけばいいお」

( ´_ゝ`)「やったー」

( ^ω^)「飯作んの兄者な」

( ´_ゝ`)「やだー」






36.糸冬


拍手

242: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:41:55 ID:LVsCaGDo0

                            . 



「もー寝ててもいいから聞いとけよ」


「昔、裏山で一緒に遊ぼうって言ってくれた時あったじゃん?」


「純粋に嬉しかったんだけどさあ」


「その後マジ酷かったよな」


「兄者に『うり坊がいた』って騙されて着いてったら」


「ガキが掘ったとは思えねーふっけぇ穴に突き落とされてさ」

243: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:43:55 ID:LVsCaGDo0


「最初は兄者が俺を落としたんだとは思えなくて、助けを呼んだら」


「鉄パイプ持った兄者が覗き込んできたじゃん?」


「いつもなら、その時点でヤバいと気づくけど」


「そん時の俺どうかしてたぜ」


「それで引っ張り上げてくれると思ったんだ」


「普っ通に、兄者が助けてくれると思ったんだ」


「鉄パイプで滅多打ちにされる直前までな!」


「勝手に裏切られた気持ちになってたぜ」

244: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:45:12 ID:LVsCaGDo0


「殴られてる時は『もうダメだ』『終わる』って頭に浮かんだ」


「ガキの頃だから、生きるとか死ぬとか知らんかったしさ」


「兄者にした嫌がらせとかの仕返しをされてる、とも思わなかった」


「だって兄者のお気に入りの物壊すとか、本破くとか、服隠すとか」


「当時はそれが当たり前だったし、真正面から喧嘩売っても怪我すっし」


「悪ぃ事やったらどんだけ相手の恨みを買うとか、後の事は考えなかった」


「それをやったら『自分はスッキリする』からやってた」


「それが駄目な事だって、誰も分かるように教えてくれなかった」

245: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:46:28 ID:LVsCaGDo0


「ノータリンのガキと、自己愛特有の自分正義な考え方だよ」


「『自分が他人を害しても、その他人が自分を害するとは考えない』」


「兄者の日記に書いてたっけ」


「まあ、そこんとこはどうでもいいや」


「俺は殴られながら、別の方向に色々考えたんだよ」


「『このままこの穴の底で死んだら、誰にも見つけられずにずっと一人』

 『もしかしたら、生き埋めにされるかも』『熊に食べられて無くなるかも』

 『昔話みたいに、俺の頭の骨が成長した木の上に掻っ攫われるかも』」

246: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:47:09 ID:LVsCaGDo0


「そうやって色々考えて、最終的にどうやっても最後にこうなるって気づいた」


「『死体を見つけてもらったとしても、入るのは家の中じゃなく墓の下』」


「思い当った時はぞーっとしたね」


「こー、上手く言えないけどさ」


「空しいっつーか、寂しいっつーか?」


「そんな気持ちになって、糞あっちぃ夏だったのに体の中心から冷えてくワケよ」


「生まれて初めての感覚だったわ」

247: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:48:13 ID:LVsCaGDo0


「そんな貴重な感覚に耽ってる時も、兄者は容赦なく殺しにきてますしぃ?」


「情緒も手加減もクソもねーよな。余計に危機感じたわ」


「で、何かの線越えて逆に冷静になってさ」


「この状況をどうするべきなのかって考え出した」


「殴られてる状況をどうにかしようじゃなくて、死体になった後の話な」


「ガキなりに、現状はどうにも出来ないって分かってましたしぃ」


「俺は死んだ時を考え始めたワケよ」

248: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:49:21 ID:LVsCaGDo0


「土の中って暗いじゃん?」


「暗いとこだと寂しいじゃん?」


「暗いところで二人なら平気じゃん?」


「だったら、兄者を道連れにすればいいって答えが出た」


「二人なら死んでも寂しくないよねえ」


「宇宙葬したいとか言ってる奴は理解出来ないぜ」


「多分、俺はそういうとこ母さんに似たんだろうな」


「母さんも、本当の本当に追い込まれた時」


「心中しようとするから」

249: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:50:45 ID:LVsCaGDo0


※ボイスレコーダーに録音されていたノイズ

250: ◆T/D40qQ./Q :2013/09/27(金) 05:51:48 ID:LVsCaGDo0





なんだか酷い夢を見た。




糸売.

拍手

149:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:41:38 ID:X4lDBbSE0
拳を引っ込めさせるような、正しい答えは求めてない。
攻撃する理由付けをする為に、クズな答えを求めてる訳でもない。

両親が親父の浮気で別れたってのに、なんでこんな女を擁護するのか、
浮気するほうをわざわざ守ろうとする理由を聞こうと思った訳でもない。

自分の精神状態が、ヤバいところまで進行してるのが判る。

部屋を見回しても、癒しになりそうな物体が存在しない。

眼を閉じても、目の前のバカと、外からの声で落ち着けない。

頭で色々と判ってても、そろそろ体と、攻撃的な思考と、
それらをただ眺めて記憶するだけの脳に別れそうだ。

俺では止められない、衝動の一つが喉元まで来てる。
もう勝手に口も手も動きそうだ。殺しそうだ。刺し殺しそうだ。

我慢しろ自分。殺さない。刺すだけ。刺すだけなんだ。


(´<_`; )「ほら、もし暴力沙汰になったら、何コードだっけ、
      男の職員呼んで、静かにさせる放送のやつ。
      ナースコールして、それやってもらえばいいじゃん」

( ´_ゝ`)「呼んでもらって、どうするつもりだ?」

150:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:45:32 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そいつを取り押さえてもらえばいいじゃないの?」

( ´_ゝ`)「取り押さえてメデタシメデタシか? 相手が刃物持ってたら?
      警察沙汰になってしまった時、お前はどうするつもりだ?」

(´<_`; )「警察って」

俺は、そんなシミュレーションを夢に見るまでやったけどな。
盗む衝動を抑えないこいつは、そんなの考えた事すらないだろう。


( ´_ゝ`)「有り得ない話じゃないだろ、さっきお前なんつった」

(´<_`; )「殺されるかもしれないってったけど、いや、だったら、
      尚更部屋ん中に入れないとヤバいじゃねーか!」

( ´_ゝ`)「部屋の中に入れて、それからどうするんだ?
      それで、相手が扉を破ってきたらどうするんだ?」

(´<_`; )「もうナースコール押しとけばいいんじゃねーかな……」

( ´_ゝ`)「そうだな。それも、一応はいいのかもしれないな」

151:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:49:50 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「だったら押すぞ。いいよな、押しても」

( ´_ゝ`)「それで、看護師さんが先にここへ来てしまって、
      その看護師が怪我をした場合、どこに責任が行く?
      その前に、女が何かやらかした場合はどうする?」

(´<_`; )「やらかすって?」

( ´_ゝ`)「女が看護師とか警察とかに、変な証言をした場合だよ」

(´<_` )「変な証言?」

( ´_ゝ`)「こっちに、変に責任が飛び火した場合はどうするかって、
      そんな事もわかんねーのか、いっぺん死ねボケ。
      ここにお前があの女を呼び寄せて、庇おうとしたんだろ?」

(´<_`; )「そこまで事が大きくなるとは」

弟の言葉を遮って、リノリウムの床にぶつかる音がした。

鈍く響き渡って、文字全体に濁音がつくような音が。

次いで、硬いものが固いものを殴ったような、鈍い音。

152:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:52:58 ID:X4lDBbSE0
女の悲鳴は聞こえない、男の声も聞こえない。
何回も、壁や床にぶつかる音だけがする。

頭でも掴んで、叩きつけてるんだろうか。


(´<_`; )「ヤバいって! 入れないと!」

( ´_ゝ`)「入れてどうするんだ?」

(´<_`; )「どうするって、何とかするに決まってんだろ!」

( ´_ゝ`)「フーン、頑張れ」

(´<_` )「……糞兄貴は何もしないのかい」

( ´_ゝ`)「俺が何かしないといけないのか?」

(´<_`; )「この音でヤバいのもう判るだろ! 助けろよ!」

( ´_ゝ`)「なんで助けないといけないんだ?」

(´<_`# )「人を助けるのに理由がいるのか?!」

( ´_ゝ`)「あー……」

153:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:55:18 ID:X4lDBbSE0
こんな状況で、そんなクッサイ台詞言われたって。
ミスマッチ過ぎて、ギャグにしかならねっつの。

つーか、お前、日頃の行い棚に上げてそれとか、本当、


( ´_ゝ`)「……あはっ」

(´<_`; )「な」

( ´,_ゝ`)「いひっ、弟者、お前、自分が、何言ってるか分かってる?」

(´<_`; )「似合わねーの言ってるって自覚はあるよ。
      そう言いたいんだろ? 知ってるよ。それより」

( ´_ゝ`)「知ってる? 助けろってどの口が言うんだ? どの口が。
      女を平気で殴れるお前が、俺に女を助けろだって?」

(´<_`; )「俺、今動けねーし、てーか」

( ´_ゝ`)「てーか? ひひっ。どうすんの? 俺が、あいつを、助ける?
      結婚前の最後の遊びだからって男を食いまくった女を?
      相手の気持ちなんかクソも考えずに遊びまくった女を?」

(´<_`; )「それは今関係ないだろ!」

154:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:58:39 ID:X4lDBbSE0
あ、もう口が止まんねーな。勝手に動く。


( ´_ゝ`)「る? ない? 関係、ある? ない? あるよ、すっごくあるよ。
      自業自得、俺は関係ない。俺は、関係ない。それともお前は、
      あの女がノった男の一人だったのか? だから助けたいのか?
      関係ないにしてもあるにしても、バカには変わりないんじゃない?」

(´<_`; )「もうどっちでもいーよ! 早く」

( ´_ゝ`)「何するんだ? 助けたとして、残った男は? 結婚前なんだろ?
      裁判に持ち込まれて、難癖つけられたらどうするつもりだ?
      もう糞親父の家は関係ないんだぞ? 揉み消すのは無理だ。
      お前は自分がくそったれなヒーローになれると思ってたのか?
      それともあの女にとっての白馬の王子様でも気取ってたのか?」

(´<_`# )「もううるせーよ!」

( ´_ゝ`)「てかさ、元の家じゃないんだ。億単位の慰謝料取ったとは言え、
      母さんの金には限りがあるんだ。お前はそれを頼るつもりか?
      どうやったってあの女が悪いのに、あいつを庇うつもりか?
      弁護士でもないのに、バカなお前が庇えると思ってんのか?
      その男から、糞ビッチを寝取ろうとでも思って庇ってんのか?
      女が『彼らが誘った。脅迫された』と言ったらどうするんだ?」

(´<_`# )「いーよもう! 俺が行くわ」

155:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:06:17 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「ばぁーか。どうやって行く? 車椅子で行く? ボッコ決定だな。
      やったねおとじゃちゃん、けががふえるよ! やめさせるけど。
      もしかしてさあ。手加減してもらえるって軽く考えたりしてる?
      それともさあ。俺の手助けでも期待しちゃってたりすんの?
      後者はやめとけ、前者より可能性はないからな。期待すんなよ。
      まあ、あの男がこっちに向かってきたら反撃だけはするけど、
      わざと男がこっちに向かってくるようやったら、どうなるか判る?」

(´<_`; )「いや、俺だったら加減」

(*´_ゝ`)「かげん? あっ、言わなきゃ判らないね。今から判らせるよ。
      もし、お前が、男に『あいつが女の浮気相手だ』っつって、
      こっちを指したらお前ごと全員殴り殺すよ? いいよね?
      もう巻き込まれたようなモンだし、それくらい許されるよね?
      人は先入観と常識から、弱者に見えるほうを信用するからね。
      そうしない為にも、絶対にドアを開けさせないほうがいいよね。
      車椅子に乗せねぇ、ベッドから動かさねぇ、外に行かせねぇ。
      そこを動くなよ? 絶対にだ。ドリフ的な前振りじゃねーから」

(´<_`; )「兄者、ちょっと」

一部、分裂した感覚と思考が、外の音を捉えた。

何かを引き摺る音がする。
布と、硬い物と、皮膚が擦れる音。

ずりずり、ごごご、きゅぎゅぅううぅ。

156:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:16:48 ID:X4lDBbSE0
(´<_`; )「外! 廊下!」

( ´_ゝ`)「見えるの? すごいね。結局、お前がビッチを庇う理由は何?
      何であいつを庇うの? お前に何か利益があったりするの?
      メシア願望でも満たしたいの? 正義でも気取りたいの?」

(´<_`# )「話聞けよ!」

( ´_ゝ`)「お前ってフェミ野郎だったっけ……違うよなぁ。
      平気で女殴ってたし、弟者をフェミとして数えたら、
      世の中で女性解放論を唱えてる奴がキレるな」

(´<_` )「今どうでもいいだろ、そんなん」

( ´_ゝ`)「入院してる間の性欲処理を頼もうとした、とか」

(´<_`# )「ああもういいよそれでさあ!」

( ´_ゝ`)「相手に弱味を握られてるとか。
      何か、恩でも感じてるとか?」

(´<_` )「あ、お前会話してねぇな」

( ´_ゝ`)「日頃の行いから、下心以外の推測が出来ないんだよなあ。
      捻りがないのは単純でいいけど、つまらない以前に迷惑だ」

157:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:21:54 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「せめて俺見て喋ろよ」

( ´_ゝ`)「溜まってるなら、お前の部屋にあるエロ本とかグラビアとか、
      内藤に頼んでエロ漫画持って来てやるから、我慢しろよ」

(´<_` )「戻って来てそれかよ」

( ´_ゝ`)「なんでお前は女に見境がないんだ? 面倒事を呼ぶんだ?
      やっぱり携帯なんて返しちゃ駄目だったんだよ母さん……」

(´<_`; )「もういいよ! それよりも外が大変な事に」

( ´_ゝ`)「大変な事って何だっけ? 俺らに何か関係あるっけ?
      俺はお前に質問してるんだよ? なんで答えないの?」

(´<_`# )「答えただろうが!」

( ´_ゝ`)「先に、俺がビッチを助けたくない理由を言えばいいのか」

(´<_` )「聞きたくねーよ」

( ´_ゝ`)「さっきも言ったけど、いいよな。
      面倒なんだよ。こんなのはさあ」

(´<_`; )「おい誰と喋ってんだ。マジで」

158:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:29:56 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「碌でも無いモン抱え込んで、俺に迷惑かけずに、
      勝手にどっかでくたばってくれんならそれでいいよ」

(´<_` )「ああはい、そうですね」

( ´_ゝ`)「でも、目の前にいる限りは、お前が俺を追って来る限りは。
      何かしらの形でやり返させてもらうよ? 当たり前だよね」

(´<_` )「はいはい」

( ´_ゝ`)「ああ、仕返しで屈辱的な事を思い出したよ。
      日頃のどうでもいい仕返しばっか成功してさあ。
      いざ計画立てて準備しても、土台すら出来無ぇ」

(´<_` )「自分のせいだろ」

( ´_ゝ`)「地震や津波。糞親父の浮気まで俺の責任になるのか?」

(´<_`; )「い、いきなり応えるんじゃねーよ」

( ´_ゝ`)「本当に人生って上手くいかないよな……何もかも、上手くいかない」

(´<_`; )「あ? ああ、うん」

( ´_ゝ`)「長い時間かけて計画立てて成功した事例なんて、
      それこそオフラインゲームのキャラ育成ぐらいだぜ」

159:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:38:04 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そーかそーか。俺はオンラインゲームも一応成功したぜ。
      兄者は支援職ばっかやりたがるから、都合良かったよ」

( ´_ゝ`)「気に入ってたサイトが復活したかと思ったら、
      最終更新日が2002/11/21でガッカリしたり……」

(´<_` )「ああ、また自分の世界か」

( ´_ゝ`)「適当に、VIPで今までの事を簡単にまとめて投下して」

(´<_` )「うん?」

( ´_ゝ`)「最後に、お前の殺し方を安価で決めようかと思ってたのに」

(´<_` )「おい」

( ´_ゝ`)「最後に安価出しても不自然じゃないように、
      わざわざその為に縦まで仕込んだんだぜ?」

(´<_` )「どんだけだよ」

( #´_ゝ`)「何もかも台無しだぜ! ざけんじゃねぇよ!
      なっんで! そこで! 浮気すんだ糞親父が!」

(´<_`; )「関係なくね?」

160:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:42:44 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「あれでもギリギリ尊敬はしてたんだぜ?
      芯は通った大人だって思い込んでさ」

(´<_` )「実際はブレまくりだったけどな」

( ´_ゝ`)「途中までは普通にいい親父として書いてたのに、
      いきなり糞親父に化けやがって、あのクズ野郎。
      お陰で路線変更どころじゃなくなった。脱線したよ」

(´<_` )「あれを良く書けるなんてスゲーな」

( ´_ゝ`)「蓋を開けてみれば、何て事ないゴミだった。
      女におだてられりゃすぐ調子に乗るような、
      ただのエロガキだった。クソみてぇなガキだった。
      大人を斜め下に勘違いしてるマセガキだった」

(´<_` )「そう……だなあ」

( ´_ゝ`)「判るよな? お前も、あの糞親父の事、
      『ガキみてぇ』っつってたもんな? な?」

(´<_`; )「まあな」

162:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:49:12 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「離婚して引っ越した所為で、大幅に予定がズレてよお。
      引っ越し先は廃屋同然でネットの回線すらなかったから、
      光回線の工事して、ようやく2chに書き込めると思ったら」

(´<_` )「規制だろ?」

( ´_ゝ`)「ああそうだよ。光にして、まさかの巻き添え規制だよ。
      ホント、マジで、何なの? 何かが俺の邪魔すんの?
      なんも上手くいかねぇ。ざけんなよ。ふっざけんなよ」

本当は知ってる。何もかも邪魔してない事くらい知ってる。
全てが自分の道を塞いでいると本気で思ったら、本物の統失だ。


(*´_ゝ`)「笑えるよねえ? 笑っちゃうよねえ? いっひひひひひ!」

(´<_`; )「俺は笑える気分じゃねーよ」

暫く笑って、息を整える。

廊下にはまだ誰かいるようだ。さっきの奴らだろうか。
何してんだろ。俺らを浮気相手だと疑って様子見?

どっちでも、どうでもいいか。

163:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:56:40 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「さて、弟者君、本題です」

(´<_`; )「何だよ。改まって」

( ´_ゝ`)「向こうにいた時、俺を刺した事あったろ?」

(´<_` )「……ああ、知ってるよ。ぶっ殺したと勘違いして、
      早まって自分の首切って後悔したぜ、あん時は」

( ´_ゝ`)「ほう」

(´<_` )「脇腹に包丁ざっくり刺して血ぃ垂らしたまま、
      普通に起き上がって走って来んだもんな」

( ´_ゝ`)「そうなのか。死んだフリしときゃよかったのか」

(´<_` )「俺に死んでほしいほうの兄者ならそうだろ」

( ´_ゝ`)「過ぎ去ったチャンスは仕方ないから諦めるわ。
      俺は今取れたこの時間を大切に消費しよう」

(´<_` )「ああそうかい。俺も女は諦めるから、さっさと寝てくれ」

( ´_ゝ`)「いい心掛けだ。刺す時は少し手加減してやろう」

164:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:00:17 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「……は?」

( ´_ゝ`)「だから、俺はお前を刺す。覚悟はいい?」

(´<_` )「へっ?」

( ´_ゝ`)「いいかな?」

(´<_`; )「良くねーよ! 何言ってやがる!」

( ´_ゝ`)「拒否権はありませ~ん」

瞬時に、糞野郎の視線がサイドテーブルの上に流れる。

残念。林檎の近くにあるのは、空ケースです。


(*´_ゝ`)「正解はこっちでしたー!」

右手を軽く振って、ナイフを取り出す。

165:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:04:22 ID:X4lDBbSE0
林檎にナイフぶっ刺して返した時から、
刃物に対する警戒心が強くなって困ったよ。

自分の包丁で自分の脇腹を刺された身としては、
是非とも弟者の愛用ナイフで刺してやりたいからね。


(´<_`;il)「っ! ……!」

逃げようとしたのか、ベッドから転がり落ちる。

車椅子を部屋の隅に寄せといて良かったぜ。
逃げられたら、今度こそ、全部全部台無しだからな。


( ´_ゝ`)「あっ、ねえねえ、もしかして勘違いしてる?」

(´<_`; )「はああ? 何を、だよ」

( ´_ゝ`)「殺すつもりはないよ。刺すだけ」

(´<_`# )「それで安心させようとしてんのか? 出来るか!」

ですよね。

166:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:09:42 ID:X4lDBbSE0
倒れるなら、固い床よりベッドのほうがいいだろう。
襟元を掴んでベッドの上に放り投げる。


(´<_`; )「おい!」

( ´_ゝ`)「俺の気遣いだ。受け取れよ」

馬乗りなって、相手の動きを封じる。
ギプスがいい枷になってくれてるようだ。


( ´_ゝ`)「それじゃ」

馬鹿力を発揮される前に、腹にナイフを当てた。
息を呑み込む音が聞こえて、気分が上昇する。

ナイフの切っ先が、皮にぷっつり穴を開ける。
周囲の騒音は聞こえるが、誰の声も聞こえない。


頭の中で、いつかどこかでこいつを殺せと叫んでいた声が、
瞬間的に大きくなる。反響する。繰り返される。吐き出される。

アンコールはしない。自分の右手を、左手で抑えた。

197:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:16:52 ID:3vYnxUnU0
刃先が腹に沈むにつれ、例えようのない感覚が湧き上がる。

それは興奮を伴っていると自分でも判る。
満足感と、嗜虐を満たせた時の感覚に近い。


( ´_ゝ`)「死ぬ? 死ぬ?」

相手の額に、ぷつぷつと脂汗が浮き上がって来る。

見るに堪えない顔が段々歪む。

歯を食いしばる音が聞こえる。

耳障りな呻き声が聞こえる。

呼吸が荒くなる。

部屋が歪む。


大っ嫌いなスケコマシより優位に立っている事実。

憎い憎いあん畜生の生殺与奪権を握っている実感。

殺したい奴が目の前で滝汗垂らしているこの現実。

198:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:18:26 ID:3vYnxUnU0
ああ、全てに愉悦を感じる。
俺はこうしている時が、一番楽しい。


(´<_`; )「マジ、でっ……やりやがったなこのキチガイ!
      そのスレで安価取った奴ごと逮捕されろ!」

( ´_ゝ`)「ざ~んねん。俺は安価も何も出してないよ」

(´<_`# )「何が残念だ! ぶっ殺してやる!」

( ´_ゝ`)「元気だなお前。もうちょい深くいっとくか」

ナイフを押し込もうとして、腹の中で硬い物体に阻まれた。

硬い、骨か。骨だな。骨はヤバイ。
殺すつもりはないから、やめとこう。


( ´_ゝ`)「さっきの話だけどさ。安価は出してねぇよ?」

返事はないが、話を続ける。

199:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:19:43 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「そこまで進める前に糞親父が浮気して……や、
      騒動があって、それどころじゃなくなったからね」

(´<_`il )「ぁあ?」

( ´_ゝ`)「法律的にムリゲーな安価とか、腐った奴らが集る前に、
      お前の携帯使って自分で安価取ろうとしたんだけどさ」

(´<_`il )「自演前提とか死ねや」

( ´_ゝ`)「元々、無難に『刺し殺す』とか『絞め殺す』ってやろうとしてたし。
      うっかりヘマして他の奴に安価取られても、無理矢理消化して、
      俺がしたい事するつもりだったしぃ。本末は転倒させませんよ」

(´<_`il )「いつから計画してたんだよ、クソが」

( ´_ゝ`)「いつから? 具体的な構想は4年くらい前からだけど。
      最初にそうしようと思ったのはいつからだったっけ?」

(´<_`il )「俺が知るか」

( ´_ゝ`)「だよなぁ」

こんな問答、どうでもいいか。

それよりも眼下の惨状。まさに至福の時。
なのに、何故か時間の流れが遅く感じられる。

200:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:20:40 ID:3vYnxUnU0
ゲームに熱中している時や、蟻の巣をほじくるのに集中している時。
本を読んでいる時や、自分の中で新しい理論を組み立てられそうな時。

そういった楽しい時間は、早く過ぎ去ってしまうよう感じられるのに。


(´<_`# )「っつかよ! さっきから笑ってんじゃねぇよ!
      この状況で余裕綽々とかマジでムカつく!」

( ´_ゝ`)「マジで? 俺笑ってる?」

(´<_`; )「窓見ろや!」

夜中の窓に、薄ぼんやり映っている。

別に笑ってない。いつも通りだ。
面としては可もなく不可もない。


( ´_ゝ`)「笑ってねーじゃん」

(´<_`# )「窓見た瞬間に無表情になったっつの!」

俺もそうじゃないかと思ったよ。言わねえけどな。

201:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:21:29 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「それにしても元気だな弟者君よぉ。
      腹をぶっ刺された人とは思えんわ」

(´<_`# )「腹刺されたのに車のドアぶっ壊した奴が言うな!」

( ´_ゝ`)「壊してねーよ、外れたんだよ、事故だよ。
      お前いっつまでもその話題引き摺るよな」

(´<_`il )「俺への殺意を忘れない奴に言われたくねーよ!」

( ´_ゝ`)「忘れるわけないだろ。今更消えると思ってんのか?
      生まれ付き抱えてた発狂する熱さの煮え湯に加えて、
      後から後から殺意が滾る事ばっかしてくれてんだから、
(´<_`# )「ぐだぐだウルセェ! 俺をどうしたいのかハッキリしろよ!
      捕まりたくねーなら看護婦でも医者でも呼んで来やがれ!
      トドメ刺すならさっさとこっち来いや! 絞め殺してやる!」

( ´_ゝ`)「お前だって俺を殺したがってる癖によく言うぜ。
      まだ死なれたら困るから、もう一度コールしたら?」

(´<_`# )「腕が上がらねんだよ! それに殺意はテメー程じゃねーよ!
      こんな事されねー限り殺すだの何だのは考えねっつの!」

( ´_ゝ`)「どうだか。何もしなくても殺しに来た時あったろ」

(´<_` )「昔はな。今はねーよ。ナースコール押せ」

( ´_ゝ`)「押してもらえると思ってるのが驚きだ」

202:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:22:51 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「さっきも言ったろーが! 腕が上がらねって!」

( ´_ゝ`)「よくそれで絞め殺すとか言えたもんだ」

(´<_`# )「言ってから気付いたんだよ!」

( ´_ゝ`)「あー。バトル漫画の主人公じゃねぇんだから、
      そろそろ大人しく弱っといたら? うるせぇよ」

(´<_`# )「この状況で落ち着けってか?」

( ´_ゝ`)「刺された側に立った経験がある身としては……
      うん、無理だな。落ち着かないか。しゃあねぇ」

(´<_` )「だろ?」

だろ? じゃねぇ。よく見たら額に掻いてた汗が引いてやがるし。
○ラゴン○ールの登場人物じゃないんだから、流血したら弱れよ。

なんて言いたいけど、ここは我慢我慢。
お互いの言葉がブーメランにしかならない。

この異常なまでのタフさは、やっぱ糞親父譲りか。
悪こそ世にしぶとく蔓延る原因かね、こういうのは。

203:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:23:48 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「うあーなんか痛くなくなってきた」

((( ´_ゝ`)「おっ、死ぬ?」

(´<_` )「ちょっと嬉しそうにするのやめてくんない?
      お前には罪悪感とか後悔とかないの?」

(*´_ゝ`)「お前に対して罪悪感を感じるぅ? 笑わせんなよ。
      そんなん今まで生きてて一度もありませ~ん」

俺にとって、流石 弟者は人型のサンドバッグであり、動く的だ。
だから痛めつけても罪悪を感じない。苦しめても後悔しない。

自分の周囲を飛ぶ蚊を潰したとして、罪悪感を抱く奴はいるのか?

病んでるのは「一寸の虫にも五分の魂」と言うかもしれないが。
大多数の一般人は、害虫を駆除したとして、それに何を感じる?

俺にとっての弟者は、蚊であり、敵であり、害虫であり。
母親と法さえ無ければ惨たらしく殲滅すべき、ただの敵だ。

大体、恨むなってのが無理な話だろう。

こんな糞野郎でも救う道があるとほざく奴は、
流石 兄者の人生を追体験してから言ってくれ。

204:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:24:49 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「後悔はな、きっと未来の俺がするだろうよ。
      『何故あの時、糞野郎を殺さなかったんだ』ってな」

(´<_`; )「そりゃ、また、救いようのない」

( ´_ゝ`)「誰かから助けて貰えると思ってんのか?」

(´<_` )「母さんは助けてくれんじゃね」

( ´_ゝ`)「母さんか……」

母さんね。確かに、助けるだろうな。
助けるだろうけど、俺の認識としては微妙だな。


糞親父のバツサン売女への浮気が家族全員にバレた後。
誤魔化しからの開き直り、逆切れ暴力コンボが起きた夜。

ゴミ共が去った部屋で、母親から一家心中を持ちかけられた。

俺個人は、出来れば人類滅亡まで生きたいので死にたくない。
最低でも糞野郎を苦しませて殺したいので、心中はしない。

そんな感じで軽く答えたら「そう」とだけ呟いて終わった。

一応、その夜は布団の中でずっと起きていたけど、
朝のモーニングコールまで何の襲撃もなかった。

205:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:26:03 ID:3vYnxUnU0
俺がどうするかを聞いてきたので、無理心中ではないんだろう。
その点はいい。相手が嫌がるであろうものを事前に聞くのは得策だ。

けど、母親は、流動食すら満足に摂れないくらい心身が追い詰められた時、
家族全員を道連れにしようとする選択肢が出る人。と脳内にインプットされた。

今もまだ安定しきっていない。家の中で、極々稀に叫んでたりする。


( ´_ゝ`)「あとの、後悔は……母さんだな。お前みたいなカスでも、
      母さんはきっと発狂してヒステリー起こすか、気絶する。
      そうなったら、俺は母親に申し訳が立たない。後悔する」

(´<_` )「俺の心配は何一つしないのな」

( ´_ゝ`)「当たり前じゃん。お前が死んだら超嬉しいし。
      苦しんでたら楽しいし、殴ったらスッキリするし」

(´<_` )「そうだな。躊躇いなく刺すもんな。俺がバカだった」

( ´_ゝ`)「そうだな。バカの極みにも限界があるんだぞ。
      知ってたか? ライン越えたら病気か障害だよ」

(´<_`# )「ちげーよ糞兄貴! テメーもバカだ!
      俺が言いたいのはそれじゃねぇ!」

( ´_ゝ`)「じゃあ何よ」

206:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:27:13 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「俺も色々考えたんだよ! これでもな!
      一緒にあの家離れてから変わったんだよ!」

( ´_ゝ`)「悪い方向に?」

(´<_`# )「じゃあ今から言うから聞けや!」

( ´_ゝ`)「はいはい」

にしても看護師遅いな。足音も聞こえない。
ナースコール押してから大分立つのに、何してんだろ。


(´<_` )「家出るまでは、正直なんとも思ってなかったぜ。
      大体、さっき兄者が言ったやつと同じだった」

( ´_ゝ`)「だろうよ」

(´<_` )「毒男みたいな奴が兄貴だったらいいとずっと思ってた。
      俺より弱くてチビでブサで肝っ玉も小せぇカスみたいな奴」

( ´_ゝ`)「それ鬱田に言ってみな」

(´<_` )「時期見て言うさ」

207:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:30:28 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「んで、殴れば金ポロっと吐くサンドバッグが理想だったんだ。
      それでいて甘っちょろくて、ちょっと優しくすれば簡単に信じる、
      人に騙されやすいバカが兄貴だったら良かったって思った」

( ´_ゝ`)「鬱田の母親の養子にしてもらえよ」

(´<_` )「ヤダよ、あんな貧乏な家」

( ´_ゝ`)「鬱田家の目の前で、どうぞ」

(´<_` )「拒否する。そんでー、家に着いて色々あってー?
      んー、なんつーか『やっべ、やり過ぎた』みたいな?」

( ´_ゝ`)「何で疑問形なんだよ」

(´<_` )「俺もまとまらねーんだよ。もう面倒くせ。向こうで色々あって、
      兄者に悪いコトした後に罪悪感みたいなの抱くようになりました。
      二人だとナンパしやすい事実が判明したので仲良くしたかった。
      はい、終わり。終了です。異論は受け付けませんぷーるるるる」

最後の最後に腹が立ったので、刃物を深く沈めてやる。


(゚<_゚ ; ; ;)「 ...   ...   . !」

ゾンビ映画に出てきそうな皺枯れ声をあげて丸まった。
何だよ、ちゃんと痛いんじゃねぇか。嘘吐きめ。

208:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:34:00 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「俺に罪悪感ね……その割にはこっちで出来なかった、
      女の擦り付けだの借金だのやってくれたじゃないか」

(´<_`; )「お前のお陰で口から血が吐けそうだわ」

( ´_ゝ`)「スルーか、いいけどよ。写メってやろうか?」

(´<_`; )「いらねーよボケ」

死ぬ間際の老人みたいにプルプル震える腕が上がる。
体を起こすのかと思いきや、刺さった刃物を抜き取った。

『刃物が体に刺さった時は、下手に傷口から抜いてはいけない』
と何処かで齧った知識が浮上するが、相手が弟者なので沈める。


(´<_` )「腹気持ち悪、変に熱もっててあっちぃ」

( ´_ゝ`)「へぇ」

(´<_` )「お前はどうだったんだよ」

( ´_ゝ`)「俺の時は、ブチ切れて心臓の動悸激しくなり過ぎて、
      腹よりも心臓と頭が痛かったね。それから覚えてない」

(´<_` )「何お前、死ぬ手前でも俺の事しか頭にないわけ?」

( ´_ゝ`)「当たり前だろ」

218:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:39:13 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「暇と時間さえあればいつだって、
      どう殺してやろうか考えてるよ」

(´<_` )「昔と変わったな。変わったっつーか、俺にとって、
      物凄い迷惑な一文が増えてるっつーか……」

( ´_ゝ`)「増えてる?」

(´<_` )「家出る前は『苦しめて』なんて聞かなかったぜ」

( ´_ゝ`)「そうか、そうなのか、そうなんだろうな。
      恨みが積り積もった結果だ。めでたいね」

過ごした時間が積もるにつれ、嫌な出来事も増えた。
昔みたいに、さっくり殺して終わる妄想はもうしてない。

苦しめて苦しめて苦しめて、人生のどん底に落としたり、


(´<_` )「わーどうしたらいいんだろうね」

( ´_ゝ`)「死ねばいいと思うよ」

(´<_` )「酷ぇな」

( ´_ゝ`)「マジで。本気で。もう、心の底から」

(´<_` )「……酷ぇな」

219:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:40:45 ID:D5oJcwdA0
(´<_` )「救いはないんですか?」

( ´_ゝ`)「ネタを普通に入れるなよ」

(´<_` )「躊躇いはないんですか?」

( ´_ゝ`)「何回同じような質問してんだよ」

(´<_` )「ないの?」

( ´_ゝ`)「答えは変わらん、ないよ。あると思ってんの?」

(´<_` )「いいや」

( ´_ゝ`)「何でまた」

(´<_` )「今さ、走馬灯が凄い」

( ´_ゝ`)「どんな?」

(´<_` )「生まれて始めてお前に『殺される』って覚悟した時の記憶と、
      親父に『殺される』ってビビった時の記憶がデッドヒート中」

220:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:42:26 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「生まれて初めて?」

(´<_` )「家の裏山で、俺の腕を笑いながら折った時だよ」

( ´_ゝ`)「そんな事もあったっけ。忘れた」

(´<_` )「これがしつこく言われる『いじめた側はすっかり忘れて、
      いじめられた側はいつまでも覚えてる法則』か……」

柄にもなく遠くを見たりしている弟者。
これはツッコミ待ちだろうか。


( ´_ゝ`)「間違ってもいじめられっ子じゃねぇから安心しろよ。
      血流しすぎて不安になってんならまたコールしとけ」

(´<_` )「何回コールすりゃいいんだよ。つか来ねーじゃん」

( ´_ゝ`)「会議室で事件でも起きてるんじゃないの?
      それにそろそろここに来るだろ。誰かは」

さっきから廊下を歩く足音するしな。

221:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:43:24 ID:D5oJcwdA0
コールしてからこっちに来るのがかなり遅かったうえに、
ヒールっぽい足音が複数聞こえるのが少し気になるが。


( ´_ゝ`)「じゃ、俺はそろそろ寝る」

(´<_` )「えっ……この状況で?」

( ´_ゝ`)「おやすみ」

ベッドの下に頭からスライディング。

暗さが調度いい。暗いと気持ちよく眠れる。
わざわざ明かりを点けて眠る人間は理解に苦しむ。
網膜を常に刺激し続けるとか、目の負担になりそうなんだがな。

暗所恐怖症やトラウマ持ちは例外とする。


(´<_`; )「寝たら死ぬだろうが! フラグ乱立してんぞ!」

( ´_ゝ`)「大丈夫、お前を盾にして俺は生きる」

(´<_`# )「そんな問題か! ンの野郎!」

222:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:45:40 ID:D5oJcwdA0

威勢のいい声と共に、目の前に簀巻きがふってきた。
頭からとか足からじゃなく、腹這いに降ってきた。

しかも前面からビタンと落ちた衝撃で、更なる重症を負っている。


(;´_ゝ`)「あ、危ねぇ」

一瞬、終わったかと思った。

長きに渡る確執じゃなく、俺の社会的な人生が終わったかと思った。
中途半端に死なれて、暴力を発散する場所が無くなったかと思った。

ほぼ無意識に、腕を伸ばしてしまっている。ちょっと恥ずかしい。
俺が腕を伸ばすのは、転びかけてる老人だけでいいのに。

うっかり殺っちゃってもいいやと考えていたが、
やっぱりいざとなると自分の今後が心配だな。


(゚<_゚  )「ホギャン!」

自らのガラスハートが未来を憂うあまりに砕けそうだったので、
簀巻きを解いて、ゴミ袋に刺さってるナイフを引っこ抜いた。

223:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:48:57 ID:D5oJcwdA0
ナイフを一回転させてカッコ良く鞘に戻そうとしたが、
手から盛大にすっぽ抜けて部屋の隅に飛んで行った。


( ´_ゝ`)「さー今度こそおやすみ」

( <_ # )「こんな、こんな状況で寝れるか糞兄貴」

( ´_ゝ`)「寝ろよ。どうせそんくらいの傷じゃ死なねえよ。
      それ以上に深く刺された俺が生きてんだ」

( <_ # )「死ねクズ、アホ、キチガイ、インポ野郎。殺してやる。
      殺すなら殺せ。取り憑いて呪い殺してやるからな」

( ´_ゝ`)「へいへい」

(´<_`# )「ゴーリキー、糖質ー、施設に入れこのアスペ」

( ´_ゝ`)「将来的にはそのつもりだ」

(´<_` )「えっ」








 .糸冬


拍手

64:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:30:45 ID:3J9qkI4c0
35.季節が融ける


ヾ( ・ ∀・)ノシ「じゃーな兄者! また来年くらいになー!」

( ´_ゝ`)ノ「おー」

( ・ ∀・)b「あのキモゴミは一発殴っといて!」

( ´_ゝ`)b「任せろ」

斉藤が用意していた婚姻届に名前を書いたのはいいが、
一番重要な判子がなかったので俺が持って帰る事にした。
血判でも良かったんだが、他人にそれを強制するのもな。

届は正しい記入例も見ずに、二人でてきとうに空欄を埋めた。
見直し必須の届である。色々な意味で我が母の帰宅待ちだ。

どうせ役所に行く時は親同伴だろうし、これ以上するべき事もない。
親戚連中は、向こうの親と我が母が協力して収めてくれるみたいだ。

斉藤の親に有りもしない疑惑をふっかけられるのはとても面倒なので、
さっさとタクシーを呼んで病院へ向かう。途中でコンビニがあれば寄ろう。

病院に着いてからやるべきなのは、情報規制か。

65:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:31:53 ID:3J9qkI4c0
知り合い、特に糞野郎に結婚がバレると面倒なので、
用紙に書いた斉藤の名字も俺の名字も変えちゃいない。

今時、訳有りじゃない夫婦別姓もそう珍しくないからな。
あいつは斉藤 妹者のままだし、俺も流石 兄者のままだ。

これを報告するのは、内藤とアヒャだけでいいだろう。
内藤だと、こっちが教えなくても勝手に調べそうだしな。

アヒャは少し不安だが、事実だけ報告して斉藤の名前は伏せよう。
役所に婚姻届を出す旨を伝えてから、発狂メールがガンガンきてる。

こんなのをどう説得したらいいのか。
出来るなら正気のアヒャと会話したい。


これから起こる面倒を考えると、病院に向かっている足が止まる。

丁度、近道に公園を突っ切っていたところだったので、
そこら辺のベンチに腰掛けて溜め息を吐く。どうすんべ。


( ´_ゝ`)「はぁー……」

66:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:32:58 ID:3J9qkI4c0
顔を上げた先には、道路から除雪された雪を積み上げたバカでかい山と、


( ^p^)「ぽっぽっぽっぽー」

(-_-)「……」

おかしなガキ共がいた。

片方は年齢に相応しくないリードを背中から垂らしているし、
もう片方のガキは微動だにせず冬の芸術雪像と化している。

ここで目を惹かれてガン見した俺が悪いんだろうな。
時既にお寿司、近くにいた飼い主がヘイトを嗅ぎ付けた。


(;゚;;-゚)「あの! すみません!」

( ´_ゝ`)「はい、じろじろ見てしまってすみません」

(;゚;;-゚)「女の子達が迷子になってしまったんです!
    少しだけこの子達を頼みます。ごめんなさい!」

( ´_ゝ`)「は?」

67:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:35:19 ID:3J9qkI4c0
(;゚;;-゚)「行ってきます!」

( ´_ゝ`)「え、ちょっと」

伸ばした手が虚しく空を掴む場面で、紙を握らされた。
紙を見て十数秒の硬直後、現実を把握。

俺の通ってるクリニックのデイケアでは、稀に散歩を行う。
それで迷子が出たとかだろう。多分。誘拐の線は薄い。

しかしよ、任していいのか。いいのかそれで。
ここらで一番でかいクリニックさんよお。

つか、マジで何これ、えっ?
俺も病院の職員と勘違いされた?

何故に? ケアマネの証であるカードは首から下げてないぞ。
新人だと勘違いされたのか、向こうが新人だから俺を勘違いしたのか?

子供デイケアの中で、精神年齢が近いって理由で俺も入ってたが、
それが職員と誤解されるきっかけになった、とかか? わからん。
確かに、俺より年下の奴らばっかりだったから、理数系は教えていたが。

つーか、リードを垂らしてるほうがヤバい。
抑え込まないと道路に飛び出しそうだ。


(;´_ゝ`)「おーい……えっと」

呼ぼうとしたけど、名前がわからん。

68:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:36:06 ID:3J9qkI4c0
あいつが自分の名前を記憶しているかも定かではないが、
聞き慣れた信号ぐらい池沼でも判るだろう。解ってくれ。

あまり期待せずに、渡されたメモを見る。
メモに書いてある事を箇条書きにすると。


( ^p^) たかしくん


・理解できない言葉にも突っ込まないように。

・我が身も相手も怪我をさせないように。

・変な物を飲み込ませないように。

・トイレはトイレでさせる。

・後は臨機応変に。

・怒らない。

・切れない。

・怒鳴らない。

・三ヶ条。

・卑猥な言葉を喋った時は、注意する。

69:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:36:57 ID:3J9qkI4c0
(-_-) ひっきーくん


・簡単な言葉で、わかりやすく、ゆっくりと話す。

・呼ぶ時は、顔を見ながら、視線を合わせて名前を呼ぶ。

・急な変化が苦手なので、何かする時は前もって教えておく。

・変わった行動を取っても、それが自分にとっての落ち着く行動。

・危険、迷惑な行動を取ったら、無理に止めず、少し待つ。

・待ってから、やってはいけないというルールを説明する。

・嘘を吐いたり、騙したりしないので、言葉はそのまま受け止める事。

・不安が大きくなると自傷行為に走るので、前もって危険を取り除く。

・パニックになっている時は、絶対に声をかけない。

・話しかけて来たら、相手が満足するまで忍耐強く聞く。

・疲れると、その場に座りこんでしまうので、おぶる。

・こちらの我慢が大事です。

70:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:38:19 ID:3J9qkI4c0
( ´_ゝ`)「これは……」

難しい。特に、たかしくんの難易度が超ベリーハード。

読みながらリードを持つのに成功したが、食い千切られそうだ。
現に、食ってる。涎をぼたぼた垂れ流す様は、まさにケモノ。


(( )^p^) モグモグ

( ´_ゝ`)「その紐、美味いのか?」

(( 。)^p^) モッモッ

言葉が通じない。会話が成立しない。意志疎通が不可能。
何この無理ゲー。やめてよ何の因果律が働いてるの?

遠回しに、キチ同士の潰し合いでも望まれてるんだろうか。

そんな政策が出来たら、処分される側にも教えてほしい。
あの糞野郎さえ殺させてくれるなら、俺は抵抗しないから。


( ^p^)「ぽぉおおおおおおおおおお」

( ´_ゝ`)「うお」

71:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:39:54 ID:3J9qkI4c0
三( ^p^)「ぱおおおおおお」

(( ´_ゝ`)「ちょ」

{━━( ^p^)゙} ビンッ

少しの間、現実から目を背ける行為すら許してくれない。


━(#^p^)「ヴァアアアアアアア!」

( ´_ゝ`)「そりゃそうなるわ」

(-_-)「……………………………」

前途が多難に満ち溢れている。
溢れすぎて溺れそうだ。涙に。

このままたかしくんを引っ張って病院に行くのを考えたが、
ひっきーくんは背中を押しても話掛けても微動だにしない。

しゃがんで目を合わせて「ひっきーくん」と呼んでも反応なし。
試しに「くん」を外して「ひっきー」と呼び捨てにしても反応なし。

もしかしたら生体反応すらないのではと思ったが、
触ったら暖かかったので生きてはいるようだ。

72:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:40:52 ID:3J9qkI4c0
肩に担いで行くかとも考えたが、メモには急な変化が苦手とある。
前もって教える為に声をかけても、全くリアクションがないので、
俺がこれからやろうとしてる行いを理解してるかどうかも不明。

力任せに強行するのも考えたが、キチガイの力は凄まじい。
具体的には、脳のリミッターが外れている奴らの力は凄い。

酔っ払いを全力でぶん殴っても、すぐに起き上がって来るのと同じで。
ガイキチを殺す気でぶん殴っても、奇声を発しながら襲いかかってくる。

体格でこいつらに勝っているとは言え、二人もいると怖い。
無理におぶって、背後から両目を狙われたらと思うと、ちびる。


携帯で病院に連絡しようにも、電源が切れたのでアウト。
病院の電話番号を調べようとググっていたら、切れた。

ネットに接続すると、数分で電池が無くなるこの携帯。
まだまだ使えると思っていたが、緊急時にこれは駄目だな。

諦めて面倒を見るとしよう。


( ^p^)「ぱおっ! ぱおっ! ぱおおおおお!!」

(-_-)「……………………」

頑張ろう。俺。

73:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:41:51 ID:3J9qkI4c0
まず、秘蔵のICレコーダーをセット。

この雪と風の中で、人の音声を拾ってくれるかどうかわからないが、
俺に不利な事故が起こった時に身の潔白を証明するものが必要だ。

可能なら時間を巻き戻して、あのブスの言葉を録音したい。
事が終わったら、勤務先に苦情を入れてやる。解雇されろ。
患者に患者を押し付けるとか、一番やっちゃいけない事でしょう?

壊れてる奴ら同士で共鳴するとか、そんな幻想はない。
知的障害者の思考回路なんて分かるかよ。奴らは人じゃない。
わざわざリードに雪を乗せて食ってる奴の思考なんて分からない。

これならまだアヒャの相手をしてたほうがマシだ。
今ならあいつの糞重たい愛を受け止めれる気がする。

リードの先っちょに繋がるホモサピエンスを見ると、
こんなのを押し付けられた自分が哀れでならない。


( ^p^) シャクシャク

( il´_ゝ`)「はぁ…………」

(-_-)「………………」

74:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:43:08 ID:3J9qkI4c0
こいつらに怪我させない為に、危険物を取り除かなくてはいけない。
言い換えれば、俺が二次的な危害や被害にあわない為に。

しかし、危険物を取り除くっつったって、具体的にはどれをなんだ。
世の中には、どんな物でも応用すれば危険物になる物しかない。

自分の区分けで危険物と判断してしまうなら、公園の遊具全てだ。
そこらへんに転がってるゴミも危ない。一面に広がる雪も危ない。
道路脇の、排気ガスと泥が混じった茶色い雪なんて論外だ。


三( ^p^)「ぱぱあああああああ!!」

ベンチだって、たかしくん自ら突進して行けば、

ゴイン

  Ω
<(;^p^)>「うごぐごぉお゙お゙お゙お゙おお!!」

( ´_ゝ`)「そうなるわ」

ぶつけた部分を抑えて、雪の上を転げ回る破目になる。

もういっそ、無重力の何もない世界に突っ込むしかないだろ。
究極の安全ってのは、そういうものなんじゃないか。

75:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:44:08 ID:3J9qkI4c0
病院から見えるところに公園があるんだし、
手ぇ振ったら誰か気付いてくんないかな。

なんとなく、あいつのいる階を探してみたところ、
憎らしい緑色と、吊られた足と、女の影が見えた。


( ´_ゝ`)「わあ……ここから見えたのかぁ……」

我が母の言い付けを破った証拠を撮ろうにも、携帯は仮死状態。
こんな時に限って、本当にタイミングが悪い。
ナイフの準備だってまだしてないのに、早過ぎるじゃないか。


( ^p^)「ぽあ、ぽあ」

( ´_ゝ`)「ん? どうした」

( ^p^)「ぽああああああああああああ」

( ´_ゝ`)「そうか、たかしくんの親はオウム真理教信者か」

( ^p^)「ポア」

( ´_ゝ`)「そんなに死にたいのか、殺したい奴がいるのか」

76:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:45:28 ID:3J9qkI4c0
サリンを撒く前に、自分でサリン食って死にそうだな。たかしくん。

青酸カリを舐めても冷静に成分分析できるどっかの探偵みたく、
超人的な抵抗力を身につけなくては簡単に死んじゃうぞ。マジで。


( ^p^)「じゅーす」

( ´_ゝ`)「はっ?」

( ^p^)-「ジュース」

( ´_ゝ`)「話せたのかよ」

腹立つな。しっかり自販機を指してやがるし。
会話には応答しない癖に、自分の要求は伝えれるのか。

怒らない。切れない。怒鳴らない。こりゃ無理だぜ飼い主さん。
よくここまで育てたな。ドブにシュートしても、俺は批難せんよ。


(( ^p^))「じゅぅうううすぅうううううあああああ!!」

( ´_ゝ`)「うるせぇなぁ」

77:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 05:47:16 ID:3J9qkI4c0
たかしくんは体が冷えているだけだろうが、
身も心も冷え切っているのはこっちだ。

暖かい飲み物は摂取したいが、こいつらに買い与えていいものか。

俺は職員ではないから、経費は落ちない。
この場合、個人で消費した事になるのかね。
法律に詳しい偉い人来てくれ。我が母でもいい。

グイッ グイッ


゙( ´_ゝ`)「ん?」

(-_-)「ノド……カワイタ」

( ´_ゝ`)「話せたのか……」

買い与えて問題ないのか、どうなんだよ。誰か教えてくれ。
ググって調べようにも、黒い板切れは沈黙中。
日本が誇るフィーチャーフォンも、こうなれば形無しだ。


( ´_ゝ`)「んー」

周りを見回しても、ケアマネが戻って来る様子はない。

80:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:33:46 ID:3J9qkI4c0
いいか。買おう。ひっきーくんとの会話の切っ掛けを作りたい。
たかしくんも涎が垂れっぱなしだから、水分補給が必要だろう。


( ´_ゝ`)「それじゃ、ひっきーくん」

(-_-)「ハイ」

( ´_ゝ`)「俺がお金入れたから、欲しいところのボタンを押してね。
      高いところにあるボタンだったら、君を持ち上げるから」

(-_-)「コレ」

ピッ ゴトン

緑茶か。この年齢で中々渋い選択じゃないか。
いや、間違って押した可能性もあるのか?
飲むまで様子見しといたほうがいいか。


( ´_ゝ`)「このベンチに座って、ここで飲んでてくれる?
      たかしくんの分と、俺の分の飲み物も買ってくるから」

(-_-)「ワカッタ」

駄目だと判ってるが、ひっきーくんに分かりやすいよう、
たかしくんの名前を言うところで当人を指差した。

81:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:34:44 ID:3J9qkI4c0
そういや指差しって何で失礼なんだろうな。
礼儀の世界は分からない。

しっかし、ひっきーくん物分かりがいいじゃないか。
覚悟して想定していた対応よりも、かなり軽い。

となると問題はあのてんすだな。どうしたもんか。


( ´_ゝ`)「たかしくーん」

( ^p^)「あぉおおおお」

( ´_ゝ`)「たかしくん、喉渇いてるんだよね」

( ^p^)「はじゅじゅじゅじゅ」

( ´_ゝ`)「飲み物飲むかい?」

( ^p^)「んんぽっぽおおお」

( ´_ゝ`)「いらない?」

( ^p^)「あじゃじゃしたー!」

( ´_ゝ`)「……」

欲しいんじゃなかったのかよ、ジュース。

82:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:35:27 ID:3J9qkI4c0
落ち着け俺。怒らない。切れない。怒鳴らない。三ヶ条だ。
糞野郎でその辺りの神経は鍛えられてるじゃないか。ファイト俺。

ヒョイッ


( ´_ゝ`)「たかしくん」

(;^p^)「ふお」

こっちの声が耳に届いているかどうかもわからなかったので、
両腕を掴んで、足が地面からバイバイするまで持ち上げた。

これで聞いてくれるだろう。嫌でも理解出来るまで聞かせてやる。

眼球は苦手だが、焦点が常にぶれているので気持ち悪さは左程無い。
たかしくんの唾がかからない程度に顔を近付けて、質問をする。


( ´_ゝ`)「たかしくんは、喉が渇いているかい?」

( ^p^)「お」

( ´_ゝ`)「ひっきーくんは飲み物を飲んでるんだ。
      俺もこれから飲み物を飲もうとしている」

( ^p^)「おお」

83:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:36:07 ID:3J9qkI4c0
( ´_ゝ`)「たかし君も、何か飲むかい?」

( ^p^)「じゅーす?」

( ´_ゝ`)「そうだね、ジュースだよ」

((*^p^)「のむー! じゅーす! じゅーす!」

( ´_ゝ`)「そっか」

現金な奴だ。金の概念自体がなさそうだが。


( ^p^))「ぶらーん」

たかしくんを下ろそうとするが、俺の腕に捕まって、そのまま遊んでいる。
結構力があるな。この年で余裕で自重支えてんぞ。喧嘩売らないで正解か。
流石は池沼、脳のリミッターが外れてるなと下衆い感心する余裕もない。

かなり激しいブランコみたく揺れているが、たかしくんは落ちずにいる。


(( ^p^)「ぶらーぶらー」

( ´_ゝ`)「楽しい?」

( ^p^))「ぶらんこじゅーす」

( ´_ゝ`)「そうか」

84:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:38:18 ID:3J9qkI4c0
会話が成立するのは期待しないで、適当に相槌を打つ。
ぶら下げたまま自販機まで行き、金を入れようとして問題発生。

ボタンを押せるのか? 何の缶が何の味と理解してるのか?
していない場合は、こいつに何を買い与えたらいいんだ?

自分は『子供は甘い物が好き』の考えは捨てている派だ。


(;´_ゝ`)「……」

(( ^p^)「じゅーじゅー」

(-_-) ゴクゴクゴク

緑茶を飲んでいるひっきーくんは、それでひとまず良しとする。


( ´_ゝ`)「たかし君、この中で何を飲みたい?」

( ^p^))「じゅーす」

( ´_ゝ`)「そうか、ジュースか。うん……」

これでうっかり嫌いな飲み物を買い与えてしまったら、獣が生まれる事になる。
連鎖的にひっきーくんも獣化したら、抑えるのに最低でも大人二人がいるぞ。

85:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:39:08 ID:3J9qkI4c0
流石に、生命の危機に陥ったら俺も軽くプッツンしそうだ。

確率はかなり低いけどな。そう都合よくリミッターが外れたりしない。
外れたのは身内限定、致命傷を受けた時のみ、そんな狭い範囲。
それも過去三回しか起こってない。漫画の覚醒系主人公じゃないんだ。


( ´_ゝ`)「たかし君はどんなのが飲みたい? 甘い物?」

(( ^p^)「じゅーす」

( ´_ゝ`)「さわや……スッキリする物とか」

( ^p^))「じゅぅううううう」

( ´_ゝ`)「苦い物?」

(( ^p^)「すぅううう」

( ´_ゝ`)「お茶?」

( ^p^)「じゅーす」

いい加減ウザくなってきたので、腕から手を離させる。

86:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:40:15 ID:3J9qkI4c0
( ´_ゝ`)「……いっそ水でも飲ませるか」

うっかり頭で考えた事が口から出たようで「じゅーす」と念押しされる。
財布の中には後5万。いっそ、あたたか~いを全種類一つずつ買うか。

数打ちゃ当たる。鞄もあるし、残りは野郎の病室にでも持って行こう。
何故かデイケア自体には、差し入れ禁止のルールがあるからな。


( ´_ゝ`)「よし、お金を入れたぞ。プッシュしろ」

( ^p^)「こほぉおお!」

ズバンと勢いよく叩くたかしくん。自販機が揺れたぞ。

ガコン


( ^p^)「ほああああああ!」

( ´_ゝ`)「おお」

ルーレットが当たり、同じ物がもう一つ出て来た。これは予想外。
プリンシェイク二本て、全部たかしくんにやるべきか?

87:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:43:23 ID:3J9qkI4c0
つか、ひっきーくんがこの光景見たら、面倒臭くなるのでは。
これが常識としてインプットされてしまったら、とんでもない事になる。


( ´_ゝ`)「はい、たかしくん」

( ^p^)ノ日「はばああああ」

ひっきーくんの死角になる位置からもう一本を抜き取り、鞄に入れる。

そのまま平和に飲食タイムが終わるかと思ったら、
たかしくんは開けたプリンシェイクを手に持ち、


( ^p^)ノ白「しゃわあああああああああああああ!!」

と雪の上でスプリンクラーの物真似をし始めた。

ブチ切れそうだ。たかしくんに向かって握り拳が必殺の勢いで出そう。
思わず手に持っていた硬貨を変形させてしまった。犯罪である。

これは人じゃなくて動物なんだと思おうにも、結局人の形をしているので、
どうしても人として認識してしまう。せめて体のどっかが欠けてりゃいいのに。

全く、世の中のてんすの母親は、よくあんなの育てられるぜ。
ストレス溜まらんのかな。……絶対、溜まるだろうな。

手のかかる子に感化されて、おかしくなる親もいると聞く。

88:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:45:49 ID:3J9qkI4c0
我が母も俺の事で担当の精神科医に相談してるし、
どっかの板にある障害児を産んでしまったスレでは、
ガイジ達への愚痴や殺意や後悔が溢れている。

そう考えれば一発ぐらいぶん殴っても許される気がしてきたが、
実際にやったら知的障害者への虐待として俺が訴えられる。

俺も手帳持ちとは言え、ここまで重度ではないし、成人してるしな。

ある意味グレーゾーンで手帳を入手している身としては、
精神疾患をでっち上げる破目になるのは避けたい。


気分転換、現実逃避に、アヒャが迫ってきた時の対応を考えよう。
攻撃を避けるイメトレは何十回とやったから、行為を迫られた時。

それから、逃げられない時。

突っ込まれる前になんとか相手から主導を取って、
俺自身にやる気があるよう見せかけるのが大事だな。

いざとなったら薬をブチ込んで永遠に勃たなくさせてやってもいいが、
それだと普通の異性恋愛に戻った時に愉快s、じゃなくて、可哀想だ。

まず俺自身にやる気があるようにするには、
自分の精神状態を整えなくてはならない。

一応友人の範囲にいるアヒャにはどうやってもその気を抱けない。
なら、そいつをアヒャだと認識出来なくなればいい。

89:名も無きAAのようです:2013/04/25(木) 08:46:52 ID:3J9qkI4c0
人を個別に認識する最大の要因は顔。


つまり、麻袋を被せて個性を消してしまえばいい。

顔が隠れれば、誰だって分からなくなる。

袋を被ると、声が聞こえなくなるな。

こちらの声は聞こえるように、耳の部分に穴を開けよう。

待てよ。向こうからの声が聞こえるかもしれない。

声を聞けば、嫌でもアヒャだと認識する。

音でも人は判別が可能だから、猿轡もさせよう。

向こうから触れられるのも嫌だから、後ろ手に縛って。

身動きが取れないように、椅子に座らせて縛りつければ。






,

97:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:41:06 ID:c6hPWvFc0


見せしめに殺される捕虜と、テロリストの出来上がりだ。

98:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:42:26 ID:c6hPWvFc0
おい、

これじゃ何かのプレイだ。

主導権を奪って遠回しに、平和的にやめさせたいだけで、
軍人なりきりSMプレイ行為を強制させたい訳じゃない。


99:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:43:44 ID:c6hPWvFc0

                         ターン



頭の中で、内藤の顔によく似た物体が踊り狂ってるかと思いきや、
脳天を打ち抜かれた死体を手術室へ向かって緊急搬送して行った。

妄想の世界に区切りをつけて、現実に帰る。

100:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:44:35 ID:c6hPWvFc0
( ´_ゝ`)「ひっきー君。あんな事、してはいけないよ」

(-_-)「シナイ、モッタイナイ」

( ´_ゝ`)「よし」


たかしくんは未だにスプリンクラーの真似事をしている。

雪の上に飛び散るプリン。雪と弾けて混ざるカラメル。
もったいないオバケに喰われて死ぬぞ、たかしくん。

あまりにも回り続けるので、回転を止めようとリードを持ったら千切れた。

貧弱過ぎる。皮装備の一般人じゃ間に合わない。
たかしくんは黄金の鉄のあうあうあーだぞ。
どうせなら、頑丈な大型犬用のリードにしとけよ飼い主さん。

リードが壊れては、万が一の時に制御できない。
これを帰らせる口実にしよう。間違っちゃいない。

101:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:45:31 ID:c6hPWvFc0
会話は成功したのだし、まずひっきーくんを説得しよう。


( ´_ゝ`)「ねえ、ひっきー君」

(-_-)「ツカレタ」

( ´_ゝ`)「おっ?」

その場に座り込んで、動かなくなるひっきーくん。
空き缶を捨てさせる行動を教える隙はないな。

メモに書いてある通り、おぶる事にする。


( ´_ゝ`)「じゃあ、病院に戻ろうか」

(-_-)「ウン」

( ´_ゝ`)「よし」

こいつらを送ったら、真っ先に糞野郎の病室に行こう。

102:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:48:06 ID:c6hPWvFc0
( ´_ゝ`)「首掴まれると苦しいから、俺の服掴んでね」

(-_-)「ワカッタ」

俺におぶさり、首に腕を回して襟元を掴んでくる。
よしよし、判ってるじゃないか。苦しくない。


( ^p^)「おぶぅー」

( ´_ゝ`)「人間に背中は一つしかないんだ」

( ^p^)「あっこ」

( ´_ゝ`)「誰だ」

( ^p^)「らっこ」

( ´_ゝ`)「動物?」

(#^p^)「だっこ!」

( ´_ゝ`)「言えるじゃねーか、てめーはこれで我慢しな」

グイッ

(;^p^)「おぉう」

103:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:51:27 ID:c6hPWvFc0
頭を掴みあげようかと思ったが、それはそれで可哀想なので、
背中にあるリードの残骸部分、小さいベストのような物を掴む。


( ´_ゝ`)「あんまり暴れるなよ、重いから」

(*^p^))「ぶららー」

(;´_ゝ`)「重いっての」

たかしくんが首を吊る心配はしない。
このベストは、前がガン開きになっている。

背中側を直接持ち上げれば、首にかからないから安全だ。
開発した奴も、こんな持ち方は想定してないと思うが。


(( ^p^)「うあんこー!」

( ´_ゝ`)「いっそリードで縛りあげるべきだったな」

言ってから気付く。
千切れたリード、置いてきちまった。

……文字通りの振り子をぶら下げたまま戻るのは面倒臭い。
忘れよう。最初から無かった事にするんだ。記憶改変しろ俺。

104:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:52:51 ID:c6hPWvFc0
( ^p^))「ららーん」

( ´_ゝ`)「そろそろ力尽きろよ」

片手だけで制御するには、動きまくる約45kgはきつい。
全力で暴れてくる。揺れた足が太股を蹴るので痛い。

道路に置き去りにする策が脳裏を過ぎるが、
そんな頭をおんぶおばけに叩かれる。


(-_-)「オニイサン、チカラモチ」

( ´_ゝ`)「あん?」

( ^p^)「んあ?」

105:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:54:29 ID:c6hPWvFc0
咄嗟に、あのメモの内容が頭の中に浮かび上がる。
訳が分からなくても、相手が満足するまで、忍耐強く聞く。


(-_-)「チカラモチ?」

( ´_ゝ`)「俺が?」

(-_-)「ウン」

( ´_ゝ`)「力持ち……ではないよ」

世の中、子供を片手で抱きあげているお父さんなんて山程いる。
俺の持ち方は少々イレギュラーだが、成人男性には問題ないだろう。


満足するまで会話と言うのが具体的にわからないので、
相手の言葉が途切れたら取りあえず相槌を打ちまくる。

106:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:57:53 ID:c6hPWvFc0
振り子で体勢を崩されながらも、なんとかクリニック前へ到着。
だが、俺はひっきーくんに「病院に戻る」と言ってしまった。

病院に行くと言った手前、混乱させないようにせねばなるまい。
わざと病院側の正面玄関に回り込み、中を通ってクリニックへ行く。

病院に併設してあるクリニックだと、どうも呼称が安定しない。


(;´_ゝ`)「ふー」

デイケアのある精神科の階に辿り着くと、
受付が物凄い顔をして走り寄って来た。

様々な質問をされた気がするが、覚え切れていない。
内藤のような収集意欲のあるネタ師でもないので、
顔が酷いケアマネに押し付けられたと言って子供を渡す。

管理側で何があったとか、そんなん知りたくもない。
好奇心を惹かれない面倒事はお断りだぜ。

しかも、話が二転三転して変な方向に転がり始める。

俺と同じ障害でデイケアに通ってた奴が卒業して、
近くの花屋に勤め始めた情報とか入りませんから。
それに、顔が><の奴だったらもう会ってるし。

107:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 04:58:54 ID:c6hPWvFc0
トイレが近くなったから、と適当な理由を述べて離れる。


( ´_ゝ`)「……あれ?」


| (A` )

待ち合い室の隅で、壁に向かってPSPをしている鬱田を発見。
赤い服を着て左右に揺れているからか、視線を吸い込まれて鬱陶しい。

精神科には、自分を受診させに来たのかね。
悪癖を治そうと思って来たのか、俺らの事を相談しに来たのか。

どうでもいいや。

携帯で内藤に知らせようにも電源切れてるし。
イカ臭くなってるかもしれん病室に急ごう。










108:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 05:01:44 ID:c6hPWvFc0




病室から、女が出て来るのが見えた。



色々考えるよりも早く勝手に体が動き、
シーツが積まれている台車の陰に隠れた。

タイミング良かったぜ。近くに看護師も患者もいない。
ベッドのシーツを洗濯する為に、台車へ集めているようだ。

女の格好は、今時のバカな若い女性らしく、
冬なのに足が丸出しのスカートを履いている。

こいつが糞野郎の捕まえたメンヘラで確定かな?

違っていたとしても、女は入れるなと言われてんだ。
俺の他に目撃者がいないのが辛いが、まあいいや。

完全に姿が消えるのを待って、部屋に入る。
挨拶の代わりである、糞野郎の舌打ちが出迎えた。

今日中に、袖に仕込むナイフを決めよう。

109:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 05:07:59 ID:c6hPWvFc0
(´<_` )「んだよタイミングわっりぃー」

( ´_ゝ`)「そうか」

(´<_` )「帰って来んなよ。デブの家にでも泊まれ。
      今日の夜中にあいつ来る予定だったのに」

( ´_ゝ`)「今こっから出て行った女?」

(´<_` )「そうだよ」

( ´_ゝ`)「へぇ」

好都合。

今日の内に、やりたい事がやってしまえるかもしれない。


テレビのコンセントを引っこ抜いて、携帯を充電する。

いやあ、斉藤には迷惑をかけるな。
まだ書類は提出してないからいいけど。

役所に出してからだと、向こうの親御さんに怒られるとこだ。

110:名も無きAAのようです:2013/04/26(金) 05:12:59 ID:c6hPWvFc0
最初から最期まで、常に別居。
財産分与も生前相続も、何もなし。
お互いがお互いの保証人には絶対ならない。

そんな死にかけの蝉を黙らせる為だけの結婚とは言え、
法律で結ばれると関係性有りと捉えられてしまうからな。


まあ、怪我させるのが第一の目的でありまして。

殺すのは、刺し殺すのは、今のところ二の次ですし?

弟者君には、頑張って苦しんで生きろとしか言えないね。



夜が楽しみだ。




35.糸冬


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