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149:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:41:38 ID:X4lDBbSE0
拳を引っ込めさせるような、正しい答えは求めてない。
攻撃する理由付けをする為に、クズな答えを求めてる訳でもない。
両親が親父の浮気で別れたってのに、なんでこんな女を擁護するのか、
浮気するほうをわざわざ守ろうとする理由を聞こうと思った訳でもない。
自分の精神状態が、ヤバいところまで進行してるのが判る。
部屋を見回しても、癒しになりそうな物体が存在しない。
眼を閉じても、目の前のバカと、外からの声で落ち着けない。
頭で色々と判ってても、そろそろ体と、攻撃的な思考と、
それらをただ眺めて記憶するだけの脳に別れそうだ。
俺では止められない、衝動の一つが喉元まで来てる。
もう勝手に口も手も動きそうだ。殺しそうだ。刺し殺しそうだ。
我慢しろ自分。殺さない。刺すだけ。刺すだけなんだ。
(´<_`; )「ほら、もし暴力沙汰になったら、何コードだっけ、
男の職員呼んで、静かにさせる放送のやつ。
ナースコールして、それやってもらえばいいじゃん」
( ´_ゝ`)「呼んでもらって、どうするつもりだ?」
150:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:45:32 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そいつを取り押さえてもらえばいいじゃないの?」
( ´_ゝ`)「取り押さえてメデタシメデタシか? 相手が刃物持ってたら?
警察沙汰になってしまった時、お前はどうするつもりだ?」
(´<_`; )「警察って」
俺は、そんなシミュレーションを夢に見るまでやったけどな。
盗む衝動を抑えないこいつは、そんなの考えた事すらないだろう。
( ´_ゝ`)「有り得ない話じゃないだろ、さっきお前なんつった」
(´<_`; )「殺されるかもしれないってったけど、いや、だったら、
尚更部屋ん中に入れないとヤバいじゃねーか!」
( ´_ゝ`)「部屋の中に入れて、それからどうするんだ?
それで、相手が扉を破ってきたらどうするんだ?」
(´<_`; )「もうナースコール押しとけばいいんじゃねーかな……」
( ´_ゝ`)「そうだな。それも、一応はいいのかもしれないな」
151:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:49:50 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「だったら押すぞ。いいよな、押しても」
( ´_ゝ`)「それで、看護師さんが先にここへ来てしまって、
その看護師が怪我をした場合、どこに責任が行く?
その前に、女が何かやらかした場合はどうする?」
(´<_`; )「やらかすって?」
( ´_ゝ`)「女が看護師とか警察とかに、変な証言をした場合だよ」
(´<_` )「変な証言?」
( ´_ゝ`)「こっちに、変に責任が飛び火した場合はどうするかって、
そんな事もわかんねーのか、いっぺん死ねボケ。
ここにお前があの女を呼び寄せて、庇おうとしたんだろ?」
(´<_`; )「そこまで事が大きくなるとは」
弟の言葉を遮って、リノリウムの床にぶつかる音がした。
鈍く響き渡って、文字全体に濁音がつくような音が。
次いで、硬いものが固いものを殴ったような、鈍い音。
152:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:52:58 ID:X4lDBbSE0
女の悲鳴は聞こえない、男の声も聞こえない。
何回も、壁や床にぶつかる音だけがする。
頭でも掴んで、叩きつけてるんだろうか。
(´<_`; )「ヤバいって! 入れないと!」
( ´_ゝ`)「入れてどうするんだ?」
(´<_`; )「どうするって、何とかするに決まってんだろ!」
( ´_ゝ`)「フーン、頑張れ」
(´<_` )「……糞兄貴は何もしないのかい」
( ´_ゝ`)「俺が何かしないといけないのか?」
(´<_`; )「この音でヤバいのもう判るだろ! 助けろよ!」
( ´_ゝ`)「なんで助けないといけないんだ?」
(´<_`# )「人を助けるのに理由がいるのか?!」
( ´_ゝ`)「あー……」
153:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:55:18 ID:X4lDBbSE0
こんな状況で、そんなクッサイ台詞言われたって。
ミスマッチ過ぎて、ギャグにしかならねっつの。
つーか、お前、日頃の行い棚に上げてそれとか、本当、
( ´_ゝ`)「……あはっ」
(´<_`; )「な」
( ´,_ゝ`)「いひっ、弟者、お前、自分が、何言ってるか分かってる?」
(´<_`; )「似合わねーの言ってるって自覚はあるよ。
そう言いたいんだろ? 知ってるよ。それより」
( ´_ゝ`)「知ってる? 助けろってどの口が言うんだ? どの口が。
女を平気で殴れるお前が、俺に女を助けろだって?」
(´<_`; )「俺、今動けねーし、てーか」
( ´_ゝ`)「てーか? ひひっ。どうすんの? 俺が、あいつを、助ける?
結婚前の最後の遊びだからって男を食いまくった女を?
相手の気持ちなんかクソも考えずに遊びまくった女を?」
(´<_`; )「それは今関係ないだろ!」
154:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:58:39 ID:X4lDBbSE0
あ、もう口が止まんねーな。勝手に動く。
( ´_ゝ`)「る? ない? 関係、ある? ない? あるよ、すっごくあるよ。
自業自得、俺は関係ない。俺は、関係ない。それともお前は、
あの女がノった男の一人だったのか? だから助けたいのか?
関係ないにしてもあるにしても、バカには変わりないんじゃない?」
(´<_`; )「もうどっちでもいーよ! 早く」
( ´_ゝ`)「何するんだ? 助けたとして、残った男は? 結婚前なんだろ?
裁判に持ち込まれて、難癖つけられたらどうするつもりだ?
もう糞親父の家は関係ないんだぞ? 揉み消すのは無理だ。
お前は自分がくそったれなヒーローになれると思ってたのか?
それともあの女にとっての白馬の王子様でも気取ってたのか?」
(´<_`# )「もううるせーよ!」
( ´_ゝ`)「てかさ、元の家じゃないんだ。億単位の慰謝料取ったとは言え、
母さんの金には限りがあるんだ。お前はそれを頼るつもりか?
どうやったってあの女が悪いのに、あいつを庇うつもりか?
弁護士でもないのに、バカなお前が庇えると思ってんのか?
その男から、糞ビッチを寝取ろうとでも思って庇ってんのか?
女が『彼らが誘った。脅迫された』と言ったらどうするんだ?」
(´<_`# )「いーよもう! 俺が行くわ」
155:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:06:17 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「ばぁーか。どうやって行く? 車椅子で行く? ボッコ決定だな。
やったねおとじゃちゃん、けががふえるよ! やめさせるけど。
もしかしてさあ。手加減してもらえるって軽く考えたりしてる?
それともさあ。俺の手助けでも期待しちゃってたりすんの?
後者はやめとけ、前者より可能性はないからな。期待すんなよ。
まあ、あの男がこっちに向かってきたら反撃だけはするけど、
わざと男がこっちに向かってくるようやったら、どうなるか判る?」
(´<_`; )「いや、俺だったら加減」
(*´_ゝ`)「かげん? あっ、言わなきゃ判らないね。今から判らせるよ。
もし、お前が、男に『あいつが女の浮気相手だ』っつって、
こっちを指したらお前ごと全員殴り殺すよ? いいよね?
もう巻き込まれたようなモンだし、それくらい許されるよね?
人は先入観と常識から、弱者に見えるほうを信用するからね。
そうしない為にも、絶対にドアを開けさせないほうがいいよね。
車椅子に乗せねぇ、ベッドから動かさねぇ、外に行かせねぇ。
そこを動くなよ? 絶対にだ。ドリフ的な前振りじゃねーから」
(´<_`; )「兄者、ちょっと」
一部、分裂した感覚と思考が、外の音を捉えた。
何かを引き摺る音がする。
布と、硬い物と、皮膚が擦れる音。
ずりずり、ごごご、きゅぎゅぅううぅ。
156:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:16:48 ID:X4lDBbSE0
(´<_`; )「外! 廊下!」
( ´_ゝ`)「見えるの? すごいね。結局、お前がビッチを庇う理由は何?
何であいつを庇うの? お前に何か利益があったりするの?
メシア願望でも満たしたいの? 正義でも気取りたいの?」
(´<_`# )「話聞けよ!」
( ´_ゝ`)「お前ってフェミ野郎だったっけ……違うよなぁ。
平気で女殴ってたし、弟者をフェミとして数えたら、
世の中で女性解放論を唱えてる奴がキレるな」
(´<_` )「今どうでもいいだろ、そんなん」
( ´_ゝ`)「入院してる間の性欲処理を頼もうとした、とか」
(´<_`# )「ああもういいよそれでさあ!」
( ´_ゝ`)「相手に弱味を握られてるとか。
何か、恩でも感じてるとか?」
(´<_` )「あ、お前会話してねぇな」
( ´_ゝ`)「日頃の行いから、下心以外の推測が出来ないんだよなあ。
捻りがないのは単純でいいけど、つまらない以前に迷惑だ」
157:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:21:54 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「せめて俺見て喋ろよ」
( ´_ゝ`)「溜まってるなら、お前の部屋にあるエロ本とかグラビアとか、
内藤に頼んでエロ漫画持って来てやるから、我慢しろよ」
(´<_` )「戻って来てそれかよ」
( ´_ゝ`)「なんでお前は女に見境がないんだ? 面倒事を呼ぶんだ?
やっぱり携帯なんて返しちゃ駄目だったんだよ母さん……」
(´<_`; )「もういいよ! それよりも外が大変な事に」
( ´_ゝ`)「大変な事って何だっけ? 俺らに何か関係あるっけ?
俺はお前に質問してるんだよ? なんで答えないの?」
(´<_`# )「答えただろうが!」
( ´_ゝ`)「先に、俺がビッチを助けたくない理由を言えばいいのか」
(´<_` )「聞きたくねーよ」
( ´_ゝ`)「さっきも言ったけど、いいよな。
面倒なんだよ。こんなのはさあ」
(´<_`; )「おい誰と喋ってんだ。マジで」
158:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:29:56 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「碌でも無いモン抱え込んで、俺に迷惑かけずに、
勝手にどっかでくたばってくれんならそれでいいよ」
(´<_` )「ああはい、そうですね」
( ´_ゝ`)「でも、目の前にいる限りは、お前が俺を追って来る限りは。
何かしらの形でやり返させてもらうよ? 当たり前だよね」
(´<_` )「はいはい」
( ´_ゝ`)「ああ、仕返しで屈辱的な事を思い出したよ。
日頃のどうでもいい仕返しばっか成功してさあ。
いざ計画立てて準備しても、土台すら出来無ぇ」
(´<_` )「自分のせいだろ」
( ´_ゝ`)「地震や津波。糞親父の浮気まで俺の責任になるのか?」
(´<_`; )「い、いきなり応えるんじゃねーよ」
( ´_ゝ`)「本当に人生って上手くいかないよな……何もかも、上手くいかない」
(´<_`; )「あ? ああ、うん」
( ´_ゝ`)「長い時間かけて計画立てて成功した事例なんて、
それこそオフラインゲームのキャラ育成ぐらいだぜ」
159:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:38:04 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そーかそーか。俺はオンラインゲームも一応成功したぜ。
兄者は支援職ばっかやりたがるから、都合良かったよ」
( ´_ゝ`)「気に入ってたサイトが復活したかと思ったら、
最終更新日が2002/11/21でガッカリしたり……」
(´<_` )「ああ、また自分の世界か」
( ´_ゝ`)「適当に、VIPで今までの事を簡単にまとめて投下して」
(´<_` )「うん?」
( ´_ゝ`)「最後に、お前の殺し方を安価で決めようかと思ってたのに」
(´<_` )「おい」
( ´_ゝ`)「最後に安価出しても不自然じゃないように、
わざわざその為に縦まで仕込んだんだぜ?」
(´<_` )「どんだけだよ」
( #´_ゝ`)「何もかも台無しだぜ! ざけんじゃねぇよ!
なっんで! そこで! 浮気すんだ糞親父が!」
(´<_`; )「関係なくね?」
160:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:42:44 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「あれでもギリギリ尊敬はしてたんだぜ?
芯は通った大人だって思い込んでさ」
(´<_` )「実際はブレまくりだったけどな」
( ´_ゝ`)「途中までは普通にいい親父として書いてたのに、
いきなり糞親父に化けやがって、あのクズ野郎。
お陰で路線変更どころじゃなくなった。脱線したよ」
(´<_` )「あれを良く書けるなんてスゲーな」
( ´_ゝ`)「蓋を開けてみれば、何て事ないゴミだった。
女におだてられりゃすぐ調子に乗るような、
ただのエロガキだった。クソみてぇなガキだった。
大人を斜め下に勘違いしてるマセガキだった」
(´<_` )「そう……だなあ」
( ´_ゝ`)「判るよな? お前も、あの糞親父の事、
『ガキみてぇ』っつってたもんな? な?」
(´<_`; )「まあな」
162:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:49:12 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「離婚して引っ越した所為で、大幅に予定がズレてよお。
引っ越し先は廃屋同然でネットの回線すらなかったから、
光回線の工事して、ようやく2chに書き込めると思ったら」
(´<_` )「規制だろ?」
( ´_ゝ`)「ああそうだよ。光にして、まさかの巻き添え規制だよ。
ホント、マジで、何なの? 何かが俺の邪魔すんの?
なんも上手くいかねぇ。ざけんなよ。ふっざけんなよ」
本当は知ってる。何もかも邪魔してない事くらい知ってる。
全てが自分の道を塞いでいると本気で思ったら、本物の統失だ。
(*´_ゝ`)「笑えるよねえ? 笑っちゃうよねえ? いっひひひひひ!」
(´<_`; )「俺は笑える気分じゃねーよ」
暫く笑って、息を整える。
廊下にはまだ誰かいるようだ。さっきの奴らだろうか。
何してんだろ。俺らを浮気相手だと疑って様子見?
どっちでも、どうでもいいか。
163:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:56:40 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「さて、弟者君、本題です」
(´<_`; )「何だよ。改まって」
( ´_ゝ`)「向こうにいた時、俺を刺した事あったろ?」
(´<_` )「……ああ、知ってるよ。ぶっ殺したと勘違いして、
早まって自分の首切って後悔したぜ、あん時は」
( ´_ゝ`)「ほう」
(´<_` )「脇腹に包丁ざっくり刺して血ぃ垂らしたまま、
普通に起き上がって走って来んだもんな」
( ´_ゝ`)「そうなのか。死んだフリしときゃよかったのか」
(´<_` )「俺に死んでほしいほうの兄者ならそうだろ」
( ´_ゝ`)「過ぎ去ったチャンスは仕方ないから諦めるわ。
俺は今取れたこの時間を大切に消費しよう」
(´<_` )「ああそうかい。俺も女は諦めるから、さっさと寝てくれ」
( ´_ゝ`)「いい心掛けだ。刺す時は少し手加減してやろう」
164:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:00:17 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「……は?」
( ´_ゝ`)「だから、俺はお前を刺す。覚悟はいい?」
(´<_` )「へっ?」
( ´_ゝ`)「いいかな?」
(´<_`; )「良くねーよ! 何言ってやがる!」
( ´_ゝ`)「拒否権はありませ~ん」
瞬時に、糞野郎の視線がサイドテーブルの上に流れる。
残念。林檎の近くにあるのは、空ケースです。
(*´_ゝ`)「正解はこっちでしたー!」
右手を軽く振って、ナイフを取り出す。
165:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:04:22 ID:X4lDBbSE0
林檎にナイフぶっ刺して返した時から、
刃物に対する警戒心が強くなって困ったよ。
自分の包丁で自分の脇腹を刺された身としては、
是非とも弟者の愛用ナイフで刺してやりたいからね。
(´<_`;il)「っ! ……!」
逃げようとしたのか、ベッドから転がり落ちる。
車椅子を部屋の隅に寄せといて良かったぜ。
逃げられたら、今度こそ、全部全部台無しだからな。
( ´_ゝ`)「あっ、ねえねえ、もしかして勘違いしてる?」
(´<_`; )「はああ? 何を、だよ」
( ´_ゝ`)「殺すつもりはないよ。刺すだけ」
(´<_`# )「それで安心させようとしてんのか? 出来るか!」
ですよね。
166:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:09:42 ID:X4lDBbSE0
倒れるなら、固い床よりベッドのほうがいいだろう。
襟元を掴んでベッドの上に放り投げる。
(´<_`; )「おい!」
( ´_ゝ`)「俺の気遣いだ。受け取れよ」
馬乗りなって、相手の動きを封じる。
ギプスがいい枷になってくれてるようだ。
( ´_ゝ`)「それじゃ」
馬鹿力を発揮される前に、腹にナイフを当てた。
息を呑み込む音が聞こえて、気分が上昇する。
ナイフの切っ先が、皮にぷっつり穴を開ける。
周囲の騒音は聞こえるが、誰の声も聞こえない。
頭の中で、いつかどこかでこいつを殺せと叫んでいた声が、
瞬間的に大きくなる。反響する。繰り返される。吐き出される。
アンコールはしない。自分の右手を、左手で抑えた。
197:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:16:52 ID:3vYnxUnU0
刃先が腹に沈むにつれ、例えようのない感覚が湧き上がる。
それは興奮を伴っていると自分でも判る。
満足感と、嗜虐を満たせた時の感覚に近い。
( ´_ゝ`)「死ぬ? 死ぬ?」
相手の額に、ぷつぷつと脂汗が浮き上がって来る。
見るに堪えない顔が段々歪む。
歯を食いしばる音が聞こえる。
耳障りな呻き声が聞こえる。
呼吸が荒くなる。
部屋が歪む。
大っ嫌いなスケコマシより優位に立っている事実。
憎い憎いあん畜生の生殺与奪権を握っている実感。
殺したい奴が目の前で滝汗垂らしているこの現実。
198:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:18:26 ID:3vYnxUnU0
ああ、全てに愉悦を感じる。
俺はこうしている時が、一番楽しい。
(´<_`; )「マジ、でっ……やりやがったなこのキチガイ!
そのスレで安価取った奴ごと逮捕されろ!」
( ´_ゝ`)「ざ~んねん。俺は安価も何も出してないよ」
(´<_`# )「何が残念だ! ぶっ殺してやる!」
( ´_ゝ`)「元気だなお前。もうちょい深くいっとくか」
ナイフを押し込もうとして、腹の中で硬い物体に阻まれた。
硬い、骨か。骨だな。骨はヤバイ。
殺すつもりはないから、やめとこう。
( ´_ゝ`)「さっきの話だけどさ。安価は出してねぇよ?」
返事はないが、話を続ける。
199:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:19:43 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「そこまで進める前に糞親父が浮気して……や、
騒動があって、それどころじゃなくなったからね」
(´<_`il )「ぁあ?」
( ´_ゝ`)「法律的にムリゲーな安価とか、腐った奴らが集る前に、
お前の携帯使って自分で安価取ろうとしたんだけどさ」
(´<_`il )「自演前提とか死ねや」
( ´_ゝ`)「元々、無難に『刺し殺す』とか『絞め殺す』ってやろうとしてたし。
うっかりヘマして他の奴に安価取られても、無理矢理消化して、
俺がしたい事するつもりだったしぃ。本末は転倒させませんよ」
(´<_`il )「いつから計画してたんだよ、クソが」
( ´_ゝ`)「いつから? 具体的な構想は4年くらい前からだけど。
最初にそうしようと思ったのはいつからだったっけ?」
(´<_`il )「俺が知るか」
( ´_ゝ`)「だよなぁ」
こんな問答、どうでもいいか。
それよりも眼下の惨状。まさに至福の時。
なのに、何故か時間の流れが遅く感じられる。
200:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:20:40 ID:3vYnxUnU0
ゲームに熱中している時や、蟻の巣をほじくるのに集中している時。
本を読んでいる時や、自分の中で新しい理論を組み立てられそうな時。
そういった楽しい時間は、早く過ぎ去ってしまうよう感じられるのに。
(´<_`# )「っつかよ! さっきから笑ってんじゃねぇよ!
この状況で余裕綽々とかマジでムカつく!」
( ´_ゝ`)「マジで? 俺笑ってる?」
(´<_`; )「窓見ろや!」
夜中の窓に、薄ぼんやり映っている。
別に笑ってない。いつも通りだ。
面としては可もなく不可もない。
( ´_ゝ`)「笑ってねーじゃん」
(´<_`# )「窓見た瞬間に無表情になったっつの!」
俺もそうじゃないかと思ったよ。言わねえけどな。
201:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:21:29 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「それにしても元気だな弟者君よぉ。
腹をぶっ刺された人とは思えんわ」
(´<_`# )「腹刺されたのに車のドアぶっ壊した奴が言うな!」
( ´_ゝ`)「壊してねーよ、外れたんだよ、事故だよ。
お前いっつまでもその話題引き摺るよな」
(´<_`il )「俺への殺意を忘れない奴に言われたくねーよ!」
( ´_ゝ`)「忘れるわけないだろ。今更消えると思ってんのか?
生まれ付き抱えてた発狂する熱さの煮え湯に加えて、
後から後から殺意が滾る事ばっかしてくれてんだから、
(´<_`# )「ぐだぐだウルセェ! 俺をどうしたいのかハッキリしろよ!
捕まりたくねーなら看護婦でも医者でも呼んで来やがれ!
トドメ刺すならさっさとこっち来いや! 絞め殺してやる!」
( ´_ゝ`)「お前だって俺を殺したがってる癖によく言うぜ。
まだ死なれたら困るから、もう一度コールしたら?」
(´<_`# )「腕が上がらねんだよ! それに殺意はテメー程じゃねーよ!
こんな事されねー限り殺すだの何だのは考えねっつの!」
( ´_ゝ`)「どうだか。何もしなくても殺しに来た時あったろ」
(´<_` )「昔はな。今はねーよ。ナースコール押せ」
( ´_ゝ`)「押してもらえると思ってるのが驚きだ」
202:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:22:51 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「さっきも言ったろーが! 腕が上がらねって!」
( ´_ゝ`)「よくそれで絞め殺すとか言えたもんだ」
(´<_`# )「言ってから気付いたんだよ!」
( ´_ゝ`)「あー。バトル漫画の主人公じゃねぇんだから、
そろそろ大人しく弱っといたら? うるせぇよ」
(´<_`# )「この状況で落ち着けってか?」
( ´_ゝ`)「刺された側に立った経験がある身としては……
うん、無理だな。落ち着かないか。しゃあねぇ」
(´<_` )「だろ?」
だろ? じゃねぇ。よく見たら額に掻いてた汗が引いてやがるし。
○ラゴン○ールの登場人物じゃないんだから、流血したら弱れよ。
なんて言いたいけど、ここは我慢我慢。
お互いの言葉がブーメランにしかならない。
この異常なまでのタフさは、やっぱ糞親父譲りか。
悪こそ世にしぶとく蔓延る原因かね、こういうのは。
203:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:23:48 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「うあーなんか痛くなくなってきた」
((( ´_ゝ`)「おっ、死ぬ?」
(´<_` )「ちょっと嬉しそうにするのやめてくんない?
お前には罪悪感とか後悔とかないの?」
(*´_ゝ`)「お前に対して罪悪感を感じるぅ? 笑わせんなよ。
そんなん今まで生きてて一度もありませ~ん」
俺にとって、流石 弟者は人型のサンドバッグであり、動く的だ。
だから痛めつけても罪悪を感じない。苦しめても後悔しない。
自分の周囲を飛ぶ蚊を潰したとして、罪悪感を抱く奴はいるのか?
病んでるのは「一寸の虫にも五分の魂」と言うかもしれないが。
大多数の一般人は、害虫を駆除したとして、それに何を感じる?
俺にとっての弟者は、蚊であり、敵であり、害虫であり。
母親と法さえ無ければ惨たらしく殲滅すべき、ただの敵だ。
大体、恨むなってのが無理な話だろう。
こんな糞野郎でも救う道があるとほざく奴は、
流石 兄者の人生を追体験してから言ってくれ。
204:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:24:49 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「後悔はな、きっと未来の俺がするだろうよ。
『何故あの時、糞野郎を殺さなかったんだ』ってな」
(´<_`; )「そりゃ、また、救いようのない」
( ´_ゝ`)「誰かから助けて貰えると思ってんのか?」
(´<_` )「母さんは助けてくれんじゃね」
( ´_ゝ`)「母さんか……」
母さんね。確かに、助けるだろうな。
助けるだろうけど、俺の認識としては微妙だな。
糞親父のバツサン売女への浮気が家族全員にバレた後。
誤魔化しからの開き直り、逆切れ暴力コンボが起きた夜。
ゴミ共が去った部屋で、母親から一家心中を持ちかけられた。
俺個人は、出来れば人類滅亡まで生きたいので死にたくない。
最低でも糞野郎を苦しませて殺したいので、心中はしない。
そんな感じで軽く答えたら「そう」とだけ呟いて終わった。
一応、その夜は布団の中でずっと起きていたけど、
朝のモーニングコールまで何の襲撃もなかった。
205:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:26:03 ID:3vYnxUnU0
俺がどうするかを聞いてきたので、無理心中ではないんだろう。
その点はいい。相手が嫌がるであろうものを事前に聞くのは得策だ。
けど、母親は、流動食すら満足に摂れないくらい心身が追い詰められた時、
家族全員を道連れにしようとする選択肢が出る人。と脳内にインプットされた。
今もまだ安定しきっていない。家の中で、極々稀に叫んでたりする。
( ´_ゝ`)「あとの、後悔は……母さんだな。お前みたいなカスでも、
母さんはきっと発狂してヒステリー起こすか、気絶する。
そうなったら、俺は母親に申し訳が立たない。後悔する」
(´<_` )「俺の心配は何一つしないのな」
( ´_ゝ`)「当たり前じゃん。お前が死んだら超嬉しいし。
苦しんでたら楽しいし、殴ったらスッキリするし」
(´<_` )「そうだな。躊躇いなく刺すもんな。俺がバカだった」
( ´_ゝ`)「そうだな。バカの極みにも限界があるんだぞ。
知ってたか? ライン越えたら病気か障害だよ」
(´<_`# )「ちげーよ糞兄貴! テメーもバカだ!
俺が言いたいのはそれじゃねぇ!」
( ´_ゝ`)「じゃあ何よ」
206:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:27:13 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「俺も色々考えたんだよ! これでもな!
一緒にあの家離れてから変わったんだよ!」
( ´_ゝ`)「悪い方向に?」
(´<_`# )「じゃあ今から言うから聞けや!」
( ´_ゝ`)「はいはい」
にしても看護師遅いな。足音も聞こえない。
ナースコール押してから大分立つのに、何してんだろ。
(´<_` )「家出るまでは、正直なんとも思ってなかったぜ。
大体、さっき兄者が言ったやつと同じだった」
( ´_ゝ`)「だろうよ」
(´<_` )「毒男みたいな奴が兄貴だったらいいとずっと思ってた。
俺より弱くてチビでブサで肝っ玉も小せぇカスみたいな奴」
( ´_ゝ`)「それ鬱田に言ってみな」
(´<_` )「時期見て言うさ」
207:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:30:28 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「んで、殴れば金ポロっと吐くサンドバッグが理想だったんだ。
それでいて甘っちょろくて、ちょっと優しくすれば簡単に信じる、
人に騙されやすいバカが兄貴だったら良かったって思った」
( ´_ゝ`)「鬱田の母親の養子にしてもらえよ」
(´<_` )「ヤダよ、あんな貧乏な家」
( ´_ゝ`)「鬱田家の目の前で、どうぞ」
(´<_` )「拒否する。そんでー、家に着いて色々あってー?
んー、なんつーか『やっべ、やり過ぎた』みたいな?」
( ´_ゝ`)「何で疑問形なんだよ」
(´<_` )「俺もまとまらねーんだよ。もう面倒くせ。向こうで色々あって、
兄者に悪いコトした後に罪悪感みたいなの抱くようになりました。
二人だとナンパしやすい事実が判明したので仲良くしたかった。
はい、終わり。終了です。異論は受け付けませんぷーるるるる」
最後の最後に腹が立ったので、刃物を深く沈めてやる。
(゚<_゚ ; ; ;)「 ... ... . !」
ゾンビ映画に出てきそうな皺枯れ声をあげて丸まった。
何だよ、ちゃんと痛いんじゃねぇか。嘘吐きめ。
208:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:34:00 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「俺に罪悪感ね……その割にはこっちで出来なかった、
女の擦り付けだの借金だのやってくれたじゃないか」
(´<_`; )「お前のお陰で口から血が吐けそうだわ」
( ´_ゝ`)「スルーか、いいけどよ。写メってやろうか?」
(´<_`; )「いらねーよボケ」
死ぬ間際の老人みたいにプルプル震える腕が上がる。
体を起こすのかと思いきや、刺さった刃物を抜き取った。
『刃物が体に刺さった時は、下手に傷口から抜いてはいけない』
と何処かで齧った知識が浮上するが、相手が弟者なので沈める。
(´<_` )「腹気持ち悪、変に熱もっててあっちぃ」
( ´_ゝ`)「へぇ」
(´<_` )「お前はどうだったんだよ」
( ´_ゝ`)「俺の時は、ブチ切れて心臓の動悸激しくなり過ぎて、
腹よりも心臓と頭が痛かったね。それから覚えてない」
(´<_` )「何お前、死ぬ手前でも俺の事しか頭にないわけ?」
( ´_ゝ`)「当たり前だろ」
218:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:39:13 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「暇と時間さえあればいつだって、
どう殺してやろうか考えてるよ」
(´<_` )「昔と変わったな。変わったっつーか、俺にとって、
物凄い迷惑な一文が増えてるっつーか……」
( ´_ゝ`)「増えてる?」
(´<_` )「家出る前は『苦しめて』なんて聞かなかったぜ」
( ´_ゝ`)「そうか、そうなのか、そうなんだろうな。
恨みが積り積もった結果だ。めでたいね」
過ごした時間が積もるにつれ、嫌な出来事も増えた。
昔みたいに、さっくり殺して終わる妄想はもうしてない。
苦しめて苦しめて苦しめて、人生のどん底に落としたり、
(´<_` )「わーどうしたらいいんだろうね」
( ´_ゝ`)「死ねばいいと思うよ」
(´<_` )「酷ぇな」
( ´_ゝ`)「マジで。本気で。もう、心の底から」
(´<_` )「……酷ぇな」
219:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:40:45 ID:D5oJcwdA0
(´<_` )「救いはないんですか?」
( ´_ゝ`)「ネタを普通に入れるなよ」
(´<_` )「躊躇いはないんですか?」
( ´_ゝ`)「何回同じような質問してんだよ」
(´<_` )「ないの?」
( ´_ゝ`)「答えは変わらん、ないよ。あると思ってんの?」
(´<_` )「いいや」
( ´_ゝ`)「何でまた」
(´<_` )「今さ、走馬灯が凄い」
( ´_ゝ`)「どんな?」
(´<_` )「生まれて始めてお前に『殺される』って覚悟した時の記憶と、
親父に『殺される』ってビビった時の記憶がデッドヒート中」
220:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:42:26 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「生まれて初めて?」
(´<_` )「家の裏山で、俺の腕を笑いながら折った時だよ」
( ´_ゝ`)「そんな事もあったっけ。忘れた」
(´<_` )「これがしつこく言われる『いじめた側はすっかり忘れて、
いじめられた側はいつまでも覚えてる法則』か……」
柄にもなく遠くを見たりしている弟者。
これはツッコミ待ちだろうか。
( ´_ゝ`)「間違ってもいじめられっ子じゃねぇから安心しろよ。
血流しすぎて不安になってんならまたコールしとけ」
(´<_` )「何回コールすりゃいいんだよ。つか来ねーじゃん」
( ´_ゝ`)「会議室で事件でも起きてるんじゃないの?
それにそろそろここに来るだろ。誰かは」
さっきから廊下を歩く足音するしな。
221:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:43:24 ID:D5oJcwdA0
コールしてからこっちに来るのがかなり遅かったうえに、
ヒールっぽい足音が複数聞こえるのが少し気になるが。
( ´_ゝ`)「じゃ、俺はそろそろ寝る」
(´<_` )「えっ……この状況で?」
( ´_ゝ`)「おやすみ」
ベッドの下に頭からスライディング。
暗さが調度いい。暗いと気持ちよく眠れる。
わざわざ明かりを点けて眠る人間は理解に苦しむ。
網膜を常に刺激し続けるとか、目の負担になりそうなんだがな。
暗所恐怖症やトラウマ持ちは例外とする。
(´<_`; )「寝たら死ぬだろうが! フラグ乱立してんぞ!」
( ´_ゝ`)「大丈夫、お前を盾にして俺は生きる」
(´<_`# )「そんな問題か! ンの野郎!」
222:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:45:40 ID:D5oJcwdA0
威勢のいい声と共に、目の前に簀巻きがふってきた。
頭からとか足からじゃなく、腹這いに降ってきた。
しかも前面からビタンと落ちた衝撃で、更なる重症を負っている。
(;´_ゝ`)「あ、危ねぇ」
一瞬、終わったかと思った。
長きに渡る確執じゃなく、俺の社会的な人生が終わったかと思った。
中途半端に死なれて、暴力を発散する場所が無くなったかと思った。
ほぼ無意識に、腕を伸ばしてしまっている。ちょっと恥ずかしい。
俺が腕を伸ばすのは、転びかけてる老人だけでいいのに。
うっかり殺っちゃってもいいやと考えていたが、
やっぱりいざとなると自分の今後が心配だな。
(゚<_゚ )「ホギャン!」
自らのガラスハートが未来を憂うあまりに砕けそうだったので、
簀巻きを解いて、ゴミ袋に刺さってるナイフを引っこ抜いた。
223:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:48:57 ID:D5oJcwdA0
ナイフを一回転させてカッコ良く鞘に戻そうとしたが、
手から盛大にすっぽ抜けて部屋の隅に飛んで行った。
( ´_ゝ`)「さー今度こそおやすみ」
( <_ # )「こんな、こんな状況で寝れるか糞兄貴」
( ´_ゝ`)「寝ろよ。どうせそんくらいの傷じゃ死なねえよ。
それ以上に深く刺された俺が生きてんだ」
( <_ # )「死ねクズ、アホ、キチガイ、インポ野郎。殺してやる。
殺すなら殺せ。取り憑いて呪い殺してやるからな」
( ´_ゝ`)「へいへい」
(´<_`# )「ゴーリキー、糖質ー、施設に入れこのアスペ」
( ´_ゝ`)「将来的にはそのつもりだ」
(´<_` )「えっ」
.糸冬
拳を引っ込めさせるような、正しい答えは求めてない。
攻撃する理由付けをする為に、クズな答えを求めてる訳でもない。
両親が親父の浮気で別れたってのに、なんでこんな女を擁護するのか、
浮気するほうをわざわざ守ろうとする理由を聞こうと思った訳でもない。
自分の精神状態が、ヤバいところまで進行してるのが判る。
部屋を見回しても、癒しになりそうな物体が存在しない。
眼を閉じても、目の前のバカと、外からの声で落ち着けない。
頭で色々と判ってても、そろそろ体と、攻撃的な思考と、
それらをただ眺めて記憶するだけの脳に別れそうだ。
俺では止められない、衝動の一つが喉元まで来てる。
もう勝手に口も手も動きそうだ。殺しそうだ。刺し殺しそうだ。
我慢しろ自分。殺さない。刺すだけ。刺すだけなんだ。
(´<_`; )「ほら、もし暴力沙汰になったら、何コードだっけ、
男の職員呼んで、静かにさせる放送のやつ。
ナースコールして、それやってもらえばいいじゃん」
( ´_ゝ`)「呼んでもらって、どうするつもりだ?」
150:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:45:32 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そいつを取り押さえてもらえばいいじゃないの?」
( ´_ゝ`)「取り押さえてメデタシメデタシか? 相手が刃物持ってたら?
警察沙汰になってしまった時、お前はどうするつもりだ?」
(´<_`; )「警察って」
俺は、そんなシミュレーションを夢に見るまでやったけどな。
盗む衝動を抑えないこいつは、そんなの考えた事すらないだろう。
( ´_ゝ`)「有り得ない話じゃないだろ、さっきお前なんつった」
(´<_`; )「殺されるかもしれないってったけど、いや、だったら、
尚更部屋ん中に入れないとヤバいじゃねーか!」
( ´_ゝ`)「部屋の中に入れて、それからどうするんだ?
それで、相手が扉を破ってきたらどうするんだ?」
(´<_`; )「もうナースコール押しとけばいいんじゃねーかな……」
( ´_ゝ`)「そうだな。それも、一応はいいのかもしれないな」
151:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:49:50 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「だったら押すぞ。いいよな、押しても」
( ´_ゝ`)「それで、看護師さんが先にここへ来てしまって、
その看護師が怪我をした場合、どこに責任が行く?
その前に、女が何かやらかした場合はどうする?」
(´<_`; )「やらかすって?」
( ´_ゝ`)「女が看護師とか警察とかに、変な証言をした場合だよ」
(´<_` )「変な証言?」
( ´_ゝ`)「こっちに、変に責任が飛び火した場合はどうするかって、
そんな事もわかんねーのか、いっぺん死ねボケ。
ここにお前があの女を呼び寄せて、庇おうとしたんだろ?」
(´<_`; )「そこまで事が大きくなるとは」
弟の言葉を遮って、リノリウムの床にぶつかる音がした。
鈍く響き渡って、文字全体に濁音がつくような音が。
次いで、硬いものが固いものを殴ったような、鈍い音。
152:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:52:58 ID:X4lDBbSE0
女の悲鳴は聞こえない、男の声も聞こえない。
何回も、壁や床にぶつかる音だけがする。
頭でも掴んで、叩きつけてるんだろうか。
(´<_`; )「ヤバいって! 入れないと!」
( ´_ゝ`)「入れてどうするんだ?」
(´<_`; )「どうするって、何とかするに決まってんだろ!」
( ´_ゝ`)「フーン、頑張れ」
(´<_` )「……糞兄貴は何もしないのかい」
( ´_ゝ`)「俺が何かしないといけないのか?」
(´<_`; )「この音でヤバいのもう判るだろ! 助けろよ!」
( ´_ゝ`)「なんで助けないといけないんだ?」
(´<_`# )「人を助けるのに理由がいるのか?!」
( ´_ゝ`)「あー……」
153:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:55:18 ID:X4lDBbSE0
こんな状況で、そんなクッサイ台詞言われたって。
ミスマッチ過ぎて、ギャグにしかならねっつの。
つーか、お前、日頃の行い棚に上げてそれとか、本当、
( ´_ゝ`)「……あはっ」
(´<_`; )「な」
( ´,_ゝ`)「いひっ、弟者、お前、自分が、何言ってるか分かってる?」
(´<_`; )「似合わねーの言ってるって自覚はあるよ。
そう言いたいんだろ? 知ってるよ。それより」
( ´_ゝ`)「知ってる? 助けろってどの口が言うんだ? どの口が。
女を平気で殴れるお前が、俺に女を助けろだって?」
(´<_`; )「俺、今動けねーし、てーか」
( ´_ゝ`)「てーか? ひひっ。どうすんの? 俺が、あいつを、助ける?
結婚前の最後の遊びだからって男を食いまくった女を?
相手の気持ちなんかクソも考えずに遊びまくった女を?」
(´<_`; )「それは今関係ないだろ!」
154:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 04:58:39 ID:X4lDBbSE0
あ、もう口が止まんねーな。勝手に動く。
( ´_ゝ`)「る? ない? 関係、ある? ない? あるよ、すっごくあるよ。
自業自得、俺は関係ない。俺は、関係ない。それともお前は、
あの女がノった男の一人だったのか? だから助けたいのか?
関係ないにしてもあるにしても、バカには変わりないんじゃない?」
(´<_`; )「もうどっちでもいーよ! 早く」
( ´_ゝ`)「何するんだ? 助けたとして、残った男は? 結婚前なんだろ?
裁判に持ち込まれて、難癖つけられたらどうするつもりだ?
もう糞親父の家は関係ないんだぞ? 揉み消すのは無理だ。
お前は自分がくそったれなヒーローになれると思ってたのか?
それともあの女にとっての白馬の王子様でも気取ってたのか?」
(´<_`# )「もううるせーよ!」
( ´_ゝ`)「てかさ、元の家じゃないんだ。億単位の慰謝料取ったとは言え、
母さんの金には限りがあるんだ。お前はそれを頼るつもりか?
どうやったってあの女が悪いのに、あいつを庇うつもりか?
弁護士でもないのに、バカなお前が庇えると思ってんのか?
その男から、糞ビッチを寝取ろうとでも思って庇ってんのか?
女が『彼らが誘った。脅迫された』と言ったらどうするんだ?」
(´<_`# )「いーよもう! 俺が行くわ」
155:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:06:17 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「ばぁーか。どうやって行く? 車椅子で行く? ボッコ決定だな。
やったねおとじゃちゃん、けががふえるよ! やめさせるけど。
もしかしてさあ。手加減してもらえるって軽く考えたりしてる?
それともさあ。俺の手助けでも期待しちゃってたりすんの?
後者はやめとけ、前者より可能性はないからな。期待すんなよ。
まあ、あの男がこっちに向かってきたら反撃だけはするけど、
わざと男がこっちに向かってくるようやったら、どうなるか判る?」
(´<_`; )「いや、俺だったら加減」
(*´_ゝ`)「かげん? あっ、言わなきゃ判らないね。今から判らせるよ。
もし、お前が、男に『あいつが女の浮気相手だ』っつって、
こっちを指したらお前ごと全員殴り殺すよ? いいよね?
もう巻き込まれたようなモンだし、それくらい許されるよね?
人は先入観と常識から、弱者に見えるほうを信用するからね。
そうしない為にも、絶対にドアを開けさせないほうがいいよね。
車椅子に乗せねぇ、ベッドから動かさねぇ、外に行かせねぇ。
そこを動くなよ? 絶対にだ。ドリフ的な前振りじゃねーから」
(´<_`; )「兄者、ちょっと」
一部、分裂した感覚と思考が、外の音を捉えた。
何かを引き摺る音がする。
布と、硬い物と、皮膚が擦れる音。
ずりずり、ごごご、きゅぎゅぅううぅ。
156:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:16:48 ID:X4lDBbSE0
(´<_`; )「外! 廊下!」
( ´_ゝ`)「見えるの? すごいね。結局、お前がビッチを庇う理由は何?
何であいつを庇うの? お前に何か利益があったりするの?
メシア願望でも満たしたいの? 正義でも気取りたいの?」
(´<_`# )「話聞けよ!」
( ´_ゝ`)「お前ってフェミ野郎だったっけ……違うよなぁ。
平気で女殴ってたし、弟者をフェミとして数えたら、
世の中で女性解放論を唱えてる奴がキレるな」
(´<_` )「今どうでもいいだろ、そんなん」
( ´_ゝ`)「入院してる間の性欲処理を頼もうとした、とか」
(´<_`# )「ああもういいよそれでさあ!」
( ´_ゝ`)「相手に弱味を握られてるとか。
何か、恩でも感じてるとか?」
(´<_` )「あ、お前会話してねぇな」
( ´_ゝ`)「日頃の行いから、下心以外の推測が出来ないんだよなあ。
捻りがないのは単純でいいけど、つまらない以前に迷惑だ」
157:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:21:54 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「せめて俺見て喋ろよ」
( ´_ゝ`)「溜まってるなら、お前の部屋にあるエロ本とかグラビアとか、
内藤に頼んでエロ漫画持って来てやるから、我慢しろよ」
(´<_` )「戻って来てそれかよ」
( ´_ゝ`)「なんでお前は女に見境がないんだ? 面倒事を呼ぶんだ?
やっぱり携帯なんて返しちゃ駄目だったんだよ母さん……」
(´<_`; )「もういいよ! それよりも外が大変な事に」
( ´_ゝ`)「大変な事って何だっけ? 俺らに何か関係あるっけ?
俺はお前に質問してるんだよ? なんで答えないの?」
(´<_`# )「答えただろうが!」
( ´_ゝ`)「先に、俺がビッチを助けたくない理由を言えばいいのか」
(´<_` )「聞きたくねーよ」
( ´_ゝ`)「さっきも言ったけど、いいよな。
面倒なんだよ。こんなのはさあ」
(´<_`; )「おい誰と喋ってんだ。マジで」
158:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:29:56 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「碌でも無いモン抱え込んで、俺に迷惑かけずに、
勝手にどっかでくたばってくれんならそれでいいよ」
(´<_` )「ああはい、そうですね」
( ´_ゝ`)「でも、目の前にいる限りは、お前が俺を追って来る限りは。
何かしらの形でやり返させてもらうよ? 当たり前だよね」
(´<_` )「はいはい」
( ´_ゝ`)「ああ、仕返しで屈辱的な事を思い出したよ。
日頃のどうでもいい仕返しばっか成功してさあ。
いざ計画立てて準備しても、土台すら出来無ぇ」
(´<_` )「自分のせいだろ」
( ´_ゝ`)「地震や津波。糞親父の浮気まで俺の責任になるのか?」
(´<_`; )「い、いきなり応えるんじゃねーよ」
( ´_ゝ`)「本当に人生って上手くいかないよな……何もかも、上手くいかない」
(´<_`; )「あ? ああ、うん」
( ´_ゝ`)「長い時間かけて計画立てて成功した事例なんて、
それこそオフラインゲームのキャラ育成ぐらいだぜ」
159:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:38:04 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「そーかそーか。俺はオンラインゲームも一応成功したぜ。
兄者は支援職ばっかやりたがるから、都合良かったよ」
( ´_ゝ`)「気に入ってたサイトが復活したかと思ったら、
最終更新日が2002/11/21でガッカリしたり……」
(´<_` )「ああ、また自分の世界か」
( ´_ゝ`)「適当に、VIPで今までの事を簡単にまとめて投下して」
(´<_` )「うん?」
( ´_ゝ`)「最後に、お前の殺し方を安価で決めようかと思ってたのに」
(´<_` )「おい」
( ´_ゝ`)「最後に安価出しても不自然じゃないように、
わざわざその為に縦まで仕込んだんだぜ?」
(´<_` )「どんだけだよ」
( #´_ゝ`)「何もかも台無しだぜ! ざけんじゃねぇよ!
なっんで! そこで! 浮気すんだ糞親父が!」
(´<_`; )「関係なくね?」
160:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:42:44 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「あれでもギリギリ尊敬はしてたんだぜ?
芯は通った大人だって思い込んでさ」
(´<_` )「実際はブレまくりだったけどな」
( ´_ゝ`)「途中までは普通にいい親父として書いてたのに、
いきなり糞親父に化けやがって、あのクズ野郎。
お陰で路線変更どころじゃなくなった。脱線したよ」
(´<_` )「あれを良く書けるなんてスゲーな」
( ´_ゝ`)「蓋を開けてみれば、何て事ないゴミだった。
女におだてられりゃすぐ調子に乗るような、
ただのエロガキだった。クソみてぇなガキだった。
大人を斜め下に勘違いしてるマセガキだった」
(´<_` )「そう……だなあ」
( ´_ゝ`)「判るよな? お前も、あの糞親父の事、
『ガキみてぇ』っつってたもんな? な?」
(´<_`; )「まあな」
162:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:49:12 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「離婚して引っ越した所為で、大幅に予定がズレてよお。
引っ越し先は廃屋同然でネットの回線すらなかったから、
光回線の工事して、ようやく2chに書き込めると思ったら」
(´<_` )「規制だろ?」
( ´_ゝ`)「ああそうだよ。光にして、まさかの巻き添え規制だよ。
ホント、マジで、何なの? 何かが俺の邪魔すんの?
なんも上手くいかねぇ。ざけんなよ。ふっざけんなよ」
本当は知ってる。何もかも邪魔してない事くらい知ってる。
全てが自分の道を塞いでいると本気で思ったら、本物の統失だ。
(*´_ゝ`)「笑えるよねえ? 笑っちゃうよねえ? いっひひひひひ!」
(´<_`; )「俺は笑える気分じゃねーよ」
暫く笑って、息を整える。
廊下にはまだ誰かいるようだ。さっきの奴らだろうか。
何してんだろ。俺らを浮気相手だと疑って様子見?
どっちでも、どうでもいいか。
163:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 05:56:40 ID:X4lDBbSE0
( ´_ゝ`)「さて、弟者君、本題です」
(´<_`; )「何だよ。改まって」
( ´_ゝ`)「向こうにいた時、俺を刺した事あったろ?」
(´<_` )「……ああ、知ってるよ。ぶっ殺したと勘違いして、
早まって自分の首切って後悔したぜ、あん時は」
( ´_ゝ`)「ほう」
(´<_` )「脇腹に包丁ざっくり刺して血ぃ垂らしたまま、
普通に起き上がって走って来んだもんな」
( ´_ゝ`)「そうなのか。死んだフリしときゃよかったのか」
(´<_` )「俺に死んでほしいほうの兄者ならそうだろ」
( ´_ゝ`)「過ぎ去ったチャンスは仕方ないから諦めるわ。
俺は今取れたこの時間を大切に消費しよう」
(´<_` )「ああそうかい。俺も女は諦めるから、さっさと寝てくれ」
( ´_ゝ`)「いい心掛けだ。刺す時は少し手加減してやろう」
164:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:00:17 ID:X4lDBbSE0
(´<_` )「……は?」
( ´_ゝ`)「だから、俺はお前を刺す。覚悟はいい?」
(´<_` )「へっ?」
( ´_ゝ`)「いいかな?」
(´<_`; )「良くねーよ! 何言ってやがる!」
( ´_ゝ`)「拒否権はありませ~ん」
瞬時に、糞野郎の視線がサイドテーブルの上に流れる。
残念。林檎の近くにあるのは、空ケースです。
(*´_ゝ`)「正解はこっちでしたー!」
右手を軽く振って、ナイフを取り出す。
165:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:04:22 ID:X4lDBbSE0
林檎にナイフぶっ刺して返した時から、
刃物に対する警戒心が強くなって困ったよ。
自分の包丁で自分の脇腹を刺された身としては、
是非とも弟者の愛用ナイフで刺してやりたいからね。
(´<_`;il)「っ! ……!」
逃げようとしたのか、ベッドから転がり落ちる。
車椅子を部屋の隅に寄せといて良かったぜ。
逃げられたら、今度こそ、全部全部台無しだからな。
( ´_ゝ`)「あっ、ねえねえ、もしかして勘違いしてる?」
(´<_`; )「はああ? 何を、だよ」
( ´_ゝ`)「殺すつもりはないよ。刺すだけ」
(´<_`# )「それで安心させようとしてんのか? 出来るか!」
ですよね。
166:名も無きAAのようです:2013/04/29(月) 06:09:42 ID:X4lDBbSE0
倒れるなら、固い床よりベッドのほうがいいだろう。
襟元を掴んでベッドの上に放り投げる。
(´<_`; )「おい!」
( ´_ゝ`)「俺の気遣いだ。受け取れよ」
馬乗りなって、相手の動きを封じる。
ギプスがいい枷になってくれてるようだ。
( ´_ゝ`)「それじゃ」
馬鹿力を発揮される前に、腹にナイフを当てた。
息を呑み込む音が聞こえて、気分が上昇する。
ナイフの切っ先が、皮にぷっつり穴を開ける。
周囲の騒音は聞こえるが、誰の声も聞こえない。
頭の中で、いつかどこかでこいつを殺せと叫んでいた声が、
瞬間的に大きくなる。反響する。繰り返される。吐き出される。
アンコールはしない。自分の右手を、左手で抑えた。
197:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:16:52 ID:3vYnxUnU0
刃先が腹に沈むにつれ、例えようのない感覚が湧き上がる。
それは興奮を伴っていると自分でも判る。
満足感と、嗜虐を満たせた時の感覚に近い。
( ´_ゝ`)「死ぬ? 死ぬ?」
相手の額に、ぷつぷつと脂汗が浮き上がって来る。
見るに堪えない顔が段々歪む。
歯を食いしばる音が聞こえる。
耳障りな呻き声が聞こえる。
呼吸が荒くなる。
部屋が歪む。
大っ嫌いなスケコマシより優位に立っている事実。
憎い憎いあん畜生の生殺与奪権を握っている実感。
殺したい奴が目の前で滝汗垂らしているこの現実。
198:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:18:26 ID:3vYnxUnU0
ああ、全てに愉悦を感じる。
俺はこうしている時が、一番楽しい。
(´<_`; )「マジ、でっ……やりやがったなこのキチガイ!
そのスレで安価取った奴ごと逮捕されろ!」
( ´_ゝ`)「ざ~んねん。俺は安価も何も出してないよ」
(´<_`# )「何が残念だ! ぶっ殺してやる!」
( ´_ゝ`)「元気だなお前。もうちょい深くいっとくか」
ナイフを押し込もうとして、腹の中で硬い物体に阻まれた。
硬い、骨か。骨だな。骨はヤバイ。
殺すつもりはないから、やめとこう。
( ´_ゝ`)「さっきの話だけどさ。安価は出してねぇよ?」
返事はないが、話を続ける。
199:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:19:43 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「そこまで進める前に糞親父が浮気して……や、
騒動があって、それどころじゃなくなったからね」
(´<_`il )「ぁあ?」
( ´_ゝ`)「法律的にムリゲーな安価とか、腐った奴らが集る前に、
お前の携帯使って自分で安価取ろうとしたんだけどさ」
(´<_`il )「自演前提とか死ねや」
( ´_ゝ`)「元々、無難に『刺し殺す』とか『絞め殺す』ってやろうとしてたし。
うっかりヘマして他の奴に安価取られても、無理矢理消化して、
俺がしたい事するつもりだったしぃ。本末は転倒させませんよ」
(´<_`il )「いつから計画してたんだよ、クソが」
( ´_ゝ`)「いつから? 具体的な構想は4年くらい前からだけど。
最初にそうしようと思ったのはいつからだったっけ?」
(´<_`il )「俺が知るか」
( ´_ゝ`)「だよなぁ」
こんな問答、どうでもいいか。
それよりも眼下の惨状。まさに至福の時。
なのに、何故か時間の流れが遅く感じられる。
200:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:20:40 ID:3vYnxUnU0
ゲームに熱中している時や、蟻の巣をほじくるのに集中している時。
本を読んでいる時や、自分の中で新しい理論を組み立てられそうな時。
そういった楽しい時間は、早く過ぎ去ってしまうよう感じられるのに。
(´<_`# )「っつかよ! さっきから笑ってんじゃねぇよ!
この状況で余裕綽々とかマジでムカつく!」
( ´_ゝ`)「マジで? 俺笑ってる?」
(´<_`; )「窓見ろや!」
夜中の窓に、薄ぼんやり映っている。
別に笑ってない。いつも通りだ。
面としては可もなく不可もない。
( ´_ゝ`)「笑ってねーじゃん」
(´<_`# )「窓見た瞬間に無表情になったっつの!」
俺もそうじゃないかと思ったよ。言わねえけどな。
201:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:21:29 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「それにしても元気だな弟者君よぉ。
腹をぶっ刺された人とは思えんわ」
(´<_`# )「腹刺されたのに車のドアぶっ壊した奴が言うな!」
( ´_ゝ`)「壊してねーよ、外れたんだよ、事故だよ。
お前いっつまでもその話題引き摺るよな」
(´<_`il )「俺への殺意を忘れない奴に言われたくねーよ!」
( ´_ゝ`)「忘れるわけないだろ。今更消えると思ってんのか?
生まれ付き抱えてた発狂する熱さの煮え湯に加えて、
後から後から殺意が滾る事ばっかしてくれてんだから、
(´<_`# )「ぐだぐだウルセェ! 俺をどうしたいのかハッキリしろよ!
捕まりたくねーなら看護婦でも医者でも呼んで来やがれ!
トドメ刺すならさっさとこっち来いや! 絞め殺してやる!」
( ´_ゝ`)「お前だって俺を殺したがってる癖によく言うぜ。
まだ死なれたら困るから、もう一度コールしたら?」
(´<_`# )「腕が上がらねんだよ! それに殺意はテメー程じゃねーよ!
こんな事されねー限り殺すだの何だのは考えねっつの!」
( ´_ゝ`)「どうだか。何もしなくても殺しに来た時あったろ」
(´<_` )「昔はな。今はねーよ。ナースコール押せ」
( ´_ゝ`)「押してもらえると思ってるのが驚きだ」
202:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:22:51 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「さっきも言ったろーが! 腕が上がらねって!」
( ´_ゝ`)「よくそれで絞め殺すとか言えたもんだ」
(´<_`# )「言ってから気付いたんだよ!」
( ´_ゝ`)「あー。バトル漫画の主人公じゃねぇんだから、
そろそろ大人しく弱っといたら? うるせぇよ」
(´<_`# )「この状況で落ち着けってか?」
( ´_ゝ`)「刺された側に立った経験がある身としては……
うん、無理だな。落ち着かないか。しゃあねぇ」
(´<_` )「だろ?」
だろ? じゃねぇ。よく見たら額に掻いてた汗が引いてやがるし。
○ラゴン○ールの登場人物じゃないんだから、流血したら弱れよ。
なんて言いたいけど、ここは我慢我慢。
お互いの言葉がブーメランにしかならない。
この異常なまでのタフさは、やっぱ糞親父譲りか。
悪こそ世にしぶとく蔓延る原因かね、こういうのは。
203:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:23:48 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「うあーなんか痛くなくなってきた」
((( ´_ゝ`)「おっ、死ぬ?」
(´<_` )「ちょっと嬉しそうにするのやめてくんない?
お前には罪悪感とか後悔とかないの?」
(*´_ゝ`)「お前に対して罪悪感を感じるぅ? 笑わせんなよ。
そんなん今まで生きてて一度もありませ~ん」
俺にとって、流石 弟者は人型のサンドバッグであり、動く的だ。
だから痛めつけても罪悪を感じない。苦しめても後悔しない。
自分の周囲を飛ぶ蚊を潰したとして、罪悪感を抱く奴はいるのか?
病んでるのは「一寸の虫にも五分の魂」と言うかもしれないが。
大多数の一般人は、害虫を駆除したとして、それに何を感じる?
俺にとっての弟者は、蚊であり、敵であり、害虫であり。
母親と法さえ無ければ惨たらしく殲滅すべき、ただの敵だ。
大体、恨むなってのが無理な話だろう。
こんな糞野郎でも救う道があるとほざく奴は、
流石 兄者の人生を追体験してから言ってくれ。
204:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:24:49 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「後悔はな、きっと未来の俺がするだろうよ。
『何故あの時、糞野郎を殺さなかったんだ』ってな」
(´<_`; )「そりゃ、また、救いようのない」
( ´_ゝ`)「誰かから助けて貰えると思ってんのか?」
(´<_` )「母さんは助けてくれんじゃね」
( ´_ゝ`)「母さんか……」
母さんね。確かに、助けるだろうな。
助けるだろうけど、俺の認識としては微妙だな。
糞親父のバツサン売女への浮気が家族全員にバレた後。
誤魔化しからの開き直り、逆切れ暴力コンボが起きた夜。
ゴミ共が去った部屋で、母親から一家心中を持ちかけられた。
俺個人は、出来れば人類滅亡まで生きたいので死にたくない。
最低でも糞野郎を苦しませて殺したいので、心中はしない。
そんな感じで軽く答えたら「そう」とだけ呟いて終わった。
一応、その夜は布団の中でずっと起きていたけど、
朝のモーニングコールまで何の襲撃もなかった。
205:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:26:03 ID:3vYnxUnU0
俺がどうするかを聞いてきたので、無理心中ではないんだろう。
その点はいい。相手が嫌がるであろうものを事前に聞くのは得策だ。
けど、母親は、流動食すら満足に摂れないくらい心身が追い詰められた時、
家族全員を道連れにしようとする選択肢が出る人。と脳内にインプットされた。
今もまだ安定しきっていない。家の中で、極々稀に叫んでたりする。
( ´_ゝ`)「あとの、後悔は……母さんだな。お前みたいなカスでも、
母さんはきっと発狂してヒステリー起こすか、気絶する。
そうなったら、俺は母親に申し訳が立たない。後悔する」
(´<_` )「俺の心配は何一つしないのな」
( ´_ゝ`)「当たり前じゃん。お前が死んだら超嬉しいし。
苦しんでたら楽しいし、殴ったらスッキリするし」
(´<_` )「そうだな。躊躇いなく刺すもんな。俺がバカだった」
( ´_ゝ`)「そうだな。バカの極みにも限界があるんだぞ。
知ってたか? ライン越えたら病気か障害だよ」
(´<_`# )「ちげーよ糞兄貴! テメーもバカだ!
俺が言いたいのはそれじゃねぇ!」
( ´_ゝ`)「じゃあ何よ」
206:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:27:13 ID:3vYnxUnU0
(´<_`# )「俺も色々考えたんだよ! これでもな!
一緒にあの家離れてから変わったんだよ!」
( ´_ゝ`)「悪い方向に?」
(´<_`# )「じゃあ今から言うから聞けや!」
( ´_ゝ`)「はいはい」
にしても看護師遅いな。足音も聞こえない。
ナースコール押してから大分立つのに、何してんだろ。
(´<_` )「家出るまでは、正直なんとも思ってなかったぜ。
大体、さっき兄者が言ったやつと同じだった」
( ´_ゝ`)「だろうよ」
(´<_` )「毒男みたいな奴が兄貴だったらいいとずっと思ってた。
俺より弱くてチビでブサで肝っ玉も小せぇカスみたいな奴」
( ´_ゝ`)「それ鬱田に言ってみな」
(´<_` )「時期見て言うさ」
207:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:30:28 ID:3vYnxUnU0
(´<_` )「んで、殴れば金ポロっと吐くサンドバッグが理想だったんだ。
それでいて甘っちょろくて、ちょっと優しくすれば簡単に信じる、
人に騙されやすいバカが兄貴だったら良かったって思った」
( ´_ゝ`)「鬱田の母親の養子にしてもらえよ」
(´<_` )「ヤダよ、あんな貧乏な家」
( ´_ゝ`)「鬱田家の目の前で、どうぞ」
(´<_` )「拒否する。そんでー、家に着いて色々あってー?
んー、なんつーか『やっべ、やり過ぎた』みたいな?」
( ´_ゝ`)「何で疑問形なんだよ」
(´<_` )「俺もまとまらねーんだよ。もう面倒くせ。向こうで色々あって、
兄者に悪いコトした後に罪悪感みたいなの抱くようになりました。
二人だとナンパしやすい事実が判明したので仲良くしたかった。
はい、終わり。終了です。異論は受け付けませんぷーるるるる」
最後の最後に腹が立ったので、刃物を深く沈めてやる。
(゚<_゚ ; ; ;)「 ... ... . !」
ゾンビ映画に出てきそうな皺枯れ声をあげて丸まった。
何だよ、ちゃんと痛いんじゃねぇか。嘘吐きめ。
208:名も無きAAのようです:2013/07/01(月) 03:34:00 ID:3vYnxUnU0
( ´_ゝ`)「俺に罪悪感ね……その割にはこっちで出来なかった、
女の擦り付けだの借金だのやってくれたじゃないか」
(´<_`; )「お前のお陰で口から血が吐けそうだわ」
( ´_ゝ`)「スルーか、いいけどよ。写メってやろうか?」
(´<_`; )「いらねーよボケ」
死ぬ間際の老人みたいにプルプル震える腕が上がる。
体を起こすのかと思いきや、刺さった刃物を抜き取った。
『刃物が体に刺さった時は、下手に傷口から抜いてはいけない』
と何処かで齧った知識が浮上するが、相手が弟者なので沈める。
(´<_` )「腹気持ち悪、変に熱もっててあっちぃ」
( ´_ゝ`)「へぇ」
(´<_` )「お前はどうだったんだよ」
( ´_ゝ`)「俺の時は、ブチ切れて心臓の動悸激しくなり過ぎて、
腹よりも心臓と頭が痛かったね。それから覚えてない」
(´<_` )「何お前、死ぬ手前でも俺の事しか頭にないわけ?」
( ´_ゝ`)「当たり前だろ」
218:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:39:13 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「暇と時間さえあればいつだって、
どう殺してやろうか考えてるよ」
(´<_` )「昔と変わったな。変わったっつーか、俺にとって、
物凄い迷惑な一文が増えてるっつーか……」
( ´_ゝ`)「増えてる?」
(´<_` )「家出る前は『苦しめて』なんて聞かなかったぜ」
( ´_ゝ`)「そうか、そうなのか、そうなんだろうな。
恨みが積り積もった結果だ。めでたいね」
過ごした時間が積もるにつれ、嫌な出来事も増えた。
昔みたいに、さっくり殺して終わる妄想はもうしてない。
苦しめて苦しめて苦しめて、人生のどん底に落としたり、
(´<_` )「わーどうしたらいいんだろうね」
( ´_ゝ`)「死ねばいいと思うよ」
(´<_` )「酷ぇな」
( ´_ゝ`)「マジで。本気で。もう、心の底から」
(´<_` )「……酷ぇな」
219:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:40:45 ID:D5oJcwdA0
(´<_` )「救いはないんですか?」
( ´_ゝ`)「ネタを普通に入れるなよ」
(´<_` )「躊躇いはないんですか?」
( ´_ゝ`)「何回同じような質問してんだよ」
(´<_` )「ないの?」
( ´_ゝ`)「答えは変わらん、ないよ。あると思ってんの?」
(´<_` )「いいや」
( ´_ゝ`)「何でまた」
(´<_` )「今さ、走馬灯が凄い」
( ´_ゝ`)「どんな?」
(´<_` )「生まれて始めてお前に『殺される』って覚悟した時の記憶と、
親父に『殺される』ってビビった時の記憶がデッドヒート中」
220:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:42:26 ID:D5oJcwdA0
( ´_ゝ`)「生まれて初めて?」
(´<_` )「家の裏山で、俺の腕を笑いながら折った時だよ」
( ´_ゝ`)「そんな事もあったっけ。忘れた」
(´<_` )「これがしつこく言われる『いじめた側はすっかり忘れて、
いじめられた側はいつまでも覚えてる法則』か……」
柄にもなく遠くを見たりしている弟者。
これはツッコミ待ちだろうか。
( ´_ゝ`)「間違ってもいじめられっ子じゃねぇから安心しろよ。
血流しすぎて不安になってんならまたコールしとけ」
(´<_` )「何回コールすりゃいいんだよ。つか来ねーじゃん」
( ´_ゝ`)「会議室で事件でも起きてるんじゃないの?
それにそろそろここに来るだろ。誰かは」
さっきから廊下を歩く足音するしな。
221:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:43:24 ID:D5oJcwdA0
コールしてからこっちに来るのがかなり遅かったうえに、
ヒールっぽい足音が複数聞こえるのが少し気になるが。
( ´_ゝ`)「じゃ、俺はそろそろ寝る」
(´<_` )「えっ……この状況で?」
( ´_ゝ`)「おやすみ」
ベッドの下に頭からスライディング。
暗さが調度いい。暗いと気持ちよく眠れる。
わざわざ明かりを点けて眠る人間は理解に苦しむ。
網膜を常に刺激し続けるとか、目の負担になりそうなんだがな。
暗所恐怖症やトラウマ持ちは例外とする。
(´<_`; )「寝たら死ぬだろうが! フラグ乱立してんぞ!」
( ´_ゝ`)「大丈夫、お前を盾にして俺は生きる」
(´<_`# )「そんな問題か! ンの野郎!」
222:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:45:40 ID:D5oJcwdA0
威勢のいい声と共に、目の前に簀巻きがふってきた。
頭からとか足からじゃなく、腹這いに降ってきた。
しかも前面からビタンと落ちた衝撃で、更なる重症を負っている。
(;´_ゝ`)「あ、危ねぇ」
一瞬、終わったかと思った。
長きに渡る確執じゃなく、俺の社会的な人生が終わったかと思った。
中途半端に死なれて、暴力を発散する場所が無くなったかと思った。
ほぼ無意識に、腕を伸ばしてしまっている。ちょっと恥ずかしい。
俺が腕を伸ばすのは、転びかけてる老人だけでいいのに。
うっかり殺っちゃってもいいやと考えていたが、
やっぱりいざとなると自分の今後が心配だな。
(゚<_゚ )「ホギャン!」
自らのガラスハートが未来を憂うあまりに砕けそうだったので、
簀巻きを解いて、ゴミ袋に刺さってるナイフを引っこ抜いた。
223:名も無きAAのようです:2013/08/14(水) 01:48:57 ID:D5oJcwdA0
ナイフを一回転させてカッコ良く鞘に戻そうとしたが、
手から盛大にすっぽ抜けて部屋の隅に飛んで行った。
( ´_ゝ`)「さー今度こそおやすみ」
( <_ # )「こんな、こんな状況で寝れるか糞兄貴」
( ´_ゝ`)「寝ろよ。どうせそんくらいの傷じゃ死なねえよ。
それ以上に深く刺された俺が生きてんだ」
( <_ # )「死ねクズ、アホ、キチガイ、インポ野郎。殺してやる。
殺すなら殺せ。取り憑いて呪い殺してやるからな」
( ´_ゝ`)「へいへい」
(´<_`# )「ゴーリキー、糖質ー、施設に入れこのアスペ」
( ´_ゝ`)「将来的にはそのつもりだ」
(´<_` )「えっ」
.糸冬
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