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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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310: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:12:10 ID:WvmyfKKI0
37.そんな優しさ、持ち合わせちゃいないが



内藤の家での一泊は、特に何もなかった。

家を追い出された元ニートのニュが不法侵入を試みたらしいが、
防犯設備に引っ掛かり、警察へ連行されていったくらいだ。

日常と化しているらしく、内藤の電話一本で終了。実に平和。
しかし、日常と化しているくらいなら相応の罪も溜まってるだろうに。


( ^ω^)「平和って何だったっけかお」

( ´_ゝ`)「何も起きない日常」

( ^ω^)「最初から日常が崩れている場合はどうなるんだお?」

( ´_ゝ`)「人生ハードモード続行」

( ^ω^)「親のセックスからリセットしてえ」

311: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:13:06 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「さっきの奴さ、何で逮捕されないの? 何回も来てんだろ?
      そろそろ不法侵入でぶち込めるんじゃねぇの?」

( ^ω^)「身内から前科者を出したくない奴らが逮捕の邪魔してるお」

( ´_ゝ`)「ああ、そういうのか」

( ^ω^)「しかも被害者が僕だからシカトされてるんだお」

( ´_ゝ`)「そういうのか……」

( ^ω^)「その分、迷惑料は受け取ってるんだおっお」

( ´_ゝ`)「なら問題ないな」

( ^ω^)「けど来る時間帯が深夜だから、我慢の限界も近いお。
      サイレン聞けば毎回大人しくなるけど、しつっこいんだお」

( ´_ゝ`)「まあまあ、サイレンぐらいでビビるなら問題ないだろ」

312: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:14:07 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「もう年だし家族もいねぇからって、失う物がないのを自覚して。
      トラックとか重機に乗って玉砕覚悟で家に突っ込んでくるような、
      おっそろしい爺ちゃん婆ちゃんよりかはやりやすいって」

( ^ω^)「何故ジジババがそのような行為に走るお」

( ´_ゝ`)「糞親父になんかされた……その復讐だろうよ」

( ^ω^)「あ、やっぱり何か悪いコトしてたのかお? 親父さん」

( ´_ゝ`)「確定はできないが、何人か殺ってる気がする。
      あと軽微な犯罪としては、相撲賭博は確定」

( ^ω^)「人を殺しそうな奴には見えるけどお、
      ギャンブルやるようには見えないお?」

( ´_ゝ`)「開催する側って事だよ。言わせんな危なっかしい」

( ^ω^)「ふむ、通報したお」

( ´_ゝ`)「今度会う時は地面の下か、またな内藤」

( ^ω^)「冗談だお。やめろ携帯を返せクズ」

313: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:14:53 ID:WvmyfKKI0



(;´_ゝ`)「ぶっ飛ばさなくたっていいじゃないか……」

( ^ω^)「割と本気で僕の携帯握りしめてたおね?
      でなきゃ画面にこんなヒビ入らないおね?」

( ´_ゝ`)「ああ無意識の内に」
  _, 、_
( ^ω^)「ったくお。そんなに捕まる事を怖がってる癖に、
      よく殺人計画なんて建てるおね。確実に逮捕されるお」

( ´_ゝ`)「殺す前に捕まっちゃうのが一番嫌なんだよ。
      全部終わった後にしくじって捕まるならまだしも」

( ^ω^)「……ふぅん?」

314: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:15:40 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「捕まらない方法は何か考えてるのかお?」

( ´_ゝ`)「当初の予定では、殺った後アメリカかメキシコか……
      そこらの日本人街にでも潜伏する予定だったんだがな」

( ^ω^)「ほほぉ、ほぉ」

( ´_ゝ`)「外国での居住地を探してるって事実だけ母さんにバレたらしくて、
      『地球の裏側に行ってもジャングルの奥に行っても見つけ出す』って」

( ^ω^)「ヤンデレ系かお」


( ´_ゝ`)「……両肩に食い込んだ爪の跡が残るぐらい鷲掴みにされて、
      目ぇ合わせながら言われた。流石にちょっと怖かった」

( ^ω^)「ヤンデレ系だったお」

( ´_ゝ`)「それ嫌な言葉だなあ。病み方にも色々な重さがあるだろうに、
      ヤンデレって一言に集約されると安っぽくなって嫌いだ」

( ^ω^)「いきなり話題を変えるなお。気になるところがあったとしても」

( ´_ゝ`)「すまん」

315: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:16:39 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「しかし、あれだおね。弟者の変な執着は母親譲りと見たお」

( ´_ゝ`)「何の執着?」

( ^ω^)「さあ、この世に安息の地はないんだお。病院行くお」

( ´_ゝ`)「何どれあいつの女に対する執着の事?」

( ^ω^)「そいつから直接聞くがいいお」

( ´_ゝ`)「警察っぽいのがいたら、俺は逃げるからな!」

( ^ω^)「はいはいお、ほらガラッガラのバス来たお」

貸し切りバスに乗り込んだ直後、弟者からメールが来た。

『件名:最近なんかあった?』
本文はなし。

316: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:17:50 ID:WvmyfKKI0
昨日、衝撃的だったものを敢えて、強いて上げるならば、
丑三つ時にフヒフヒ笑いながらキーボードを叩いてる筋肉達磨だ。

深夜に何やってんのかと覗いてみれば、なんと言うか……。

SNSやTwitterを日頃から巡回して、炎上させる火種を探している内藤は、
俺やアヒャとはまた違った、尖った方向に気が狂っていると確信した。


いつもノートに書いてるような日記形式の文体でメール返信。
しばらくして、弟者からの返答。

『件名:違う
 本文:そういうのじゃない』

どういうのだ。

つか内藤が無理に携帯の画面を覗き込んでくる所為で、
鼻息が首筋に当たって気持ち悪い。キモい。キショい。

317: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:27:23 ID:WvmyfKKI0
(^ω^; )「昨日の今日で、なに……ゆえ……そんな、
      日常みたいなやり取りが出来るんだお貴様ら……」

( ´_ゝ`)「口調がおかしいぞ内藤」

(^ω^ )「お前らがおかしいお」

( ´_ゝ`)「そうか? 俺の時も同じようなモンだったぞ。
      あいつが俺の足にボウガンぶっ放してくれた翌日も」

(^ω^ )「……今とは逆の立場で?」

( ´_ゝ`)「そう。今とは逆の立場で。一晩離れれば大体落ち着く」

(^ω^ )「おかしいお。悔しいビクンビクン殺してやるぅとかないのかお?」

( ´_ゝ`)「悔しいが、あの時は俺の油断が一番の原因だからなぁ。
      夜店での射的も下手糞だったから、どうせ当てられないだろうと、
      そう思って距離取ってたら……危うく頭に矢が刺さるとこだった」

ミ( ^ω^)「油断してたんだおね」

(#´_ゝ`)「あー、今考えれば、下手糞に見えるよう演技してただけなのかもしれないな。
      思えばあの年は近くでやる祭りには全部誘われて行ったし……くっそぉ。
      わざわざ金かけてまで演技するとかクソが。射的の代金払ったの俺だけど」

(;^ω^)「普段から相手を騙し合う兄弟関係とか怖いお……
      改めて、お前らの血族でなくて良かったと思うお」

318: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:29:28 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「でも、弟者の誘いに乗るんだおね。それも全部」

( ´_ゝ`)「その時の気分に寄る」

( ^ω^)「兄さん気分の時に乗るのかお?」

( ´_ゝ`)「一般的な感覚で、あいつを弟と認識した事はない。
      むしろ俺が弟と思ってるのはまたんきのほうだ」

( ^ω^)「それお前の嫁ェ」

( ´_ゝ`)「紙の上だけだ。性欲なんて抱いた事もない」

( ^ω^)「弟者も可哀想だおね」

( ´_ゝ`)「……本当に? そう思うか? あいつを?」

(;^ω^)「いきなりマジトーンになるのやめろお。
      お前も同情されるの真っ平の癖にお」

( ´_ゝ`)「む、なら説明しろ」

( ^ω^)「弟者のほうは、一応弟者なりに兄者の事を兄貴だと思ってるっぽいんだお」

319: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:30:38 ID:WvmyfKKI0
( ^ω^)「だからー、片方がちゃんと兄弟だと思ってるのに、
      もう片方は兄弟だと思ってないとか可哀想だと思ったんだお」

( ´_ゝ`)「兄貴扱いって、何? 責任の押し付け所って意味?
      賠償請求先って意味? 代わりに女に刺されろって事?」

( ^ω^)「やっべこれ兄者の地雷だったお。ストップ」

( ´_ゝ`)「しない。いいかよく聞け俺は」

( ^ω^)「聞かないお。逆に兄者に質問するお。
      兄者は弟者の事を弟だと思った事はあるお?」

( ´_ゝ`)「一般的な兄弟認識じゃなく、俺なりの感覚でなら、まぁ……」

( ^ω^)「それ聞きたいお」

( ´_ゝ`)「露骨に話逸らそうとしやがって」

( ^ω^)「兄者がさっき言いかけた主張は聞き飽きたお。さあ言うお」

録音しようとする内藤から携帯を取り上げて、俺なりの”弟”について考えてみる。

320: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:31:48 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「俺の感覚での双子の弟……いや弟と言うよりは、
      俺の意思を離れた、制御できない劣化分身……?
      とにかくやっぱり殲滅すべき敵に変わりはないなぁ」

( ^ω^)「だからその認識はおかしいってばお。
      本当なら全国の双子を調べる必要があるお」

( ´_ゝ`)「理由は違えど、俺ら以外にも片割れ殺したがってる双子はいるさ。
      ただ表に出ないだけで、その辺にいるっての。知らないだけだ」

( ^ω^)「ソース寄越せお」

( ´_ゝ`)「お前も知ってる素直姉妹」

(;^ω^)「ウッソマジかお」

( ´_ゝ`)「本人に聞いて来い。そして女同士の陰惨とした殺し合いに巻き込まれろ」

( ^ω^)「お前らだけでお腹いっぱいだお」

うっぷっぷーなんて息を吐く内藤の腹を殴ってやりたい。
どうせ拳が跳ね返されるだけだろうが。

321: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:32:40 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「あと一つ、違う理由でもあいつを殺すしかないって思ってる」

( ^ω^)「兄として?」

( ´_ゝ`)「んんん」

どうだろう。ギリギリ一般人の範囲内じゃなかろうか。

よく父親がニートの息子を殺した事件が報道されたりするが、
多分、感覚としてはそのニートの息子の父親に近いだろう。


( ´_ゝ`)「俺なりに、自己中心的な理由じゃなく、あいつの為に、兄としてなら」

( ^ω^)「言ってみろお」

( ´_ゝ`)「あいつは、人より性欲が強くて、貞操観念のブレーキが効き辛いだろ?」

( ^ω^)「だおね」

( ´_ゝ`)「今は俺がいるから、俺に責任が分散されて来てるが……」

322: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:33:31 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「将来、俺がいなくなった時、それで苦労すると断定できる。
      こうなるだろうってあやふやなものじゃない。断定できる」

( ^ω^)「確定だおね」

( ´_ゝ`)「あいつは俺と違って無理矢理勉強机に座らせられる事もなかった。
      母さんは法律に強いし、人脈が広いから今はなんとかなってるが、
      あいつは六法全書なんて開いた事も手に取った事もない」

( ^ω^)「教育方針の格差が酷いお」

( ´_ゝ`)「今から勉強させようにも、あいつの頭に入る訳がない。
      障害者の認定は下ってないから役場で後見人もつけれない。
      借金なんかしたら、糞親父は簡単にあいつを切り捨てるだろう。
      もう既に半分勘当されたような状態だし、助けてはもらえまいよ」

( ^ω^)「うむ……」

( ´_ゝ`)「現在進行形で、女共に恨まれているんだ。
      色んなものから逃げ続ける生活になるだろう」

( ^ω^)「まあ……だおね」

( ´_ゝ`)「だから殺すしかないんだ」


( ^ω^)


( ^ω^)


( ^ω^)


(  ゚ω゚)「はい?」

323: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:34:47 ID:WvmyfKKI0
(  ゚ω゚)「今、僕、何か聞き逃したかお?」

( ´_ゝ`)「知らん。兎に角、あいつの将来は真っ暗闇だ。
      今が絶頂期で、後はもう落ちていくしかない」

(;^ω^)「そっ、そうだおね」

( ´_ゝ`)「それに、このまま野放しにしておけば、人様に多大な迷惑をかける。
      窃盗症も治らないし、下半身も緩い、サボリたがりで、欲望に弱い。
      フォローしてくれる人がいる今が一番なんだよ、こういう奴は」

( ^ω^)「……」

( ´_ゝ`)「かなり質の悪い、犯罪の片棒担ぐような友人達はいるらしいが、
      そんなのが将来助けになるとは思えない……むしろ足を引っ張る」

( ^ω^)「ふむ」

( ´_ゝ`)「だから、俺なりに、兄としてあいつの将来を考えて、
      これから起こる全部の責任を全て取るとしたら」

324: ◆T/D40qQ./Q:2014/12/29(月) 02:36:46 ID:WvmyfKKI0
( ´_ゝ`)「今の内に、殺してやるのが、一番なんだよ。……そうだろう?
      事件を起こしてしまう前に、いなくなったほうが名前も汚れない」

( ^ω^)「殺さないって選択肢は?」

( ´_ゝ`)「選択肢は……」

内藤の質問に、頭の中で、俺自身の本音がこだまする。

それに言い返せない兄としての、俺の情けなさよ。
嘘でも『ある』と言えない、みっともなさよ。


( ´_ゝ`)「……ふ、へっ」

自分自身に嗤われている気がした。





37.糸冬


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