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SAN値低めで御送りします
ブーン系空気作者の雑記&自作品まとめ かなりの頻度でクトゥルフも
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3: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 03:57:38 ID:rOZns1CQ0
10.のんべんだらりと破壊恭順


何の予定もない休日、夏の終わりの昼日中。
今日は久々にゴミ(弟)もない。久し振りの一人部屋。アパートだけど。

全く、ルームシェアしてからは義務教育時代の地獄の再来だった。
自分の部屋に自分以外の他人がいるという状況は、いまいち寛げない。


( ´_ゝ`)「やっぱ一人サイコー」

布団に寝転がってババアの形見の縫い包みを抱き締めていると、
携帯電話から飛び出した着信音という爆音で目が覚めた。
テンションが高い時に自分で設定した『新世界』だ。過去の自分を絞めたい。


( ´_ゝ`)「誰だよ……こんな時に」

驚いて眠気が吹き飛ぶも、表に出す気力はない。
こんな時も何も糞すらない日だが、何もない時間ほど貴重なものはない。

4: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 03:58:22 ID:rOZns1CQ0
右手で携帯を開くと見知らぬ番号。


( ´_ゝ`)「え、誰だ」

間違い電話? セールス? 詐欺? はたまたメリーさんか。
うん、取りあえず出よう。なるべく不快な声を出さないように。


ピッ


( ´_ゝ`)「はいもしもし流石です」

『もしもし? 兄者君?』

若い女の声。いやマジで誰だこれ。

5: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 03:59:29 ID:rOZns1CQ0
( ´_ゝ`)「失礼ですが、どちら様でしょうか?」

『あっ、いきなり電話かけてごめんね! 私、昨日の静香よ!』

( ´_ゝ`)「しずか?」

未来の青い猫型ロボットが脳内を駆け抜ける。

しずか、シズカ、静香。
もしかして、しーちゃん?


『昨日はごめんね……』

確か昨日、風呂場で寛いでいたらドアのチェーンがぶち切れる音がして…

6: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:00:23 ID:rOZns1CQ0
始めは泥棒かとも思ったが、ばたばたと続く足音を不審に思い、
風呂場にいた俺はそのまま篭って何事かと聞き耳を立てていた。

結局、泥棒ではなく女性の敵(弟)だったのだが。


( ´_ゝ`)「あ、あー。うん、静香ちゃんね」

アホが女三人に詰め寄られて修羅場ってる時に、それっぽい名前が聞こえた。

頭にタオルを乗せた紳士スタイルで脱衣所まで行き、ドアの隙間から見えた光景。
それは一人が床で泣き崩れ、残り二人は窓から飛び出した害虫(弟)を追い駆けて逝く所だった。

7: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:01:05 ID:rOZns1CQ0
( ´_ゝ`)「どうしたの?」

風呂場で聞いた会話では、その中の二人が性病持ち(弟)と付き合っていて、
一人がその片方の恋路を応援しているような状況らしかった。
勿論、全員二股をかけられていたとは知らず、だからこそあんな惨状になった訳だ。

女の団結力とはかくも恐ろしく、女同士でのバトルロワイアルになるかと思いきや、
一人がその場で泣き崩れた事で、全ての感情はクズ(弟)に向かって突っ走った。

逃げ出した獲物を追い掛ける彼女らに、ハサミより確実な獲物を持たせてやりたかった。
それが出来なかったのが、昨日の唯一の心残りである。悔やみきれない。ああ無情。


『名前も言わずに帰っちゃって、ごめんね』

( ´_ゝ`)「え? ああ、うん。そんな事ないよ」

しかし全裸で民衆の前へ出る訳にもいかず、かといって寝間着で出る訳にもいかず、
俺はその日に着用していた衣服に着替えてから泣き崩れる女に話しかけたのだ。
流石に、目の前で泣いてる女を無視するのは世間体的にアレなので。

8: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:02:20 ID:rOZns1CQ0
そもそも、自分以外への心配の感情が向けられない俺としては、
慰めの言葉の一つもかけないまま湯船でふやける選択肢もある。

しかし、後から俺があの修羅場にいたのが女達にバレた場合、


「(女3人男1人というおいしい状況で)ナニもされなかったよ、いい人だよ」

ではなく、

「あの修羅場の傍にいながら何もしてくれなかった、悪い人だよ」

と、言い触らされる確率が高い。


女の一人が直前に「しーちゃんはここに居て!」と叫んだので、
読みかけのエロ漫画の上で泣き崩れる女の愛称を知った。

初対面にいきなり愛称呼びで近付くのは自分でもどうかと思ったが、
テンパった頭ではそれしか浮かばなかったので仕方がない。

青過ぎる自由な空から、クソフェミニストが降って来ないかと何回仰いだか。

10: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:03:00 ID:rOZns1CQ0
『どうしてもお礼が言いたくて、』

( ´_ゝ`)「いいよ、いらないよ、そんなの」

割りとマジで。もう関わりたくないというのが本音。
なんて慰めの言葉を投げ掛けたのか、記憶に残ってすらいない。

どうやって股の下にあるHな漫画を気付かれないよう抜き取ろうか。
そんな事に終始頭を使い、悪戦苦闘していたよ。俺万歳。


『迷惑かけちゃったから、お礼がしたくて』

迷惑というなら、この通信こそが迷惑です。
折角の安息日に何をしてくれやがるんだ。


( ´_ゝ`)「……ん?」

11: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:05:45 ID:rOZns1CQ0
そういや、こいつどうやって俺の電話番号知った?

昨日、彼女の家の近くに停まるという駅まで送っただけだ。
全世界の女性に誓って、何もしてはいない。
携帯なんて取り出してすらいなかった。
ずっとズボンの尻ポケットの中だ。


『今日、予定空いてるかな?』

不穏。


( ;´_ゝ`)「えーっと」

『駄目だったら、次の日曜とか、別の日に……』

聞くのは少し勇気がいるが、電話越しだし大丈夫だろう。
いざとなったら、友人の家に転がり込めばいい。

12: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:08:50 ID:rOZns1CQ0
( ´_ゝ`)「俺、昨日番号教えてなかったよね? なんで知ってるの?」

『……ああ』
                          *'``・* 。
直接過ぎただろうか。どうにでもなーれ。  |     `*。
頭の中で誰かが杖を振る。         ,。∩      *
                        + (  ∵ ) *。+゚
                        `*。 ヽ、  つ *゚*
『今日ね、弟者君の携帯から知ったの。お礼を言いたくて』

( ´_ゝ`)「そうなんだ」

知ったと言うか、調べたんだろうな。
調べたと言うと聞こえが悪い。

あいつの事だから、俺の名前をそのまま登録しておく事はないだろう。
現に俺はあいつの名前を愚弟、読みはグッティーで登録している。

しかし調べたって、それらしいものを一件一件かけていったのか。
運良く一発目から俺にぶち当たったのか。恐怖と謎は深まるばかりだ。

13: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:11:57 ID:rOZns1CQ0
ただ、あいつの携帯が向こうの手元にあるって事は、つまり。


( ´_ゝ`)「ちょっと悪いんだけどさ、あのバカ今どこにいる?」

『……ああ、弟者君ならね、友達に叱ってもらってるよ』

バカで通じた。もう彼女達からの認識は底辺だな糞野郎、くへへ。

脳裏に様々な方法で女達から拷問を受けるカスの姿が乱舞する。
テンションが最大まで上がって、瞬時に下がった。
いかんいかん、今は電話中だ。冷静に、冷静に。

が、口の端が吊りあがるのは、もうしょうがない事だ。


( ´,_ゝ`)「フーン」

14: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:13:31 ID:rOZns1CQ0
『反省してくれるかは、わかんないけど……』

( ´_ゝ`)「うん、確かに」

まあ、よし、何かしらの制裁がその身に降り注いだのは確かだ。
多分、どこかを鋏めたんだろう。あの時のハサミで。

出来れば刺されたとか、下半身不随とか、子作り不能とか、
もう片目だけでも何でもいいから駄目になっていてほしい。

死体になってくれてるのが一番有り難いが、それはないだろうな。
そんな感覚だけはする。なんとなくの範囲でしかないが、残念な事に。

15: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:14:33 ID:rOZns1CQ0
『兄者君に会うのは、無理かな?』

( ´_ゝ`)「うーんと」

制裁を加えたのが彼女であれば、会うだけならいいような気もしてきた。
お礼と慰めついでに性処理も、なんて考えが音速で浮かんで光速で沈む。


( ´_ゝ`)「ごめん、今日はちょっと外せない用事があってさ」

気がしただけだ。ヤバイ予感がビンビンする。
ただあいつと兄弟だからという理由だけで監禁フラグを立てたくない。

運が悪ければ彼女のバックにいるかもしれない怖い友達に、
山に埋められて葬り去られるかもしれない。もしくは海の底でコンクリ詰め。


『そっかー。じゃあ他に空いてる日はある?』

なんとかして回避せねば。
やりたい事はまだあるし、殺りたい奴もいる。

16: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:15:13 ID:rOZns1CQ0
( ´_ゝ`)「色々とやる事が多くてさ。しばらく休みがないんだ。
      あいつが遊び歩いてる分も俺がやらないといけないからさ」

おおナイス俺の口! あいつに事をなすりつける時はすらすら動く!
つーか事実か。うん。ただの真実だな。嘘は言ってない。


『そうなんだ……。無理言ってごめんね』

( ´_ゝ`)「いいよいいよ、こっちもあのアホが迷惑かけてごめんな。
      もうホント、目も向けられないくらいギッタギタにしていいからさ」

『アッハハ、言い過ぎだよー』

( ´_ゝ`)「あっはっは」

17: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:17:00 ID:rOZns1CQ0
もうそろそろ通話を切っていいタイミングかな。
肩の荷が降りた気分だ。


( ´_ゝ`)「じゃあごめん、そろそろ切るよ」

『いいの、こっちこそ忙しい時にごめんね。それじゃあ』

( ´_ゝ`)「うんうん、じゃーねー」


ピッ


( ´_ゝ`)「…………はあ」

うむ、気を取り直して、内藤の家で寝るとしよう。
あの筋肉なら大概の危険は防げるハズだ。多分。

18: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:18:06 ID:rOZns1CQ0
~~~~~~~~~~~~~~~~



( ^ω^)「それで、ただ寝る為だけに僕の部屋に来るとかなめてんのかお」

( ´_ゝ`)「手土産どうぞ。中腰で受け取るがいい」

( ^ω^)「ああはいはい、どーもどーもだお」

がさごそと袋を漁る内藤を尻目に布団を探す。
うーん、油が吸収されてそうな布団しかないな。
無いよりはマシか。床に直に寝るか。


(#^ω^)「オイこら! プラセンタとかダイエット食品とか舐めてんのかお!」

( ´_ゝ`)「最近腕とかぷよぷよしてきたじゃん」

( ^ω^)「もう少し歯に衣を着せるとかするお、大体兄者は…」

これ以上の会話は無益だと判断し、布団にヘッドスライディングを決める。

19: ◆T/D40qQ./Q:2012/12/29(土) 04:20:33 ID:rOZns1CQ0
( ´_ゝ`)「うん、そういう訳で。おやすみー」

(;^ω^)「頭から布団に突っ込むなお! 寝るならちゃんとするお!」

お母さんかお前は。


( ´_ゝ`)「ん? なんだこの邪魔だなあ、って」

('A`) スピー ピスー

( ´_ゝ`)「……ああ」

布団の中には何故か先客の毒男がいたが、些細な事だ。
俺はそのまま妖怪布団被りとして眠りについた。



10糸冬


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