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サマー三国志参加作品
◆IX/.RQYd0g
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/auto/5584/1250824623/l50
上記のURLは投下したスレですが、掲示板が休止中の為に飛んでも閲覧出来ません。
絵投票にて頂いた絵 名無しさんと脳髄 サエルさんから
所々に入ってる+(数字)は投下前ログのものなので、レスごとに分ける為につけていたものです。
もしかしたら投下後と違うものがあるかもしれない。
◆IX/.RQYd0g
ttp://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/auto/5584/1250824623/l50
上記のURLは投下したスレですが、掲示板が休止中の為に飛んでも閲覧出来ません。
絵投票にて頂いた絵 名無しさんと脳髄 サエルさんから
所々に入ってる+(数字)は投下前ログのものなので、レスごとに分ける為につけていたものです。
もしかしたら投下後と違うものがあるかもしれない。
( ^ω^)「今日も今日とて 朝から勤務」
内藤は 真っ白な建物を見上げた
摩天楼から外れた場所に 開発が中断された更地に ぽつりと立つ建物を
( ^ω^)「ああ 憂鬱だお」
( ^ω^)「毎度毎度 見飽きたお」
( ^ω^)「それでも この職を選んだのは 他ならぬ僕なのだから」
( ^ω^)「仕方ない」
内藤は手動ドアを開けると 建物の中に入って行った
+1
__ _,-―'''゙ ̄ ゙̄''''ー-、_
`ヽ> /´ `ヽ、
in^) / `i、
y' / / ゙i、
^、_ノ / i
| | r‐、 i
l | r‐-、 ' | とちょっと変な
! | ′ 人達のようです
+2
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう こんにちわ」
( ^ω^)「おはよう 今は朝だからおはようだお」
ζ(゚ー゚*ζ「早朝ではない十時だと おはようを言う方もいれば こんにちわと言う方もいますの」
( ^ω^)「成程 どちらにも対応できるようにと」
ζ(゚ー゚*ζ「その通りです」
( ^ω^)「出来れば どちらかに絞ってほしいものだがね 僕のように言う人も出るぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「少々考えておきますわ」
津出井は 内藤にカルテを渡す
ζ(゚ー゚*ζ「さっさと着替えて来て下さいね」
( ^ω^)「何かあったのかお? 人死にとか」
ζ(゚ー゚*ζ「ありませんわ 内藤先生ではないと患者の相手が務まらないと
他の先生が嘆いて 私に泣きついただけの話でございますよ」
( ^ω^)「そうか」
+3
内藤は 意味もなく腕時計に目を落とす
( ^ω^)「それじゃあ 早速向かうとするお」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ それでは御大事に」
( ^ω^)「今日も何事もなければよいが」
そうして内藤は 当の病室に向かった
目的の場所は三階なので 階段をこつこつと上る気もない内藤は エレベーターに向かった
( ^ω^)「おや 誰か使っている」
このエレベーターは職員用なので 自分以外の職員か 規則を守れない患者が使っている事になる
ああ ついさっきトイレに消えたデレも消去して考えねば
見れば エレベーターは昇っている途中である
階段を使ったほうが早いと計算した内藤は 早々にエレベーターの前から立ち去った
+4
( ^ω^)「ふう ふう 堪えるお」
手すりを使って かかる力を分散させながら上った内藤
軽く息を切らして病室に入ってみれば そこは蛻の殻である
変質者のような自分の息遣いに身の危険を案じ 隠れたのかと思ったが そうでもないようだ
着替えが入っているタンスの中も ベッドの下も カーテンの中も探したがいない
一応 鉄格子の向こうの窓の下に苦心して目をやってみたが 赤い色はなかった
( ^ω^)「やれやれ 朝っぱらから人探しとは」
+5
その後 当の本人がよく行く場所を調べまわってみたが 足取りは掴めなかった
歩き回って 白衣の下に汗を掻いた内藤は 水分補給をしようと自動販売機に近付く
( ^ω^)「また麦茶の無料提供機が空だったお これだから夏は困る」
熱い麦茶を飲む気はない内藤は 胸ポケットから小銭入れを取り出した
その中から百円玉と十円玉をそれぞれ一枚ずつ取り出し 自動販売機に投入する
カップの十六茶を押すより先に 後ろから伸びてきた手にコーラを押された
('A`)「よっしゃ ペプシもらい」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「な なんだよ そんな目で睨むなよ」
金を持たない鬱田からは コーラの代金の搾取は出来ない
内藤は溜め息を一つ吐いて 小銭入れから小銭を取り出した
+6
('A`)「別にいいだろこれくらい 医者って金持ちなんだろ?」
( ^ω^)「大きな勘違いだお それは 甚だしいお」
('A`)「え お前貧しいん?」
( ^ω^)「当たり前だお 医者になるには金がかかるし 何より なったばかりのこの若輩に
医者について間違った思い込みを持ってる輩が想像するような貯蓄はないお」
('A`)「そうか そうなんか」
鬱田は 残念そうに言って動きを止めた
まだ中身のあるカップを両手に持ったまま 猫背の姿勢で静止した
緊張病を持つ彼にとって これは日常なのである
内藤も最初の内は戸惑ったが 今では慣れたものだ
彼には悪いが 今は構って遊んでやる暇はない
カップの中の茶を飲み干すと 空をゴミ箱に放り投げて 内藤は歩き出した
鬱田が動き出す頃には きっとコーラの炭酸は抜け切っているだろう
+7
( ^ω^)「飲んだら トイレに行きたくなったお」
早々に障害が立ちはだかる 尿意と言う名の
一度研修生時代に膀胱炎を患った彼は その恐ろしさを知っている
その辛さを 身を持って知っているのだ
( ^ω^)「うートイレトイレ」
内股になり小走りでトイレへ向かうと 見知った患者の姿が見えた
これは不味いと思いつつも この付近にトイレはここしかないので引き返せない
(*゚∀゚)「お? 内藤じゃねーか」
内藤は この患者の話が早く終わる事を切に願った
+8
(*゚∀゚)「なんだよ女の子走りなんかしやがって 目覚めたのか?」
( ^ω^)「違うお トイレが近いんだお」
(;*゚∀゚)「んだよ 立ち止まらないで入りゃいーじゃねーか」
内藤は心の上辺だけで神に感謝した
キリストも仏も信じてないが こういうのが日本人なのだ
( ^ω^)「すっきり」
出し終えて 爽快感を下半身にトイレから出る
男子トイレと女子トイレの中間付近に 彼(彼女?)はまだ居た
廊下の一角に視線を落として ぼうっとしている
何故このような三人称にしたかと言うと 彼女(彼?)の詳しい性別を僕は知らない
どうも担当の医師と親しい看護師だけが知っているようだ
+9
背丈は高め 肩幅は広いががっしりとはしていない 腰は細いが 線が細くは見えない
顔が中性的なのも相俟って 物見事に性別の判断を付け難くしていた
まあ 今の内藤には関係のない事である
( ^ω^)「関口 茂名を見なかったかお?」
(*゚∀゚)「うんにゃ 今日は見えない」
( ^ω^)「そうか ありがとうだお」
(*゚∀゚)「またなー」
別れの言葉を言いつつも 手を振らない関口にも慣れた
突拍子もなく壁を全力で殴り始める関口にも慣れた
他の茂名と親しい患者を探して 内藤は歩き続ける
歩き続けたが 今度は誰にも会う事がなかった
+10
やれやれと呟きながら中庭へ目をやると 男女の諍いが見えた
やれやれと思いつつも 少しの何かを期待して目をやり続ける
(*゚ー゚)「何々でしょう お話とは」
(,,゚Д゚)「うむ 俺が渡したプレゼントの話なのだが」
(*゚ー゚)「私は貴方から 何かを貰った覚えはありませんが」
(,,゚Д゚)「なんだと 俺の事はどうでもいいと言うのか」
(*゚ー゚)「そんな事は言っておりません 強いて言うなら 嫌がらせなら貰いましたが」
(,,゚Д゚)「それは貰ったのではなく 受けたと言うのだ」
(*゚ー゚)「細かい男は嫌われますよ 繊細な男なら話は別ですが」
(,,゚Д゚)「嫌われてるほうがいい」
(*゚ー゚)「まあ なんて憎らしい」
(,,゚Д゚)「それでいい それでよし」
+11
(*゚ー゚)「して 話とは?」
(,,゚Д゚)「俺が昨日渡した指輪の話だ」
(*゚ー゚)「そんな拘束具のようなもの 受け取った覚えはありませんが」
(,,゚Д゚)「直接渡すのが恥ずかしいから 夕食の餃子の中に入れておいたんだ」
(*゚ー゚)「なんと」
(*゚ー゚)「私はあの臭いが苦手なので お隣のモナーさんにあげてしまいました」
(,,゚Д゚)「なんと」
(,,゚Д゚)「しくった ああこれはしくじった」
(*゚ー゚)「と言うよりも 餃子の中に指輪とは正気ですか」
(,,゚Д゚)「ああ正気だ だが常識はない」
(*゚ー゚)「ここに礼儀作法の本が御座います お貸ししてあげましょう」
(,,゚Д゚)「この本のタイトル いくら角度を変えて読んでも『楽に死ねる方法百選』にしか読めないのだが」
+12
(*゚ー゚)「しかし指輪とはまた遠法戦で来ましたね しかし その作戦には引っ掛かりませんよ」
(,,゚Д゚)「待て待て 話を聞いてくれ」
(*゚ー゚)「私に拾わせて 貴方は私が指輪を盗んだ盗人なのだと言いふらす気なのでしょう?」
(,,゚Д゚)「いいや 俺の好意を伝える為の行為だ」
(*゚ー゚)「二点」
(,,゚Д゚)「厳しい」
(*゚ー゚)「話を戻して なんという事でしょう 信じられません」
(,,゚Д゚)「すまん 小学生男子のような事をしてしまって」
(*゚ー゚)「餃子の中に指輪を入れるだなんて」
(,,゚Д゚)「そっちか」
(*゚ー゚)「普通こういったものはパンと相場が決まっているのですよ 食パンなどは持っての他です」
(,,゚Д゚)「メモメモ」
(*゚ー゚)「入れるならばバターロールでしょうか」
(,,゚Д゚)「ううむ 勉強になる」
+13
(*゚ー゚)「歯が折れる心配はしないのですね」
(,,゚Д゚)「お前の玉鋼の歯と 記憶合金の牙ならば この程度どうとないと信じている」
(*゚ー゚)「殴りたくなりました」
(,,゚Д゚)「本望だ」
(*゚ー゚)「引きました」
(,,゚Д゚)「ならばこちらから近寄るまでよ」
(*゚ー゚)「そのあまりの情熱と熱意に惚れそうです」
(,,゚Д゚)「それは困る」
(*゚ー゚)「ええ」
+14
(,,゚Д゚)「俺は俺の事が嫌いなお前が好きなのだ」
(*゚ー゚)「そんな」
(,,゚Д゚)「だから 俺に惚れたお前などもう見向きもしない」
(*゚ー゚)「理不尽な」
(,,゚Д゚)「そういう事だ だから俺の事は侮蔑と軽蔑の目で見続けろ」
(*゚ー゚)「私のこの愛情は 何処へ向かえばいいのです」
(,,゚Д゚)「愛しさあまって憎さ百倍と言う 憎悪へ変換すればいいだけの話だ」
(*゚ー゚)「そんな簡単に 人の心を変えられるとお思いですか」
(,,゚Д゚)「俺を嫌う理由などいくらでもあるだろう この傍若無人さとか」
(*゚ー゚)「自覚していたのですね ですが これで嫌えそうです」
(,,゚Д゚)「そうか それはよかった」
(*゚ー゚)「私は私の愛を受け止めてくれない貴方を嫌います」
(,,゚Д゚)「少し首を傾げる箇所があるが よしとしよう」
+15
そうして 中庭の二人は互いを罵倒しつつも手に手を繋いた
そのまま中睦まじく 揃って病室に帰って行く
( ^ω^)「リア充共め」
不穏な呟きは人知れず
( ^ω^)「僕にいい出会いがないのは こんな所にいるからだお」
( ^ω^)「しかし 過剰に人に触れ合いたくないからここを選んだのも僕」
( ^ω^)「誰に愚痴る訳でもない 独り言くらい許してくれお」
内藤の謝罪も愚痴も 虚空に溶けて消える
誰も彼も聞く者はいない
( ^ω^)「そろそろ見回り再開するかお」
( ^ω^)「仕事だお」
+16
そうして内藤は遊技場に足を踏み入れた
遊戯する場とは書いても 軟らかい球が転がってるだけの簡素な部屋である
窓もなく 時計もなく 扉は二つ 出入り口とトイレの扉のみ
その中で 天井から吊るされたミラーボールだけが異質であった
このミラーボールは 部屋を暗くして それに衝撃を与えると 光り出す仕組みになっている
それで入院患者達の鬱憤や好奇心を刺激して運動させようというものだったのだが
人気のないこの有様を見れば 失敗の二文字以外にない
( ^ω^)「おや おや 人がいるお」
見れば その七百二十面体と言う それなりに球に近いミラーボールの下に人がいる
様々な光が飛び交う中で飛び跳ねながら 何もない空間に虫取り網を振り回している
聞くだけ無駄だと知りつつも 聞かぬ訳にはいかない
+17
( ^ω^)「やあ流石弟 遊戯に励んでいるね 」
(´<_` )「おやセンセ 珍しい それと俺は兄のほうです」
( ^ω^)「流石兄 虫取り網なんか振り回して 何か虫でもいたのかお?」
(´<_` )「いませんよ 強いて言うなら 目の前にでかいのが」
( ^ω^)「僕はロリータコンプレックスではないから安心しろお 君達の妹には見向きもせん」
(´<_` )「なら安心です 光を捕まえようとしてたんですよ」
( ^ω^)「ほう 光を」
(´<_` )「ええ 色取り取りの光の玉が壁を這うのを見ていたら 無性に捕まえたくなって」
( ^ω^)「それで 光は捕まえられたのかお?」
(´<_` )「光子が捉えられるワケないじゃないですか」
くっと笑いながら 弟者は内藤に虫取り網を振り下ろした
本気ではないのを知っているので それを軽く片手で制す
_, 、_
( ^ω^)「そうかお」
+18
そのまま彼の手から虫取り網をもぎ取る
ああ とか情けない声を出したが 自業自得と覚えさせる為に没収する
心苦しくはない むしろ快い
他人を虐げるのは どうしてこうも 心地良い
(´<_` )「センセ酷いっす」
今少しノイズが
( ^ω^)「返して欲しくば 茂名さんを見たか 何処にいるか知ってる場合 その居場所を話すお」
(´<_` )「嫌ですよ 知ってるけど バイキングにそんな事教えてやりません」
( ^ω^)「ならばこれは僕のものだお」
(´<_`; )「そんな酷い 返してくれたら教えますよ 弟の居場所も」
( ^ω^)「先に弟の居場所を話せ それから茂名 そしたら返そう」
弟者は暫く渋っていたが 床に数字の八の字を書きながら話し始めた
+19
(´<_` )「弟なら個人用の風呂場にいますよ 何をしてるかは( ><)」
( ^ω^)「そうかそうか」
(´<_` )「茂名さんは見た事ありません」
( ^ω^)「ありがとう これは返すお」
そう言って 内藤は虫取り網の網の部分で弟者の頭を捕まえた
その瞬間 見るに堪えないくらいに弟者の顔が歪む
聞くに堪えない奇声をあげて 網を頭に被せたままそれは走り去った
走るそれが人死にを起こさない事を祈りつつ 内藤は遊戯場を跡にする
( ^ω^)「風呂場かお 行ってみるかお」
指紋採取された時の事をシュミレートしながら 歩を進める
狂人の行いは その担当者に責任がいくものだから 捨てたいに決まってる
+20
がらりと風呂場の扉を開け放てば そこには釣り人がいた
引っ繰り返した風呂桶に腰掛け 洗浄用の水を張った浴槽に釣り糸を垂らしている
( ´_ゝ`)「おやセンセ こんな場所に こんな時間に何用ですか」
( ^ω^)「いやちょっとね 魚は釣れるかお?」
( ´_ゝ`)「こんな場所で釣れるワケないじゃないですか ここは風呂場ですよ」
びゅんと空気を裂いて 釣り針が内藤に迫る
流石に危険と感じたのか 彼はそれを咄嗟にしゃがんで避けた
( ´_ゝ`)「強いて言うなら でかい哺乳類がかかりましたね 針は空を掴みましたが」
( ^ω^)「ち この性悪兄弟めが」
( ´_ゝ`)「おや 兄と何かあったのですか?」
またひゅんと空気を切り裂いて 釣り針が兄者の手中に収まる
内藤はまた釣り針が来ないか警戒しながら ゆっくり立ち上がった
+21
( ^ω^)「いや何 遊戯場で光を捕まえようとしていてね」
( ´_ゝ`)「相も変わらず うちの兄はメルヘンですね 気持ち悪いくらいに」
( ^ω^)「君も似たようなものだお」
( ´_ゝ`)「虫取り網と釣竿を一緒にしないで下さいよ」
また釣り針が飛んで来そうなので 内藤は早めに用を足す事にした
( ^ω^)「ところで流石兄」
( ´_ゝ`)「弟です」
( ^ω^)「そう 流石弟 茂名さんを見なかったかい?」
( ´_ゝ`)「いいや 見てないよ」
( ^ω^)「そうか ありがとうだお」
僕の礼の言葉を側面に受けた兄者は また釣り糸を浴槽に垂らした
何がしたいとか 何が目的とか 何の意味があるとか
常人も狂人も 問い掛け続ければ 同じ答えに行き着くのではないかと最近思う
+22
|゚ノ ^∀^)「あラ 何故風呂場かラ」
( ^ω^)「いやあかくかくしかじか」
|゚ノ ^∀^)「そうなんですカ てっきり女子の生理用品を失敬しに来た経血ソムリエかと」
( ^ω^)「もしそうなら 僕は女子トイレに侵入してるお」
|゚ノ ^∀^)「ほほホ ですわネ」
|゚ノ ^∀^)「中ニ 誰かいらっしゃるのですカ?」
( ^ω^)「兄…弟者がいるお 釣りをしているようだから そっとしておいてくれお」
|゚ノ ^∀^)「あらあらそうなノ それでは水抜きはまだ出来ませんネ」
( ^ω^)「ですおね」
|゚ノ ^∀^)「大きな獲物がかかればいいのですガ」
( ^ω^)「ですおネ」
|゚ノ ^∀^)「ほほホ」
( ^ω^)「あ 茂名さん知りませんかオ?」
|゚ノ ^∀^)「知りませんワ」
+23
結局 探し人が見つからないまま昼になり 昼食を取ってしまった
食物で膨れた腹を抱え 夜に備えて少し寝転がる為に休憩室へ
川 ゚ -゚)「おめでたですか内藤先生」
( ^ω^)「どうしてそうなるのか」
ごろりと転がってそちらを向くと そろそろ退院させようかと言う話が出ている淳がいた
素人がメタボリックと形容出来るまでに膨張した腹を 実に羨ましそうに見ている
川 ゚ -゚)「おめでたなんですね内藤先生」
( ^ω^)「僕は男だお 子は宿せないお」
川 ゚ -゚)「男の子ですか? 女の子ですか?」
( ^ω^)「性別はないお 原料が小麦粉で植物だから 強いて言うなら両方だお」
川 ゚ -゚)「男女の双子なんですね おめでとうございます おめでとうございます」
( ^ω^)「はいはい どういたしましてだお」
+24
そして 愛おしそうに未消化物で膨れた腹を撫でくる
途中で羨望が嫉妬に変化したのか 爪を立ててきたので手を払った
川 ゚ -゚)「羨ましいです内藤先生」
( ^ω^)「栄養失調になるか 食い物を沢山食べれば膨張するお 膨れる場所は違うが」
川 ゚ -゚)「一度それをしてみたのですが 大きくはなりませんでした」
( ^ω^)「ああ 君は少食だから」
川 ゚ -゚)「きっと内藤先生似の可愛い子が生まれますよ」
( ^ω^)。o O( ξ*^ω^)ξ<オトーサン! )
( ^ω^)「ごめんだお」
川 ゚ -゚)「自分の子供を可愛いとは思えないのですか」
( ^ω^)「そうですおね」
川 ゚ -゚)「なんと」
+25
淳がこうも膨れた腹に固執するのは 己が子供の出来ない体だから故と推測している
閉経ではなく 酔った夫に妊娠十月十日の腹を蹴られ 流産してしまったのだ
既に体も健康な赤子と言えるまでに育っていたが 父親の蹴りがいい場所に命中してしまい
子宮からひり出されて来たのは 脳漿をぶち撒けたダッコちゃん人形のグロ画像であった
川 ゚ -゚)「お腹にいる子が可哀想ですよ」
( ^ω^)「消化されて ガスも屁となり出て この膨らみも今日中で消えるお」
川 ゚ -゚)「自分の子供を喰ろうてしまうのですか」
( ^ω^)「うん と言うかこれ食べ物で膨れてるだけだから」
産道を傷つけないように割れた頭蓋骨を取り出すのは 中々に難しいものであった
器具で広げて ピンセットでつまんで取り出したほうが早いのではないかと思う作業であった
思えば 内藤は淳と共にここへやってきたと言っても過言ではない
川 ゚ -゚)「鬼子母神ですね 恐ろしい」
+26
( ^ω^)「うんうん そうだおね」
川 ゚ -゚)「恐ろしい ああ恐ろしい」
そうして淳は 恐ろしいを様々なイントネーションで連呼しながら 何処かへ走り去ってしまった
きっと トイレ辺りにでも駆け込んで 食ったものを吐き出し 悪阻の振りでもしているんだろう
大丈夫だ 日常生活に支障は及ぼすだろうが これくらいなら淳の退院はもうすぐだろう
( ^ω^)「厄介事が一つ消えるお」
うーんと伸びをして 座布団を折り畳んで枕代わりにし 畳みにごろりと寝転がる
まずは淳の退院について危惧する事が 夢となって現れた
百貫デブに向かっておめでたを言い はち切れんばかりに蒲鉾をつめられる淳
泣いて許しを乞うが許されず そのまま魚の加工品に頬を内側から圧迫され破裂して死んだ
次の夢の中で 僕が次世代の神に推薦され それを丁重に断っていると自分の鼾で起きた
( ^ω^)「んがっ」
+27
起きた時は 既に三時のおやつ時であった
( ^ω^)「はっ もうこんな時間」
( ^ω^)「ややや 僕とした事が」
( ^ω^)「くっ まあいいお」
BMI指数がやや肥満を指しているので
今日はポテトチップスにしよう
購買からポテトチップス(コンソメ味)と紙パックの牛乳(低脂肪)を買い 会計に急ぐ
店員はこともあろうに高校時代の同級生であった
( ゚д゚ )「こん…あれ お前」
( ^ω^)「こん?」
しかし思い出話に咲く花もなく 花にやる水もなく 面倒なので知らない振りをする
(*゚д゚ )「やっぱりなあ! お前ブーンだろ!」
+28
( ^ω^)「ちっ」
だがそう簡単にはいってくれなかった
遠い昔に呼ばれていたような気がする呼び名が 何故か内藤の胸を抉った
( ゚д゚ )「ラピュタで一番記憶に残ってる歌みたいなのがあるんだよ」
( ^ω^)「らんらん らんらら らんらんらん ここしか思い出せない」
( ゚д゚ )「そうそれ! 俺もそこしか思い出せん」
何故こんな話題になったのか 内藤自身もその過程が思い出せなかった
聞こえてくる音を右から左へ受け流しつつ 一定の間隔で相槌を打ってたらこうなった
途中で恋人の話や貯蓄の話に移りそうになった時は 本能的に防御した
話題をそちらへ行かないよう 細心の注意を払って言葉を選んだ気がする
( ゚д゚ )「それにしても医者かあ 羨ましいよ」
( ^ω^)「へぇ そうかお?」
+29
( ゚д゚ )「羨ましいよ 俺なんて国道沿いのコンビニからこっちに飛ばされたんだぜ」
( ^ω^)「お気の毒に」
( ゚д゚ )「お前 俺の代わりにここ立ってくれよ」
( ^ω^)「いや 遠慮しとくお」
( ゚д゚ )「いい加減 足が棒になりそうだ」
( ^ω^)「で? っていう 床にでも座ればいいお」
それから何度か無益な言葉を交わし ようやく会計を済ませる事が出来た
人通りの少ない椅子に移動し 紙パックをばかっと開ける
( ^ω^)「飲めん」
ストローを貰うのを忘れてきた これは売る側の怠慢だ
ポテチの袋をばりぃと勢いよく開け 飛び散った中身を食いながら集める
半分程腹に納まった所で にゅうと腕が伸びてきた
+30
(-_-)「医者が ジャンクフードなんか食べていいんですか」
( ^ω^)「君は」
屋内で傘を差すような者を 素通りではなく遠回りで避けるに越した事はない
それでも この程度の事で一々驚愕していてはやっていられない
それでも 内藤はこの目の前の人物から逃げ出したくなった
( ^ω^)「何か問題でもあるのかお?」
(-_-)「お手本になりませんよ」
( ^ω^)「僕はあくまでも医者であって お手本じゃないお」
寸分の差で目の前の欠片を奪い取られたのが気に障ったので
腕を広げて床を滑り 菓子を一箇所に集めて 独り占めする
後ろからずるいとか聞こえたが これは元々内藤のだ
( ^ω^)「手本はその辺の健康体を手本にするといいお」
+31
( ^ω^)「それより 床に落ちたものを食べている事を 指摘はしないのだね」
(-_-)「三分ルールってのがあるでしょう 科学的にも解明された」
あまりにも恨めしい声だったので 気の毒になり一欠けら分けてやる
( ^ω^)「残念ながら それは三か、五秒のルールだね」
(-_-)「マジか」
それでも拾った菓子を手放すのは惜しかったのか 息を吹きかけてから口に入れる
何度かもぐもぐと咀嚼して 満足そうに飲み込んだ
(*-_-)「こんなものを食べたのは久しぶりですよ」
( ^ω^)「そうか それはよかったお 僕は食われて悔しいが」
そう言いつつ 拾い食いする手を止めている
古森は そんな内藤を見て不気味に笑った
+32
手に持った傘を 肩の上でくるりと回転させる
この患者のあだ名は雨降り小僧 雨降り男ではない
気味悪いまでに小さい背丈と いつも差している傘を取ってそう呼ばれ始めた
呼び始めたのは 今となっては誰か判らない
(-_-)「そうだ 蓬莱先生」
そして 彼が嫌われている理由がある
(-_-)「人を探しているようだけど その人には会えませんよ」
( ^ω^)「いきなり何を言うんだお」
聞き耳を立てたのか何なのか そいつが気にする事を無駄だと嗤う
そして それが何らかの形で当たるのだから気味が悪い
(-_-)「会えるわけがないでしょう ねえ」
+33
じっとりと背筋に粘つく 嫌なものを遺して去って行く
それが雨降り小僧の由縁でもあった
( ^ω^)「皮膚が懐死すればいいのに」
嫌な気分を振り払おうと 塩分の摂取によって渇いた喉を潤そうと
内藤は階下に降りて 自動販売機の元へと向かう
そこでは固まった欝田に群がる流石達が見えた
どうやらあの時からずっと動かなかったらしい 姿勢が同じだ
( ^ω^)「しっ しっ」
いい加減哀れになったので 群がる野良猫共を追い払ってやる
コーラはぬるくなっていた きっと とてつもなく不味いだろう
よく見れば カップの中には糸屑や紙が浮かんでいる
自分の周囲を飛び交う蝿が混入させたのだろうか
ますます哀れに思えて 替えのコーラを与えてやった
+34
(´<_` )「ずるい 俺にも下さい」
( ´_ゝ`)「酷い センセが贔屓しよる」
( ^ω^)「喚くな蛆虫」
纏わり付く蚊には 虫除けスプレーではなく殺虫剤のほうが良いと思う
こうも取り憑かれていては 満足に動く事も出来ない
仕方なしにリンゴジュースを買い与えてやる所を 雨降り小僧にも見られた 畜生
( ´_ゝ`)「ウマー」
(´<_` )「ウマー」
(-_-)「ウマー でもペットボトルが欲しかった」
( ^ω^)「何に使うんだお」
(-_-)「尿を溜めて 部屋に入ってきた奴らにぶっかけてやるに決まってるでしょう」
( ^ω^)「お前と言う奴は」
(-_-)「それ以外何に使うと言うんです」
+35
( ^ω^)「今の言葉を聞いたら お袋さんが身を投げるお」
(-_-)「何処から何処に?」
( ^ω^)「地上からお天道さんに 君は頑張って屋上からそれを阻止しとけお」
(-_-)「何を言ってるんですか これ以上高い所に昇ったら 僕神様になってしまいますよ」
( ^ω^)「はん」
総じて このような奴は このような事を本気で言っているのだから質が悪い
会話が微妙に噛み合わないのも慣れたものだ
前向きにポジティヴに まともに取り掛かろうとするから駄目なのだ
ちょいと演算がずれた会話プログラムだと思えば これ程面白いものは他にない
( ^ω^)「それじゃあ 今の君は何々だお?」
(-_-)「これかなぁ」
+36
古森は 右手を緩く握って 顔の横まであげる
(-_-)「コーン」
( ^ω^)「…とうもろこし?」
(#-_-)「ちがわい!」
うっかり逆鱗に触れてしまったようだ
真っ直ぐに突き出された傘を 腹を引っ込めて避ける
(-_-)「こっちならわかるでしょ ケーン」
( ^ω^)「ああ 狐」
(*-_-)「そう そう 二尾の」
異常者と言う者は 自分の意見に同調してくれる者がいた場合
それを無条件に自分の敵か味方かと見做すようだ
+37
同調している→こいつはきっと僕の頭の中を読んだに違いない!
同調している→こいつはきっと僕と同じ志を持っているに違いない!
無茶苦茶である
まあ それは 精神病院に収容されていない一般人にも言えるだろう
そもそも知覚しうるこの世界は 自分の頭の認識と偏見で成り立っているのだから
こういった奴らの場合 先入観や偏見の所為で それが顕著に見えるのだ
多分
( ^ω^)「今度油揚げを添えなきゃだおね」
(-_-)「九つでいい」
( ´_ゝ`)「分けて」
(´<_` )「分けて」
(-_-)「や」
+38
この男の頭の中で展開されているのはどんなものなのか 興味が沸いて来る
( ^ω^)「それじゃあ君の母親は?」
(-_-)「荼吉尼天かな」
( ^ω^)「ふむ 成程」
日本では狐神信仰と結び付けられ、狐を眷族とする稲荷神となっている神である
商売繁盛にご利益があるとされてる神であり 古森の母は商売上手であった
荼吉尼天のそれをそうと知っているかどうかは知らないが 中々に的を射っている
最も 本人はそれとは違う理由で母をそうと見ているのかもしれないので 妄信はしない
( ^ω^)「じゃあ僕は?」
(-_-)「医者は医者だよ 人によっては犯罪者にも現人神にもなるけど」
返す言葉もないとはこの事だ
+39
( ^ω^)「流石兄は 何々だお?」
(´<_` )「流石家長男ですよ」
( ^ω^)「ああいや 二重の意味でそっちじゃなくて なんだ」
唸りながら頭を抱える
二人を見比べて 今なら問えるかもしれないと思った
( ^ω^)「なんでお前らは 互いの事を逆に呼ぶんだお?」
(´<_` )「逆?」
( ^ω^)「兄なのに 弟と言い張ったり 弟なのに 兄と言い張ったり」
(´<_` )「それは兄が死んだからですよ だから自分が兄になったんです」
予想はしていても まともな答えが返って来なかった
+40
見切りをつけて 今度は兄のほうを向く
( ´_ゝ`)「それは弟が死んだからですよ だから自分が弟になったんです」
( ^ω^)「おおう」
無茶苦茶であり 滅茶苦茶である
(-_-)「俺は空気 言わば内容量が多いのによく無視される窒素」
( ^ω^)「ええい ならばお互いを何と思っているつもりだお 死人は動かないお」
(´<_` )「ああ」
( ´_ゝ`)「それは」
( ´_ゝ`)ノ「「これ鏡でしょう」」ヽ(´<_` )
( ^ω^)「鏡か 鏡ね よくもまあ触れれるもんだお」
( ´_ゝ`)「鏡の向こうの自分が手を伸ばしてきたらそうでしょう」
(´<_` )「伸ばした手が鏡面に触れるのは当たり前でしょう」
+41
鏡の向こうの自分が手を伸ばすから自分も手を伸ばすのか
それはどんな感覚なのだろう 自己がないんだろうか
つくづく 異常者の考えは 健常者には理解出来ない
(-_-)「そうそう 津出が医者を探していたよ じゃあね」
( ^ω^)「構ってもらえなくて飽いたのかお?」
(-_-)「その通りさ あと (3/4)πr^3:3分の4πあーるの惨状にお気をつけ」
( ^ω^)「わかったお」
わからなかったが わかると言ったほうがいい
|゚ノ ^∀^)「本当にわかったのですかア?」
( ^ω^)「おやレモナさん」
+42
(´<_` )「さっきの 3分の間に4っつおっぱいがあると惨状になるって意味ですよん」
( ´_ゝ`)「うわそんな事を素面で言うなんて やだ卑猥」
(´<_` )「いやおま」
矛盾を抱えてぎゃいぎゃい騒ぐ蝉を無視して 豊満な胸を揺らしながら看護婦が近寄る
彼女(元彼)は ナースと呼ばれたいが為に 白衣の天使と言われたいが為に切った
それがいきなり看護士として呼ばれる事になった時は それが彼女の耳に届いた時は
地獄の鬼も如何程なれと言わんばかりの恐ろしさを見せ付けられたものだ
以来 この病院で 患者以外に彼女に頭を上げられる奴などいない
|゚ノ ^∀^)「定理としては二股かけて鉢合わせたら修羅場モードって事ですネ」
( ^ω^)「えと つまりは?」
|゚ノ ^∀^)「さっきのハ 笑い所だったのですヨ」
内藤は 生半可な返事で応えた
+43
そして何故か振り下ろされる釣竿と虫取り網を避ける
後で没収しなくては そろそろ命が危ない
( ´_ゝ`)「意味がわからなくても 笑わなきゃいけないんですよ センセ」
(´<_` )「それが他人に合わせる日本人 そして英国の紳士淑女の嗜みですよ センセ」
( ^ω^)「ふぅん そうかお」
(´<_` )「あ 武器を変えたのは気分です」
( ´_ゝ`)「流石だよな俺ら」
( ^ω^)「逆 逆」
( ´_ゝ`)「えー 俺は弟だから 間違っちゃいませんよ」
(´<_` )「うん 俺が兄だから 間違っちゃいませんよん」
( ^ω^)「ああ 君らの場合そうでもないのか いやしかし定義としてのね」
その後 アスキーアートとしての定義の持論を小一時間程展開する
うんざりした顔で罵り合いながら去って行く流石兄弟を尻目に 内藤は一服する事にした
錆付いたベンチが 苦渋の声をあげながら 内藤の体重を受け止める
+44
( ^ω^)y-「チョコレート」
そのチョコは 既に時間の経過で白くなっていた
( ^ω^)「煙草ではないから 健康的だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ですね 医者の不養生ではありません」
見上げれば 金の糸が鼻先をくすぐった
取りあえず くしゃみを彼女に向かってぶち撒けてから応える
顔を逸らす暇はなかったのだ
( ^ω^)「おや ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「先生が 菓子を取り出す頃からいらしておりました」
( ^ω^)「そうか そうか ふむ」
ξ゚⊿゚)ξ「そのチョコレィト 白いものが付着してますね」
( ^ω^)「どうかしたかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「カビているんじゃあ ありませんか?」
+45
( ^ω^)「これを黴と言うか 浅学め」
ξ゚⊿゚)ξ「すみません」
( ^ω^)「この白い部分はブルームと言ってね 別に問題あるものではないのだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんですか」
( ^ω^)「うむ」
津出は 徐に内藤の隣へ腰掛けた
( ^ω^)「過度に冷却したもの 融解・再結晶化したもの 長期間保存したものなどに」
内藤は 津出の眼前にそれを突きつけた
( ^ω^)「こうやって付くものだお 風味や味は 多少落ちるがね」
ξ゚⊿゚)ξ「すみませんが 浅学なのでわかりません」
+46
( ^ω^)「理解力の乏しい君にも解かるように言うとだね」
内藤は ペン回しの要領で チョコをくるっと一回転させる
( ^ω^)「物凄く冷たくし過ぎたり 溶かして もう一度固めたり」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅむ」
( ^ω^)「時間が経ち過ぎたものなどに こう言えばわかるかね?」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をする津出を 見て気分を良くする内藤
その気分のまま 内藤は更なる優越感を得る為 また語り出した
( *^ω^)「ちなみに この白いブルームと言うものにも二つの種類があってね
チョコの油脂成分のうち 融点の低い部分が融解して表面に浮出し
再結晶化したものであるブルームは ファット・ブルームと呼ばれるのだよ」
+47
( ^ω^)「そして 冷却時などにチョコの表面に水分が付着した際にチョコの砂糖が水分に溶解し
その水分が蒸発した時に砂糖が析出したものであるものはシュガー・ブルームと言う」
ξ゚⊿゚)ξ「析出?」
( ^ω^)「この場合は 液体の中から固体が分かれて生成してくる事だね」
ξ゚⊿゚)ξ「先生は 知識が広いのですね」
( ^ω^)「知識をひけらかして優越感に浸るのは ここでしか出来ないからね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんですか?」
( ^ω^)「大人しく聞いてくれるのは 君しかいない」
内藤は ライターを取り出す
津出は それに少し顔を蒼くする
( ^ω^)「ああ そう言えば 君は火が苦手だったか」
ξil゚⊿゚)ξ「ええ すみません」
+48
( ^ω^)「ちょっとあっち向いてなさい 僕の姿が視界に入らぬように」
しっしっと猫を払うような仕草で 津出を追い払う内藤
自分の体を丸めて 火を隠そうとはしない
津出は それに文句も言わず 素直に従った
ξ( ξ「向きました」
それを見た内藤は チョコを持ち替えて ファット・ブルームの多い先端に火を点けた
( ^ω^)「もう こちらを向いてもいいお」
津出は それに素直に従った
熱により融解し 空気中に散り出した油脂成分が風に乗る
ξ゚⊿゚)ξ「甘い香り」
津出の髪が 一瞬綿飴に見える
+49
内藤は 軽く頭(かぶり)を振って それを追いやる
津出のふわふわした髪は チョコの甘い匂いを吸い込みそうだ
( ^ω^)「チョコだからだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね そうですね」
( ^ω^)「ビターチョコだと 甘苦い匂いになるのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「匂いだなんて 香りと言って下さい」
( ^ω^)「香りと匂いの定義なんて人それぞれだお 強要するのはよくないお」
ξ゚⊿゚)ξ「情緒の問題ですよ」
( ^ω^)「ふむ 情緒?」
内藤は 火の点いたチョコを持っていないほうの手で 自分の顎をぽりりと掻いた
( ^ω^)「すまんね そういった事柄に関しては 人一倍疎くて」
+50
ξ゚⊿゚)ξ「熱くないのですか?」
( ^ω^)「熱いよ」
ξ゚⊿゚)ξ「熱いのは平気なのですか?」
( ^ω^)「どちらかと言うと苦手だね」
ξ゚⊿゚)ξ「ではどうして火を」
( ^ω^)「煙草を吸ってる気分を味わいたいのさ」
内藤は 中指と薬指で溶けかけたチョコを口元に持ってゆく
煙草を吸う真似をして 深く息を吸う
( ^ω^)「ゴェェ! ガハッ! ゴェェェ!」 三 ( ∵)
思い切り煙を吸って むせてしまった
細かく震える背中を 津出が優しく両手でさする
+51
( ^ω^)「おうふ すまんね」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえいいえ 大丈夫ですか?」
( ^ω^)「こういう時の大丈夫とは その時の容態を指しているのか その後の容態を指すのか
前者なら大丈夫ではなかったが 後者なら今は大丈夫だお 心配する程でもないお」
ξ゚⊿゚)ξ「それはよかった 煙草はお嫌いなのですか?」
( ^ω^)「ああ 嫌いだよ あんなものを好き好んで吸う奴は あまり理解出来ないね」
ξ゚⊿゚)ξ「理解出来ないのですか」
( ^ω^)「ああ 格好つけや 親や社会への反抗心 口下手の誤魔化しなら別だがね」
ξ゚⊿゚)ξ「では何故煙草を吸う真似を?」
( ^ω^)「格好を つけたかったのかもしれんね」
ξ゚⊿゚)ξ「でも先生 今の先生は 格好良くないですよ」
( ^ω^)「そうかお」
+52
内藤は 火のついたままのチョコを 躊躇いなく口内に放り込んだ
唾液よりも先に 二酸化炭素が充満した密閉空間で火の勢いが弱まる
それでも 熱いものは熱いのだ 火がついているのだから
( ^ω^)「ぐむ」
味覚を感じる感覚器官が じゅうと焼かれた音がする
上手く舌の先端が焼けてくれていれば 甘味を感じる事も少なくなるのだが
ξ゚⊿゚)ξ「何をしておられるのです」
( ^ω^)「もう甘いものは懲り懲りだ」
ξ゚⊿゚)ξ「だからって」
( ^ω^)「ところで君」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでしょう」
( ^ω^)「茂名さんを探しているのだが 見かけなかったかね?」
+53
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ 私は 茂名さんを見た事はありません」
+54
.
.
・
・
( ・∀・)「内藤か 内藤さんね」
( ・∀・)「いい先生だね 腕はいいし 回転も速い 知識も富んでる」
( ・∀・)「けど けどね」
( ・∀・)「今日も今日とて 存在しない患者を探してるような」
( ・∀・)「気狂いじゃあ ね」
+55
__ // _,-―'''゙ ̄ ゙̄''''ー-、_
`ヽ>  ̄ /´ `ヽ、 ←―-、
∀in^) / `i、 ノ
y' / / ゙i、
^、_ノ / i
| | i
l | | とちょっと変な
! | 人達のようです
+56
あとがき
仕込みって程でもないけど、健常者に向かって内藤が呼びかけ。
内藤は 真っ白な建物を見上げた
摩天楼から外れた場所に 開発が中断された更地に ぽつりと立つ建物を
( ^ω^)「ああ 憂鬱だお」
( ^ω^)「毎度毎度 見飽きたお」
( ^ω^)「それでも この職を選んだのは 他ならぬ僕なのだから」
( ^ω^)「仕方ない」
内藤は手動ドアを開けると 建物の中に入って行った
+1
__ _,-―'''゙ ̄ ゙̄''''ー-、_
`ヽ> /´ `ヽ、
in^) / `i、
y' / / ゙i、
^、_ノ / i
| | r‐、 i
l | r‐-、 ' | とちょっと変な
! | ′ 人達のようです
+2
ζ(゚ー゚*ζ「おはよう こんにちわ」
( ^ω^)「おはよう 今は朝だからおはようだお」
ζ(゚ー゚*ζ「早朝ではない十時だと おはようを言う方もいれば こんにちわと言う方もいますの」
( ^ω^)「成程 どちらにも対応できるようにと」
ζ(゚ー゚*ζ「その通りです」
( ^ω^)「出来れば どちらかに絞ってほしいものだがね 僕のように言う人も出るぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「少々考えておきますわ」
津出井は 内藤にカルテを渡す
ζ(゚ー゚*ζ「さっさと着替えて来て下さいね」
( ^ω^)「何かあったのかお? 人死にとか」
ζ(゚ー゚*ζ「ありませんわ 内藤先生ではないと患者の相手が務まらないと
他の先生が嘆いて 私に泣きついただけの話でございますよ」
( ^ω^)「そうか」
+3
内藤は 意味もなく腕時計に目を落とす
( ^ω^)「それじゃあ 早速向かうとするお」
ζ(゚ー゚*ζ「ええ それでは御大事に」
( ^ω^)「今日も何事もなければよいが」
そうして内藤は 当の病室に向かった
目的の場所は三階なので 階段をこつこつと上る気もない内藤は エレベーターに向かった
( ^ω^)「おや 誰か使っている」
このエレベーターは職員用なので 自分以外の職員か 規則を守れない患者が使っている事になる
ああ ついさっきトイレに消えたデレも消去して考えねば
見れば エレベーターは昇っている途中である
階段を使ったほうが早いと計算した内藤は 早々にエレベーターの前から立ち去った
+4
( ^ω^)「ふう ふう 堪えるお」
手すりを使って かかる力を分散させながら上った内藤
軽く息を切らして病室に入ってみれば そこは蛻の殻である
変質者のような自分の息遣いに身の危険を案じ 隠れたのかと思ったが そうでもないようだ
着替えが入っているタンスの中も ベッドの下も カーテンの中も探したがいない
一応 鉄格子の向こうの窓の下に苦心して目をやってみたが 赤い色はなかった
( ^ω^)「やれやれ 朝っぱらから人探しとは」
+5
その後 当の本人がよく行く場所を調べまわってみたが 足取りは掴めなかった
歩き回って 白衣の下に汗を掻いた内藤は 水分補給をしようと自動販売機に近付く
( ^ω^)「また麦茶の無料提供機が空だったお これだから夏は困る」
熱い麦茶を飲む気はない内藤は 胸ポケットから小銭入れを取り出した
その中から百円玉と十円玉をそれぞれ一枚ずつ取り出し 自動販売機に投入する
カップの十六茶を押すより先に 後ろから伸びてきた手にコーラを押された
('A`)「よっしゃ ペプシもらい」
( ^ω^)「……」
(;'A`)「な なんだよ そんな目で睨むなよ」
金を持たない鬱田からは コーラの代金の搾取は出来ない
内藤は溜め息を一つ吐いて 小銭入れから小銭を取り出した
+6
('A`)「別にいいだろこれくらい 医者って金持ちなんだろ?」
( ^ω^)「大きな勘違いだお それは 甚だしいお」
('A`)「え お前貧しいん?」
( ^ω^)「当たり前だお 医者になるには金がかかるし 何より なったばかりのこの若輩に
医者について間違った思い込みを持ってる輩が想像するような貯蓄はないお」
('A`)「そうか そうなんか」
鬱田は 残念そうに言って動きを止めた
まだ中身のあるカップを両手に持ったまま 猫背の姿勢で静止した
緊張病を持つ彼にとって これは日常なのである
内藤も最初の内は戸惑ったが 今では慣れたものだ
彼には悪いが 今は構って遊んでやる暇はない
カップの中の茶を飲み干すと 空をゴミ箱に放り投げて 内藤は歩き出した
鬱田が動き出す頃には きっとコーラの炭酸は抜け切っているだろう
+7
( ^ω^)「飲んだら トイレに行きたくなったお」
早々に障害が立ちはだかる 尿意と言う名の
一度研修生時代に膀胱炎を患った彼は その恐ろしさを知っている
その辛さを 身を持って知っているのだ
( ^ω^)「うートイレトイレ」
内股になり小走りでトイレへ向かうと 見知った患者の姿が見えた
これは不味いと思いつつも この付近にトイレはここしかないので引き返せない
(*゚∀゚)「お? 内藤じゃねーか」
内藤は この患者の話が早く終わる事を切に願った
+8
(*゚∀゚)「なんだよ女の子走りなんかしやがって 目覚めたのか?」
( ^ω^)「違うお トイレが近いんだお」
(;*゚∀゚)「んだよ 立ち止まらないで入りゃいーじゃねーか」
内藤は心の上辺だけで神に感謝した
キリストも仏も信じてないが こういうのが日本人なのだ
( ^ω^)「すっきり」
出し終えて 爽快感を下半身にトイレから出る
男子トイレと女子トイレの中間付近に 彼(彼女?)はまだ居た
廊下の一角に視線を落として ぼうっとしている
何故このような三人称にしたかと言うと 彼女(彼?)の詳しい性別を僕は知らない
どうも担当の医師と親しい看護師だけが知っているようだ
+9
背丈は高め 肩幅は広いががっしりとはしていない 腰は細いが 線が細くは見えない
顔が中性的なのも相俟って 物見事に性別の判断を付け難くしていた
まあ 今の内藤には関係のない事である
( ^ω^)「関口 茂名を見なかったかお?」
(*゚∀゚)「うんにゃ 今日は見えない」
( ^ω^)「そうか ありがとうだお」
(*゚∀゚)「またなー」
別れの言葉を言いつつも 手を振らない関口にも慣れた
突拍子もなく壁を全力で殴り始める関口にも慣れた
他の茂名と親しい患者を探して 内藤は歩き続ける
歩き続けたが 今度は誰にも会う事がなかった
+10
やれやれと呟きながら中庭へ目をやると 男女の諍いが見えた
やれやれと思いつつも 少しの何かを期待して目をやり続ける
(*゚ー゚)「何々でしょう お話とは」
(,,゚Д゚)「うむ 俺が渡したプレゼントの話なのだが」
(*゚ー゚)「私は貴方から 何かを貰った覚えはありませんが」
(,,゚Д゚)「なんだと 俺の事はどうでもいいと言うのか」
(*゚ー゚)「そんな事は言っておりません 強いて言うなら 嫌がらせなら貰いましたが」
(,,゚Д゚)「それは貰ったのではなく 受けたと言うのだ」
(*゚ー゚)「細かい男は嫌われますよ 繊細な男なら話は別ですが」
(,,゚Д゚)「嫌われてるほうがいい」
(*゚ー゚)「まあ なんて憎らしい」
(,,゚Д゚)「それでいい それでよし」
+11
(*゚ー゚)「して 話とは?」
(,,゚Д゚)「俺が昨日渡した指輪の話だ」
(*゚ー゚)「そんな拘束具のようなもの 受け取った覚えはありませんが」
(,,゚Д゚)「直接渡すのが恥ずかしいから 夕食の餃子の中に入れておいたんだ」
(*゚ー゚)「なんと」
(*゚ー゚)「私はあの臭いが苦手なので お隣のモナーさんにあげてしまいました」
(,,゚Д゚)「なんと」
(,,゚Д゚)「しくった ああこれはしくじった」
(*゚ー゚)「と言うよりも 餃子の中に指輪とは正気ですか」
(,,゚Д゚)「ああ正気だ だが常識はない」
(*゚ー゚)「ここに礼儀作法の本が御座います お貸ししてあげましょう」
(,,゚Д゚)「この本のタイトル いくら角度を変えて読んでも『楽に死ねる方法百選』にしか読めないのだが」
+12
(*゚ー゚)「しかし指輪とはまた遠法戦で来ましたね しかし その作戦には引っ掛かりませんよ」
(,,゚Д゚)「待て待て 話を聞いてくれ」
(*゚ー゚)「私に拾わせて 貴方は私が指輪を盗んだ盗人なのだと言いふらす気なのでしょう?」
(,,゚Д゚)「いいや 俺の好意を伝える為の行為だ」
(*゚ー゚)「二点」
(,,゚Д゚)「厳しい」
(*゚ー゚)「話を戻して なんという事でしょう 信じられません」
(,,゚Д゚)「すまん 小学生男子のような事をしてしまって」
(*゚ー゚)「餃子の中に指輪を入れるだなんて」
(,,゚Д゚)「そっちか」
(*゚ー゚)「普通こういったものはパンと相場が決まっているのですよ 食パンなどは持っての他です」
(,,゚Д゚)「メモメモ」
(*゚ー゚)「入れるならばバターロールでしょうか」
(,,゚Д゚)「ううむ 勉強になる」
+13
(*゚ー゚)「歯が折れる心配はしないのですね」
(,,゚Д゚)「お前の玉鋼の歯と 記憶合金の牙ならば この程度どうとないと信じている」
(*゚ー゚)「殴りたくなりました」
(,,゚Д゚)「本望だ」
(*゚ー゚)「引きました」
(,,゚Д゚)「ならばこちらから近寄るまでよ」
(*゚ー゚)「そのあまりの情熱と熱意に惚れそうです」
(,,゚Д゚)「それは困る」
(*゚ー゚)「ええ」
+14
(,,゚Д゚)「俺は俺の事が嫌いなお前が好きなのだ」
(*゚ー゚)「そんな」
(,,゚Д゚)「だから 俺に惚れたお前などもう見向きもしない」
(*゚ー゚)「理不尽な」
(,,゚Д゚)「そういう事だ だから俺の事は侮蔑と軽蔑の目で見続けろ」
(*゚ー゚)「私のこの愛情は 何処へ向かえばいいのです」
(,,゚Д゚)「愛しさあまって憎さ百倍と言う 憎悪へ変換すればいいだけの話だ」
(*゚ー゚)「そんな簡単に 人の心を変えられるとお思いですか」
(,,゚Д゚)「俺を嫌う理由などいくらでもあるだろう この傍若無人さとか」
(*゚ー゚)「自覚していたのですね ですが これで嫌えそうです」
(,,゚Д゚)「そうか それはよかった」
(*゚ー゚)「私は私の愛を受け止めてくれない貴方を嫌います」
(,,゚Д゚)「少し首を傾げる箇所があるが よしとしよう」
+15
そうして 中庭の二人は互いを罵倒しつつも手に手を繋いた
そのまま中睦まじく 揃って病室に帰って行く
( ^ω^)「リア充共め」
不穏な呟きは人知れず
( ^ω^)「僕にいい出会いがないのは こんな所にいるからだお」
( ^ω^)「しかし 過剰に人に触れ合いたくないからここを選んだのも僕」
( ^ω^)「誰に愚痴る訳でもない 独り言くらい許してくれお」
内藤の謝罪も愚痴も 虚空に溶けて消える
誰も彼も聞く者はいない
( ^ω^)「そろそろ見回り再開するかお」
( ^ω^)「仕事だお」
+16
そうして内藤は遊技場に足を踏み入れた
遊戯する場とは書いても 軟らかい球が転がってるだけの簡素な部屋である
窓もなく 時計もなく 扉は二つ 出入り口とトイレの扉のみ
その中で 天井から吊るされたミラーボールだけが異質であった
このミラーボールは 部屋を暗くして それに衝撃を与えると 光り出す仕組みになっている
それで入院患者達の鬱憤や好奇心を刺激して運動させようというものだったのだが
人気のないこの有様を見れば 失敗の二文字以外にない
( ^ω^)「おや おや 人がいるお」
見れば その七百二十面体と言う それなりに球に近いミラーボールの下に人がいる
様々な光が飛び交う中で飛び跳ねながら 何もない空間に虫取り網を振り回している
聞くだけ無駄だと知りつつも 聞かぬ訳にはいかない
+17
( ^ω^)「やあ流石弟 遊戯に励んでいるね 」
(´<_` )「おやセンセ 珍しい それと俺は兄のほうです」
( ^ω^)「流石兄 虫取り網なんか振り回して 何か虫でもいたのかお?」
(´<_` )「いませんよ 強いて言うなら 目の前にでかいのが」
( ^ω^)「僕はロリータコンプレックスではないから安心しろお 君達の妹には見向きもせん」
(´<_` )「なら安心です 光を捕まえようとしてたんですよ」
( ^ω^)「ほう 光を」
(´<_` )「ええ 色取り取りの光の玉が壁を這うのを見ていたら 無性に捕まえたくなって」
( ^ω^)「それで 光は捕まえられたのかお?」
(´<_` )「光子が捉えられるワケないじゃないですか」
くっと笑いながら 弟者は内藤に虫取り網を振り下ろした
本気ではないのを知っているので それを軽く片手で制す
_, 、_
( ^ω^)「そうかお」
+18
そのまま彼の手から虫取り網をもぎ取る
ああ とか情けない声を出したが 自業自得と覚えさせる為に没収する
心苦しくはない むしろ快い
他人を虐げるのは どうしてこうも 心地良い
(´<_` )「センセ酷いっす」
今少しノイズが
( ^ω^)「返して欲しくば 茂名さんを見たか 何処にいるか知ってる場合 その居場所を話すお」
(´<_` )「嫌ですよ 知ってるけど バイキングにそんな事教えてやりません」
( ^ω^)「ならばこれは僕のものだお」
(´<_`; )「そんな酷い 返してくれたら教えますよ 弟の居場所も」
( ^ω^)「先に弟の居場所を話せ それから茂名 そしたら返そう」
弟者は暫く渋っていたが 床に数字の八の字を書きながら話し始めた
+19
(´<_` )「弟なら個人用の風呂場にいますよ 何をしてるかは( ><)」
( ^ω^)「そうかそうか」
(´<_` )「茂名さんは見た事ありません」
( ^ω^)「ありがとう これは返すお」
そう言って 内藤は虫取り網の網の部分で弟者の頭を捕まえた
その瞬間 見るに堪えないくらいに弟者の顔が歪む
聞くに堪えない奇声をあげて 網を頭に被せたままそれは走り去った
走るそれが人死にを起こさない事を祈りつつ 内藤は遊戯場を跡にする
( ^ω^)「風呂場かお 行ってみるかお」
指紋採取された時の事をシュミレートしながら 歩を進める
狂人の行いは その担当者に責任がいくものだから 捨てたいに決まってる
+20
がらりと風呂場の扉を開け放てば そこには釣り人がいた
引っ繰り返した風呂桶に腰掛け 洗浄用の水を張った浴槽に釣り糸を垂らしている
( ´_ゝ`)「おやセンセ こんな場所に こんな時間に何用ですか」
( ^ω^)「いやちょっとね 魚は釣れるかお?」
( ´_ゝ`)「こんな場所で釣れるワケないじゃないですか ここは風呂場ですよ」
びゅんと空気を裂いて 釣り針が内藤に迫る
流石に危険と感じたのか 彼はそれを咄嗟にしゃがんで避けた
( ´_ゝ`)「強いて言うなら でかい哺乳類がかかりましたね 針は空を掴みましたが」
( ^ω^)「ち この性悪兄弟めが」
( ´_ゝ`)「おや 兄と何かあったのですか?」
またひゅんと空気を切り裂いて 釣り針が兄者の手中に収まる
内藤はまた釣り針が来ないか警戒しながら ゆっくり立ち上がった
+21
( ^ω^)「いや何 遊戯場で光を捕まえようとしていてね」
( ´_ゝ`)「相も変わらず うちの兄はメルヘンですね 気持ち悪いくらいに」
( ^ω^)「君も似たようなものだお」
( ´_ゝ`)「虫取り網と釣竿を一緒にしないで下さいよ」
また釣り針が飛んで来そうなので 内藤は早めに用を足す事にした
( ^ω^)「ところで流石兄」
( ´_ゝ`)「弟です」
( ^ω^)「そう 流石弟 茂名さんを見なかったかい?」
( ´_ゝ`)「いいや 見てないよ」
( ^ω^)「そうか ありがとうだお」
僕の礼の言葉を側面に受けた兄者は また釣り糸を浴槽に垂らした
何がしたいとか 何が目的とか 何の意味があるとか
常人も狂人も 問い掛け続ければ 同じ答えに行き着くのではないかと最近思う
+22
|゚ノ ^∀^)「あラ 何故風呂場かラ」
( ^ω^)「いやあかくかくしかじか」
|゚ノ ^∀^)「そうなんですカ てっきり女子の生理用品を失敬しに来た経血ソムリエかと」
( ^ω^)「もしそうなら 僕は女子トイレに侵入してるお」
|゚ノ ^∀^)「ほほホ ですわネ」
|゚ノ ^∀^)「中ニ 誰かいらっしゃるのですカ?」
( ^ω^)「兄…弟者がいるお 釣りをしているようだから そっとしておいてくれお」
|゚ノ ^∀^)「あらあらそうなノ それでは水抜きはまだ出来ませんネ」
( ^ω^)「ですおね」
|゚ノ ^∀^)「大きな獲物がかかればいいのですガ」
( ^ω^)「ですおネ」
|゚ノ ^∀^)「ほほホ」
( ^ω^)「あ 茂名さん知りませんかオ?」
|゚ノ ^∀^)「知りませんワ」
+23
結局 探し人が見つからないまま昼になり 昼食を取ってしまった
食物で膨れた腹を抱え 夜に備えて少し寝転がる為に休憩室へ
川 ゚ -゚)「おめでたですか内藤先生」
( ^ω^)「どうしてそうなるのか」
ごろりと転がってそちらを向くと そろそろ退院させようかと言う話が出ている淳がいた
素人がメタボリックと形容出来るまでに膨張した腹を 実に羨ましそうに見ている
川 ゚ -゚)「おめでたなんですね内藤先生」
( ^ω^)「僕は男だお 子は宿せないお」
川 ゚ -゚)「男の子ですか? 女の子ですか?」
( ^ω^)「性別はないお 原料が小麦粉で植物だから 強いて言うなら両方だお」
川 ゚ -゚)「男女の双子なんですね おめでとうございます おめでとうございます」
( ^ω^)「はいはい どういたしましてだお」
+24
そして 愛おしそうに未消化物で膨れた腹を撫でくる
途中で羨望が嫉妬に変化したのか 爪を立ててきたので手を払った
川 ゚ -゚)「羨ましいです内藤先生」
( ^ω^)「栄養失調になるか 食い物を沢山食べれば膨張するお 膨れる場所は違うが」
川 ゚ -゚)「一度それをしてみたのですが 大きくはなりませんでした」
( ^ω^)「ああ 君は少食だから」
川 ゚ -゚)「きっと内藤先生似の可愛い子が生まれますよ」
( ^ω^)。o O( ξ*^ω^)ξ<オトーサン! )
( ^ω^)「ごめんだお」
川 ゚ -゚)「自分の子供を可愛いとは思えないのですか」
( ^ω^)「そうですおね」
川 ゚ -゚)「なんと」
+25
淳がこうも膨れた腹に固執するのは 己が子供の出来ない体だから故と推測している
閉経ではなく 酔った夫に妊娠十月十日の腹を蹴られ 流産してしまったのだ
既に体も健康な赤子と言えるまでに育っていたが 父親の蹴りがいい場所に命中してしまい
子宮からひり出されて来たのは 脳漿をぶち撒けたダッコちゃん人形のグロ画像であった
川 ゚ -゚)「お腹にいる子が可哀想ですよ」
( ^ω^)「消化されて ガスも屁となり出て この膨らみも今日中で消えるお」
川 ゚ -゚)「自分の子供を喰ろうてしまうのですか」
( ^ω^)「うん と言うかこれ食べ物で膨れてるだけだから」
産道を傷つけないように割れた頭蓋骨を取り出すのは 中々に難しいものであった
器具で広げて ピンセットでつまんで取り出したほうが早いのではないかと思う作業であった
思えば 内藤は淳と共にここへやってきたと言っても過言ではない
川 ゚ -゚)「鬼子母神ですね 恐ろしい」
+26
( ^ω^)「うんうん そうだおね」
川 ゚ -゚)「恐ろしい ああ恐ろしい」
そうして淳は 恐ろしいを様々なイントネーションで連呼しながら 何処かへ走り去ってしまった
きっと トイレ辺りにでも駆け込んで 食ったものを吐き出し 悪阻の振りでもしているんだろう
大丈夫だ 日常生活に支障は及ぼすだろうが これくらいなら淳の退院はもうすぐだろう
( ^ω^)「厄介事が一つ消えるお」
うーんと伸びをして 座布団を折り畳んで枕代わりにし 畳みにごろりと寝転がる
まずは淳の退院について危惧する事が 夢となって現れた
百貫デブに向かっておめでたを言い はち切れんばかりに蒲鉾をつめられる淳
泣いて許しを乞うが許されず そのまま魚の加工品に頬を内側から圧迫され破裂して死んだ
次の夢の中で 僕が次世代の神に推薦され それを丁重に断っていると自分の鼾で起きた
( ^ω^)「んがっ」
+27
起きた時は 既に三時のおやつ時であった
( ^ω^)「はっ もうこんな時間」
( ^ω^)「ややや 僕とした事が」
( ^ω^)「くっ まあいいお」
BMI指数がやや肥満を指しているので
今日はポテトチップスにしよう
購買からポテトチップス(コンソメ味)と紙パックの牛乳(低脂肪)を買い 会計に急ぐ
店員はこともあろうに高校時代の同級生であった
( ゚д゚ )「こん…あれ お前」
( ^ω^)「こん?」
しかし思い出話に咲く花もなく 花にやる水もなく 面倒なので知らない振りをする
(*゚д゚ )「やっぱりなあ! お前ブーンだろ!」
+28
( ^ω^)「ちっ」
だがそう簡単にはいってくれなかった
遠い昔に呼ばれていたような気がする呼び名が 何故か内藤の胸を抉った
( ゚д゚ )「ラピュタで一番記憶に残ってる歌みたいなのがあるんだよ」
( ^ω^)「らんらん らんらら らんらんらん ここしか思い出せない」
( ゚д゚ )「そうそれ! 俺もそこしか思い出せん」
何故こんな話題になったのか 内藤自身もその過程が思い出せなかった
聞こえてくる音を右から左へ受け流しつつ 一定の間隔で相槌を打ってたらこうなった
途中で恋人の話や貯蓄の話に移りそうになった時は 本能的に防御した
話題をそちらへ行かないよう 細心の注意を払って言葉を選んだ気がする
( ゚д゚ )「それにしても医者かあ 羨ましいよ」
( ^ω^)「へぇ そうかお?」
+29
( ゚д゚ )「羨ましいよ 俺なんて国道沿いのコンビニからこっちに飛ばされたんだぜ」
( ^ω^)「お気の毒に」
( ゚д゚ )「お前 俺の代わりにここ立ってくれよ」
( ^ω^)「いや 遠慮しとくお」
( ゚д゚ )「いい加減 足が棒になりそうだ」
( ^ω^)「で? っていう 床にでも座ればいいお」
それから何度か無益な言葉を交わし ようやく会計を済ませる事が出来た
人通りの少ない椅子に移動し 紙パックをばかっと開ける
( ^ω^)「飲めん」
ストローを貰うのを忘れてきた これは売る側の怠慢だ
ポテチの袋をばりぃと勢いよく開け 飛び散った中身を食いながら集める
半分程腹に納まった所で にゅうと腕が伸びてきた
+30
(-_-)「医者が ジャンクフードなんか食べていいんですか」
( ^ω^)「君は」
屋内で傘を差すような者を 素通りではなく遠回りで避けるに越した事はない
それでも この程度の事で一々驚愕していてはやっていられない
それでも 内藤はこの目の前の人物から逃げ出したくなった
( ^ω^)「何か問題でもあるのかお?」
(-_-)「お手本になりませんよ」
( ^ω^)「僕はあくまでも医者であって お手本じゃないお」
寸分の差で目の前の欠片を奪い取られたのが気に障ったので
腕を広げて床を滑り 菓子を一箇所に集めて 独り占めする
後ろからずるいとか聞こえたが これは元々内藤のだ
( ^ω^)「手本はその辺の健康体を手本にするといいお」
+31
( ^ω^)「それより 床に落ちたものを食べている事を 指摘はしないのだね」
(-_-)「三分ルールってのがあるでしょう 科学的にも解明された」
あまりにも恨めしい声だったので 気の毒になり一欠けら分けてやる
( ^ω^)「残念ながら それは三か、五秒のルールだね」
(-_-)「マジか」
それでも拾った菓子を手放すのは惜しかったのか 息を吹きかけてから口に入れる
何度かもぐもぐと咀嚼して 満足そうに飲み込んだ
(*-_-)「こんなものを食べたのは久しぶりですよ」
( ^ω^)「そうか それはよかったお 僕は食われて悔しいが」
そう言いつつ 拾い食いする手を止めている
古森は そんな内藤を見て不気味に笑った
+32
手に持った傘を 肩の上でくるりと回転させる
この患者のあだ名は雨降り小僧 雨降り男ではない
気味悪いまでに小さい背丈と いつも差している傘を取ってそう呼ばれ始めた
呼び始めたのは 今となっては誰か判らない
(-_-)「そうだ 蓬莱先生」
そして 彼が嫌われている理由がある
(-_-)「人を探しているようだけど その人には会えませんよ」
( ^ω^)「いきなり何を言うんだお」
聞き耳を立てたのか何なのか そいつが気にする事を無駄だと嗤う
そして それが何らかの形で当たるのだから気味が悪い
(-_-)「会えるわけがないでしょう ねえ」
+33
じっとりと背筋に粘つく 嫌なものを遺して去って行く
それが雨降り小僧の由縁でもあった
( ^ω^)「皮膚が懐死すればいいのに」
嫌な気分を振り払おうと 塩分の摂取によって渇いた喉を潤そうと
内藤は階下に降りて 自動販売機の元へと向かう
そこでは固まった欝田に群がる流石達が見えた
どうやらあの時からずっと動かなかったらしい 姿勢が同じだ
( ^ω^)「しっ しっ」
いい加減哀れになったので 群がる野良猫共を追い払ってやる
コーラはぬるくなっていた きっと とてつもなく不味いだろう
よく見れば カップの中には糸屑や紙が浮かんでいる
自分の周囲を飛び交う蝿が混入させたのだろうか
ますます哀れに思えて 替えのコーラを与えてやった
+34
(´<_` )「ずるい 俺にも下さい」
( ´_ゝ`)「酷い センセが贔屓しよる」
( ^ω^)「喚くな蛆虫」
纏わり付く蚊には 虫除けスプレーではなく殺虫剤のほうが良いと思う
こうも取り憑かれていては 満足に動く事も出来ない
仕方なしにリンゴジュースを買い与えてやる所を 雨降り小僧にも見られた 畜生
( ´_ゝ`)「ウマー」
(´<_` )「ウマー」
(-_-)「ウマー でもペットボトルが欲しかった」
( ^ω^)「何に使うんだお」
(-_-)「尿を溜めて 部屋に入ってきた奴らにぶっかけてやるに決まってるでしょう」
( ^ω^)「お前と言う奴は」
(-_-)「それ以外何に使うと言うんです」
+35
( ^ω^)「今の言葉を聞いたら お袋さんが身を投げるお」
(-_-)「何処から何処に?」
( ^ω^)「地上からお天道さんに 君は頑張って屋上からそれを阻止しとけお」
(-_-)「何を言ってるんですか これ以上高い所に昇ったら 僕神様になってしまいますよ」
( ^ω^)「はん」
総じて このような奴は このような事を本気で言っているのだから質が悪い
会話が微妙に噛み合わないのも慣れたものだ
前向きにポジティヴに まともに取り掛かろうとするから駄目なのだ
ちょいと演算がずれた会話プログラムだと思えば これ程面白いものは他にない
( ^ω^)「それじゃあ 今の君は何々だお?」
(-_-)「これかなぁ」
+36
古森は 右手を緩く握って 顔の横まであげる
(-_-)「コーン」
( ^ω^)「…とうもろこし?」
(#-_-)「ちがわい!」
うっかり逆鱗に触れてしまったようだ
真っ直ぐに突き出された傘を 腹を引っ込めて避ける
(-_-)「こっちならわかるでしょ ケーン」
( ^ω^)「ああ 狐」
(*-_-)「そう そう 二尾の」
異常者と言う者は 自分の意見に同調してくれる者がいた場合
それを無条件に自分の敵か味方かと見做すようだ
+37
同調している→こいつはきっと僕の頭の中を読んだに違いない!
同調している→こいつはきっと僕と同じ志を持っているに違いない!
無茶苦茶である
まあ それは 精神病院に収容されていない一般人にも言えるだろう
そもそも知覚しうるこの世界は 自分の頭の認識と偏見で成り立っているのだから
こういった奴らの場合 先入観や偏見の所為で それが顕著に見えるのだ
多分
( ^ω^)「今度油揚げを添えなきゃだおね」
(-_-)「九つでいい」
( ´_ゝ`)「分けて」
(´<_` )「分けて」
(-_-)「や」
+38
この男の頭の中で展開されているのはどんなものなのか 興味が沸いて来る
( ^ω^)「それじゃあ君の母親は?」
(-_-)「荼吉尼天かな」
( ^ω^)「ふむ 成程」
日本では狐神信仰と結び付けられ、狐を眷族とする稲荷神となっている神である
商売繁盛にご利益があるとされてる神であり 古森の母は商売上手であった
荼吉尼天のそれをそうと知っているかどうかは知らないが 中々に的を射っている
最も 本人はそれとは違う理由で母をそうと見ているのかもしれないので 妄信はしない
( ^ω^)「じゃあ僕は?」
(-_-)「医者は医者だよ 人によっては犯罪者にも現人神にもなるけど」
返す言葉もないとはこの事だ
+39
( ^ω^)「流石兄は 何々だお?」
(´<_` )「流石家長男ですよ」
( ^ω^)「ああいや 二重の意味でそっちじゃなくて なんだ」
唸りながら頭を抱える
二人を見比べて 今なら問えるかもしれないと思った
( ^ω^)「なんでお前らは 互いの事を逆に呼ぶんだお?」
(´<_` )「逆?」
( ^ω^)「兄なのに 弟と言い張ったり 弟なのに 兄と言い張ったり」
(´<_` )「それは兄が死んだからですよ だから自分が兄になったんです」
予想はしていても まともな答えが返って来なかった
+40
見切りをつけて 今度は兄のほうを向く
( ´_ゝ`)「それは弟が死んだからですよ だから自分が弟になったんです」
( ^ω^)「おおう」
無茶苦茶であり 滅茶苦茶である
(-_-)「俺は空気 言わば内容量が多いのによく無視される窒素」
( ^ω^)「ええい ならばお互いを何と思っているつもりだお 死人は動かないお」
(´<_` )「ああ」
( ´_ゝ`)「それは」
( ´_ゝ`)ノ「「これ鏡でしょう」」ヽ(´<_` )
( ^ω^)「鏡か 鏡ね よくもまあ触れれるもんだお」
( ´_ゝ`)「鏡の向こうの自分が手を伸ばしてきたらそうでしょう」
(´<_` )「伸ばした手が鏡面に触れるのは当たり前でしょう」
+41
鏡の向こうの自分が手を伸ばすから自分も手を伸ばすのか
それはどんな感覚なのだろう 自己がないんだろうか
つくづく 異常者の考えは 健常者には理解出来ない
(-_-)「そうそう 津出が医者を探していたよ じゃあね」
( ^ω^)「構ってもらえなくて飽いたのかお?」
(-_-)「その通りさ あと (3/4)πr^3:3分の4πあーるの惨状にお気をつけ」
( ^ω^)「わかったお」
わからなかったが わかると言ったほうがいい
|゚ノ ^∀^)「本当にわかったのですかア?」
( ^ω^)「おやレモナさん」
+42
(´<_` )「さっきの 3分の間に4っつおっぱいがあると惨状になるって意味ですよん」
( ´_ゝ`)「うわそんな事を素面で言うなんて やだ卑猥」
(´<_` )「いやおま」
矛盾を抱えてぎゃいぎゃい騒ぐ蝉を無視して 豊満な胸を揺らしながら看護婦が近寄る
彼女(元彼)は ナースと呼ばれたいが為に 白衣の天使と言われたいが為に切った
それがいきなり看護士として呼ばれる事になった時は それが彼女の耳に届いた時は
地獄の鬼も如何程なれと言わんばかりの恐ろしさを見せ付けられたものだ
以来 この病院で 患者以外に彼女に頭を上げられる奴などいない
|゚ノ ^∀^)「定理としては二股かけて鉢合わせたら修羅場モードって事ですネ」
( ^ω^)「えと つまりは?」
|゚ノ ^∀^)「さっきのハ 笑い所だったのですヨ」
内藤は 生半可な返事で応えた
+43
そして何故か振り下ろされる釣竿と虫取り網を避ける
後で没収しなくては そろそろ命が危ない
( ´_ゝ`)「意味がわからなくても 笑わなきゃいけないんですよ センセ」
(´<_` )「それが他人に合わせる日本人 そして英国の紳士淑女の嗜みですよ センセ」
( ^ω^)「ふぅん そうかお」
(´<_` )「あ 武器を変えたのは気分です」
( ´_ゝ`)「流石だよな俺ら」
( ^ω^)「逆 逆」
( ´_ゝ`)「えー 俺は弟だから 間違っちゃいませんよ」
(´<_` )「うん 俺が兄だから 間違っちゃいませんよん」
( ^ω^)「ああ 君らの場合そうでもないのか いやしかし定義としてのね」
その後 アスキーアートとしての定義の持論を小一時間程展開する
うんざりした顔で罵り合いながら去って行く流石兄弟を尻目に 内藤は一服する事にした
錆付いたベンチが 苦渋の声をあげながら 内藤の体重を受け止める
+44
( ^ω^)y-「チョコレート」
そのチョコは 既に時間の経過で白くなっていた
( ^ω^)「煙草ではないから 健康的だお」
ξ゚⊿゚)ξ「ですね 医者の不養生ではありません」
見上げれば 金の糸が鼻先をくすぐった
取りあえず くしゃみを彼女に向かってぶち撒けてから応える
顔を逸らす暇はなかったのだ
( ^ω^)「おや ツンさん」
ξ゚⊿゚)ξ「先生が 菓子を取り出す頃からいらしておりました」
( ^ω^)「そうか そうか ふむ」
ξ゚⊿゚)ξ「そのチョコレィト 白いものが付着してますね」
( ^ω^)「どうかしたかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「カビているんじゃあ ありませんか?」
+45
( ^ω^)「これを黴と言うか 浅学め」
ξ゚⊿゚)ξ「すみません」
( ^ω^)「この白い部分はブルームと言ってね 別に問題あるものではないのだよ」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんですか」
( ^ω^)「うむ」
津出は 徐に内藤の隣へ腰掛けた
( ^ω^)「過度に冷却したもの 融解・再結晶化したもの 長期間保存したものなどに」
内藤は 津出の眼前にそれを突きつけた
( ^ω^)「こうやって付くものだお 風味や味は 多少落ちるがね」
ξ゚⊿゚)ξ「すみませんが 浅学なのでわかりません」
+46
( ^ω^)「理解力の乏しい君にも解かるように言うとだね」
内藤は ペン回しの要領で チョコをくるっと一回転させる
( ^ω^)「物凄く冷たくし過ぎたり 溶かして もう一度固めたり」
ξ゚⊿゚)ξ「ふぅむ」
( ^ω^)「時間が経ち過ぎたものなどに こう言えばわかるかね?」
ξ゚⊿゚)ξ「えぇ ありがとうございました」
丁寧にお辞儀をする津出を 見て気分を良くする内藤
その気分のまま 内藤は更なる優越感を得る為 また語り出した
( *^ω^)「ちなみに この白いブルームと言うものにも二つの種類があってね
チョコの油脂成分のうち 融点の低い部分が融解して表面に浮出し
再結晶化したものであるブルームは ファット・ブルームと呼ばれるのだよ」
+47
( ^ω^)「そして 冷却時などにチョコの表面に水分が付着した際にチョコの砂糖が水分に溶解し
その水分が蒸発した時に砂糖が析出したものであるものはシュガー・ブルームと言う」
ξ゚⊿゚)ξ「析出?」
( ^ω^)「この場合は 液体の中から固体が分かれて生成してくる事だね」
ξ゚⊿゚)ξ「先生は 知識が広いのですね」
( ^ω^)「知識をひけらかして優越感に浸るのは ここでしか出来ないからね」
ξ゚⊿゚)ξ「そうなんですか?」
( ^ω^)「大人しく聞いてくれるのは 君しかいない」
内藤は ライターを取り出す
津出は それに少し顔を蒼くする
( ^ω^)「ああ そう言えば 君は火が苦手だったか」
ξil゚⊿゚)ξ「ええ すみません」
+48
( ^ω^)「ちょっとあっち向いてなさい 僕の姿が視界に入らぬように」
しっしっと猫を払うような仕草で 津出を追い払う内藤
自分の体を丸めて 火を隠そうとはしない
津出は それに文句も言わず 素直に従った
ξ( ξ「向きました」
それを見た内藤は チョコを持ち替えて ファット・ブルームの多い先端に火を点けた
( ^ω^)「もう こちらを向いてもいいお」
津出は それに素直に従った
熱により融解し 空気中に散り出した油脂成分が風に乗る
ξ゚⊿゚)ξ「甘い香り」
津出の髪が 一瞬綿飴に見える
+49
内藤は 軽く頭(かぶり)を振って それを追いやる
津出のふわふわした髪は チョコの甘い匂いを吸い込みそうだ
( ^ω^)「チョコだからだお」
ξ゚⊿゚)ξ「そうね そうですね」
( ^ω^)「ビターチョコだと 甘苦い匂いになるのかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「匂いだなんて 香りと言って下さい」
( ^ω^)「香りと匂いの定義なんて人それぞれだお 強要するのはよくないお」
ξ゚⊿゚)ξ「情緒の問題ですよ」
( ^ω^)「ふむ 情緒?」
内藤は 火の点いたチョコを持っていないほうの手で 自分の顎をぽりりと掻いた
( ^ω^)「すまんね そういった事柄に関しては 人一倍疎くて」
+50
ξ゚⊿゚)ξ「熱くないのですか?」
( ^ω^)「熱いよ」
ξ゚⊿゚)ξ「熱いのは平気なのですか?」
( ^ω^)「どちらかと言うと苦手だね」
ξ゚⊿゚)ξ「ではどうして火を」
( ^ω^)「煙草を吸ってる気分を味わいたいのさ」
内藤は 中指と薬指で溶けかけたチョコを口元に持ってゆく
煙草を吸う真似をして 深く息を吸う
( ^ω^)「ゴェェ! ガハッ! ゴェェェ!」 三 ( ∵)
思い切り煙を吸って むせてしまった
細かく震える背中を 津出が優しく両手でさする
+51
( ^ω^)「おうふ すまんね」
ξ゚⊿゚)ξ「いいえいいえ 大丈夫ですか?」
( ^ω^)「こういう時の大丈夫とは その時の容態を指しているのか その後の容態を指すのか
前者なら大丈夫ではなかったが 後者なら今は大丈夫だお 心配する程でもないお」
ξ゚⊿゚)ξ「それはよかった 煙草はお嫌いなのですか?」
( ^ω^)「ああ 嫌いだよ あんなものを好き好んで吸う奴は あまり理解出来ないね」
ξ゚⊿゚)ξ「理解出来ないのですか」
( ^ω^)「ああ 格好つけや 親や社会への反抗心 口下手の誤魔化しなら別だがね」
ξ゚⊿゚)ξ「では何故煙草を吸う真似を?」
( ^ω^)「格好を つけたかったのかもしれんね」
ξ゚⊿゚)ξ「でも先生 今の先生は 格好良くないですよ」
( ^ω^)「そうかお」
+52
内藤は 火のついたままのチョコを 躊躇いなく口内に放り込んだ
唾液よりも先に 二酸化炭素が充満した密閉空間で火の勢いが弱まる
それでも 熱いものは熱いのだ 火がついているのだから
( ^ω^)「ぐむ」
味覚を感じる感覚器官が じゅうと焼かれた音がする
上手く舌の先端が焼けてくれていれば 甘味を感じる事も少なくなるのだが
ξ゚⊿゚)ξ「何をしておられるのです」
( ^ω^)「もう甘いものは懲り懲りだ」
ξ゚⊿゚)ξ「だからって」
( ^ω^)「ところで君」
ξ゚⊿゚)ξ「なんでしょう」
( ^ω^)「茂名さんを探しているのだが 見かけなかったかね?」
+53
ξ゚⊿゚)ξ「いいえ 私は 茂名さんを見た事はありません」
+54
.
.
・
・
( ・∀・)「内藤か 内藤さんね」
( ・∀・)「いい先生だね 腕はいいし 回転も速い 知識も富んでる」
( ・∀・)「けど けどね」
( ・∀・)「今日も今日とて 存在しない患者を探してるような」
( ・∀・)「気狂いじゃあ ね」
+55
__ // _,-―'''゙ ̄ ゙̄''''ー-、_
`ヽ>  ̄ /´ `ヽ、 ←―-、
∀in^) / `i、 ノ
y' / / ゙i、
^、_ノ / i
| | i
l | | とちょっと変な
! | 人達のようです
+56
あとがき
仕込みって程でもないけど、健常者に向かって内藤が呼びかけ。
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