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( ^ω^)「何もしていないのに地獄に落ちたお」
ξ゚⊿゚)ξ「バカねー。何もしてないから落ちたのよ」
赤黒く渦巻く空の中心地点、そこに地上のゴミが降ってくる。
燃えないゴミや燃やせないゴミ、ウンコに核廃棄物に死体など何でもござれ。
たまに望まれない赤子とか、自殺者とか、地上で罰せられないゴミカス野郎が落ちてくる。
( ^ω^)「えぇー。でも余計な事して悪い結果になるよりだったら、
何もせずに現状維持した方がよくないかお?」
ξ゚⊿゚)ξ「悪魔の私が言うのもなんだけど、場合によりけりよ。
アンタは『見捨て過ぎ』ね。珍しいわ、こんなので落ちるだなんて」
いらない人間とか悪人なぞが落ちる場所に、内藤はぼいんと落ちた。
先に落ちて死んだ奴らが折り重なって、クッションになってくれた。
やっべーマジやっべーどないしようと彷徨っていたところをツンに拾われた。
そして今に至る。
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(;^ω^)「おーん……」
内藤ホライゾンは死んでいない。生きたまま地獄に落ちた。
目の前で轢き逃げにあった子供を見捨て、階段から落ちて動かなくなった妊婦を見捨て、
通り魔に刺されて蹲る女性を見捨て、熱中症に倒れた男性を見捨て、老人を見捨てた。
最初からそうしようと思った訳じゃない。
7歳、雨が降りそうな日に洗濯物を取り込んだら「勝手な事をするな」と怒られた。ご飯抜きになった。
10歳、泣いてる友人を励まそうと変顔をしたら「ふざけやがって」とキレられた。殴られて鼻が潰れた。
14歳、いじめられ始めた友人を庇ったら「余計な事すんな」と友人に絶交された。友人は自殺した。
16歳、カツアゲ現場を見たので先生にチクったら、何故か別の人物が告発者として吊し上げをくらった。
19歳、強風に倒れた自転車の群れを直していたら、警察に職務質問をくらった。窃盗だと疑われた。
善意とは裏腹の結果になってしまう事が続いたので、
自分は手を出さない方がいいんだと内藤は結論付けた。
結果的に、見捨てられた人間達の怨念によって地獄落ちしてしまったが。
788いやあ名無しってほんとにいいもんですねNGNG
ξ゚⊿゚)ξ「ま、アンタのその特性のお陰で私に拾われる事が出来たのよ。
悪い事ばかりじゃないわ。ラッキーね」
( ^ω^)「よくわかんないけど、良い事ならそれでいいお」
ちょきちょきちょき。
剪定鋏を持って、余計な枝葉を切る。幹に顔があるのは気のせいじゃない。
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主人の趣味なのか、ツンの住処はヨーロピアンに近い。
カーテンの柄が生々しい心臓だったり、花瓶に生首が活けられているのは地獄のご愛敬。
玄関で来客を迎えてくれる大きな鹿の剥製も、たまに呻き声をあげるお茶目な機能がある。
屋敷の塀から一歩出れば、草木一本生えない赤茶けた岩場が出迎えてくれる。
内藤は外国に行った経験はないが、異国の文化なんてこんなモンだろうと思っている。
いちいちギャップに驚いていたら身が持たないのだ。
ξ゚⊿゚)ξ「庭仕事する奴隷が一匹欲しかったのよ。前のはセンスがないから捨てちゃったし」
( ^ω^)「僕のセンスがツンさんの御眼鏡に叶って光栄だお」
ξ゚⊿゚)ξ「うーん。アンタもセンスがあるとは言い難いのよねー。
でも、余計な事しないところが気に入ってるわ」
( ^ω^)「……それは何よりだお」
ξ*゚⊿゚)ξ「べっ、別に褒めたわけじゃないんだからね!」
( ^ω^)「大丈夫。わかってるお」
ξ゚⊿゚)ξ「もー何よ。男なら、女に褒められたら浮かれなさい」
( ;^ω^)「調子に乗っても良い事がなかったんだお……」
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ツンにはそれなりに気に入ってもらっている。
と、内藤は思っている。
理由は簡単だ。
最初に寝泊まりを命じられたのは庭にある道具小屋だった。
それが、屋敷の空き部屋に寝泊まりするように言われた。
衣服も、最初は落ちてきた時のものをずっと着っぱなしだった。
それが、きちっといたワイシャツと作業着を用意してもらい、仕事に励むよう言われた。
ご飯もちゃんと出してもらえるし、地上にいた頃より上等なベッドに寝かせてもらっている。
気にいってくれたんだろうと思う。とは言え、長年の経験から絶対に過信はしない。
実際に、自分の事を気にいってるのか聞くのも怖い。
余計な事に首を突っ込んで、好転した試しがないからだ。
傍迷惑を振り撒いてしまうより、知らんぷりを貫いた方がマシ。
ツンも悪魔だし、捨てる時はポイと捨てられるんだろう。
唐突に死んでも「あー死んじゃったか。人間は脆いからねー」で済ますツンが見える。
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ξ゚⊿゚)ξ「あ、そうそう。私、明後日が誕生日なのよ。アンタもなんか適当に贈りなさい」
( ^ω^)「プレゼントかお?」
内藤は考えた。
今、己が身につけているものは全てツンからもらったもの。
自分のものは何一つない。
どうしようか。
( ^ω^)「そうだお!」
ξ゚⊿゚)ξ「あら、私の能力『嫌な予感』が発動したわ。こういうのって間に合わないのよね」
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ツンが捨てた物ならば、ツンのものではない。
つまり『ゴミ』をプレゼントすればよい。
悪魔もびっくりの超理論を発動させた内藤は、庭の片隅に集めたゴミ山に駆け寄った。
( ^ω^)「あったお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ハリガネね?」
( ^ω^)「これを指輪にして……」
ξ゚⊿゚)ξ「ハリガネを輪っかにしただけね」
( ^ω^)「出来たお!」
ξ゚⊿゚)ξ「ぐちゃぐちゃのハリガネね」
( ^ω^)「これをツンの指に合うよう微調整して……」
ξ゚⊿゚)ξ「ただのゴミに『微調整』なんて言葉が使われるとか信じたくないわ」
( ^ω^)「これあげるお!」
ξ;゚⊿゚)ξ「あのね? 正直、これを他の奴らがやってたらブチ殺してるところよ。
アンタは本気の善意でこれをやったみたいだから許すけど……」
つまるところ、地上で数多の人間の感情を逆撫でした内藤の善意とはそういうものだ。
そのバカなところを『可愛い』と認識しているツンには効かないが。
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ツンの指にゴミを巻き付けようとした内藤だが、当たり前に拒絶された。
ξ゚⊿゚)ξ「私の誕生日は明後日よ。その時までアンタが持ってなさい」
( ^ω^)「わかったお」
ξ゚⊿゚)ξ「当日はパーティーに出なきゃいけないから、アンタは屋敷の中で待ってなさい」
( ^ω^)「わかったお。それまでに微調整してもっとマシな感じにしておくお」
ξ゚ー゚)ξ「ふふ、期待せずに待ってるわ」
その日の夜、内藤は悪戦苦闘の末にハリガネに綺麗な曲線を描かせる事に成功した。
とは言え、ここは地獄。
幸福なんぞ幻か、更に強い絶望を与える為の踏み台でしかないものだ。
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ツンの誕生日。
いつもの仕事だけはやろうと庭にいた内藤を襲ったのは、ワニを巨大化したような化け物だ。
ボコボコに突き出たイボの一つ一つが巨大な眼球になっており、口からは泥の涎を吐き出している。
ところどころ腐敗しているのか、皮膚から湧き出した蛆が粘液をまとってぼとぼと地面に落ちる。
内藤がその化け物に本格的な恐怖を覚える前に、ばくりと頭から食われて死んだ。
ばりばり咀嚼されて、他の犠牲者と同じく飲み込まれて、それっきり。
地獄で死んだらもうどうにもならない。何故なら地獄だからだ。
ゴミ山のクッション達とワニの胃の中で感動の再会となったが、内藤は知らない。
嫌な予感がしたツンが屋敷に飛んで帰ってきたが、内藤は既に胃の中。
庭を荒らした化け物の姿を見て、痙攣と共にツンの皮膚がずるりと剥げる。
醜悪な正体を晒したツンは、怒りのままに化け物の胴体を真っ二つにした。
内藤は、ツンの正体がワニと似たような悍ましい化け物だとは知らずに死んだ。
ワニの胃袋から血と肉と臓物が胃液と混ざって流れ出てきたが、ツンは躊躇せず飛び込んだ。
あれだけ自慢した縦ロールをクソでガビガビに汚しながら、一心不乱に探していた。
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結局、胃液で溶けかかってハリガネはぐちゃぐちゃになっていた。
ゴミに戻ったハリガネを手に持ってむせび泣いていたツンの事を、
内藤は永遠に知らないままだ。
おしまい
お題:無常観
出せたかな?
概念系お題って難しい
嫌な予感もお題だった気がする
時間経ち過ぎて忘れた
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