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3 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:41:26.59 ID:O+aDSEC/O
( ^ω^)は雪山の山荘で名探偵と出会ったようです 後編
前編
ttp://hoku6363.fool.jp/0000sanngoku-matome21/yuki-yama.html
( ゚ω゚)やっぱり間に合わなかったから途中からながら投下うわぁあああああ!
( ^ω^)あとパソコンの契約が切れたんで完全携帯でながら投下
6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:43:04.93 ID:O+aDSEC/O
\ 丶 ヾ 丶v \ ヽ \丶丶、 丶\ ヾ 丶丶\、 ヽ \ \. 丶
ヾ丶\ 、\ヽ 、丶\ \ヽ丶丶 \ \ \ ヾ 丶 ヽ丶 丶 \ヾ
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶 ゝ丶\ヽ ゝヽ丶丶\ \ 丶 \ 丶 ヾ丶\ \
ヽ\ 丶\丶ヽ\ 丶゚ 丶。ヽヾ ゞ 丶 丶丶 \丶 ヽ \ \丶\
\ 丶 ヾ 丶v \ ヽ \\ \。 丶 丶丶 \丶 ヽ゚\ \丶 .、 ヽ
ヾ丶\ 、\ヽ゚、 丶\ \丶丶 丶丶゚\丶 ヽ \ \丶/,,;;;;/ ,,,...
ヽ 、ヾ 、ゞ ヾ丶ゝ丶\ ゝヽ丶ヽ ゝヽ 、ゞ ゚ヾ丶ゝ/,,,;;;/ 册册
ヽ\ 丶\丶ヽ\ 丶 ヽ゚ヾ ゞ\ヽ ゝヽ丶丶 、/___/ _,. 册册
\ 丶 \ ヾ 丶丶\、 丶丶ヽ゚\ \丶 ヽ \/ /| _,.-r'| | 册册
ヾ丶\ 丶。ヽ丶 丶 \ヾ \ヽ \ \丶 ヽ/ / ,..| | | | | | 册册
ヽ 、ヾ \ 丶 ヾ丶\ \ \ ヽ\\丶ヽ/'~T.,./|川 j_l,.r-'¨ 卅卅i_,.
ヽ \ \丶 ヽ \ \ヾ丶 丶丶丶 /,.T¨il i l l l川__,,... -‐ ¬¨
\ 丶 \ ヾ 丶丶\、 ヽ \ \. ,l:lj|川_'¨三.ノ____,,,,,.....................
( ^ω^)は雪山の山荘で名探偵と出会ったようです
/⌒ヽ
( ;^ω) ::: :::
/ / | :::::::::::
(_、_}=[二フ :::::::::
(_)、_) ::::
7 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:46:05.70 ID:O+aDSEC/O
14:55
(・∀ ・)「女性に見られなくないモンか、成人誌の類か?」
( *^ω^)「いや、その、ゴミ箱に…ティッシュが……」
(´・ω・`)「…………ああ」
( ;^ω^)「いやあ…なんかもう」
(´・ω・`)「うんうん、仕方ないよ、うん」
(・∀ ・)「なんだよ、お前らだけで理解し合いやがって、なあヒッキー」
(;-_-)「あ、う、うん」
(・∀ ・)「歯切れ悪ぃな」
(´・ω・`)「オッサンにはもうわからないよ」
(・∀ ・)「んだと糞ガキめ」
8 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:48:20.94 ID:O+aDSEC/O
_2階 204号室_
ゴミ箱を四方から囲んで、覗き込む。
全員、顔が引き攣っている。
(-_-;)「う…」
(・∀ ・;)「イカくせぇ…」
まあ、そうだろう。
ゴミ箱の中腹くらいまで、ゲソの臭いがする丸めたティッシュで埋まっているのだ。
誰だってそんな顔をする。俺だってそうする。
(;´・ω・`)「証拠って言うか…アリバイって言うか…」
( ;^ω^)「は、はは」
僕の浮かべているこの汗は、他の3人とは違う。
この作戦が上手く行くかどうかの、その不安の汗だ。
あと恥。
11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:50:38.34 ID:O+aDSEC/O
( ^ω^)「死にてぇ」
あんまり深く突っ込まれるとヤバイ。
僕は頭の回転も早くないし、口も回らない。
だから、僕は俯いて、あまり踏み込まれたくはないという意思表示をする。
この状況だけで、僕の昨日のアリバイがあると思い込ませる為にも。
(;´・ω・`)「うーん、これ他の人達への説明に困るね」
(・∀ ・)「直に伝えればいいだろ、変にぼかしても怪しまれるだけだぜ」
(-_-)「若いねえ」
(・∀ ・)「お前も若いだろ」
部屋の中に笑い声が反響する。
今の内に、存分笑っておけばいい。
12 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:53:16.54 ID:O+aDSEC/O
(・∀ ・)「そうだ、内藤」
どきり。
( ^ω^)「なんですかお?」
(・∀ ・)「隣の部屋で、なんか気になる物音とかしなかったか?」
( ^ω^)「も、物音…」
やばい。この質問は地味にやばい。
下手に答えたら、怪しまれる。
シャワーの音が聞こえました?
駄目だ。都村が昨日シャワーを浴びたかどうかわからない。
女だから入ってるとうのは偏見だ。もし入ってなかったらヤバイ。
管理人は各部屋の水や電気の使用量くらいわかる筈だ。
調べられたらヤバイ。
足音が聞こえました?
駄目だ。わからない。気に留めた事もなかった。
そもそも、この壁がどれくらいの音を向こうに伝えるのか調べてなかった。
13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:54:40.10 ID:O+aDSEC/O
だから、ここは
( ^ω^)「いえ、何も聞こえませんでしたお」
これしかない。
(・∀ ・)「うーんそうか、俺らも向かいの部屋だけど、なんも聞こえなかったしなあ」
(´・ω・`)「…一体、何々でしょうね」
それから各自の推測を語って、全員と合流する事になる。
合流する前に、僕はゴミ箱を片付けたいと言って部屋に残る事にした。
推測と言っても、自分が何を言ったのか殆ど覚えていない。
ただ、僕は僕が思いついたトリックを実行する為の言葉だけは搾り出した。
またんきさんは少し渋っていたが、苦笑いをしながら了承してくれた。
( ;^ω^)「今のうちに…!」
やる事をやっておかないと。
14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/25(火) 23:59:11.60 ID:O+aDSEC/O
_2階 203号室前_
( ^ω^) ゴクリ
( ;^ω^)「見つかったら、一貫の終わりだお」
部屋のドアを、音を立てないようにそっと回す。
いつ人が2階に上ってくるかわからない。
急がなければ、しかし、慎重に行かなければ。
( ^ω^)「…」
ドアが開いた瞬間、悪臭が鼻をついた。
死体を腐らせないようこの部屋だけ暖房を切っているとは言え、多少の腐敗は防げない。
16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:03:59.33 ID:kk4eSt8MO
15:05
内藤は左手に持っていた自分の部屋の子機を見た。
子機には、部屋の番号のシールが貼られている。
( ;^ω^)「…」
ペリペリペリ
それを、そっと剥いていく。失敗したら、この策はお終いだ。
剥がし損ねないように、慎重に、慎重に。
( ^ω^)「…ふう」
成功した。
けど、休んではいられない。
早く済ませなくては。
18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:06:42.31 ID:kk4eSt8MO
203号室の子機を手に取り、こちらも同じように剥がす。
剥がしたものを、204号室の子機に貼り付る。
( ^ω^)「ふう」
内藤の顔に、余裕が戻った。
先に剥がした204号室のシールを203号室の子機に貼り付ける。
これでいい。これで。
203号室の子機を部屋に残し、204号室の子機は持っていく。
そして、また同じように、今度は音がしないようにドアを閉める。
ノブを中途半端に回したままドアを閉じると、無音で閉まってくれた。
最後に、204号室の子機を、自分の部屋へ置く。
( ^ω^)「クク」
さて、ゴミ箱のゴミを袋に詰めて、みんなの所へ行くとしよう。
19 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:08:46.03 ID:O+aDSEC/O
_ラウンジ_
(´・ω・`)「あれ? 結構遅かったね」
( ^ω^)「ゴミを捨てる場所がわかんなくて…」
(´・ω・`)「あーそっか」
よし。
(´<_` )「ゴミ捨て場は調理場の奥の扉を出て、左隣にあるぞ」
( ^ω^)「ありがとうですお、捨ててきてはくれないんですかお?」
(´<_`; )「いや、そのゴミはちょっと…」
( ^ω^)「ですかお」
(´・ω・`)「昨日の君のアリバイの事についてだけど、もう全員に説明したよ…」
( ^ω^ )
予想外だったが、…ま、まあいいだろう。
21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:12:45.89 ID:kk4eSt8MO
_ゴミ捨て場_
( ^ω^)「くっせ」
( ^ω^)「ゴミ箱のスメルもきついけど、ここは生ゴミ臭いお」
( ^ω^)「こんなとこさっさと出てってやるお」
( ^ω^) ポイポイ
( ^ω^)「よっし」
( ^ω^)「ん? なんだこれ」
( ^ω^)「ナイフ…? 果物ナイフっぽいお」
( ;^ω^)「あ、持ち手取れそうだお」
( ^ω^)「だからかお…」
23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:16:37.37 ID:kk4eSt8MO
内藤は、そのナイフの刃にハンカチを巻いた。
腐った持ち手を輪ゴムで固定して、袖口にそっとしまう。
( ^ω^)「ふふ」
( ^ω^)「僕が、君を有効活用してあげるお」
( ^ω^)「きっと、今まで切った事のないものを切らせてあげるお」
( ^ω゚)「ふふ、ぶふふ」
びゅごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
( ^ω^)「…」
吹雪はまだ止まない。
24 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:19:37.04 ID:kk4eSt8MO
15:33
(´・ω・`)「そう言えば、あなた達は殺された探偵さんと何か関係があるんですか?」
(*゚ー゚)「いいえ、ないわ」
(,,゚Д゚)「実際に会った事はなくて、地方の新聞紙を見て知ったんだ」
(´・ω・`)「て事は同じ地元の?」
(,,゚Д゚)「そうなるな、どこに住んでたのかは知らないけど…」
(*゚ー゚)「そろそろ時効っていう殺人事件があって、それを見つけたのが…」
(´・ω・`)「都村さんだった、ってわけですか」
(*゚ー゚)「ううん、そうじゃないの」
(´・ω・`)「?」
(,,゚Д゚)「話すとちょっと長くなるけどな…」
25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:21:37.34 ID:kk4eSt8MO
回想
____________________
(,,゚Д゚)「え? 犯人を見つけたのは、あなたじゃあないんですか?」
(゚、゚;トソン「ええ、そうなんです」
(-、-トソン「私は…その会社にアルバイトしに行ってた、ただのフリーターでして」
(*゚ー゚)「でも、新聞には」
(゚、゚トソン「…その会社、最近赤字のほうが多かったんです、探偵って結構お金がかかりまして
そこで時効スレスレの未解決事件を解いた事を自分の会社の宣言に使えないかと
上で何やら話し合っていまして、何故か気づいた時は目の前に記者がいました」
(,,゚Д゚)「言い方が悪いけど、ダシに使われたってワケか…」
(゚、゚トソン「その通りです」
27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:23:52.59 ID:kk4eSt8MO
(゚、゚トソン「今の探偵って、バーローみたいな殺人事件を解くような事は無きに等しいんです」
(゚、゚トソン「復縁工作や離縁工作、ストーカーの尾行や旦那の浮気現場の取押えとか」
(゚、゚トソン「ウン十年前に失踪した息子や妻を探してほしいとか」
(゚、゚トソン「下着泥棒を捕まえてほしいとか」
(゚、゚トソン「ついさっき子供が家出したから一緒に探してほしいとか」
(゚、゚トソン「デリヘルと勘違いされたりとか…」
(;゚ー゚)「…」
(;゚Д゚)「…」
28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:28:40.72 ID:kk4eSt8MO
(-、-トソン「…ふぅ」
(゚、゚;トソン「なんかすみません」
(*゚ー゚)「ううん、私達のほうもなんかごめんね」
(,,゚Д゚)「色々あるんだなあ」
(゚、゚トソン「今回のは、自分で言うのもなんですけど、傷心旅行のようなものなんです
それでも、バイトで培った知識はあるので、相談には乗れると思います」
(,,゚Д゚)「あ、それじゃ…」
____________________
(,,゚Д゚)「って事があってな」
(´・ω・`)「探偵じゃなかったのか…」
(*゚ー゚)「うん…」
( ^ω^)(……)
( ^ω^)(探偵じゃ、ない?)
30 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:31:18.71 ID:kk4eSt8MO
(´・ω・`)「あ、でも、宣伝に使われたって事は、その会社に恨みある人に狙われても…」
(*゚ー゚)「それはあると思うわ」
(,,゚Д゚)「そんな奴が、ここにいたとしてもおかしくはないよな」
しん、と静まり返る室内。
内藤だけが、吹雪の音が弱まった事に気づいた。
(,,゚Д゚)「…俺が言える事じゃなかった、すまん」
( ^ω^)(咎めたほうも、怪しまれるお)
頭(こうべ)を垂れる擬古を見て、これ以上有益な情報は掴めないと踏む。
ここに隠れているのを気づかれないようラウンジを後にした。
真実を知ろうとも、自分はもう既に引き返せない所まで来てしまった。
吹雪は誰かを誘うように、風を弱めている。
ひゅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
32 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:36:05.76 ID:kk4eSt8MO
16:00
動悸を激しくさせながら管理人室に入って、鍵とライターを失敬する。
見つかった時の言い訳を考えながら、調理場から塩とサラダ油を少々失敬する。
道具が揃った所で、目的の場所に行くと、
( ;^ω^)「…っ!」
ヒッキーが玄関にいるのを見つけた。
思わず漏れそうになった声を、唇を噛みしめて抑える。
(-_-)「…」
彼は、何故こんな所に一人で?
それとも、まさか、自分が犯人だとバレた?
何が目的かはわからない。
まさか第二の殺人鬼、って事はないだろう。
殺人鬼は自分だけで充分だ。
( ^ω^)「…」
33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:42:06.13 ID:kk4eSt8MO
そっと背後から近付きながら考える。
彼は何しに此処へ来た?
落し物を取りに来た?
吹雪が弱まったのに気づいて、一人だけ逃げようと?
それとも、シュールとか言うあの彼女を探してる?
何かが、誰かが怪しいと思って後を尾けてる?
推理物ではどれも考えられる。
どれも当て嵌まるから、逆にわからない。
(( (_- 三 -_) ) キョロキョロ
|ω^) …
弟者は、まだトイレに入ってる。
羽入の夫婦とショボンはラウンジ。
またんきさんは2階にいる。
シュールの動向はわからないが、女に負ける気はしない。
実行するなら今だ。
34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:44:56.63 ID:kk4eSt8MO
(-_-)「あれ? 内藤ぐッ!?」
玄関に都合良く置いてあったスパナを手に取り、思い切りぶん殴る。
こういった場所には、都合良く鈍器があるものなのだ。
灰皿とか。花瓶とか。
( ;゚ω゚)「ふぅー、ふぅー…」
そしてそれらの凶器を使用し、衝動殺人を行ってしまった犯人は僕じゃない。
普通の犯人なら凶器の隠し場所や処分方法に思考を巡らすが、僕には必要ない。
スパナは、このまま持っていよう。
( _ )「……」
( ;゚ω゚)「ぬっ」
スパナをベルトに差し、気を失ったヒッキーを担いで行こうとする。
が、重過ぎて運べない。
意識がない人間の体は重いと聞くが、まさかこれほどまでとは。
35 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:47:27.94 ID:kk4eSt8MO
このまま横にして、転がして行こうか。
駄目だ。よく見たらヒッキーの頭に少し血が滲んでいる。
もし床に血がついたら怪しまれる。しかし、持ち上げるのは無理だ。
ならば蹴り飛ばして行こうか。ヤクザキックの要領で。
もっと駄目だ。起きたらどうすんだこの糞が。
( _ )「……ぐふ…」
( ;^ω^)「引き摺って行くお…」
腋の下に手を入れて、上半身だけ持ち上げた状態で引き摺る。
雪の上に体を引き摺った跡がつく?
ノンノン、そんな心配は無用さ。
10m先が見えない程度の吹雪でも、すぐに埋もれて見えなくなる。
引き摺ってる所を見られたらどうするか?
ちっちっ、それも心配御無用。
連日の吹雪のお陰で、窓にはべったりと雪が張り付いている。
窓がこんな状態にも関わらず外が見える奴は、千里眼くらいしかいないだろう。
36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:49:13.46 ID:kk4eSt8MO
_車庫_
( ;゚ω゚)「ゼハー…ゼハー…」
雪の上なら少しは引き摺るのが楽になるかと思ったが、そうでもなかった。
降り積もった雪の上は足を取られ易く、何度か後ろに倒れ込んでしまう。
ヒッキーの頭部が股間のゴールデンボールを直撃した時は、この世の終わりが舞い降りた。
しかし、呑気に休んでいる暇はない。
胸ポケットから軽トラの鍵を取り出し、扉を開ける。
燃料のメーターを確認してから、エンジンをかけた。
かかった所で、もしかからなかった場合を想定していなかった事に気づく。
( ;^ω^)「…適当にガソリンでも撒いて、火ィつけるかお」
一応、無事に事を運べているのだ。
失敗した時は、失敗した時に考えよう。
ヒッキーを運転席へ座らせ、シートベルトを締める。
万が一、起きてもすぐには抜け出せないように、腰のベルトを通して締めた。
39 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:52:09.38 ID:kk4eSt8MO
16:13
袖を捲り上げて、腕時計で時間を確認する。
あれからまだ13分しか経っていない。上出来だ。
( ^ω^)「よし」
シャッターを上げ、外を確認する。
吹雪は先程より強くなっているが、橋がまだうっすらと見える。
さっきは酷く遠く感じたが、肉眼で捉えるとそれほどでもない。
内藤は、助手席に乗り込んで、足を伸ばしアクセルを踏む。
車体が車庫から完全に出た所で降り、シャッターを下げる。
助手席から後部座席へかけて、調理場から失敬したサラダ油を撒く。
ヒッキーの両手を掴み、ハンドルを握らせ、足をアクセルへ置く。
( i|^ω^)「さみぃ」
それから足元の雪を素手でかき集めて、手頃な大きさの雪玉を作る。
その雪玉を雪の上で転がし、二回り程大きくした所で塩をかけた。
それを何度か繰り返すと、雪玉は人の頭くらいの大きさになった。
41 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:54:28.69 ID:kk4eSt8MO
( i|^ω^)「し、しばれる…手袋くらいするべきだったお」
雪玉を壊さないよう、そっとヒッキーの足の上に置く。
アクセルが軽く踏まれ、車体が動き出した。
最後にライターでサラダ油に火をつけ、冥土への手向けにしてやる。
真っ赤になった両手に息を吹きかけながら、地獄へ向かって発車した彼を見る。
上手く橋へ突っ込んでくれるか、コースを外れて崖へ落ちるか。
どちらでも、これからやるべき事は変わらない。
内藤は裏口へ回り、調理場の奥から山荘へ入った。
玄関から入ってもよかったのだが、雪まみれの自分の姿を誤魔化す言葉は思いつかない。
あらゆる場所から死角になっているゴミ捨て場で雪を落とし、自分の部屋へ向かう。
途中で男子トイレを覗き、用を足している奴が居るかどうか確認する。
( ^ω^)「ちっ」
運良く居れば、お陀仏してもらおうと考えていたのだが、そこまで上手くはいかないらしい。
折角なので、冷えて近くなった尿意を解放する。
先端がくっついて、尿のコースが二股に別れた。
42 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:57:00.54 ID:kk4eSt8MO
_2階 204号室前_
結局、誰にも会う事なく自分の部屋まで来てしまった。
こうも誰にも会わないと、逆に不安になる。
自分以外は全て殺されてしまったのではないか、と言う不安ではない。
自分の正体がバレてしまったのではないか、と言う不安である。
( i|^ω^)「…」
この山荘の何処かに、例えば自分の部屋に、全員で身を隠しているのでは。
待ち伏せして、不意を打ち袋叩きにしようとしてるのでは。
( ;^ω^)「フルボッコかお…喧嘩はあまり得意じゃないお」
特に、あの擬古とやらは腕っ節が強そうだ。
あいつだけは、できるなら不意をつきたい。
袖から少しだけ覗かせたナイフの持ち手を握り、扉を開けた。
43 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 00:58:44.50 ID:kk4eSt8MO
_2階 204号室_
( ^ω^)「ほっ」
当たり前だが、誰もいない。
内藤は、台の上にある子機を布団の中に隠す。
そして、備え付けられてあった黒の膝掛けでティッシュ箱を包む。
紐の代用品として、携帯の充電器でそれを縛る。
膝掛けの四隅を引っ張って、即席の黒いてるてる坊主が完成した。
( ^ω^)「よし!」
窓を開けて、橋を確認する。
中学生の時に見たキャンプファイヤーよりも燃え盛る橋が見えた。
( ^ω゚)「ックク」
どうやら、上手く当たってくれたらしい。
あの橋に辿り着く前に、軽トラが止まった時に備えておいたあの準備。
ヒッキーが運転しているように見せかけるそれは、必要なかったようだ。
そして窓から身を乗り出し、下を見る。
ヒッキーを引き摺った跡は、新しく積もった雪に埋もれて消えていた。
44 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:00:12.70 ID:kk4eSt8MO
( ゚ω゚)ここからながら投下うわぁあああああああああ!!
47 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:05:42.58 ID:kk4eSt8MO
16:57
部屋にあるアナログ時計に目をやり、腕時計との時間差を確認する。
今時、各部屋に螺子巻き式の時計を置く宿泊施設とは珍しい。
だが、そのお陰でこの切り札を仕掛ける事が出来るのだ。
備え付けのポットのコンセントを抜き、ポットの接続端子を鋏で切る。
鋏で感電防止用のゴムのコードを剥いていき、中の電線を丸裸にする。
( ^ω^)(小学生の時の工作を思い出すお)
郷愁の念にかられそうになり、慌てて頭を振る。
死地において昔を思い出す主人公は、総じてデッドエンドだと相場が決まっている。
50 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:11:01.37 ID:kk4eSt8MO
時計の透明なプラスチックの板を外し、時盤を露出させる。
そして、針の動きを阻害しないように、電線を針に縛った。
後はこれを調理場に持って行き、
とふ とふ とふ
( ^ω^)「…」
ノック音、ではない。足音。
音を立てないよう扉の近くに行き、下の隙間から廊下を覗いた。
見えたのは、ピンク色のもこもこした暖かそうなスリッパ。
これは、各部屋に備え付けられているスリッパだ。
男は水色のスリッパ。つまりピンクは女性用。
履いてる奴は、女。
そう判断した瞬間、内藤はテーブルクロスを被りドアを開けた。
驚愕した表情の素直シュールの喉笛を鋏で切り裂き、血飛沫をテーブルクロスで防ぐ。
ぐらりと傾く体を支え、自分の部屋に放り投げた。
あの出血大サービスだと、すぐに死ぬだろう。
53 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:20:11.47 ID:kk4eSt8MO
ダイイングメッセージ?
それはむしろ、どんと来いと言うものだ。
血文字で自分の名前を書こうものなら、それを逆に利用してやる。
期待の視線を土産に扉を閉め、隣の203号室に転がり込み、鍵を閉める。
血塗れになったテーブルクロスは、都村が眠る布団の中に隠す。
罪悪感は、とうの昔に消えた。
( ;ω゚)「ひひ、ひひひ」
震える手を子機に伸ばし、内線のボタンを押す。
ワンコール、…、…、…、…、…、6回目で出た。
『も、もしもし…』
とても怯えた管理人の声。
漏れそうになる嗤いを抑え、応える。
55 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:23:26.35 ID:kk4eSt8MO
( ;ω;)「お゙っ、弟者ざっ、ぐふっ」
つい今しがたの興奮と恐怖をそのまま声にして、鼻声で話す。
よくわからないが、自分は今泣く程嬉しいらしく、笑いと涙が止まらない。
( *;ω;)「ぐふっ、ずびっ、うぅっ」
殺人による混乱状態だと、頭の冷静な部分は理解してくれている。
それでも、体が言う事を聞いてくれない。
この押し殺した声と鼻水をすする音を、相手が都合よく解釈してくれる事を願うのみだ。
『わかった、今すぐそっちに行く』
がちゃんと受話器を置く音がして、すぐに途切れた。
57 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:33:39.58 ID:kk4eSt8MO
何が『わかった』と言うのか。
腹を抱えて爆笑したいが、今は我慢だ。
( *^ω^)「んっふっふっふ」
都村のアヘ顔を想像して遊んでいると、足音が聞こえてきた。
てっきり人を連れて来ると思っていたのだが、想定の範囲内だ。
しかし、あの臆病者が一人とは。
これは誘われているんだろうか。
だが、躊躇している時ではない。
203号室の前を通り過ぎたのを見計らって、扉を開ける。
相手は男性一人。他には誰もいない。
弟者が金槌を振りかぶりながらこちらを振り向くが、遅い。
逆手で襟首を掴んで、ナイフを喉元に突き入れた。
( <_ i|)「がっ」
59 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:44:48.58 ID:kk4eSt8MO
血飛沫を浴びないよう、うつ伏せにしてからトドメを刺す。
ぴくりとも痙攣しなくなったのを確かめると、自分の部屋に戻る。
( ´ω`)「なんだかもう、疲れたお…」
もうこの短時間で、一生分の運動と頭の回転をした気がする。
内藤はのたのたとゆっくりした足取りで、部屋を歩く。
電線を繋いだアナログ時計。
真っ黒なてるてる坊主。
どれも大事なもので、見つかったらヤバいものだ。
時計はジャケットのポケットに無理矢理入れ、てるてる坊主は布団に隠した。
窓を開け、懐から未使用の手揉みカイロを出す。
少しの間だけ揉み、暖かくなりかけた所でそれを破く。
そして、中の黒い粉を外側の窓枠にざらっとぶち撒ける。
それに塩を降って、これでここは終わりだ。
60 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 01:53:28.06 ID:kk4eSt8MO
17:27
はっと気づいて腕時計を確認すると、針は17時27分を差していた。
自分が決めたジェノサイドミッション(苦笑)の終了時刻は18時半まで。
それまでに切り札を仕掛け、出来る限り人数を削いでおきたい所だ。
遠回りをし、急いで食堂に向かう。
ガラスの向こうに、夫婦とショボンの姿が見えた。
今まで一ヶ所に固まっていてくれるのはありがたかったが、これからは勘弁だ。
気づかれないように、物陰に隠れつつ進む。
スネークもこんな気持ちなんだろうか。
63 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:00:57.47 ID:kk4eSt8MO
_食堂_
調理場のコンロ付近に、サラダ油やオリーブオイルをぶち撒ける。
その上に時計を置き、冷蔵庫のコンセントを抜いて、代わりに改造したコンセントを挿した。
( ;^ω^)+ 「ふぅ」
一仕事やり終えた後の、気持ちのいい汗が流れる。
後はこのまま自然な流れで3人の所に向かい、203号室へ誘導する。
それから、それとなく窓のほうへ注意を向けて…
『ショボオーン! 早く2階に来ぉい!!』
( ;^ω^)「!?」
65 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:08:31.26 ID:kk4eSt8MO
_2階 204号室_
(・∀ ・)「どういうこった」
( ;ω;)「ぼぼぼ僕じゃないですおー!」
(;´・ω・`)「…」
(・∀ ・)「あー」
_____________________________
第二の死体発見時、及び第一発見者が疑われるテンプレ会話省略
_____________________________
(´・ω・`)「あれ…ヒッキー君は?」
( ^ω^)「そう言えば見てないお…」
(*゚-゚)「まさか、」
(・∀ ・)「いや、それは早い」
66 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:15:22.66 ID:kk4eSt8MO
まさかまたんきさんが第一発見者になるとは予想外もいいとこだったが、事態は好転している。
言葉には出していないが、夫婦は第一発見者のまたんきさんに対して疑念を深めたようだ。
どうか二人の間で深読みし、今までのリーダーシップが裏目に出る事を願うばかりだ。
その為には、まず
( ^ω^)「お…窓、外が変だお…」
段取りを追わないといけない。
(,,゚Д゚)「なんだ…ありゃ…」
(;´・ω・`)「あの場所って…!」
(・∀ ・)「…最悪のタイミングで燃やしやがって」
( ^ω゚)(くふふ)
72 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:47:05.18 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・)「まだ間に合うかもしれねぇ、男手は今すぐ着替えて水持って…」
またんきさんの言葉を遮って挙手をする。
目立つ行動をして集まる視線も、随分と減ったものだ。
( ;ω;)「トイレ…行きたいですお……」
(・∀ ・)「お前なぁ」
( ;ω;)「一人は怖いですお…」
(・∀ ・;)「お前なぁ…」
はぁーと深い溜め息を吐くまたんきさん。
OKを出して、出せ、出しやがれ。
でないと此処で本当に出すぞ!
(・∀ ・)「仕方ねー、ショボン行くぞ」
(´・ω・`)「はーい」
73 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:53:16.55 ID:kk4eSt8MO
(*゚ー゚)「それじゃ行きましょうか」
( ^ω^)「おっ」
両手で股間を抑え、内股で歩き、時折立ち止まりながらトイレへ行く。
我ながら、惚れ惚れしそうな演技力だ。
きっと舞台に立てば、100人が100人ブーイングをくれるだろう。
いや待て、せめて妄想の中くらいでは黄色い声援をくれよ。
(;゚Д゚)「大丈夫か?」
( ^ω^)「正直、後1分以内に決壊する自信がありますお」
(;゚Д゚)「駄目じゃん!」
(・∀ ・)「…ショボーン、先行ってろー」
(´・ω・`)「? はーい」
75 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 02:56:51.79 ID:kk4eSt8MO
_男子トイレ_
じょんじょぼろろろろろろろろろろろろろろろ
( ゙ω゙)「ふぃー…」
ああすっきりした。
息子をしまい、ジッパーを上げ、手を洗う。
ついでにベルトに挟んでいたスパナを取る。
よくこんな重たいものをベルトに挟んでおいて、ズボンがずり落ちなかったものだ。
自分のウエストに感心してしまう。
( ^ω^)「さて」
狙うは擬古か椎奈。ここは擬古だろうな。
椎奈を殴ってもいいのだが、愛する妻を殺られ逆上した夫に返り討ち。
そんなシナリオは勘弁してもらいたい。
擬古を再起不能にすれば、椎奈は動かないだろう。
億が一、追っかけて来たとしても、女の細腕に負けるほど弱くはない。
だから、自分は擬古を殴った。
77 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:06:17.86 ID:kk4eSt8MO
手応えはあった。
後頭部への、手加減なしの一撃。
呻き声も断末魔もなく、擬古は床に崩れ落ちた。
あまりにも呆気なさ過ぎたので、椎奈も後を追ってもらおうとスパナを振る。
しかし、片手で止められた。
( ;゚ω゚)「おっ?!」
(* ー )「…」
掴まれた右腕は、押しても引いてもびくともしない。
服の上から肌に食い込む指が痛い。
涙目になりながら、半ばやけくそに左で殴ると手首を握られて止められた。
そのまま捻られ、寝技の体勢に持っていこうとする。
( ;゚ω゚)(畜生! どうしてこうなった!?)
78 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:10:09.32 ID:ylIhjFkD0
しぃツヨスwww
79 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:13:51.33 ID:kk4eSt8MO
( ;゚ω゚)「一体何が…!」
前編
43 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2009/08/21(金) 17:51:15.02 ID:fbZwaUUsO
(,,゚Д゚) 羽入 擬古(はにゅうぎこ)
女、ヒモ
(*゚ー゚) 羽入 椎奈(はにゅうしいな)
男、銀行員
( #゚ω゚)「こんなところで伏線回収しやがってェー――!!」
内藤は湧き上がる怒りのままに、スパナを持ったほうの手首のスナップをきかせ、椎奈に向かって投げた。
80 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:15:25.44 ID:4pVLGVub0
あれミスじゃなかったんかwwwwwwwww
81 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:17:14.66 ID:UnBSFiqJ0
なん・・・だと・・・www
82 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:23:45.76 ID:MAk4n9DxO
あれは伏線だったのかwww
83 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:29:35.31 ID:kk4eSt8MO
18:01
( ;゚ω゚)「ふはー…ふはー…」
息を整えながら時間を確認すると、まるで大便をしたかのような時間が過ぎていた。
スパナは善戦した椎奈に、先に冥土へ向かった擬古への手土産として持たせられた。
あの広い雪原の上を、スパナを探す為に歩く時間はない。
割れた窓からは、冷たい吹雪がびゅうびゅうと吹き込んでくる。
最悪にも程がある。
いや、前半これでもかと上手く進んでいた事のツケが、今回ってきたんだろうか。
一旦自分の部屋に戻り、てるてる坊主と懐中電灯をバッグに入れる。
チャックは半開きにし、道具をいつでも取り出せる状態にした。
ズボンのチャックではない。
85 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:38:48.80 ID:kk4eSt8MO
_2階 通路_
バタン
扉を開く音がしたので、咄嗟に物陰へ隠れる。
開いたのは客室のほうではなく、玄関のようだ。
( ^ω^)「?」
内藤は見つからないように四つん這いで進み、吹き抜けからラウンジを見下ろした。
ショボンだ。何故か頭から血を流している。
何故? いつ? 誰に?
兎も角、好機。
(ω・` 三 ´・ω) キョロキョロ
(´-ω-`)=З ストン
ショボンは周囲を見回し、肘掛け椅子に座った。
上までは見ないようだ。そのほうがいい。
86 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:42:01.45 ID:kk4eSt8MO
高所恐怖症ではないが、3m以上の高さから飛び降りるとなると流石に怖い。
深呼吸し、覚悟を決めてショボンの上に飛び降りた。
グキョッ
( ゚ω゚)「おっほう!」
89 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:48:52.28 ID:kk4eSt8MO
18:06
暫くの間、片足を抑え床の上をのた打ち回ってしたが、肝心の痛みがない事に気づき起きたがった。
( ^ω^)「お?」
見ると、グキョッ をしたのはショボンの首のようで、自分の足首ではない。
今のショボンの首は、エクソシストよろしく状態になっている。
すぐにでもブリッジの体勢に移行し、「ンアァァァア!」と叫びながら追いかけて来そうだ。
( i|^ω^)(こえー)
(、。ω。,)
91 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 03:58:17.36 ID:kk4eSt8MO
_ラウンジ_
大きな音を立てて、扉が開いた。
壊れるくらいの音が響いた。
(・∀ ・;)「遅かったか…!」
( ^ω^)「…」
いくら肉眼で視認できるとしても、橋からここまでは距離がある。
例え走ったとしても、こんな短時間で往復できるものではない。
さて、この状況からまだ言い訳を見つけるか、否か。
そういや、ヒッキーがいたはずだ。
ヒッキーの死は、自分以外まだ誰も確認していない筈。
ならば、
(・∀ ・)「ああ、下手な言い訳とか考えなくていいから」
( ^ω^)「ちっ」
流石に、ここまで来ればわかるらしい。
92 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:04:46.38 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・)「お前が怪しいと踏んだのは、結構最初の頃からだ」
( ^ω^)「…」
さて、お決まりのものが始まった。
ここでは無駄な抵抗をするのがセオリーなのだろうが、生憎2人しかいない。
ここは黙って聞くとしよう。
それにしても、僕は語る過去とか何もないなぁ。
( ;^ω^)「!?」
そんなお気楽思考に流れていった内藤の脳味噌は、一瞬にして現実に引き戻された。
またんきがちらつかせた部屋の鍵、204号室の部屋の鍵で。
93 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:11:47.85 ID:kk4eSt8MO
またんきが、鍵を内藤に向かって投げる。
内藤はそれを掴まず、落ちるままにした。
虚しい金属音が、室内に響く。
(・∀ ・)「普通、こんな状況で、鍵を無くす奴なんているのかねぇ?」
( ;^ω^)「…」
言い返せない。言葉に詰まる。
内藤は時が来るまで、沈黙を貫く事にした。
(・∀ ・)「お前を見てると、ただ単に、破滅的に抜けてるだけかと思った
鍵を無くしたのに気づかないのも、その鈍感っぷりかとな
それでも、仕掛けたトリックを回収しなかった事は痛いな」
( ^ω^)「…」
言葉を発さない内藤に、またんきが溜め息を吐く。
95 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:19:12.17 ID:kk4eSt8MO
18:09
(・∀ ・)「…窓枠」
またんきが発した一言に、内藤の右手がぴくりと動く。
笑顔はいつまでも変わらないが、変化のない表情が逆に恐ろしい。
(・∀ ・)「外側に黒い粉があった、最初は錆かと思ったが違う」
またんきはポケットに手を入れると、使い捨ての手揉みカイロを取り出した。
内藤にあげたものと同じものだ。
(・∀ ・)「あの黒いの、舐めてみたらしょっぱかった」
( ^ω^)「ブバラスwwwwwwちょw舐めるとかwwwww」
またんきの問題発言に思わず噴出するが、鋭利な視線に脅され口を閉じた。
96 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:25:49.11 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・)「使い捨てカイロの中には、これが入ってる」
またんきはカイロをびりっと破く。
中からは、内藤が破いた時と同じものが出てきた。
(・∀ ・)「化学反応を起こす為の鉄粉と、化学反応の速度を速める為の塩」
(・∀ ・)「そして、水の代わりの雪」
( ^ω^)「…」
内藤の中で、疑問が生まれる。
またんきが今行った事は、全て事実だ。確かにそうだ。
だが、自分の仕掛けたトリックにどうやって気づいたかがない。
推理モノで、重要な部分がない。
( ^ω^)「…なんで、気づいたんだお?」
97 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:30:53.97 ID:kk4eSt8MO
18:13
(・∀ ・)「お前の部屋の窓だけ雪がないってのは、どう考えたっておかしいだろ」
( ^ω^)「他の人は気づかなかったお」
(・∀ ・)「あー平和だね、もし俺が殺人者なら、そいつらを最後に残す」
またんきさんは、自分に向かってぴっと指を差した。
(・∀ ・)「俺を最初に殺しとくべきだったな」
( ^ω^)「今、後悔してるお」
2人で笑う。
100 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:48:08.16 ID:kk4eSt8MO
武器を確認する。
自分は、右の袖にナイフが一本、時間で発動する切り札が一つ。
相手は、右手にストック、左手にスパナ。
普通に見れば、こちらの分が悪い。
切り札が発動する時間まで無事に持ちこたえられるだろうか。
(・∀ ・)「それにしても、ショボンにスパナを命中させた時は驚いたぜ」
( ^ω^)「…スパナ?」
そう言えば、またんきさんが握るスパナには見覚えがある。
僕が擬古を葬った形のスパナにとてもよく似ている。
と言うかそのものだ。
104 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 04:54:31.29 ID:kk4eSt8MO
18:16
( ^ω^)(しかし、命中って…)
つまり、椎奈が外に向かってぶん投げたアレの事か。
となると、投げたのは僕ではなく椎奈だ。
( ^ω^)(ショボンは運が悪かったんだお)
弁解する気も、冤罪を主張する気もない。
やたら静かな薄笑いを浮かべる目の前の人物に命乞いしても、無駄だとわかりきっている。
だから、その普通に会話をする。
( ^ω^)「随分と、冷たいんだおねー」
105 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:00:43.18 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・)「バカ言え、俺のハートは常にマックスファイヤーだ」
( ^ω^)「意味がわからないお」
(・∀ ・)「まぁ、ショボンの事に関してならさ、結構受け入れてるよ」
( ^ω^)「へえ」
(・∀ ・)「子供がいない俺とカミさんで可愛がったりさ」
( ^ω^)「それはそれは」
(・∀ ・)「友人にゃ悪いが、我が子のように思ってるよ」
( ^ω^)「はあ」
(・∀ ・)「だから、お前が許せない」
110 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:10:01.37 ID:kk4eSt8MO
18:1?
内藤が時間を確認しようと視線を逸らした瞬間、またんきがスパナをぶん投げてきた。
内藤自身に自覚はなかったかもしれないが、腕時計に目を落とす回数が格段に増えている。
( ;^ω^)「うおっ!」
掴み取る余裕はなかった。
両手で顔と首をガードする。
運良く、スパナは袖の中に入れたナイフに当たった。
(・∀ ・#)「ちっ」
( ;゚ω゚)(やべー! やべー!)
113 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:21:40.00 ID:kk4eSt8MO
またんきが蹴り上げた机を真正面から喰らう。
机ごと、またんきが自分の体の上に乗るのを感じた。
自慢のふぐりが潰れてしまったとか、今はどうでもいい。
大切なのは命だ。
命さえあるばなんでもできる。
あのストックを眼球に尽き入れられたら、それがなくなってしまう。
( #゚ω゚)「うぉらぁ!」
(・∀ ・;)「うお!」
相手が机ごときたのならば、自分も机ごと返してやればいい。
ひっくり返ったまたんきのマウントを取ろうやろうとするが、ストックを振り回される。
115 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:28:49.48 ID:kk4eSt8MO
18:21
( #゚ω゚)「くぉんの…!」
鬱陶しいストックを掴もうと伸ばした手が、その先端で思い切りど突かれる。
痛みに手を引けば、またんきはその隙をついて背筋を海老のように逸らし、反動で起き上がった。
(・∀ ・;)「やべー…」
( #^ω^)「…さっさとくたばれお」
またんきが息を整えている間に、自分も息を整える。
破れた袖から覗く腕時計は、後9分をさしていた。
( ^ω^)(出来れば、これはあまり使いたくなかったけど…)
116 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:35:27.09 ID:kk4eSt8MO
内藤の切り札というのは、諸刃の剣なのだ。
上手く使えば自分に対するダメージはないのだが、この状況だとこうもいかない。
そもそも、こんな状況で使う筈のものではなかったのだ。
食堂に人を集め、一網打尽にする為の策だったのだ。
(・∀ ・)「てめぇ、まだなんか隠してやがるな」
( ^ω^)「…それを聞いて、どうするお」
まるで、こちらの考えを読んだかのような問い掛け。
不意を突かれまいと、内藤は腕時計に目を落とさない。
118 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:43:53.17 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・)「その隠し玉が何か知らねーけどよー」
じり、とまたんきが一歩前に出る。内藤は後退する。
その距離を埋める為、またんきがまた一歩出る。
それを何回か繰り返し、内藤の背に食器棚があたった。
その一瞬の硬直を見逃さず、またんきが一気に距離をつめてくる。
(・∀ ・#)「それを出す前に! てめぇを殺すッ!」
( ;^ω^)「ぐっ…」
その気迫に負けた内藤が、横に飛んで逃げる。
運悪く着地した場所にはキッチンペーパーが散らばり、それに足を滑らせ尻餅をついた。
119 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:50:14.67 ID:kk4eSt8MO
(・∀ ・#)「ッしゃあ! 死ね!」
マウントを取られ、首を絞められる。
落ちてくるストックが、酷いスローモーションだ。
振り返る過去も走馬灯も何もない。
視界の時間が緩やかになっても生きたくて、目を守ろうと両手をかざす。
腕時計の時間は、18時半になっていた。
アナログ時計との時間差は、僅か数秒。
つまり、
( #゚ω゚)「お前の負けだ! またんきィ―――――ッ!!!」
121 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 05:54:57.78 ID:kk4eSt8MO
18:30
白い世界に、赤が映える。
124 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 06:03:15.44 ID:kk4eSt8MO
18:31
半壊した食堂で、ぼうっと佇む内藤。
目の前には、未だに燃える上半身と、糞尿を垂れ流す下半身がある。
( ^ω )「とっときのトリック…だったんだお」
誰に喋りかけるでもなく、1人語り始める。
( ^ω )「電線を針につないで…時針と分針が重なる時に電流が流れるようにする…」
( ^ω )「下に油を敷いて作った、即席の時限爆弾だお…」
( ^ω )「…風とかで電線が揺れて…いつ油に引火するかわからなくて…」
( ^ω )「すっごい怖かったお…」
( ^ω )「もう二度と、こんな事しないお…」
( ^ω゚)「くふ、ぐふふ」
127 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 06:08:23.01 ID:kk4eSt8MO
18:3?
体を支える筋肉は、もう限界だ。
硝子の破片と火を避けて、床に仰向けに寝転ぶ。
( ^ω )「…お日様だお」
吹雪は晴れていた。
爆風が晴らしたのか、名探偵が死んだからなのか定かではない。
それでも、内藤は後者だと信じた。
( ^ω )「名探偵は…お前だったんだおね…」
首を動かして、またんきだったものを見る。
燃えて炭化した首が転げ落ちるのが、頷いたように見えた。
その首の火が内藤に燃え移るまで、後13秒。
128 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/08/26(水) 06:13:11.83 ID:kk4eSt8MO
後書き
( ^ω^)なんという超展開
( ^ω^)これがレス制限ながら投下の罠か
( ^ω^)時限爆弾とカイロに使ったトリックが
( ^ω^)既に小説や漫画にあったら泣く
( ^ω^)泣いて涙の海でバタフライする
130 名前: ◆qsmb/e.hT. :2009/08/26(水) 06:15:11.34 ID:kk4eSt8MO
こんな時間まで支援してくれた人ありがとう
もう二度と携帯でながら投下なんてしないよ
おやすみ
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